「また来週、エオルゼアで。」   作:*いろは*

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第1話|8人が集まった日

 

【挿絵表示】

 

 

固定活動が始まる日。

 

私は、集合時間の10分前にログインしていた。

 

別に、張り切っていたわけじゃない。

 

ただ、新しい固定って、最初だけちょっと緊張する。

 

どんな人が来るんだろう。

 

VCって、ちゃんと話せるかな。

 

変な人だったらどうしよう。

 

逆に、私が変な人だと思われたらどうしよう。

 

そんなことを考えながら、キャラクターを動かしていた。

 

すると、VCに一人目の声が入った。

 

「こんばんはー!」

 

固定リーダーのアンディさんだった。

 

「こ、こんばんは」

 

「あ、ユリミナさん? 早いね」

 

「じっとしてられなくてw」

 

「俺もw」

 

それだけの会話なのに、少し緊張がほどけた。

 

そこから、ぽつぽつと人が集まり始めた。

 

「こんばんはー」

 

「おつかれさまです」

 

「聞こえてます?」

 

「聞こえてるよー」

 

一人、また一人。

 

声が増えていく。

 

フレンドのクラゲ。

 

リリベルさん。

 

カイさん。

 

レオンハルトさん。

 

ポムポムさん。

 

そして最後に、オルカさん。

 

八人。

 

画面の前では、ただのキャラクターが輪になって並んでいる。

 

でもVCには、それぞれ違う声があった。

 

よく喋る人。

 

必要なことだけ話す人。

 

笑い声が大きい人。

 

ちょっと控えめな人。

 

まだ緊張している人。

 

初対面なのに妙に馴染んでいる人。

 

私はその声を聞きながら、

 

この8人でやるんだ!と、改めて思った。

 


 

「じゃあ、一応自己紹介からします?」

 

アンディさんが言った。

 

「年齢とかは別にいいよね。キャラ名とジョブくらいで」

 

「年齢聞いたら急にリアルになるもんねw」

 

ポムポムさんが笑う。

 

「じゃあ私から!」

 

そこから順番に自己紹介が始まった。

 

「ポムポムです。機工士です。ポムって呼んでね!あと、えーっと……ミスしたらいっぱい謝ります!」

 

「先に宣言するタイプなんだw」

 

レオンハルトさんが笑った。

 

「だって怖いじゃん!」

 

「大丈夫大丈夫w」

 

アンディさんが言う。

 

「次、カイさん」

 

「カイです。侍です。攻略はちゃんと詰めたい派です」

 

「私!もっとゆる~い気持ちだったw」

 

ポムさんが言う。

 

「いや、普通だよ」

 

「その『普通』が怖いんだってw」

 

「なんでw」

 

VCに笑い声が広がった。

 

少しずつ、空気が柔らかくなっていく。

 

クラゲの番になる。

 

「クラゲです。ナイト。基本眠いです」

 

「それ自己紹介として大丈夫?w」

 

リリベルさんが笑う。

 

「大丈夫。たぶん」

 

「たぶんなんだw」

 

「まあ、寝落ちしないようにはします」

 

「そこは頑張ってw」

 

また笑い声が起きる。

 

リリベルさんは、少し考えてから口を開いた。

 

「リリベルです。リリでいいよ!学者です。人のミスにはたぶん寛容です」

 

「たぶん?」

 

「自分もよくミスするのでw」

 

「それなら安心だw」

 

アンディさんが言った。

 

レオンハルトさんは、仕事の話を少しだけして、

 

「ヴァイパーです。平日は帰宅時間が日によって違うので、遅れる時は早めに連絡します。名前長いから俺もレオンで。」

 

と話した。

 

アンディさんが、

 

「そこはみんな同じだよ。リアル優先でいこう」

 

と言った。

 

オルカさんは、

 

「オルカです。赤魔です。家の都合で遅れることもあると思います。そこだけ先に伝えておきます」

 

と、落ち着いた声で言った。

 

「了解です」

 

「無理しない範囲でいこう」

 

そんな声が返ってくる。

 

最後に、自分の番が来た。

 

「ユリミナです。白魔です。……初めての固定活動で緊張してます。あんまり上手くないですけど、よろしくお願いします」

 

「よろしくお願いします!」

 

ポムポムさんの声が返ってきた。

 

「ユリミナちゃん、ヒーラー仲間だ!」

 

リリさんも笑って、

 

「私も学者なので、困ったら助け合おうね」

 

と言ってくれた。

 

「はい!あ、私のことはミナって呼んでください!よろしくお願いします」

 

私は改めて返した。

 

なんだか、いい人たちかもしれない。

 

そんなことを思った。

 

もちろん、まだ会ったばかりだ。

 

この時点では、誰がどんな人なのかなんて、本当にはわからない。

 

でも。

 

第一印象って、不思議だ。

 

ほんの数十分一緒に話しただけなのに、

 

「この人とは仲良くなれそう」

 

とか、

 

「この人、面白いな」

 

とか、

 

なんとなく感じるものがある。

 

そして私がこの日感じたのは、

 

「この8人なら、楽しくできそう」

 

だった。

 


 

最初の攻略は、思っていたより順調だった。

 

もちろん、すぐにはクリアできない。

 

ミスもする。

 

「ごめん!」

 

「今の私!」

 

「いや俺も!」

 

「誰も悪くないってw」

 

VCに笑い声が広がる。

 

一回目は全滅。

 

二回目も全滅。

 

三回目。

 

「あ、今ちょっと先まで行った!」

 

カイさんの声が弾んだ。

 

「ほんとだ!」

 

「初見にしてはいいんじゃない?」

 

アンディさんが言う。

 

「これ、今日いけるんじゃない?」

 

ポムさんが言った。

 

「いや、それはフラグw」

 

クラゲが返す。

 

「やめて!」

 

また笑う。

 

私はその会話を聞きながら、思った。

 

こういうの、好きだな。

 

攻略そのものも楽しい。

 

でもたぶん私は、

 

みんなで「あ、今のよかった!」って言える時間が好きなんだ。

 

一人で練習して、一人で上手くなるのとは違う。

 

同じところで笑って。

 

同じところで悔しがって。

 

少しずつ先に進んでいく。

 

その時間が楽しかった。

 

そして、何度目かの挑戦。

 

「いける!」

 

誰かが叫んだ。

 

「あとちょっと!」

 

「落ち着いて!」

 

「いけるいける!」

 

最後のギミックを抜けた。

 

画面が切り替わる。

 

「…………」

 

一瞬、VCが静かになった。

 

そして。

 

「やったーーー!!」

 

ポムさんの声が響いた。

 

「初回でここまでいけたの、結構すごくない?」

 

「いいスタートだね」

 

アンディさんが笑う。

 

「次、もっと行けそう」

 

レオンさんも嬉しそうだった。

 

私は画面を見ながら、

 

「この人たちと、もっと遊びたいな」

 

と思った。

 

まだ一日目。

 

まだ始まったばかり。

 

それなのに、もう次の活動日が少し楽しみになっていた。

 


 

時計を見る。

 

思っていたより、ずっと時間が経っていた。

 

「そろそろ寝るね」

 

オルカさんが言った。

 

「お疲れさまー」

 

「また次回!」

 

「おやすみー」

 

一人ずつ、VCから声が消えていく。

 

最後にアンディさんが言った。

 

「じゃあ、また次回。よろしくお願いします」

 

「よろしくお願いします」

 

私もそう返した。

 

ログアウトする前に、今日集まった場所をもう一度見た。

 

八人分のキャラクター。

 

まだ名前と声が一致したくらい。

 

まだ、お互いのことなんて何も知らない。

 

それでも。

 

私は小さく笑った。

 

「……次も楽しみだな」

 

その時は、本当にそう思っていた。

 

この八人で過ごす時間が、

 

これから何度も続いていくことを、

 

当たり前みたいに信じていた。

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