セキチクシティ。
セキチクジムでキョウを破り、ピンクバッジを手に入れたシンヤとレンは、次の目的地へ向かう前に、ポケモン大好きクラブが経営する育成施設を訪れていた。
施設は広大な敷地を持ち、バトル用のフィールドはもちろん、ポケモンが休める広場や水辺、技の練習場まで完備されている。
しかも、施設を利用しているトレーナー同士なら、希望に応じてポケモンバトルを行うこともできる。
「へえ……実家の敷地も相当広いけど、こっちはこっちでよく整備されてるな」
シンヤは受付で受け取った施設案内を眺めながら、感心したように呟いた。
「ポケモンを育てるための施設だもの。これくらい充実しているのは当然じゃないかしら?」
「そうなんだけどさ。実家だと、どうしても相手がいつもの顔ぶれになるからな。ここなら、普段とは違う相手とも戦える」
「ふふっ。シンヤは本当にバトルが好きなのね」
「好きというか、育成するなら実戦が一番手っ取り早いからな」
「それを好きと言うんじゃないかしら?」
レンの言葉に、シンヤは苦笑した。
二人は受付を済ませ、施設の一角にあるトレーナー用の管理端末へと向かった。
シンヤが今日ここへ来た目的は、単にポケモンたちを鍛えることだけではない。
旅の途中で捕まえたポケモンが増え、実家で預かってもらっている仲間たちも着実に成長している。そろそろ、一度きちんと整理しておく必要があった。
「さて、と……まずは実家にいる連中の状況を確認するか」
シンヤは管理端末に登録されている自分のポケモンたちの情報を開いた。
名前、レベル、習得技、進化状況、最近のトレーニング記録。
それらを一つずつ確認していく。
そして――。
「……ん?」
シンヤの指が止まった。
「どうしたの?」
「いや……こいつら、いつの間に進化したんだ?」
画面に表示されていたのは、実家で暮らしているポケモンたちの現在の姿だった。
そこには、シンヤが旅立つ前にはまだ進化していなかったはずのポケモンたちが、いくつも進化した姿で記録されていた。
「ええと……こいつも、こいつもか?」
シンヤは画面をスクロールする。
どうやら、実家でのトレーニングは、本人が想像していた以上に順調だったらしい。
母のミサキが世話をしてくれているだけでなく、ポケモン同士で技を教え合ったり、模擬戦を繰り返したりしている。
その中で、進化できる条件を満たしたポケモンたちが、次々と進化していたのだ。
「……俺がいない間に、ずいぶんと頑張ってたんだな」
シンヤは嬉しそうに笑った。
ただし、進化のために特定の道具が必要なポケモンや、進化先を慎重に選びたいポケモンは、まだそのままだ。
「よし。せっかく施設に来たんだ。今日はこっちにいる連中も、まとめて鍛えるか」
「ふふっ。ほどほどにね?」
「もちろん。無理はさせないさ」
そう言いながらも、シンヤの目はすでにバトルフィールドを探していた。
レンはそんな彼を見て、小さく笑った。
どうやら今日も、シンヤの育成熱は止まりそうにない。
◆ ピジョン、さらなる進化!
「まずはピジョンだな」
シンヤがボールを取り出すと、光の中からピジョンが姿を現した。
「ピジョー!」
ピジョンは翼を広げ、久しぶりに外で思いきり飛べることが嬉しいのか、軽やかに旋回してみせた。
シンヤは波動の眼で状態を確認する。
レベル、体力、技の習熟度。
どれも順調で、進化に必要な成長も十分に満たしている。
「やっぱりな。もう進化できる段階に来てる」
「それなら、進化させてあげるの?」
「ああ。ただ、自然に進化するのを待つだけじゃなくて、実戦を経験させてからにしたい」
シンヤは施設内を見渡し、バトル相手を探した。
ほどなくして、飛行タイプのポケモンを連れたトレーナーが目に入る。
「すみません。よかったら、うちのピジョンとバトルしてもらえませんか?」
「おっ、いいぜ! ちょうどこっちもバトル相手を探していたところだ!」
相手のトレーナーは快く応じた。
バトルフィールドへ移動し、両者が向かい合う。
「それじゃあ、始めよう! 行け、ドードー!」
「ピジョン、頼むぞ!」
「ピジョーッ!」
ドードーが地面を蹴って突進してくる。
「ドードー、つつく!」
「ピジョン、上昇してかわすんだ!」
ピジョンは翼を大きく広げ、ドードーの攻撃を避けながら上空へと舞い上がった。
「そのまま、風を利用して旋回! 電光石火!」
ピジョンは急降下し、ドードーの側面へと回り込む。
ドードーも負けじと素早く方向転換するが、空中での機動力ではピジョンに分があった。
「よし、その調子だ! 翼で攻撃を受け流してから、つばさでうつ!」
ピジョンの翼がドードーを捉える。
ドードーは地面を転がりながらも、すぐに立ち上がった。
「まだまだ! ドードー、にどげり!」
二本の脚による連続攻撃が迫る。
ピジョンは正面から受け止めようとはせず、翼を使って身体を浮かせ、攻撃の軌道をずらした。
そして、相手が体勢を崩した瞬間――。
「今だ! でんこうせっか!」
ピジョンが一気に距離を詰める。
「最後はつばさでうつ!」
強烈な一撃が決まり、ドードーは地面に倒れた。
「ドードー、戦闘不能! ピジョンの勝ち!」
審判役のスタッフが勝敗を告げる。
「よくやった、ピジョン!」
「ピジョーッ!」
シンヤが褒めると、ピジョンは誇らしげに胸を張った。
その身体が、突然まばゆい光に包まれる。
「おっ、来たか!」
光の中で姿が変わっていく。
翼は大きく、身体はたくましく。
そして、光が収まったとき――そこにいたのは、立派な姿へと進化したピジョットだった。
「ピジョー!」
「おお……! ついにピジョットになったか!」
シンヤは嬉しそうに頷いた。
レンも拍手を送る。
「おめでとう、ピジョット。とても立派な姿ね」
「ピジョット!」
ピジョットは翼を広げ、堂々と鳴いた。
その姿を見て、周囲にいたトレーナーたちも感嘆の声を上げる。
「おお、進化したぞ!」
「進化する瞬間を見られるなんて、運がいいな!」
シンヤはピジョットを労いながら、管理端末に新しい情報を登録した。
「これで一段落……いや、まだまだいるんだったな」
レンは、その言葉に苦笑するのだった。
◆ コイルたちの進化ラッシュ!
続いてシンヤが呼び出したのは、コイル、ビリリダマ、ベトベター。
三匹とも、実家での訓練を経て、十分な成長を遂げていた。
「まずはお前たちだ。ここで思いきり戦ってみよう」
「コイル!」
「ビリリ!」
「ベトォ!」
三匹はそれぞれ元気よく返事をする。
施設には電気タイプや毒タイプのポケモンを育てているトレーナーもおり、相手を見つけるのに苦労はしなかった。
コイルは、相手の電気ポケモンとのバトルで、電磁波や電気ショックを使い分けながら戦った。
単純に強い技をぶつけるだけではなく、相手の動きを制限し、攻撃のタイミングをずらす。
実家でピカチュウやエレブーから教わった戦い方が、しっかり身についていた。
最後は十万ボルトが決まり、コイルが勝利する。
直後、コイルの身体が光に包まれた。
「おっ、進化だ!」
光が収まると、二つのコイルが磁力で結びついたような姿――レアコイルへと進化していた。
「レアコイルか。よし、よく頑張ったな!」
「レアコイル!」
シンヤは満足そうに頷く。
だが、ここで終わりではない。
「そして……せっかくだから、もう一段階いくぞ」
シンヤは持っていた道具袋から、かみなりのいしを取り出した。
「レアコイル。お前はさらに進化できる。どうする?」
レアコイルはかみなりのいしを見つめ、それからシンヤの顔を見た。
そして、迷いなく大きく鳴く。
「レアコイルッ!」
「よし、決まりだ!」
シンヤはかみなりのいしをレアコイルに使った。
石が輝き、電気エネルギーが渦巻く。
レアコイルの身体が光に包まれ、磁力の形が変化していく。
そして現れたのは――ジバコイルだった。
「ジジジジジジ!」
「おお、ジバコイル! やっぱりこの姿はいいな!」
シンヤは目を輝かせた。
「進化の石を使ったのね。本人も嬉しそう」
「ああ。本人が望んでくれたからな。これからも電気技を磨いていこう」
ジバコイルは空中に浮かび、周囲に電気を走らせる。
進化したばかりだというのに、その動きには力強さがあった。
次はビリリダマだ。
ビリリダマは、転がるような動きで相手を翻弄し、スピードスターや電気ショックを織り交ぜながら戦う。
最後は相手の攻撃をぎりぎりでかわし、至近距離からスパークを決めた。
勝利した瞬間、ビリリダマの身体が光り輝く。
「ビリリダマも進化か!」
光の中から現れたのは、より大きく、力強い姿――マルマインだった。
「マル!」
「おめでとう、マルマイン!」
マルマインは勢いよく跳ね、嬉しそうに鳴いた。
そして最後はベトベター。
ベトベターは相手の攻撃を受け止めながら、どろかけやヘドロ攻撃で反撃。
粘り強い戦いを見せ、最後は相手の足元を崩して勝利を収めた。
その身体が光に包まれ、進化する。
現れたのは、より大きな身体を持つベトベトンだった。
「ベト~~~!」
「よし! お前もよく頑張ったな!」
ベトベトンは嬉しそうにシンヤへと近づこうとする。
「おっと、待った待った! 嬉しいのは分かるけど、そのまま抱きつくと俺が大変なことになる!」
「ベトォ……?」
「あとでちゃんと構ってやるから!」
そのやり取りを見ていたレンが、くすくすと笑った。
「シンヤ、ポケモンたちにずいぶん懐かれているのね」
「懐かれてるのは嬉しいけど、ベトベトンの場合は物理的な問題があるんだよ……」
「ふふっ。大変ね」
「他人事だと思って……」
レンは楽しそうに微笑んだ。
◆ ポニータとヤドン、ついに進化!
次にシンヤが確認したのは、ポニータとヤドンだった。
どちらも比較的早い時期に捕まえていたポケモンだが、旅の途中ではほかの仲間たちの育成を優先していたため、進化の機会を後回しにしていた。
「ポニータも、ヤドンも……ようやくここまで来たか」
シンヤは二匹を呼び出し、波動の眼で状態を確認した。
二匹とも、進化できるだけの成長を遂げている。
「よし。今日はお前たちも進化させよう」
ポニータは嬉しそうに嘶いた。
ヤドンは、いつもどおりのんびりとした表情でシンヤを見上げている。
「……ヤドン。お前、分かってるのか?」
「ヤドォン……?」
「まあ、いいか。お前らしいしな」
シンヤは苦笑しながら、まずポニータをバトルに参加させた。
ポニータは持ち前の脚力を活かしてフィールドを駆け回り、相手の攻撃を避けながら、炎の技で反撃する。
その動きは、以前よりもずっと力強い。
最後は一気に距離を詰め、強烈な炎の攻撃で勝利を決めた。
「ポニータ、よくやった!」
ポニータが嘶いた直後、その身体が光に包まれる。
炎のたてがみが大きくなり、脚はさらにたくましく変化した。
進化した姿――ギャロップ。
「ギャロ!」
「おお……! ギャロップか!」
ギャロップは勢いよく走り出し、フィールドの周囲を一周する。
その姿は美しく、同時に力強かった。
「綺麗……」
レンも思わず見とれていた。
「炎のたてがみも、走る姿も素敵ね」
「だろ? ポニータの頃もよかったけど、ギャロップになるとまた違った魅力があるな」
シンヤはギャロップの首元を優しく撫でた。
「これからもよろしく頼むぞ」
「ギャロップ!」
続いてヤドンだ。
ヤドンは、相手の攻撃を受けても慌てず、ゆっくりとした動きで反撃の機会を窺う。
その戦いぶりは、一見すると頼りなく見える。
だが、シンヤは知っていた。
ヤドンは、見た目以上に粘り強い。
相手の攻撃を受け流し、隙を見つけて水の技を放つ。
そして最後は、相手の動きを止めてから決定打を叩き込んだ。
勝利の直後、ヤドンの身体が光に包まれる。
と当時にどこからか現れたシェルダーがヤドンの尻尾に噛みついた
「おっ、来たな!……ん?どっからきたあのシェルダー?」
ヤドンの身体が変化し、頭部や尻尾の形も変わっていく。
光が収まると、そこにはヤドランの姿があった。
「ヤド~~~!」
「よし、ヤドラン! 進化おめでとう!……シェルダーの謎が残ったけど」
ヤドランは、相変わらずどこかのんびりした顔で鳴いた。
「ヤドォ~~」
「……うん。進化してもお前はお前だな」
シンヤは満足そうに頷く。
レンはヤドランを眺めながら、首を傾げた。
「進化したのに、あまり雰囲気が変わらないわね」
「そこがいいんだよ。急に性格まで変わられたら、それはそれで驚くしな」
「ふふっ。確かにそうね」
◆ 石の力で進化する仲間たち
シンヤは管理端末を再び開き、次のポケモンたちの情報を確認した。
シェルダー、ロコン、ガーディ、ヒトデマン。
この四匹は、通常の成長だけでは進化できない。
それぞれに必要な進化の石を使う必要がある。
「よし。お前たちも、進化するかどうか確認しよう」
シンヤは一匹ずつ呼び出し、進化したいかどうかを確かめた。
シェルダーは、シンヤが見せたみずのいしを見て、殻をぱかぱかと開閉する。
ロコンは、ほのおのいしを見つめたあと、シンヤの顔を見上げた。
ガーディも同じように、ほのおのいしを見てから、力強く鳴いた。
ヒトデマンは、みずのいしを前にして、中央の赤い部分をきらりと輝かせた。
「みんな、進化したいんだな?」
四匹は、それぞれのやり方で返事をする。
「よし。じゃあ、いくぞ」
まずはシェルダー。
みずのいしの光がシェルダーを包み、殻が大きく変化していく。
やがて、立派な二枚貝のような姿――パルシェンへと進化した。
「パル!」
「おめでとう、パルシェン!」
次はロコン。
ほのおのいしが輝き、ロコンの身体が炎のような光に包まれる。
その姿が変化し、九本の尾を持つ美しいポケモン――キュウコンが現れた。
「コン……!」
レンが感嘆の声を漏らす。
「なんて綺麗なの……」
キュウコンは、まるで自分の美しさを理解しているかのように、優雅に尾を揺らした。
「キュウコンもいいな。これからもよろしく頼むぞ」
続いてガーディ。
ほのおのいしの光がガーディを包み、身体が一回り大きくなる。
たくましい体格と、ふさふさした毛並み。
進化したウインディは、誇らしげに胸を張った。
「ガウ!」
「よし、ウインディ! お前も進化おめでとう!」
ウインディは嬉しそうにシンヤの周囲を歩き回る。
最後はヒトデマンだ。
みずのいしの光がヒトデマンを包み、身体が大きく変化する。
五本の腕を広げた姿――スターミー。
「ヘア!」
「おお、スターミーか!」
シンヤは満足そうに頷いた。
「これで、石を使って進化できる仲間たちも一通り進化したな」
「一気に増えたわね……」
レンは、進化したポケモンたちを見渡した。
「ピジョットにジバコイル、マルマイン、ベトベトン、ギャロップ、ヤドラン、パルシェン、キュウコン、ウインディ、スターミー……」
「うん。こうして見ると、かなり変わったな」
シンヤは管理端末に進化後の情報を登録していく。
その作業をしながら、改めて思った。
――実家でのトレーニングだけでも、みんな十分に成長できる。
しかし、こうして外部の施設で戦うことで、さらに新しい経験を積ませることができるのだ。
「やっぱり、セキチクの大好きクラブの施設は育成に最適だな」
「実家とは違う良さがある、ということね」
「ああ。実家なら、気心の知れた仲間同士でじっくり鍛えられる。でも、ここなら普段戦わない相手ともバトルできる。ポケモンにとっても、いい刺激になるはずだ」
「なら、これからも利用させてもらうといいわね」
「そうするつもりだよ」
シンヤは笑顔で頷いた。
◆ レンのポケモンたちにも変化が!
一方、その頃。
レンもまた、自分のポケモンたちを育成施設のバトルフィールドで鍛えていた。
シンヤが進化ラッシュを起こしている間、レンもただ見ているだけではない。
ポケモンコーディネーターを目指す彼女にとって、バトル経験は欠かせないものだ。
「ラルトス、お願いね」
「ラルトス!」
レンのラルトスは、相手の攻撃をテレポートでかわしながら、サイケこうせんやマジカルリーフで反撃する。
以前よりも動きに無駄がなく、相手の癖を見抜くのも早くなっていた。
シンヤから教わった、ポケモンの特徴を活かした戦い方。
そして、旅の中で経験してきた数々のバトル。
それらが、確実に実を結び始めている。
最後は、相手の攻撃を寸前でかわし、ドレインキッスで体勢を崩させる。
続けて放ったサイケこうせんが命中し、ラルトスの勝利が決まった。
「ラルトス、よく頑張ったわ!」
レンが駆け寄る。
すると、ラルトスの身体が光に包まれた。
「あら……!」
レンの目が大きく見開かれる。
光の中で姿が変化し、ラルトスよりも大きく成長したポケモンが現れた。
「キル!」
「キルリア……!」
レンは嬉しそうに抱きしめた。
「おめでとう、キルリア! あなた、ついに進化したのね!」
キルリアは嬉しそうに鳴き、レンに頬を寄せた。
「ふふっ……これで、サーナイトへの道に一歩近づいたわね」
レンはキルリアの頭を優しく撫でる。
彼女の目標は、ラルトスをサーナイトへと進化させること。
その夢に、また一歩近づいたのだった。
続いて、レンはマリルをフィールドへ送り出した。
「マリル、あなたも頑張りましょうね」
「リル!」
マリルは小さな身体を活かして素早く動き、相手の攻撃を避けながら反撃する。
アクアテールやじゃれつくを織り交ぜ、最後まで諦めずに戦い抜いた。
そして、勝利が決まった瞬間――。
マリルの身体が光り輝く。
「まあ……!」
光の中から現れたのは、より大きく、力強い姿。
「マリル~~!」
「マリルリ……! おめでとう!」
レンはマリルリを抱きしめた。
マリルリは嬉しそうに笑い、レンの頬に自分の顔を寄せる。
「あなたも、ずいぶん立派になったわね」
レンは満面の笑みを浮かべた。
そして、残る一匹。
イーブイだった。
「イーブイ。あなたも、そろそろかしら?」
「イーブイ!」
レンはイーブイを抱き上げ、優しく撫でる。
これまで、イーブイはさまざまな技を覚え、バトルでも成長してきた。
そして、レンとの絆も深まっている。
シンヤが波動の眼で確認したときも、イーブイは進化に必要な条件をほぼ満たしていた。
あとは、きっかけだけだった。
レンはイーブイを地面に降ろし、目線を合わせる。
「ニンフィアになりたいで、いいのよね?」
イーブイはレンを見つめた。
そして、少しだけ首を傾げたあと、レンの手に頬をすり寄せる。
「……そう。なら進むべき道へ行きましょう!」
レンは微笑んだ。
彼女はイーブイの気持ちを確かめるように、ゆっくりとその背中を撫でる。
「頑張りましょうね!」
「イーブイ!」
その瞬間。
イーブイの身体が、柔らかな光に包まれた。
「えっ……!」
レンが驚いて目を見開く。
光は、まるでリボンのようにイーブイの周囲を舞っていた。
やがて光が収まり、そこに現れたのは――。
長い触角のようなリボンを持ち、優雅で愛らしい姿をしたポケモン。
「フィア!」
「ニンフィア……!」
レンは息を呑んだ。
そして、次の瞬間には満面の笑みを浮かべていた。
「まあ……! あなた、ニンフィアになったのね!」
「ニンフィア!」
ニンフィアは嬉しそうに鳴き、レンへと飛びついた。
レンはその身体を抱きしめ、何度も頭を撫でる。
「おめでとう。とても素敵よ……!」
ニンフィアはレンの腕の中で、幸せそうに目を細めた。
その姿は、可愛らしいだけではない。
優雅で、華やかで、どこか人の心を惹きつける魅力を持っていた。
まさに、ポケモンコーディネーターを目指すレンにぴったりの進化だった。
◆ ニンフィア、大人気!
「……あの、すみません!」
進化を見守っていた施設の会員たちが、そわそわした様子でレンのもとへやって来た。
「あのポケモン、ニンフィアですよね!?」
「実物を初めて見ました!」
「写真を撮ってもいいですか!?」
次々と質問が飛んでくる。
レンは少し驚きながらも、上品に微笑んだ。
「ええ。ニンフィアも嫌でなければ、構いませんわ」
「ありがとうございます!」
会員たちは、ニンフィアを取り囲まないように距離を保ちながら、カメラを構えた。
「それでは、一枚!」
「ニンフィア、こっちを向いて!」
「もう少し顔を上げてもらえるかな?」
ニンフィアは、まるで自分が撮影されていることを理解しているかのようだった。
カメラの位置を確かめるように視線を動かし、触角のようなリボンをふわりと揺らす。
そして、絶妙な角度で顔を向けた。
「おおおっ!」
「すごい! ちゃんとカメラ目線だ!」
「もう一枚お願いします!」
ニンフィアは、会員たちの期待に応えるように、次々と違うポーズを取ってみせた。
少し首を傾けたり、前足を揃えて座ったり、レンの隣に並んだり。
どの写真も、まるで最初から撮影されることを意識していたかのように、見事なものだった。
「……ニンフィア、あなた……」
レンは苦笑した。
「ずいぶんと、撮影に慣れているのね?」
「フィア♪」
ニンフィアは、どこか得意げに鳴いた。
「ふふっ……。もう、可愛いんだから」
レンが頭を撫でると、ニンフィアは嬉しそうに目を細める。
周囲の会員たちからは、さらに歓声が上がった。
「可愛い……!」
「この写真、大事にします!」
「進化したばかりなのに、あんなに堂々としているなんて!」
レンは少し照れながらも、ニンフィアを優しく抱きしめた。
「みんな、ありがとう。でも、ニンフィアは私の大切なパートナーですから、無理はさせないでくださいね?」
「もちろんです!」
会員たちは、満面の笑みで頷いた。
◆ イーブイズの長男、ニンフィアに夢中?
そんな賑やかな様子を、少し離れた場所から見ていたポケモンがいた。
シンヤからレンに預けられた、三匹のイーブイのうちの一匹。
その中でも、ひときわ落ち着きがあり、兄弟たちの面倒を見ることも多い長男だった。
彼は、進化したばかりのニンフィアをじっと見つめていた。
「イーブイ……」
その目は、どこか熱心だった。
ニンフィアがレンのそばで微笑むと、長男のイーブイは嬉しそうに耳を立てる。
ニンフィアが写真撮影を終えてこちらへ歩いてくると、イーブイは少し背筋を伸ばした。
「フィア?」
ニンフィアが首を傾げる。
「イーブイ!」
長男は、いつもよりも元気よく返事をした。
そして、ニンフィアの隣へと近づく。
ニンフィアは警戒することもなく、彼の顔を覗き込んだ。
二匹は、しばらく見つめ合う。
やがてニンフィアが触角のようなリボンをそっと伸ばし、イーブイの頬に触れた。
「イーブイ……!」
長男の身体がぴくりと跳ねた。
耳が立ち、尻尾が嬉しそうに揺れる。
その様子は、どう見ても――。
「……あら?」
レンが二匹を見て、目を細めた。
「あなたたち、ずいぶん仲がいいのね?」
「フィア♪」
「イーブイ!」
二匹は揃って鳴いた。
そのやり取りを見たレンは、口元に手を当てて微笑む。
「ふふっ……。もしかして、気に入ったのかしら?」
長男のイーブイは、少し照れたように視線を逸らした。
しかし、ニンフィアが隣に来ると、すぐに嬉しそうに身体を寄せる。
「……あらあら」
レンは、ますます楽しそうに笑った。
「これは、今後が楽しみね」
少し離れたところでは、弟たちのイーブイが兄の様子を不思議そうに眺めていた。
普段は兄らしく振る舞う長男が、ニンフィアの前ではどこか落ち着かない。
そんな姿が珍しいのか、弟たちは顔を見合わせる。
「イーブイ?」
「イーブイ!」
どうやら、兄の新しい一面を見つけてしまったらしい。
◆ それぞれの成長
その後、シンヤとレンは施設の管理端末で、それぞれのポケモンたちの進化情報を登録した。
シンヤの仲間たちは、大きく姿を変えたポケモンもいれば、これからの成長を待つポケモンもいる。
一方のレンも、キルリア、マリルリ、ニンフィアと、三匹が新たな姿へと進化した。
「今日は本当に収穫が多かったな」
シンヤは端末を確認しながら、満足そうに呟いた。
「ピジョンもピジョットになったし、コイルたちも進化した。ポニータとヤドンも、ようやく進化できたしな」
「私もよ。キルリアもマリルリも、そしてニンフィアも……。みんな、少しずつ成長しているのね」
レンは、進化した三匹を見つめた。
キルリアはレンの隣で上品に微笑み、マリルリは嬉しそうに跳ねている。
ニンフィアは、長男のイーブイと並んで、会員たちが撮った写真を眺めるようにカメラへ視線を向けていた。
「それにしても……」
シンヤは二匹を見て、首を傾げる。
「なんか、あのイーブイ……ニンフィアに懐くの早くないか?」
「ふふっ。そうね」
レンは、意味ありげに微笑んだ。
「もしかしたら、特別な相手なのかもしれないわよ?」
「特別な相手?」
シンヤは二匹を見比べる。
ニンフィアがイーブイに寄り添い、イーブイも嬉しそうに隣にいる。
「……まあ、仲がいいのはいいことか」
「ええ。そういうことにしておきましょう」
レンは楽しそうに笑った。
シンヤはまだ、その微笑みの意味を完全には理解していない。
しかし、ポケモンたちが新しい姿になり、それぞれの関係を深めていることは、確かに感じていた。
「よし。今日はここまでにするか。進化したばかりの連中は、状態を確認しながら休ませよう」
「賛成よ。私たちも、少し休憩しましょう?」
「ああ。……ただ、その前に」
シンヤは、もう一度管理端末を開いた。
「実家の連中、ほかにも進化できそうなのがいないか、確認しておくか」
「シンヤ……?」
レンが呆れたように彼を見る。
「さっき、今日はここまでって言わなかったかしら?」
「確認するだけだって」
「その『確認するだけ』で、またバトルを始めるつもりじゃないでしょうね?」
「…………」
シンヤは黙った。
レンは、にっこりと微笑む。
「ふふっ。図星ね?」
「……いやあ、育成って奥が深いな!」
「話を逸らさないの!」
レンのツッコミが、施設に響いた。
その横では、ニンフィアが長男のイーブイに寄り添い、二匹で仲良く微笑んでいた。
新しい進化、新しい出会い、そして新しい関係。
セキチクシティのポケモン大好きクラブで、シンヤとレンの仲間たちは、今日も確かな成長を遂げていたのだった。
感想でもあったのですが特性を出すか出さないかについて。期限はある程度表が集まり次第まで
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出す。セキエイリーグから出す
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出さないか。ホウエンからでいいやろ