〜38歳童貞のTS憑依転生。身体の主(9歳)の遺言が『結婚してくれ』だったんだが〜   作:寺生まれののTさん

10 / 10
8話:任務失敗

 

「……五条と夏油が任務を失敗した?」

 

 俺は内心大きく驚きながら、その情報を夜蛾から聞く。 アイツらが任務にガチで失敗するなんて、俺も思っていなかったんだが……

 

 まあ高専に蠅頭がぶわーっと溢れた時点で、なんだか嫌な予感はしていたのだが……

 

「……ああ、星漿体は殺害された。その後、主犯は五条が始末をつけた様だ」

 

「マジか……」

 

 後日、振替休日のごとく休日を渡された五条と夏油が復帰した際には、教室では……

 

 家入と無択は聞く。

 

「あれ?2人とも、雰囲気変わった?」

 

「お前たち……任務でなにを突きつけられた?」

 

「いいや、特になにも」

 

「私の方も、特にだな」

 

「ふーん」

 

「……」

 

 なんだ……この違和感……

 

 五条の目はどこかで見た気がする。どこで見たかは良くわからないが、どこかで……

 

 ああ、そうか。

 

「『鏡』か……」

 

 だが、『半分』だ。半分だけ、50%だけ似てる気がした。双子ぐらいの。あくまで、似てるだけ。

 

 きっと、五条は俺と似たような問いを前にして、違う答えを出したのだろう。

 

 ____________

 

 七海の自室にあいも変わらず侵入した無択。それでも、当然だがしっかり許可をとってから入っている。

 

「なんか、オラの五条さと夏油さがおかしくなっちまっただ」

 

「おかしいのはあなたの口調です」

 

「……とにかく、失敗したのが相当堪えたのかねぇ」

 

 七海の椅子で、背もたれに腹を向けながら無択は話す。七海は逆にベッドで横になって、顔を向けずに喋っている。

 

「さぁ、どうでしょうか。私も会ってみましたが、どうにもおかしな雰囲気でしたね。いずれ、気を取り戻すでしょうが」

 

「ま、だといいんだが……一応、面倒見た方が良さそうなのかねぇ」

 

「……やっぱりあなた、以前から思っていましたが面倒見が良いですよね」

 

「はっ、何をバカなことを言っている。私の面倒見が良かったら、この世の崩壊をあまねく混沌の使者だぞ」

 

「言っている意味がよくわかりませんが、なにかすごそうなのはわかりました」

 

「ま、七海も、五条はともかく夏油は傷心中なんだ……優しくしてやれよ」

 

 ____________

 

「最近浮かない顔をしているな」

 

 無択はしばらく経っても、そこまで立ち直ったかの様に見えない夏油を見て、1人の時に話しかける。

 

「ナキか……そうだね……」

 

「なにか、悩みでもあるのか?」

 

「いいや、特になにも」

 

 どこか拒否感を露わにする夏油に向かい、無択は、

 

「まあ、とりあえず、座りな」

 

「本当に、何もないんだけどねぇ……」

 

 無択と夏油はその場にあった椅子に腰掛け、話を進める。

 

「例の任務で何を得て、何を失った?」

 

「虹龍と口裂け女の呪霊をーー」

 

「失ったもんだけじゃないだろ。というか、それは重要なことじゃない。得たものがあるんじゃないか?」

 

 少し無択が語気を強めていうと、夏油は諦めた様に言った。

 

「……得たものか……失ったものの方が圧倒的に多いのだが…………得たものか……ふふ、私は、非術師の醜悪さを見た。あえて言えば、それによる思想の獲得かな」

 

「ほう……」

 

「盤星教の信者が、人が死んでいると言うのに、阿呆のようにそれをみて拍手するのをみて、虫唾が走った」

 

「……」

 

「得たのは悩み、本当に非術師を守るために、力を使うべきなのかという、私を揺るがす根本的な……」

 

「つまりは呪詛師になりかけていると」

 

「っ……そこまでは言わないよ。ただ、引退でもして楽にーー」

 

「無理だね」

 

「え?」

 

「ここまで共に、生活までしてたんだ。わかるさ。お前は極端なタイプだ。この道から、呪術の道から降りることは出来ねえよ」

 

「……」

 

「それじゃあどうするか、答えは二つしかない。折り合いをつけて葛藤しながら生きるか、つけないでその悩みから逃げるか……だ」

 

「……逃げる……か……厳しいね」

 

「ただの言い方の問題だ。別に、お前が闇堕ちしようがどうしようが、私には関係ない。だが、迷惑だからやるなら私の知らない勝手なところでしろ」

 

 突き放す様な言葉を受けて、夏油は興味が湧いた。

 

「……ナキ。君は、迷わないのかい?」

 

「何を?」

 

「自分のしていることが、本当に正しいのか」

 

「していることには全く迷わないな。人の命がかかっているんだ、当然だろ?悩みはまあ……あるにはある程度だ」

 

「私達が動かない限りは、失われるのは大概が非術師の命……だけどね。悩みがあるのは意外だ。申し訳ないが、君はいつも、妙に割り切っているように見えるから」

 

「割り切っているように見えるだけだ。実際は、面倒だから考えるのをやめている。そっちの方が楽だし、なにより合理的だ。よって、私に悩みは殆どない。それに、現実をみていたら悩みなんて向こうから降ってくるんだからな。需要と供給の兼ね合いからして、私はーー」

 

「……」

 

「どうした?」

 

「聞きたいんだが、もしも、『未来を信じないでも未来を見つめられる』様な人間はいると思うかい?」

 

「まあ人間、多様性だけは存分に兼ね備えているから、いると思うが……どうしてそんなことを聞く?」

 

「私には、できない。自分の信念を信じて、未来を信じて、大義を信じて、ようやく行動できる……」

 

「……」

 

「だから……もしもそんな存在がいれば……私は……」

 

「はぁ……なんだ?手本にでもする気か?」

 

「……そうだと言ったら?」

 

「やめとけ。ろくな手本じゃない」

 

 無択は即答した。

 

「そもそも、未来を信じるってのがよくわからんな。未来なんてものは、来てみるまで分からないだろ。明日、私が死ぬかもしれないし、お前が死ぬかもしれない。明後日には世界が爆発して木っ端微塵になっているかもしれない。そんな中で、未来の可能性を考えるだけ無駄だ。やめておけ」

 

「……随分と極端だね」

 

「最悪を想定するのが私の主義なんでね。つまり、『未来を信じること』と『未来に向かって行動すること』は全くの別モノって話」

 

 無択は椅子の背もたれに体を預け、天井を見上げた。

 

「未来が良くなると信じているから努力する。未来に希望があるから人を助ける。その逆も、まあ、あるだろうな……そういう考え方も。だが、未来が良くなる保証がなければ、何もしなくていいのか?」

 

「それは……」

 

「未来がどうなろうと、目の前で人が死にかけているなら助ける。呪霊が人を襲っているなら祓う。そこに、未来への期待なんて必要か?」

 

「……」

 

「……だったら、現実が、どれだけシャバかろうと悲惨だろうと、終わっていようが、私は、私だけは……」

 

 ふと、夏油は無択の拳を見た。白くなるほど握りしめられていて……力が限界まで入っていることが伝わってきた。

 

「……未来を信じられなくなったとき、お前は、それでも何を、どう行動したいのか……適当にごちゃごちゃ抜かしてねえで答えろ。夏油傑」

 

「……私はーー」

 

 夏油はその問いに……

 

 ___________

 

 未来を信じる必要はない。目の前の現実に向き合えばいい……俺が出せる夏油への問いの答えはそれになる……が。

 

 だが、そんなことを言っている俺自身が、過去に負けたという事実を受け入れられず、今もこうして、どうしてか自分でもわからないぐらい、全力で現実を相手に足掻いている

 

 いい笑いもんだ。

 

 未来を信じなくてもいい。

 

 だが、そのロールモデルは、俺の中では1人専用の立ち位置だ。

 

 信じないと言うことは、なにかを考えないと言うことにも繋がる。そうなれば、それは俺の主義からして、往々に論外、現実からの逃避にもなりうる……

 

 真似してほしいわけでもない。ツンデレとかじゃないぜ?47のツンデレとかしんどすぎて吐くだろう?

 

 俺の中では、俺の主義では、もうその席は埋まっている。なのに、どうして夏油には言ってしまったのか。

 

 まあ、そもそも俺が、自分の考えを他人に理解してもらおうも思っていない……と言ったら身も蓋もないんだがな。だから、別に俺の真似をしようが構わんってこと。

 

 だが、もし真似するとしたら……

 




 彼は、非術師を守るという信念を持っていた。

 しかし、その信念を揺るがす経験をする。

 一方、ナキは、未来を信じていない。

 それでも、目の前の現実に向き合おうとする
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

夏油傑のペット(作者:なすちょ)(原作:呪術廻戦)

転生したら呪霊だったから夏油に媚び売って呪霊や呪術師から守ってもらう。▼参考程度に書いてみたオリ主くんちゃんです。▼【挿絵表示】▼


総合評価:899/評価:8.08/連載:7話/更新日時:2026年08月10日(月) 15:35 小説情報

TS転生天与呪縛病弱摩虎羅系天才美少女禪院澪ちゃん(18歳)(作者:むーちゃん)(原作:呪術廻戦)

「十種影法術の術式反転ってどんな感じ?」▼「私自身が……摩虎羅になることだ……」▼「なん……だと……?」▼天与呪縛で正の呪力しか出せないクソ雑魚ナメクジが禪院家で十種影法術発現させたらどうなるのって話。


総合評価:153/評価:6/連載:2話/更新日時:2026年09月06日(日) 14:12 小説情報

ようこそTS美少女闘技者の教室へ(作者:お茶漬け)(原作:ようこそ実力至上主義の教室へ)

前世は男、今世は極上の美貌を持つ美少女。チヤホヤされるイージーモードな人生を夢見ていたはずが、気づけば日本の経済界を裏から支配する代理戦争『拳願仕合』に身を投じていた――。▼高円寺コンツェルンの代表闘技者として『拳願絶命トーナメント』を戦い抜いた主人公は、次なる任務として、あの高円寺六助の護衛を命じられる。▼


総合評価:3406/評価:8.14/連載:11話/更新日時:2026年08月30日(日) 16:30 小説情報

ブルアカ世界にTS転生したから先生をからかおうと思ったら普通に食べられた話(作者:息抜きのもなか)(原作:ブルーアーカイブ)

ブルアカに転生したと気付いた生徒が先生をからかおうとしたらおいしく食べられちゃった話。▼なお、主人公は褐色でスタイルが良くて距離感がおかしい模様。▼TS要素はおまけ程度。直接的な描写はありません。


総合評価:2889/評価:8.64/完結:4話/更新日時:2026年01月12日(月) 17:20 小説情報

天獄の熾翼、墳墓の魔王(作者:マジックス)(原作:オーバーロード)

ディストピアな世界の裕福層(御曹司)に転生し、好き勝手遊んでいた男はある日、ここがオーバーロードの世界だと気づいてしまう。▼ならもっと面白いことが出来そうと、色々遊んでみることにした。


総合評価:472/評価:6.78/連載:20話/更新日時:2026年10月29日(木) 07:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>