シャーレ所属の高校生医師は多忙 作:ミレニアムニキ
この作品はフィクションです
前日の夜から続いていた静寂は、キヴォトスにおいては極めて稀有な「奇跡」と呼ぶべきものだった。
ヘルメット団の襲撃報告なし。便利屋68の爆破予告なし。ミレニアムのエンジニア部による謎の発明品爆発事故なし。そして何より、ゲヘナ風紀委員会からの緊急連絡もなし。
シャーレの臨時診療所に置かれたバイタルモニターは静かに青い波形を描き、診察用のベッドはすべてシーツが真っ白に整えられたまま、誰にも使われることなく朝日を浴びていた。
「……先生。本当に誰からも通信が入らないぞ。端末壊れてんじゃないのか?」
執務室の革製ソファに深く腰掛け、両脚をテーブルの上に投げ出しているのは、いつもなら白衣の裾をなびかせているはずの少年――シャーレ専属主治医、河井ケイジであった。
今日の彼は、トレードマークである白衣を脱いでいた。
黒のオーバーサイズカットソーに、ダークグレーのトラックパンツ。首元には華奢なシルバーチェーンが揺れ、少し長めの黒髪はワックスで適当に散らされている。白衣を着ている時の「苦労人医師」の雰囲気が消え去ると、そこには目を引くほどスタイリッシュで、どこか退廃的な色気を漂わせたただの超絶イケメン高校生が残されていた。
「端末は正常だよ、ケイジ君。今日は本当に、奇跡的に何もない『完全な休日』なんだ」
デスクでコーヒーを淹れていた先生が、マグカップを二つ持って振り返る。
「ヒナちゃんも、あの日以降アコちゃんに強制的に休まされてるみたいだしね。ゲヘナの風紀委員会が静かだと、キヴォトス全体の事件数が三割は減るみたいだよ」
「だろうな。あの真面目すぎる委員長が爆睡してくれてるなら重の we...じゃなくて重の至りだ。……で?」
ケイジはソファからぬるりと起き上がると、首を軽く鳴らしながら先生の手からマグカップをひっつかんだ。
「誰も怪我してなくて、誰も倒れてない。つまり、俺の今日の仕事はゼロだ。……先生、付き合え」
「付き合えって、どこに?」
「決まってるだろ。ミレニアムの第十三学区、通称『ジャンク・ケミカルストリート』だ。先週のユウカの暴走とヒナの往診で、俺の貴重な脳のガソリン――高濃度糖分お菓子のストックが完全に底をついた。補充に行く」
「あそこ、ミレニアムの非公式闇市みたいな場所じゃなかったっけ……? 怪しい実験用のお菓子ばっかり売ってる……」
「怪しいんじゃない、最先端なんだよ。ほら、立つ! ぼーっとしてるとまたどこかの生徒が壁を突き破って飛び込んでくるぞ!」
ケイジは先生の腕を強引に引っ張り上げると、鍵と財布をポケットに突っ込み、ノリノリで執務室のドアを開け放った。
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青く澄み渡る秋空の下、ミレニアムサイエンススクールの広大な敷地の端に位置する第十三学区は、普段の近未来的で清潔な校舎とは一線を画する熱気に包まれていた。
整然とした高層ビル群の影に潜むように広がるそのエリアは、整列した屋台やコンテナショップが立ち並び、ミレニアムの生徒たちが個人的に開発した試作ガジェットや、怪しい化学合成物質、ジャンクパーツを売買する巨大な闇市と化していた。
「うわぁ……相変わらず賑やかというか、怪しげな熱気だね……」
先生が人混みを避けながら呟くと、隣を歩くケイジがフッと口元を緩めた。
白衣を脱いだ彼の私服姿は、この雑多な街並みの中でも異彩を放っていた。すれ違うミレニアムの女子生徒たちが、「ねえ、あの人ミレニアムの人?」「モデル?」「超カッコよくない?」とチラチラと視線を送ってくるが、ケイジ本人は完全にスルーしている。
「おい先生、よそ見してると怪しい脳波測定器とか買わされるぞ。あっちだ、俺の馴染みの『化学栄養素専門露店』は」
「馴染みがあるんだ……」
「当たり前だろ。俺の血の半分は、あの店の合成糖分でできてるんだからな」
ケイジが慣れた足取りで進んで行った先には、ネオン管で『C6H12O6(ブドウ糖)』と巨大に書かれた怪しげなコンテナショップがあった。店主と思われるミレニアムの生徒が、フラスコに入った謎の蛍光液体を混ぜ合わせている。
「よお、店長。いつものやつ、箱買いでくれ」
「あ、ケイジ先輩! お久しぶりです! 今日は白衣じゃないんですね、めちゃくちゃイケてますよ!」
「お世辞はいいから、ブドウ糖濃度九割超えの『爆発的脳内覚醒グミ』と、高純度カフェイン注入済み『ネオン・ラムネ』を出せ。あと、新作の激甘シロップはあるか?」
「ありますよ! 生物科学部が試作した『1日分の糖分を3秒で補給できる高粘度ブルーベリーシロップ』です! 歯が溶けるレベルで甘いです!」
「最高だな。それ三本追加で」
ケイジは迷うことなく大量の怪しいパッケージを買い漁り、用意してきた紙袋へと手際よく詰めていく。その手つきは、完全に闇市に通い詰めている手慣れた常連のそれだった。
「ねえケイジ君……それ、本当に健康に害はないの? 医師としてどうなの?」
「言ったろ先生、現代医学において糖分は脳のガソリンだ。毒と薬は紙一重、量がすべてを決めるんだよ。俺の脳は一日数千回の診断と処方を処理してんだ、このくらいブチ込まないとエンストを起こす」
ケイジは紙袋から早速、蛍光ピンク色に光るラムネ瓶を取り出すと、プラスチックのキャップを親指で力任せに押し込んだ。
ポコン! という爽快な音とともに、シュワシュワと怪しい色の泡が噴き出す。それを躊躇なく口に含み、ゴクリと飲み干した。
「〜〜〜〜〜っ!!……くぅぅぅっ! 効く!! 脳の血管が直接拡張していく感じがするぜ!」
「絶対身体に良くない顔をしてるよ!?」
「ハッ、これがたまらんのだよ。……ほら先生、喉乾いただろ? 一口飲むか?」
「遠慮しておくよ! 胃がバグりそうだからね!」
白衣を着ている時の冷徹で落ち着いた雰囲気とは一転して、今のケイジはまるで放課後に買い食いを楽しむ普通の男子高校生そのものだった。軽やかに笑い、怪しいお菓子を自慢げに見せびらかし、先生と肩を並べて歩く。
「……なんか、新鮮だな」先生がふと漏らした。
「あん?」
「いや、普段のケイジ君はいつも書類と患者に囲まれて、苦労人のお兄さんって感じだからさ。こうして私服で楽しそうにしてると、ちゃんと同世代の男の子なんだなって思うよ」
「……けっ。滅多にない休日くらい、医者の肩書は横に置かせろってんだ。俺だって普段は好きで苦労してんじゃねえよ。周りの生徒どもが勝手に壁を破ったり、限界まで強がったりするから――」
ケイジが愚痴をこぼしかけた、その時だった。
「ちょっと、そこのあなた! この『絶対壊れない超硬質ブラックハードボイルド・チョコレート』って何よ!? 硬すぎて歯が折れかけたじゃないの!!」
「え、あ、お客様、それはですね……ミレニアムの装甲材技術を応用したジョークお菓子でして……」
「ジョークで歯を折りかけさせてどうするのよ! 弁償しなさい! 弁償! 便利屋68の社長である私、陸八魔アルのプライドにかけて許さないわよ!」
通り沿いのオープンカフェのテラス席から、聞き覚えがありすぎる高飛車な、しかしどこか情けない叫び声が響き渡ってきた。
先生とケイジが顔を見合わせる。
「……今の声って」
「ああ。ゲヘナの『自称・裏社会のハードボイルド社長』だな」
カフェのテラス席には、真紅のコートを羽織り、豪華な帽子をかぶった少女――**陸八魔アル**が、机を叩いてミレニアムの露天商に詰め寄っていた。テーブルの上には、黒くてカチカチの謎の物体と、半分に割れたプラスチックのスプーンが転がっている。
「だから! 私に恥をかかせた罪は重いわよ! この陸八魔アルに――って、あれ?」
文句を言い続けていたアルの視線が、カフェの横を通ろうとしていた先生とケイジの姿を捉えた。
「せ……先生!??? なんでこんなところに!?」
アルは目を見開き、慌ててコートの襟を正して胸を張った。
「こ、コホン! ……あ、あら先生。奇遇ね。私は今、ミレニアムの裏社会(闇市)の動向を視察しつつ、ハードボイルドなアフタヌーンティーを楽しんでいたところよ」
「アルちゃん……思いっきりお菓子の硬さにキレてたよね?」
「なっ、違っ……!? これは交渉よ! 裏社会の取引における高等な駆け引きの一環なんだから!」
顔を真っ赤にして弁解するアル。
その横で、ケイジは手に持ったネオンピンクのラムネを啜りながら、じーっと冷ややかな視線をアルに向けていた。
アルはケイジの存在に気づくと、怪しむように眉をひそめた。
「ちょっと、先生……その隣にいる男の人(?)は誰? シャーレの新しい依頼人? なんだかものすごく顔がいいけど、白衣も着てないし、怪しいお菓子を持ってるし……」
「あ、アルちゃん、彼はミレニアム所属でシャーレ専属主治医の河井ケイジ君だよ。今日は休日だから私服なんだ」
「えっ、主治医!? あの、噂に聞く『どんな暴走生徒も正論で一破するミレニアムの苦労人ドクター』!?……って、ええええっ!?」
アルは驚きのあまり帽子を浮かせた。
「私服だと全然雰囲気が違うじゃないの!? ただの街で声をかけてくるタイプのイケメンじゃない!!」
「……おい、ポンコツ社長」
ケイジが低い声で割り込んだ。彼はアルの前に歩み寄ると、テーブルの上に転がる黒い物体――『超硬質チョコレート』を手に取った。
「な、何よポンコツって!? 私は便利屋68の社長、陸八魔アルよ! 無礼な口を利くと――」
「お前、朝食抜いただろ」
「え?」
アルがポカンと口を開けた。
ケイジはチョコを転がしながら、アルの顔面を至近距離でのぞき込んだ。長身のケイジにのぞき込まれ、アルは「ひえっ」と体を引く。
「まぶたの裏の血色、皮膚の乾燥度、それから唇のカサつき。……お前、今朝は格好つけてブラックコーヒー一杯だけで済ませただろ。血糖値が下がって集中力が切れ、噛む力も落ちてんのに、こんな装甲材みたいな硬いチョコを力任せに噛もうとしたから歯茎を痛めたんだ」
「な……ななな、なんでそれを……!? 盗撮されてるの!?? 監視カメラ!?」
「医学的観察だよ。医者の目を舐めるな」
ケイジは呆れたようにため息をつくと、紙袋から自分が買い込んだばかりの『高粘度ブルーベリーシロップ(激甘)』と、フカフカの焼き菓子を取り出した。
「ほら。これ塗って食え。一瞬で血糖値が戻る」
「え……? あ、ありがと……って、じゃなくて! 私は施しなんて受けないわよ! ハードボイルドな悪党は自分の力で――」
「喋らずに食え。患者が目の前で低血糖を起こしかけてんのを見過ごせるかよ」
ケイジはそう言うと、ごく自然な、あまりにもナチュラルな動作で――
**ぽん、ぽん。**
と、アルの豪華な帽子の上から、彼女の頭を優しく撫でた。
「……え?」
アルの動きが完全に止まった。
「よく噛んで食えよ、お子様社長」
ケイジ本人は、普段シャーレで手のかかる生徒や、泣きじゃくったヒナの頭を撫でてあやすのと全く同じ「無意識の癖」でやったことだった。
しかし――された側のアルにとっては、落雷が落ちたような衝撃だった。
「あ……あ……あわ……あわわわわ……っ!???」
アルの顔が、一瞬で髪の毛と同じレベルの真っ赤に染め上がった。
頭から湯気が噴き出しそうな勢いで、彼女は目を見開き、胸元を押さえて座席から飛びのいた。
「な……なななな、何をするのよぉぉぉぉぉっ!??????」
「ん? 何って、頭を撫でただけだが」ケイジは首をかしげる。
「それがおかしいって言ってるのよぉぉっ! 私は! ゲヘナのアウトロー! 便利屋68の社長なのよ!? なんで……なんでいきなり頭を撫でるのよ!? 赤子扱いしないで!! ていうか距離感が近すぎるのよぉぉっ!!」
アルは大パニックを起こし、テラス席の周囲を右往左往し始めた。
先生が横で「ケイジ君……! 君、無意識でそういうことするの、相手が誰であれ破壊力が高すぎるよ!?」とツッコミを入れる。
「は? なんだよ、子供が駄々こねてたら頭撫でて落ち着かせるだろ。ミレニアムでもアコでもそうしてきたぞ」
「アルちゃんは自称・悪党の年頃の女の子だからね!? メンタルが爆発しちゃうよ!」
「うぅぅ……! なによ……なんなのよこのイケメン医者は……! 先生、シャーレにこんな危険人物を囲んでたの!?」
アルは涙目で赤面しながら、ケイジから一定の距離を取って警戒態勢に入った。しかし、手にはしっかりとケイジからもらったブルーベリーシロップのかかった焼き菓子が握られている。
「……喰わないのか? 血糖値下がるぞ」
「く、食うわよ! 貰ったものは美味しく頂くのが便利屋のルールよ!」
アルはヤケクソのように焼き菓子を口に放り込んだ。
次の瞬間。
「〜〜〜〜〜っ!?!?!? 甘っっっっっっ!???? 何これ!? 砂糖の塊を直接脳に流し込まれたみたいな味がするわ!!」
「だろ? 最高に効くだろ。ミレニアムの最新化学の結晶だ」
「効くとかそういう問題じゃないわよ! 舌が痺れるわ!! 水! 水をちょうだい!!」
悶絶しながらお茶をガブ飲みするアル。
その惨状を見ながら、ケイジと先生は同時に「ハハハ!」と声を上げて笑い出した。
「ちょっと! 笑わないでよ先生! この医者も!!」
「いやあ、ごめんごめん。アルちゃんがあまりにも良いリアクションをするからさ」
「悪党を笑うなんていい度胸ね……! 今度便利屋のオフィスに爆撃……はしないけど、高い請求書を送りつけてやるんだから……!」
アルはブツブツと文句を言いながらも、シロップの劇的な効果によって、先ほどまでの疲労とイライラが急速に吹き飛んでいくのを感じていた。頭がスッキリとし、顔色に赤みが戻っていく。
「……あれ? なんか……急に頭が冴えてきたかも……」
「当たり前だ、過剰な糖分が脳のシナプスを強制活性化させてる。……お前、普段から無理なスケジュールで仕事してんだろ。たまには休めよ」
ケイジは隣のパイプ椅子を引き寄せると、白衣を着ていない素の笑顔で、アルの顔を見つめた。
「ゲヘナの風紀委員会(ヒナ)もな、この前倒れかけて俺に大説教された挙句、点滴打たれて強制睡眠させられたぞ」
「えっ!?? あの空崎ヒナが!??? 点滴!? 説教!?」
アルは今日一番の衝撃を受けた顔で目を見開いた。
「あ、あの冷酷無比な悪魔の委員長を……あんた説教したの!??? 生きてるの!???」
「生きてるも何も、俺は主治医だ。患者が誰だろうが関係ねえよ。……だから、お前も無理して倒れる前に、シャーレの診療所に来い。激甘のお菓子くらいは奢ってやる」
ケイジがウインク交じりにそう言うと、アルは再び顔を赤くし、そっぽを向いた。
「ふ、ふん! 私はあのヒナみたいに軟弱じゃないわよ! 倒れることなんて万に一つもないわ!……でも、まあ……どうしてもって言うなら、遊びに行ってあげなくもないけど……」
「はいはい、強がり強がり」
ケイジは笑いながら、紙袋から新しい『ネオン・ラムネ』を取り出してアルに差し出した。
「ほら、お近づきの印だ。持ってけ」
「……もらっておいてあげるわよ。便利屋の備蓄にしてあげるんだから」
アルは受け取ったラムネを大事そうにコートのポケットに仕舞い込むと、少し嬉しそうに口元を緩めたのだった。
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それから一時間ほど、先生とケイジ、そしてアルの三人はカフェのテラス席でバカ話を咲かせた。
便利屋68の最近の「依頼の失敗談」や、ミレニアムの奇天烈な発明品の話、そして先生の普段の苦労話。
白衣を脱いだケイジは、毒舌ながらもノリが良く、アルの背伸びした「ハードボイルド発言」を適当にあしらいつつも、男友達のようなフランクさで場を盛り上げていた。
「あーあ、もう夕方か。楽しかったわね、先生、ケイジ」
茜色に染まり始めたミレニアムの街並みを見上げながら、アルが名残惜しそうに立ち上がった。
「カヨコたちが事務所で待ってるから、私はそろそろ戻るわ。今日の貸しは……この美味しいお菓子で免除してあげる!」
「おう、気を付けて帰れよ、ポンコツ社長。転んで膝擦りむいても、往診料取るからな」
「擦りむかないわよっ! ……じゃあね、先生! ケイジ!」
アルは真紅のコートをひらめかせ、夕闇の街へと走っていった。去り際、彼女の頭上に浮かぶヘイローが、どこか誇らしげに、嬉しそうに輝いていた。
「……良い奴だな、あいつ」
ケイジはお菓子の詰まった大きな紙袋を肩に担ぎ直し、隣の先生を見下ろした。
「うん。根はすごく優しくて、真っ直ぐな子なんだよ」
「見てれば分かるよ。あいつのバイタル、嘘がつけないくらい素直だったからな」
二人は夕焼けに照らされた第十三学区の通りを、シャーレへ向かってゆっくりと歩き始めた。
風が心地よく、二人の白衣(今日は着ていないが)と服を揺らす。
「……どうだった、ケイジ君? 今日の休日は」
先生が尋ねると、ケイジは手に持っていたラムネの空き瓶をクルクルと指先で回しながら、フッと満足そうに笑った。
「まあ……悪くはなかったな。銃弾も飛んでこない、血も流れない、怪しいお菓子も大量に手に入った。……こういう完全な全休なら、たまには悪くねえ」
「それはよかった。主治医のメンタルケアも、先生の大切な仕事だからね」
「ハッ、何がメンタルケアだ。アンタこそ、明日からまた大量の書類仕事が待ってんだぞ。今夜は俺が特製の『超濃度カフェイン&糖分スープ』を淹れてやるから、覚悟しておけ」
「……それ、絶対体に良くないやつだよね!?」
「プロの保証付きだ、安心しろ」
軽口を叩き合いながら、二人は茜色の街を歩いていく。
いつもの「頼れる苦労人医師」の顔に戻る前の、ほんのひとときの放課後。
白衣を脱いだ少年の肩には、沈みゆく夕日の温かな光が、静かに降り注いでいた。