小4で一緒にお風呂は普通じゃないの!? 〜距離感バグりすぎな従姉弟の日常〜 作:間瀬凪
温かいシャワーで体を温め終え、僕たちは脱衣所で体を拭いて、それぞれの服に着替えた。
陽菜は、僕のタンスに置いてあった泊まり用の薄手の半袖パジャマ。僕はハーフパンツとTシャツ。
ずぶ濡れになった服は洗濯機へ放り込み、髪をタオルで乾かしてから、二人は二階の僕の部屋へと上がった。
窓の外では、まだ激しい雨音がザーザーと屋根を叩いている。
けれど、カーテンを閉め切った薄暗い部屋の中は、外の嵐が嘘のように静まり返っていた。
畳の上に小さく膝を抱えて座り込んでいた陽菜の目元は、まだ赤く腫れていた。膝の上に置いた手が、ぎゅっとパジャマの布地を握り締めている。
「……陽菜」
僕がその隣に腰を下ろすと、陽菜はびくっと肩を揺らし、すがるように僕の服の裾を掴んできた。
「悠真……さっきのこと、嘘じゃないよね……? 悠真、本当に……他の人のお婿さんになんて、ならない……?」
さっきシャワーの中で泣き叫んだ言葉。
図書館で見つけてしまった『近い血縁の危険』。兄妹や姉弟は法律で結婚できないという、大人の社会の冷酷なルール。
陽菜はまだ、その見えない大きな壁に怯え、震えていた。
けれど──僕の胸の中には、もう迷いなんて欠片も残っていなかった。
「ならないよ」
僕は陽菜の震える両手を、自分の手で包み込んだ。
「絶対に、ならない。約束するよ」
「でも……法律で決まってるんだよ……? 世間のみんなだって、私たちを姉弟みたいだって言うし……大人になったら、結婚できないんだよ……?」
ポロポロと、陽菜の瞳から再び涙がこぼれ落ちる。
僕は首を横に振った。
「世間がなんて言ったって関係ないよ。法律で結婚できないって言われたって……僕たちの気持ちまで誰かに決められる筋合いなんてないだろ?」
「悠真……」
「僕にとって、陽菜は世界でたった一人しかいないんだ。いとことか姉弟とか、そんな呼び方なんてどうでもいい。僕の隣にいていいのは、陽菜だけだよ。大人になっても、おじいちゃんになっても……僕は絶対に、陽菜を手放さない」
僕の言葉に、陽菜の瞳が大きく見開かれた。
大人のルールに従って離れることなんて、絶対にしない。
たとえ世界中を敵に回したって、陽菜の隣を守り抜く──それが、男の子としての僕の、揺るぎない覚悟だった。
「悠真ぁ……っ!」
陽菜は堰を切ったように僕の胸元へと飛び込んできた。
僕の首筋に両腕を回し、顔を埋めて、嗚咽を漏らしながら強く、強くしがみついてくる。
「うん……っ! 私も、悠真だけがいい……! 誰にも言わなくていいよ! 役所に行って結婚なんてできなくたって、全然いいもん!! 大人になったら、二人きりでこっそり一緒に住んで、誰にも内緒でずっと一緒にいよう! 悠真を誰にも渡さない……絶対に、誰のお婿さんにもさせないんだから……っ!!」
陽菜の小さな体が、激しい感情で熱く震えていた。
大人から見れば、法律も知らない子どもの浅はかな思い込みかもしれない。
けれど、その時の僕たちにとって、それは世界と戦ってでも守り抜くと決めた、命よりも重い誓約だった。
***
「……悠真」
ひとしきり泣いて落ち着いた陽菜が、潤んだ瞳で僕を見上げ、そっと僕の膝の上に体を寄せてきた。
初夏の雨上がりの湿り気と、雨雲の向こうからかすかに差し込み始めた柔らかな光。
薄暗い部屋の中、畳の上に座ったまま、僕たちは互いの体を確かめ合うように、ぎゅうっと強く抱きしめ合った。
陽菜の細い腕が僕の首筋に回り、その柔らかくしなやかな足が僕の太ももにぴったりと絡みついてくる。
「んぅ……悠真の匂い……やっぱり、これが一番落ち着く」
陽菜の柔らかな体温が、薄い半袖パジャマとTシャツ越しに、ダイレクトに染み渡ってくる。
さっき石鹸で体を洗い清めたばかりだから、陽菜の首筋や髪からは、清潔なフローラルの香りがふわりと立ち上っていた。
美紀おばさんが教えてくれたルール。
『入れるのだけは、まだ絶対にダメ』
『お互いが大好きで、お互いが嬉しいなら、石鹸で手を綺麗に洗って清潔にしていれば触り合うのは別にいいの』
僕たちの手も体も、お風呂場でこれ以上ないくらい綺麗に洗って、清潔にしてある。
美紀おばさんとの約束は、完璧に守られていた。
けれど、陽菜の柔らかな太ももやお腹の体温が密着するにつれて──僕の体は、やはり素直に反応し始めていた。
下腹部に熱が集まり、ハーフパンツの薄い布地を押し上げるように、カチカチに固くなっていく。
「っ……陽菜……」
「ん……ふふ、悠真、また固くなってきたね……?」
至近距離で僕を見上げる陽菜の瞳が、とろんと甘く細められた。
そして──陽菜は小さく息を呑むと、おずおずと、自分の右手を僕の腰のあたりへと滑らせてきたのだ。
「……陽菜……?」
「お母さん、言ってたもん。石鹸で手を洗って、清潔なら……触ってもいいって」
陽菜の吐息が、僕の顎のあたりをくすぐる。
「悠真のこれ……私だけの悠真の証拠だもん。もっと、ちゃんと触ってみたい……」
陽菜の細い指先が、僕のハーフパンツのウエストのゴムに触れた。
そして、躊躇いながらも──その手が、パジャマと下着のゴムの隙間をくぐり抜けて、僕のパンツの中へと直接滑り込んできたのだ。
「っ……!?」
息が止まりそうになった。
薄い布地の一枚もない、完全な素肌の接触。
シャワーで綺麗に洗い清められた陽菜の、すべすべとして少し冷んやりした手のひらが、そっと優しく包み込んだ。
「あ……っ、悠真の……すごく、熱い……」
陽菜の口から、小さく息を呑む声が漏れた。
陽菜の手のひらの中で、トクン、トクンと激しく脈打つ。
握りしめるわけでも、擦るわけでもない。
陽菜はただ、慈しむように、大切な宝物を壊さないように、そっと手のひら全体で僕の硬さと熱さを包み込んでいた。
「……カチカチだね……。悠真、私のこと好きだから……こんなになっちゃうんだよね?」
「……うん……っ、陽菜……っ」
頭の芯まで痺れるような感覚と、心臓を鷲掴みにされるような甘い緊張感。
僕の顔面は、湯上がりの比ではないほど熱く沸騰していた。
「ふふ……誰にも見せないよ。誰にも触らせないもん。悠真のこれは、私だけのものだもん……」
陽菜は愛おしそうに囁きながら、僕の首筋にすりすりと頬を擦り寄せてきた。
その無防備で純粋な独占欲に、僕の胸の中の愛おしさは限界まで膨れ上がっていた。
(……僕だって、陽菜を誰にも渡したくない……!)
僕は息を荒らげながら、震える手を伸ばした。
「……陽菜。僕も……触りたい……?」
僕が掠れた声で尋ねると、陽菜は耳までカッと赤く染めながらも、嬉しそうにこくりと頷いた。
「うん……悠真に触ってほしい……。私の体、全部悠真のものだもん……」
僕はごくりと唾を呑み込み、陽菜のパジャマの裾から、そっと手を差し入れた。
薄い布地をくぐり抜けると、指先が、陽菜のすべすべとしたお腹と太ももの素肌に直接触れた。
「……っ、ふぁ……」
陽菜の体が、くすぐったさと緊張でビクッと小さく跳ねた。
吸い付くように滑らかで、驚くほど柔らかい女の子の皮膚。
僕は陽菜の温かいお腹から内ももの間へと手を滑らせ、女の子特有の柔らかく、お風呂の湿り気がまだ残る窪みに指を這わせ、そっと優しく手のひらで包んだ。
美紀おばさんが言っていた『女の子の穴に入れる』なんてことは、絶対にしない。
ただ、お互いの下着の中に清潔な手を滑り込ませ、相手の肌の温もりと、柔らかさと、硬さを、直接手の中で確かめ合う。
「悠真の手……すっごく、あったかい……」
陽菜は包み込んだ手をそっと握り直しながら、心地よさそうに身を預けてきた。
薄暗い部屋の中、二人の荒い呼吸と、トクトクと重なり合う心臓の音が響く。
手と手を通して、お互いの命の温もりがダイレクトに溶け合っていくような、甘美で濃密な静寂。
世間がなんて言おうと、法律がどうあろうと関係ない。
畳の上で密着し合いながら、僕たちは二人だけの熱い秘密を、深く、深く分かち合っていた。
***
やがて、外の雨音が少しずつ静まり、遠くで雨雲が去っていく気配がした。
けれど、僕たちは互いの服の中に滑り込ませた手を、どちらからも抜こうとはしなかった。
陽菜の手のひらに優しく包まれた僕の下腹部は熱さを保ち続け、僕の手のひらもまた陽菜のすべすべとしたお腹と太ももの付け根の柔らかさを、慈しむようにそっと温めている。
相手のいちばん大切で無防備な場所に直接触れ合っていること──その確かな重みと熱が、言葉以上に強い安心感を僕たちに与えてくれていた。
もう絶対に離れない、離さないという実感が、手と肌を通して全身に染み渡っていく。
陽菜は僕の胸元に顔をうずめ、手の中の僕の硬さと熱さを確かめるようにそっと指先を動かしながら、満ち足りた表情で微笑んでいた。
「ねえ、悠真」
「ん?」
「大人になったらさ……二人でどこに住む?」
「え……?」
陽菜は真剣な顔で、僕の目をじっと見つめてきた。
「誰にも見つからないように、二人だけで暮らすんでしょ? ……無人島とか、行っちゃう? ヤシの実取って、魚釣って!」
「無人島は……電気もガスもないから、陽菜が困るだろ。夜は真っ暗だし、お風呂も沸かせないよ」
僕が苦笑いすると、陽菜はぷくっと頬を膨らませた。
「うぅ……虫もいっぱい出そうだもんね。それは嫌かも……」
「だろ?」
「じゃあ、誰も私たちのこと知らない遠くの街のマンション! 二人きりで住んで、誰かがピンポーンって来ても、絶対に居留守を使うの!」
「それ、ただの引きこもりじゃないか」
「いいの! 二人きりでいられれば、他には何にもいらないもん! ご飯だって、私がお母さんに教えてもらって、毎日悠真の好きなものぜーんぶ作ってあげる!」
「陽菜が? 毎日?」
「うん! 卵焼きもハンバーグも、悠真が食べたいものなんでも! 朝ごはんも私が早起きして作って、悠真のことちゅって起こしてあげるの!」
「ちゅって……」
あまりにも直球で甘すぎる陽菜の新妻宣言に、僕の顔がカッと熱くなる。
「ご飯の材料はどうするのさ。買い出しに行かなきゃいけないだろ」
「変装するの! サングラスと大きな帽子かぶって、怪盗みたいに素早くスーパーに行くの!」
「余計に怪しくて通報されるよ……」
「じゃあネット通販! ドアの前に置いてもらう『置き配』にする! それなら誰にも顔を見られないでしょ?」
「置き配なら確かに誰にも会わないけどさ……でも、それでお金はどうするの? 仕事しないと家賃も払えないし、ご飯も買えないよ」
「あ……そっか……! お金……!」
陽菜はハッと息を呑み、小さな眉をキュッと寄せて真剣に考え込み始めた。
「じゃあ……私もいっぱい働く! 内職とか、お家でできること探して……悠真だけに大変な思いなんてさせないもん!」
陽菜のまっすぐで健気な言葉に、僕の胸がじんわりと温かくなる。
「ありがとう。でも、陽菜を外に出して誰かに見つかったら嫌だし……僕、いっぱい勉強して、お家でできるお仕事を見つけるよ。陽菜をちゃんと食べさせてあげられるくらい、頑張って稼ぐから」
「悠真ぁ……っ! かっこいい……! 私の旦那様、世界一かっこいい!」
陽菜は瞳をキラキラと輝かせ、感激したように僕にしがみついてきた。
「じゃあ、その代わり悠真のお世話は私がぜーんぶしてあげるもん!」
「お世話?」
「うん! 悠真がカタカタお仕事してる横で、美味しいお茶淹れてあげたり、肩トントンしてあげたり! 疲れたら私の膝枕で寝かせてあげて、頭いいこいいこしてあげるの! お風呂だって、私が毎日背中流してあげるし……悠真が困るようなこと、なーんにもさせないんだから!」
「それ……至れり尽くせりすぎて、僕がダメ人間になりそうなんだけど」
「いいの! 悠真は私の前でだけ、だらしなくなればいいんだもん! 私以外の人のところに行けないくらい、ぜーんぶ私が面倒見てあげる!」
ぎゅっと僕の首筋に抱きつきながら、陽菜は胸を張って満面の笑みで宣言した。
パンツの中の小さな手が、甘えるように、そして独占するようにきゅっと僕の熱さを握り直してくる。下腹部を走る温かさに僕が小さく息を呑むと、陽菜は嬉しそうに目を細めた。
「あとね、お部屋には大きなベッドを一つだけ置くの! 絶対にダブルベッド! 一人用のやつは禁止!」
「なんでダブルベッド限定なのさ」
「離れて寝たら寂しいでしょ! 今みたいに、ずーっとくっついて寝るの! 枕も一個でいいかも!」
「一個は首が痛くなるよ……」
「じゃあ私の腕枕!」
「陽菜の腕、細いからすぐ痺れちゃうだろ。僕が腕枕するよ」
「えへへ……やったぁ。じゃあ、悠真の腕枕で一生寝る!」
陽菜は満足そうに目を細め、僕の胸にすりすりと頭を擦り寄せてきた。
「あ、でもね……一つだけ重大な問題があるの」
「え、何?」
「もし……お母さんたちが探しに来たら、どうしよう?」
「美紀おばさんたちか……」
「『陽菜〜! 悠真〜! 連れ戻しに来たわよ〜!』ってドアをドンドンされたら……」
「おばさん、勘が鋭いからなぁ。置き配の段ボールの宛名で一発でバレそう」
「ひゃーっ! じゃあ偽名使わなきゃ! 悠真、何て名前にする? 山田太郎?」
「適当すぎるよ!」
「じゃあ……『佐藤悠真』と『佐藤陽菜』! 苗字を一緒にして、夫婦のふりをするの!」
「ふ、夫婦のふり……」
思いがけない陽菜の言葉に、僕の心臓がトクンと跳ねた。
「えへへ……苗字一緒なの、憧れるなぁ……。二人だけの秘密の夫婦! ね、いいでしょ?」
大真面目に逃避行と甘い秘密生活の計画を立てる陽菜の姿が、あまりにも愛おしくて、僕は胸の奥がじんわりと温かくなるのを覚えた。
「うん。遠くの街のマンション、いいね。二人で一緒に暮らそう」
「本当!? 約束だよ!」
陽菜は僕の体を抱きしめていた左手を起こすと、小さな小指を僕の目の前に突き出してきた。
「指切りげんまん、しよ!」
「うん」
互いの服の中に手を沈めたまま、僕も空いているほうの手の小指を伸ばし、陽菜の柔らかな小指と、ぎゅっと固く絡め合わせた。
「指切りげんまん、嘘ついたら針千本飲ーます……指切った!」
小指を解いたあと、陽菜はその手で僕の首筋をぎゅうっと抱き寄せ、顔をすり寄せてきた。
「悠真は、一生私のものだからね」
「うん。陽菜も、僕のだよ」
窓の隙間から、雨上がりの爽やかな夕日の光が一筋差し込み、畳の上に二人の重なり合った影を落としていた。
世間の『普通』なんて知ったことじゃない。
たとえ禁断の恋だと笑われようと、僕たちは二人だけのルールと秘密を胸に抱いて、一生離れずに生きていく。
幼いけれど、絶対に揺らぐことのない強い誓いを交わした──その時。
ガチャリ、と一階の玄関ドアが開く音が、静かな家の中に響き渡った。
「悠真ー? ただいまー。……あら、陽菜ちゃんの靴もあるわね?」
母さんの明るい声が、階段の下から聞こえてくる。
「っ!?」
「わっ……!」
僕たちは慌ててお互いの服や下着の中から手を引き抜き、絡め合っていた手足をほどいた。乱れたシャツとハーフパンツのゴムを大急ぎで引っ張って直し、畳の上に正座し直す。
まだ耳の先を赤く染め、息を弾ませたまま、二人は顔を見合わせる。
陽菜がいたずらっぽくペロッと舌を出し、僕もつられて小さく吹き出した。
大人たちには絶対に明かせない、二人だけの甘く熱い秘密。
階段を上がってくる母さんの足音を聞きながら、僕たちは胸の奥に灯った確かな絆を確かめ合うように、幸せそうに微笑み合っていた。