「……ここ、A組だよな」
「う、うん……そのはずだけど」
魄面リオは、動揺していた。
この世界の日本で随一の偏差値、そしてヒーロー育成機関である雄英高校。そのヒーロー科の教室の中で繰り広げられているのが「机に足をかける問題児とそれを指摘する優等生の喧嘩」だということが信じられなかった。
「……もっかい開けるか」
「……うん」
再びリオが扉に手を掛け、ガラリと開ける。
相変わらず問題児の方は暴言を吐いていたが、もう気にしないことにしておこう。
「ム」
「あ?」
問題児と優等生もこちらに気づいたようで、優等生の方がこちらに近寄ってきた。
「おはよう、2人とも。俺は私立聡明中学出身の飯田天哉だ、3年間よろしく」
「あ……えっと、僕、緑谷。よろしく飯田くん」
「魄面リオ。よろしく飯田」
「ああ!……緑谷くん、君はあの実技試験の構造に気づいていたのだな……」
発言から察するに、緑谷と飯田は実技試験の会場が同じだったのだろう。俺は気づけなかったと悔しがる飯田に驚く緑谷を見ていると、見覚えのある髪が2つほど目に入った。
「……耳郎、上鳴」
「あれ、魄面じゃん!受かったんだな!」
「ああ、首席でな」
「え!?」
リオの言葉に、クラス中から視線が集まる。……一部殺気が感じられるが。
「……テメェが首席か、そのムカつく面ぁ爆破し殺して──」
「お友達ごっこしたいなら他所へ行け。ここはヒーロー科だぞ」
(……芋虫?)
黄色い寝袋にくるまった男……ということは視覚情報から理解はできるが、如何せん芋虫にしか見えないという目で男を見る。
「はい、静かになるまで8秒かかりました……時間は有限、君たちは合理性に欠けるね」
リオには見覚えがあった。リオの合否映像に出てきていた男。髪型も、服装も同じ。
「担任の相澤消太だ。よろしくね」
(担任かよ……!?)
「早速だが、体操着着てグラウンド集合な」
「入学初日早々悪いが、これから君たちには個性把握テストを受けてもらう」
「「「個性把握……テストォ!?」」」
「入学式は!?ガイダンスは!?」
「ヒーローになる以上、そんな悠長な行事に出てる暇なんてないよ」
「……!?」
合理性とやらが相澤の
「雄英は"自由"な校風が売り文句。そしてそれは先生側もまた然りだ」
「……?」
「ソフトボール投げ、立ち幅跳び、50m走、持久走、握力、反復横跳び、上体起こし、長座体前屈。中学の頃からやってるだろ、個性禁止の体力テスト」
……確かに受けたことがある。その時から鍛えてはいたから、異形型を除けばかなり良いところまで食い込んだ。
「国は未だ画一的な記録を取って平均を作り続けてる、合理的じゃない。まぁ文部科学省の怠慢だよ。そうだな……魄面」
「はい」
相澤が愚痴を吐いていたが、途端に名を呼ばれる。中学の頃に投げたソフトボール投げの記録を聞かれて、90mと答える。すると、個性を使って投げてみろ、とデモンストレーションをお願いされた。
「円から出なけりゃ何しても良い。早よ」
「……」
ボール投げはボールを遠くまで飛ばす競技。そのために必要なのは速度とボールの推進力。文字通り何をしても良いのなら──
「──
投げたボールに
「まず自分の最大限を知る。それがヒーローの素地を形成する合理的手段」
相澤の持つ媒体には、「240.5m」と表記されていた。
「ってことは、この種目をこなした先が俺たちのスタート地点になるわけか……!」
「燃えてくるぜ!!」
「……首席……1位……面白ェ」
感想は人それぞれ、これから雄英で過ごすことへの期待と熱意を抱いていた。
「ただ、俺はヒーローになれそうにないような奴をわざわざ育てようとは思ってない」
相澤の一言で、クラスがピリつく。
「一般で入った子たちは試験で仮想敵を相手にしたわけだが、脅威はそれだけじゃない。自然災害も入ってくる。そういった理不尽に塗れ、それを覆していくのがヒーロー。放課後マックで談笑したかったならお生憎。これから雄英は3年間、君たちに苦難を与え続ける」
もう、生徒はこの学校が普通ではないことを理解している。次に彼の口から放たれたのは、衝撃的な言葉だった。
「この個性把握テストで最下位の生徒は、こちらで"見込みなし"と判断し……除籍処分としよう」
「「「!?」」」
「"
「「「──はい!!」」」
クラスで「面白そう」という声が出なくとも、相澤先生なら最下位除籍とかしそうなのでこの形にしました。頑張れ、道は険しいぞ。