新世界生物(?)ゴア・マガラ 作:ゴマちゃん
新魔王決定戦・決勝が開始してから一日と少しが経過した。……順調すぎてさ、話すべきこともほとんどなかったのね。ここまでは魔物倒したりしながら進んでるだけだった。
面白かったことといえば……、昨日はみんなでごはん食べたあと、ノリでお皿洗いを賭けてトランプやったんだよね。わたしはドベから三番目だった。ヘルクが二番でアンがビリ。全部顔に出てて面白かった。
そんなこんなありつつも、二つ目の休憩ポイントを出発したわたしたちは、現在嵐の影響でルート変更を余儀なくされてる。なんかめちゃんこ魔物とか出る地下道らしい。ま、大丈夫でしょう。
ここまで辿り着くには、それはもう色々なことがあった。一番記憶に残ってるのは、ドルーシが第2種特殊能力の持ち主だと判明したことかなぁ。
説明。第2種特殊能力というのは、ある条件を満たすと扱える特殊な力のこと。ドルーシの場合は豆を食べると強力な結界を張れるんだって。……発動まで30分かかるらしいけど。長すぎるよ。
ちなみに、条件なしで扱えるものは第1種特殊能力なんだってさ。ヴァミ……、アンは条件なしで炎出せるのでこっち。わたしも剣とか槍とか弓とか出せるし、こっちなんじゃないかなって思ってる。
……実際は、もうちょっと
といったところで。
わたしたち一行はその戦闘力やらを遺憾なく発揮し、地下道に現れる魔物連中をばったばったと薙ぎ倒しているのでした。
「
「……見た目に反して出鱈目に強いわね、あの子供」
「おっ、やっぱ分かっちまうかぁ! アマラってあの感じで雑に強いんだよ」
「そうそう、アマラは強いんだ。人見知りなところがあるけどね」
「見た限りは普通の子供なんですけどねぇ。やはり帝国では、人は見た目によらないということですか」
……なんか持ち上げられてる。
嬉しいよ、嬉しいけどさ。でも一旦待ってほしい。
確かにわたしはだいぶ強い方だと思う。ただ、そこまで言われるほどじゃないぞ。特にヘルクとヒュラ。真正面から戦ってもわたしより余裕で強いだろ、お前らは。
ケンロスとドルーシだって、持ち味を活かされたらわたしくらいは完封される。わたしはケンロスより遅いしドルーシより脆いぞ。顔に攻撃喰らったら怯むし。
あとはまあ、アン。
わたしは多分、今後一生かけても彼女に勝てないと思う。
……火属性とか、絶対熱いし。
「とまあ、わたしはそう思うんだよね。雑談しながら魔物たちをけちょんけちょんにしてるみんなに比べたら、わたしはまだまだだなって」
「私から見れば、アマラ。お前も大概だと思うが……、というかその太刀はなんだ。さっきまでそんなの持ってなかっただろが」
「よくぞ聞いてくれました。この太刀は──えーっと、スティールofジャッジってんだって。変な名前だよねぇ」
「銘じゃなくどこから取り出したのかを……、はぁ。まあいい、怪我しないようにだけ気を付けるんだぞ」
「はーい」
……撫でてはもらえなかったか。しかし別に構わないぞ、いいとこ見せ続けてればいつかは撫でてもらえるはずだ。ヘルクとケンロスはそうだったし。
遠くの方から二人が「人見知りだけど一回仲良くなると一気に距離感近くなるよね〜」みたいな会話をしているのが聞こえてきたが、幻聴だろ。そうであってくれ。わたし、そこまで、ちょろくない。
だよな。
そうだよな。
そうだと言ってくれ。
なんとか誰かに肯定してほしくて、わたしは道中の魔物を刀の錆にしながら、こういう時はっきり行ってくれそうなヒュラのところへと向かった。
「その、ヒュラはどう思う……? わたし、そんなにちょろそうなのかな」
「……ここで私のところに一直線に来るあたり、そうなんじゃない。そうでなくとも、普通はヴァミリオ様とあんな親しげに話せないでしょ」
「そ、そんな……」
悲報だ。どうやらわたし、距離感おかしいらしい。いやでも、ヘルクやケンロスだってこんなもんだろが。てかバレてんじゃん。ヴァミリオ、正体バレバレだって。
もしわたしの距離感がおかしいのだとしたら、間違いなくあいつら二人のせいだ。わたしは悪くないぞ、絶対悪くないから。
抗議の意味も込めて二人の方をじろりと睨んでみると──なんかあいつら、魔物に追っかけ回されながらはしゃいでやがった。
「魔物って意外と種類が豊富なんだよ、すげーだろ?」
「ははは、凄いなぁ! どれもこれも元気いっぱいだ!」
「どいつもこいつも超凶暴なんだぜ! せっかくだし紹介してやるよ!」
「おお、ありがたい!」
「これは植物系。消化液とかめんどくせーんだぜ。こいつは獣系、爪や角攻撃が危険だ! よく動くしめんどくせーんだ。んでな、こいつは爬虫類系なんだけどな、とにかくめんどくせーんだ」
「勉強になるなぁ」
「勉強になるなぁ、じゃない! また囲まれるだろが!」
激怒するアン。
そりゃそうだ、緊張感なさすぎるもんな。
「やれやれ、しょうがない人ですねぇ。いいでしょう、ここは私の超強力な結界で……」
「それは30分掛かるだろが!」
それを見かねたドルーシが豆を食べて結界を張ろうとして、たまらずまた激怒。しかもドルーシが取り出してるの、豆じゃなくてチョコだし。発動できないじゃんか。
しょうがないなぁ。いや、しょうがなくないんだけどさ。もたもたしてっと雪だるま式に魔物も増えちゃうだろうし、ここはわたしの出番でしょう。いいとこ見せるぞ〜。
そんなことを考えたわたしは、おもむろにライトボウガンを取り出してから、その場にしゃがみ込んで銃弾をぶっ放しまくった。結果として、魔物は全滅しました。
「いぇい、勝利。この技をラピッドヘブンと名付けよう」
「おぉ〜、全滅だ。助かったよアマラ、ありがとう!」
「ふ。この程度はお茶会……、ん? じゃなくて……、まあ朝めし前ってやつだよ」
「へぇ、その武器カッケェ! 名前なんつーの?」
「むふ、かっくいーだろ。これはレイofシャンバラっての。しっかり覚えとけよな、寝る前毎日思い出せよな」
「和んでる場合じゃないだろが!!」
わたしまで怒られてしまった。ちくしょう。
いやほんと、まったくアンのおっしゃる通りです。
そうしておふざけがすぎたせいで叱られてしまったわたしが、ヘルクとケンロスによって好き勝手に胴上げされていたところで。
なにやらヒュラが、切羽詰まった感じに大声をあげた。
「ヴァ……、アン様……、えっとアンさ……」
「もう好きなように呼べ! 次はなんだ!!」
「アン様! あれを見てください!」
そうしてヒュラが指差した先を、その場にいた誰もが目にした。わたしとしては、いい加減に魔物は飽きたんだけどなぁ。とか、そんなことを考えてた。
そこにいたのは、
巨大な図体をしていて、全身に黒い模様が走ってて。
まるで意味もわからない奇声をずっとあげてて。
それでいて──美味そうじゃないか。
「……アマラ? あれは私が処理するから──おい、アマラ! 話を聞け!」
「…………やった」
「おい、ヘルク! ケンロス!
「いやぁ、申し訳ないけど俺たちにもいまいち分かってねーんだわ」
「……うん、そうだね。
以前に見た
こうして私の前に姿を現したからには、喰わなければならない。あの
私の糧となり、私の力となり、私の物となり、私の血肉となり、私の一部となり、私の養分となり、私の娯楽となり、私の理由となり、私の生命線となり、私の存在意義となるために、眼前の
額がひどく痒み、そして熱い。背骨から尾骨にかけてを指先でなぞられているかのような感覚。しかし苦痛ではなく、むしろそれが
間違いなく、今の私は狂悦に浸ってしまっている。でも、それでいい。私はいつだって空腹を耐えてきた。だから、たまの
ぶるりと身を震わせると、どうやら私の周囲に放たれたらしい──どす黒く、それでいて崇高である
周りの連中が何か言っていたが、しかしそんなことはもはや気にならなかった。空腹で空腹で仕方がないから、私がこうして
私は、翼を広げ。
そして、高く飛び上がり。
誰に認識されるより早く、
「いただきまぁす」
私は、そう言ったつもりだったけど。
周りにどう聞こえていたかは、分からなかった。
ロクでもなさそう。
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