「また来週、エオルゼアで。」   作:*いろは*

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第6話|同じ固定、違う理由

 

 

【挿絵表示】

 

 

「今日は、どこまで行けそうかな」

 

VCに集まった八人を見ながら、アンディが言った。

 

「先週より進みたい!」

 

ポムがすぐに答える。

 

「でも、先週けっこう惜しかったよね」

 

リリが続ける。

 

「うん。あとちょっとだった」

 

「なら、今日はそこから詰めようか」

 

アンディがそう言うと、カイも、

 

「動画で見た感じだと、あそこはもう少しやり方変えたほうがいいと思う」

 

と続けた。

 

「もう予習してるの?」

 

ポムが笑う。

 

「一応。次やるなら、最初から安定させたいし」

 

「すご……」

 

ポムが素直に感心する。

 

「私は動画見ても途中から何が何だか分からなくなったw」

 

「それは実際やったほうが早いかもね」

 

クラゲが笑った。

 

「だよねw」

 

ミナも笑う。

 

そんな会話をしながら、いつものように攻略が始まった。

 

最初は、前回より少しだけ動きが良かった。

 

「あ、今のいけた!」

 

「いいね!」

 

「次!」

 

誰かが声を上げるたびに、VCが少し明るくなる。

 

失敗すれば笑って、できれば喜ぶ。

 

まだ、何も難しいことはない。

 

少なくとも、このときのミナにはそう思えていた。

 

しばらくして、何度目かの全滅。

 

「うーん……」

 

アンディが唸る。

 

「もう一回やろう」

 

カイが言った。

 

「次はさっきのところ、こうしたほうがいいと思う」

 

「了解!」

 

ポムが返す。

 

そのときだった。

 

「あ、ごめん」

 

オルカの声が入る。

 

「どうしたの?」

 

「今日、ちょっとこのあと家族とご飯食べに行くことになってて」

 

「あ、そうなんだ」

 

「うん。急に決まっちゃって。あと三十分くらいなら大丈夫だけど、そのあと抜けないと」

 

「了解了解」

 

アンディがすぐに返した。

 

「じゃあ、三十分でできるところまでやろう」

 

「ごめんね」

 

「いやいや、全然」

 

それで話は終わった。

 

少なくとも、その場では。

 

そのあと三十分。

 

オルカがいるうちにと、みんなで集中して何度か挑戦した。

 

そして、最後の一回。

 

今までで一番いいところまで進んだ。

 

「いける!」

 

ポムの声が弾む。

 

「そこ!」

 

「あとちょっと!」

 

全員が集中する。

 

そして――

 

失敗。

 

「あああああ!」

 

ポムが叫ぶ。

 

「惜しい!」

 

「今のかなり良かったね」

 

「もう一回!」

 

ミナも笑った。

 

けれど、オルカが言った。

 

「ごめん、もう時間だ」

 

一瞬だけ、VCが静かになる。

 

「あ、そっか」

 

アンディが答えた。

 

「じゃあ今日はここまでにしようか」

 

「ごめんね。また来週!」

 

「お疲れさま!」

 

オルカが抜ける。

 


 

残った七人は、しばらくそのままVCにいた。

 

「……惜しかったなあ」

 

ポムが言った。

 

「うん」

 

「もう一回やりたかった」

 

カイもそう言った。

 

ミナは何となく、みんなの声を聞いていた。

 

オルカがいなくなったからといって、誰かが怒っているわけじゃない。

 

むしろ、仕方ない。

 

家族とのご飯なんだから。

 

それは誰にでもあることだ。

 

「じゃあ、今日は解散にする?」

 

アンディが聞いた。

 

「あ」

 

ポムが言った。

 

「私はもうちょっとだけ残れるよ」

 

「俺も」

 

カイが続く。

 

「俺も大丈夫」

 

クラゲも答える。

 

「私は……」

 

ミナが言いかけたところで、スマホが鳴った。

 

画面を見る。

 

昔からのフレンドからだった。

 

『今日このあと少し遊ばない?』

 

ミナは少し迷った。

 

固定はもう終わる。

 

でも、まだみんなVCにいる。

 

「どうしたの?」

 

クラゲが聞く。

 

「んー、昔からのフレンドから。今日このあと遊ばない?って」

 

「ああ」

 

クラゲが言う。

 

「行ってきたら?」

 

「でも、みんなまだいるし……」

 

「固定終わったんだから、別にいいんじゃない?」

 

「そうかな」

 

「うん」

 

クラゲはいつも通りだった。

 

「固定の日だからって、そのあとまで全部固定じゃないでしょ」

 

「……そっか」

 

ミナは少し笑った。

 

「じゃあ、私も今日はそっち行ってくる!」

 

「おっけー」

 

「またねー」

 

「お疲れ!」

 

ミナが抜ける。

 

そのあと、残ったメンバーもそれぞれの予定へ戻っていった。

 

ポムはフレンドから誘われていた。

 

カイはもう少し練習するらしい。

 

レオンは翌朝が早いから落ちると言っていた。

 

アンディは攻略動画を見ると言っていた。

 

クラゲもFCの手伝いがあるらしい。

 

同じ時間に集まって。

 

同じ場所で遊んで。

 

同じコンテンツに挑戦している。

 

でも。

 

固定が終われば、みんなそれぞれの場所へ帰っていく。

 

そのこと自体は、何もおかしくなかった。

 


 

翌週。

 

いつもの時間。

 

VCに八人が集まった。

 

「お疲れー」

 

「こんばんはー」

 

「今日もよろしく!」

 

いつもの挨拶が飛び交う。

 

アンディが今日の予定を話し始める。

 

「前回のところなんだけど、カイが送ってくれた動画見た人いる?」

 

「見た!」

 

ポムが答える。

 

「私は途中まで……」

 

「俺はまだ見てない」

 

レオンが言う。

 

「俺は見たよ」

 

クラゲが続ける。

 

それぞれの返事を聞きながら、ミナはふと思った。

 

同じ固定に入っている。

 

でも。

 

同じように時間を使っているわけじゃない。

 

同じように攻略したいわけでもない。

 

同じように、この固定に何を求めているわけでもない。

 

それでも今は、八人で遊べている。

 

「じゃあ、今日はこの方法で試してみようか」

 

アンディが言った。

 

「はーい!」

 

ポムが返す。

 

「了解」

 

カイが答える。

 

「よし、行こう」

 

誰かが笑った。

 

ミナも笑った。

 

まだ、この違いを問題だとは思っていなかった。

 

ただ――

 

同じ「固定」という場所に集まっていても。

 

そこに来た理由まで、同じとは限らない。

 

そのことを、ミナは少しだけ知り始めていた。

 

そしてたぶん。

 

まだ誰も、それを気にしていなかった。

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