「また来週、エオルゼアで。」   作:*いろは*

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第4話|固定のあとも、もう少し

 

【挿絵表示】

 

 

「このあと、みんな何する?」

 

アンディが聞いた。

 

「私はFCに顔出すかな」

 

オルカが答える。

 

「今日、ちょっと約束してるから」

 

「私は……どうしようかな」

 

リリが考える。

 

「私もフレンドと少し遊ぶ予定」

 

レオンが言った。

 

「俺は落ちる」

 

カイは即答だった。

 

「早っw」

 

ポムが笑う。

 

「明日仕事だから」

 

「そっかー」

 

「ポムは?」

 

「私は暇!」

 

「即答だなw」

 

みんなが笑った。

 

ミナも笑いながら、フレンド欄を見た。

 

そこには、少し前から届いているTellがあった。

 

『固定終わったら遊べそう?』

 

固定が始まる前から付き合いのあるフレンドだった。

 

いつもなら、固定が終わったら一緒にルレを回したり、だらだら話したりする。

 

今日も、そのつもりだった。

 

でも。

 

今日は少し違った。

 

固定が終わった。

 

それなのに、まだVCに残っている。

 

みんなと、もう少し話したいと思っている自分がいる。

 

「……どうしよう」

 

小さく呟く。

 

「ミナ?」

 

アンディが振り返る。

 

「ううん、なんでもない」

 

そう答えたけれど。

 

本当は、なんでもなくなかった。

 


 

固定が始まる前の自分なら。

 

たぶん、迷わずフレンドのところへ行っていた。

 

約束していたから。

 

先に誘ってくれたから。

 

固定は固定。

 

友達は友達。

 

どちらも大切なら、時間を分ければいい。

 

そう思っていた。

 

でも最近は。

 

固定が終わったあとも、みんなと話していたいと思う。

 

攻略が終わったら解散。

 

それでいいはずなのに。

 

「あとちょっとだけ」

 

そう思ってしまう。

 

それが、少しだけ嬉しくて。

 

同時に、少しだけ怖かった。

 

固定が楽しくなるほど。

 

固定の外にいる人との時間を、少しずつ減らしてしまうんじゃないか。

 

そんなことを考えてしまう。

 


 

「じゃあ、今日はここで解散かな」

 

アンディが言った。

 

「えー!」

 

ポムが残念そうな声を出す。

 

「また来週あるでしょ」

 

「来週まで長いよー」

 

「一週間だからねw」

 

「そうなんだけど!」

 

笑い声が広がる。

 

そのまま、少しずつ人が抜けていく。

 

「じゃあ、またね」

 

「お疲れさま」

 

「また来週」

 

ポムが抜ける。

 

リリも抜ける。

 

オルカもFCへ向かうためにVCを出る。

 

レオンとカイも、それぞれログアウトしていった。

 

最後まで残っていたのは、ミナ、クラゲ、アンディ。

 

「……なんか、結局みんな予定あるんだな」

 

アンディが笑う。

 

「そうだね」

 

ミナも笑った。

 

「じゃあ俺も落ちるわ」

 

「うん。お疲れさま」

 

アンディが抜ける。

 

そして。

 

また二人になった。

 


 

「なんかさ」

 

クラゲが言う。

 

「ん?」

 

「最近、固定終わってからも残るようになったよね」

 

「みんな?」

 

「ミナ」

 

「え、私?」

 

「うん」

 

ミナは少し考えた。

 

「……楽しいからかな」

 

「ふーん」

 

「なに、その反応w」

 

「いや、ミナって昔からそうだったなと思って」

 

「何が?」

 

「気を遣って、最後まで付き合うやつ」

 

「……それは違うよ」

 

「ほんと?」

 

「ほんと」

 

「じゃあ、今も自分が話したいから残ってる?」

 

ミナは黙った。

 

すぐには答えられなかった。

 

クラゲは急かさない。

 

昔からそうだった。

 

「……たぶん」

 

ミナが言う。

 

「うん」

 

「自分が残りたいから、残ってる」

 

「そっか」

 

「なんか変?」

 

「変じゃないよ」

 

クラゲが笑った。

 

「むしろ、ちょっと安心した」

 

「なんで?」

 

「ミナ、昔から『どっちでも大丈夫』って言うから」

 

「……それは便利な言葉じゃん」

 

「便利すぎるんだよ」

 

「えー」

 

「本当はどっちでもよくないときまで使うでしょ」

 

ミナは返事をしなかった。

 

図星だった。

 


 

「でもさ」

 

ミナが言う。

 

「固定って、どこまで仲良くなっていいんだろうね」

 

「急に深いなw」

 

「いや、なんとなく」

 

「仲良くなればいいんじゃない?」

 

「でも、固定以外にも友達いるじゃん」

 

「いるね」

 

「その人たちとの時間も大事だし」

 

「うん」

 

「固定の人たちとも、もっと遊びたいし」

 

「それでいいんじゃない?」

 

「そんな簡単かなあ」

 

クラゲは少し考えてから言った。

 

「固定って、毎週集まる約束をしただけでしょ」

 

「うん」

 

「それ以上のことは、これから決めていけばいいんじゃない?」

 

「……そっか」

 

「最初から全部決めなくてもいいよ」

 

ミナは少し笑った。

 

「クラゲって、こういうときだけ妙にまともだよね」

 

「こういうときだけって何w」

 

「普段は適当なのに」

 

「失礼だなw」

 

二人で笑う。

 


 

ふと、ミナはさっきのTellを思い出した。

 

まだ返事をしていない。

 

「ねえ、クラゲ」

 

「ん?」

 

「今日ね、固定終わったら遊ぼって誘われてたんだ」

 

「ああ」

 

「でも、今ちょっと……こっちにいたいなって思って」

 

クラゲは少しだけ笑った。

 

「じゃあ、こっちにいれば?」

 

「でも約束してたし」

 

「約束って、絶対守らなきゃいけないもの?」

 

「……え?」

 

「もちろん大事だけどさ」

 

クラゲは続けた。

 

「毎回、誰かとの約束を優先しなきゃいけないわけじゃないでしょ」

 

「でも、断ったら悪いかなって」

 

「それなら、ちゃんと伝えればいいじゃん」

 

ミナはスマホ……ではなく、ゲーム画面に表示されたTellを見る。

 

『固定終わったら遊べそう?』

 

しばらく悩んでから、文字を打った。

 

『ごめん、今日はもう少し固定の人たちと話してたい!また今度遊ぼう』

 

送信。

 

すぐに返事が来た。

 

『了解!楽しんできなー』

 

ミナは、少し驚いた。

 

それだけだった。

 

怒られもしない。

 

責められもしない。

 

ただ、

 

「また今度」

 

と言ってくれた。

 

「……なんだ」

 

ミナが呟く。

 

「何?」

 

「もっと悩まなくてもよかったのかも」

 

クラゲが笑う。

 

「そういうこと」

 


 

固定の中にいる人たちも大切。

 

固定の外にいる人たちも大切。

 

どちらか一つを選ばなきゃいけないわけじゃない。

 

でも。

 

その日の自分が、誰と一緒にいたいと思っているのか。

 

それくらいは、自分で決めてもいいのかもしれない。

 

ミナはそう思った。

 

「じゃあ、そろそろ寝る?」

 

クラゲが言う。

 

「うん」

 

「今日は結構しゃべったね」

 

「ね」

 

「じゃ、また来週」

 

「また来週」

 

ミナはログアウトする前に、もう一度フレンド欄を見る。

 

固定の七人。

 

昔からのフレンド。

 

FCの仲間。

 

まだ名前も知らない誰か。

 

FF14の中には、いろんな場所がある。

 

その全部を同じように大切にすることなんて、たぶんできない。

 

だからこそ。

 

その時々で、自分が大切にしたいものを選んでいけばいい。

 

そんなことを、ほんの少しだけ思えるようになった。

 

そして。

 

「来週、またみんなに会えるな」

 

ミナはそう思いながら、ログアウトした。

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