小4で一緒にお風呂は普通じゃないの!? 〜距離感バグりすぎな従姉弟の日常〜 作:間瀬凪
第16話 小5秋 ― 賑やかな田舎と女子3人の雪崩
秋晴れの澄み渡る青空の下、どこまでも続く黄金色の稲穂が、涼やかな風に吹かれて波のように揺れていた。
九月下旬。小学校五年生のシルバーウィーク。
僕と陽菜、そして母さんと美紀おばさんの四人は、電車とバスを乗り継ぎ、山あいの緑に囲まれた田舎の本家へとやってきていた。
数年に一度、親族一同が集まる本家の法事と親睦会。
普段暮らしている都内の住宅街とは違う、どっしりとした瓦屋根の大きな木造家屋。広い土間に上がると、懐かしい畳とイグサの香り、そして奥の仏間から漂うお線香の香りが僕たちを迎えてくれた。
「まあまあ、よく来たわねぇ! 陽菜ちゃんも悠真くんも、しばらく見ないうちにずいぶん大きくなって!」
本家のおばさんたちが満面の笑顔で出迎えてくれ、居間はお茶やお茶菓子の用意で一気に賑やかになった。
仏壇に手を合わせ、大人たちが座敷でお茶を飲みながら近況報告を始めた頃。
本家のおばさんが、大きな網袋に入ったスイカと、ガラス瓶のラムネの束を台所から抱えてきた。
「悠真くん、陽菜ちゃん。裏の小川でこれ冷やしてきてくれないかい? 湧き水だから、冷蔵庫よりずっと美味しく冷えるのよ」
「あ、はーい! 僕、持ってくよ」
力仕事を買って出た僕の横で、陽菜が「私も行く!」と立ち上がった。
初夏に「兄妹や姉弟は法律で結婚できない」と思い込み、雨の日のシャワーの後に「大人になっても誰にも内緒でずっと一緒にいよう」と固い指切りを交わしてから、数ヶ月。
学校では美紀おばさんのアドバイスを守り、目立たないようにすましている僕たちだったけれど、こうして自然豊かな田舎に来ると、陽菜の表情は解き放たれたように明るかった。
***
本家の裏口を出て、竹林の小道を少し下ると、木漏れ日の中に透き通った小川がさらさらと音を立てて流れていた。
川底の丸い小石までくっきりと見えるほど澄んだ水。
「わあぁ……! すっごく綺麗! 悠真、早く足入れてみよ!」
サンダルを脱ぎ捨てた陽菜が、裾を膝までまくり上げて川辺へと駆け寄る。
浅瀬の大きな平たい岩の陰にスイカとラムネを沈め、流されないように手頃な石で囲いを固定した。
「よし、これで大丈夫だね。三十分もすればキンキンに冷えるよ」
「うん! 悠真、お疲れさま!」
陽菜が当たり前のように僕の腕にぎゅっと抱きつき、肩にこてんと頭を預けてきた。
薄手のTシャツ越しに伝わる、陽菜の柔らかな体温と、甘いシャンプーの香り。
二人きりの穏やかな時間に浸ろうとした──まさに、その時だった。
「あ──ーっ! 悠真兄ちゃんだ──っ!!」
ドタバタドタバタッ!!
竹林の小道の向こうから、元気いっぱいの甲高い声が響いてきた。
現れたのは、親戚のはとこ姉妹──小学三年生の結愛(ゆあ)と、小学一年生の美桜(みお)だった。
「うわっ……!?」
「悠真兄ちゃん、見っけ! 川遊びするなら呼んでよー!」
結愛と美桜は僕を見つけるなり、水しぶきも構わずにバシャバシャと駆け寄ってきた。
田舎の本家に同年代の男の子がいない二人にとって、都会からやってくる優しくて面倒見のいい僕は、格好の憧れのお兄ちゃんだったのだ。
「悠真兄ちゃん、あっちの深いの行きたい! 手つないで渡して!」
「美桜もおんぶ! おんぶして渡ってぇー!」
結愛が僕の空いていた左腕にがっしりとぶら下がり、美桜が僕の背中へと跳び箱のように飛び乗ってきた。
小五になって背も伸び、手足の骨格もしっかりしてきた僕は、「おっと……危ないよ、しっかりつかまってね」と美桜を背中に背負い直し、結愛の手をしっかり握って浅瀬を渡してあげた。
「きゃーっ! 悠真兄ちゃん、力持ち! かっこいいー!」
「結愛ちゃんも美桜ちゃんも、走ると滑るから気をつけてね」
頼れるお兄ちゃんとして二人を安全な中州へ降ろしてあげると、二人は目をキラキラと輝かせて僕に懐いてきた。
けれど──。
川岸に仁王立ちしている陽菜の視線は、ちっとも穏やかではなかった。
「ちょっと……あんたたち! 悠真にいきなり飛びつかないでよ!」
陽菜が腕を組んで、ぷりぷりと怒りながら浅瀬をジャブジャブ渡ってきた。
結愛と美桜は、悪びれる様子もなく陽菜を指差してケラケラと笑う。
「だって陽菜姉ちゃんこそ、さっき悠真兄ちゃんのお腕ぎゅーってして甘えてたじゃん!」
「そうだよ! 陽菜姉ちゃんばっかりずるい! 私たちも悠真兄ちゃんに甘えるー!」
「なっ……!? ずるいって何よ! 私の方がずっと昔から悠真と一緒なんだからね!」
陽菜がムキになって言い返すと、結愛が悪戯っぽく「えーい!」と手で川の水をバシャッと跳ね上げた。
冷たい水滴が、陽菜の胸元にピシャリと直撃する。
「冷たっ……! やったわね! こうよっ!」
「きゃははっ! 冷たーい!」
売り言葉に買い言葉で、浅瀬での激しい水かけ合戦に発展してしまった。
結愛と美桜が二人がかりで水を飛ばし、陽菜もスカートの裾を濡らしながら必死に応戦する。
キャッキャと歓声が響く中、陽菜の薄手の白いTシャツが、水しぶきをたっぷり浴びてじわりと肌に張り付いていた。
濡れて透き通るような鎖骨のラインと、背中に浮き出るインナーの細い紐、そしてほんの少し膨らみ始めた胸元の輪郭。
(っ……ま、まずいって……!)
無防備に水を掛け合って笑う陽菜の姿に、僕は目のやり場を完全に失って顔を真っ赤にした。
「ほら、みんな! 服がびしょ濡れになっちゃうから、もうそれくらいにしなよ!」
僕が慌てて割って入り、両手を広げて陽菜をかばうと、陽菜は濡れた黒髪をかき上げながら、僕の背中にキュッとしがみついて結愛たちに勝ち誇ったように言った。
「ほら見なさい! 悠真は私の味方なんだから!」
「ぶーっ! 悠真兄ちゃん、陽菜姉ちゃんばっかり贔屓だー!」
美桜が「美桜もまだまだーっ!」と悔しそうに勢いよく水を掛けようと踏み込んだ、その瞬間だった。
川底の苔が生えた丸石に足を取られ、ツルッと足が滑ってしまったのだ。
バシャ──ーンッ!!
「きゃああっ!?」
美桜が浅瀬にお尻から盛大に尻もちをついた。
「わっ、美桜ちゃん大丈夫!?」
僕が慌てて駆け寄って抱き起こすと、美桜は「うぇー! びっくりしたー!」と立ち上がったけれど、履いていたショートパンツはお尻から太ももまで完全に水没してびしょ濡れになっていた。
「あーあ、お尻冷たーい! パンツまで全部びしょびしょになっちゃった!」
薄手の生地が肌にぴったりと張り付き、中の下着までぐっしょりと水を吸ってしまっている。
「もう、美桜ちゃんったら……怪我しなくてよかったけど」
陽菜も呆れつつ、心配そうに駆け寄ってきた。
「パンツまで濡れちゃったなら、冷えちゃう前に早く本家に戻って履き替えなきゃ」
僕たちは冷やしておいたスイカとラムネを引き上げ、本家へと戻ることにした。
***
本家に戻り、縁側の足洗い場で足を洗って上がりかまちへ。
台所から親戚のおばさんが「あらまあ美桜、また川で転んだのかい? 早く部屋で拭いて履き替えなさい!」と、乾いたタオルと替えのズボン、下着を持ってきてくれた。
美桜はまだ小学一年生で、本家という安心感もあって羞恥心などまるで頭にない。
「はーい!」とおばさんに元気よく返事をした美桜は、縁側に面した次の間の畳の上にタオルを置くと、
「悠真兄ちゃん、着替えるの手伝って〜! 服がペタペタ張り付いて脱げないの!」
と、甘えた声を出しながら僕の腕にぎゅっと抱きついてきた。
「はいはい、わかったよ。濡れたままだと風邪引いちゃうからね」
まだ一年生だし、服が肌に張り付いて脱ぎにくいのも当然だ。
五年生のお兄ちゃんとして、ここはしっかり面倒を見てあげなきゃいけない。
僕がタオルを手に取って美桜の前にしゃがみ込むと、美桜は無邪気に「これ引っ張って〜」と僕の方を向いたまま、濡れたショートパンツと下着を一緒にズリッと膝まで下ろして畳の上にぺたんと座りこんだ。
「よし、ズボンの裾を引っ張ってあげるから、片足ずつ抜いてごらん」
僕は冷静に、お兄ちゃんらしく濡れた生地を両手でしっかり引っ張ってあげた。
「えへへ、ありがとー!」
美桜は嬉しそうに笑うと、まずは「んしょ」と最初の片足を引き抜こうとした。
けれど、濡れた生地が足首に引っかかってバランスを崩しかけ、倒れないように慌てて畳の後ろへ両手をついた。
その拍子に、ぺたりと座りこんだ美桜の小さな両足が、左右へとパカッと大きく開いてしまったのだ。
「あっ……!?」
至近距離にいた僕の目の前で──美桜の小さくあどけないデリケートな部分が、奥の淡いピンク色のところまで、何の遮りもなく無防備にさらけ出されてしまっていた。
(っ…………!)
けれど、ここで動揺して取り乱したらお兄ちゃん失格だ。僕は必死に平然を装い、残ったもう片方の足から濡れたズボンと下着を丁寧に引っ張って脱がせてあげた。
「ほら、抜けたよ。冷えるから、これで身体を拭いて」
乾いたタオルを広げて手渡してあげると、美桜は無邪気にパッと笑顔を咲かせた。
「わーい! 脱げたー! 悠真兄ちゃん、ありがとー!」
屈託のない笑顔でタオルを受け取る美桜のあどけない姿に、僕の脳裏にふと、昔の記憶がよぎってしまった。
(そういえば……昔、陽菜がまだこれくらい小さかった頃も、こんな風に着替えを手伝ってって甘えてきてたっけ……)
あの頃は一緒にお風呂に入るのも当たり前で、濡れた服を脱ぐのを手伝ったり、着替えを手伝ったりしていた。陽菜の身体も今の美桜ちゃんと同じように、まだあどけない子どものものだった。
当時のちんまりとした陽菜の可愛い姿が鮮明に思い出され、僕は懐かしさと愛おしさで、無意識のうちについ口元を緩め、にんまりと笑みを浮かべてしまっていたのだ。
その時、スッ……と、背筋が凍りつくような冷たい空気が肌を刺した。
ハッと我に返って顔を上げると、目の前に陽菜が仁王立ちしていた。
顔を耳まで真っ赤に染めながら、その切れ長の瞳が、完全に信じられないものを見るような冷徹な目でキッと細められている。
完全に、見られていた。
僕が美桜の着替えを見ていたことも、そして何より、それを見てだらしなくにんまり笑っていたことも、すべて陽菜に一部始終を目撃されていたのだ。
「ひっ……!?」
「…………悠真」
陽菜は声すら立てず、僕の手首をぎゅっと掴むと、縁側の柱の陰へとぐいっと力いっぱいに引っ張っていった。
「陽菜、あの……! 違うんだ、誤解なんだよ……!」
柱の陰に追い詰められ、僕が必死に小声で弁明すると、陽菜は涙目になりながら、僕の胸元に人差し指をツンと突き刺してきた。
「……何ジロジロ見て、ニヤニヤしてるのよ……バカ悠真!」
消え入りそうな、けれど震えるほど悔しそうな囁き声。
「美桜ちゃんに甘えられて……あそこのところまで、じーっと見ながら、すっごく気持ち悪いにやけ顔してたでしょ!」
「ち、違う! 美桜ちゃんを見てにやけてたんじゃないんだ!」
「嘘! あんなに嬉しそうににんまり笑ってたじゃない!」
「だ、だから違うってば! あれは美桜ちゃんを見て、昔の陽菜……まだ小さかった頃の陽菜を思い出して、懐かしくなってただけで……!」
「な、なにそれ……っ!?」
必死の言い訳を繰り出した瞬間、陽菜は信じられないものを見るように目を見張り、カッと耳まで赤く染めた。
「む、昔の私のこと思い出してくれたのは……それはそれで、すっごく嬉しいけど……! でも、そんなの言い訳にならないよぉ! 美桜ちゃんの見てたのには変わりないじゃない……っ!」
「うっ……それは……」
ぐうの音も出ない僕に、陽菜は唇をぎゅっと尖らせ、じとっとした疑いの目を向けてきた。
そして──すっと僕の正面に体を密着させると、自分の太ももを、僕のハーフパンツの股間あたりへとぎゅっと押し当ててきたのだ。
「ひゃっ……!? ひ、陽菜……っ!?」
いきなりの大胆な行動に僕が飛び上がると、陽菜は太もも越しに僕の下腹部の感触を確かめるように、小さく体を擦り寄せてきた。
「……ん……。よかったぁ……」
陽菜自身も恥ずかしさに耳まで真っ赤に染めながら、ほっと胸を撫で下ろすように小さく吐息を漏らした。
けれど、すぐにまた潤んだ瞳で僕を見上げ、場所を示すように今度は股間を僕の太ももに強く押し付けた。
「……美桜ちゃんのお世話だし、まだ一年生で小さい子だから仕方ないって……頭では分かってるよ? でも……でもぉ……っ!」
陽菜は悔しそうに唇をぎゅっと噛み締め、涙目になりながら僕の胸元に顔を埋めるように擦り寄せてきた。
「……悠真、私のなんて……ちゃんと見てくれたこと、ないくせに……」
消え入りそうな、切なさと恥ずかしさが入り混じった囁き声。
「いつも私のは……恥ずかしがってすぐ目を逸らすのに…… 悠真になら……私、どこまでだって見せてあげるのに……! だから……他の女の子のは見ないでほしいの……!」
胸を強く撃ち抜かれるような、強烈な言葉だった。
恥ずかしさで泣きそうになりながらも、僕にだけはすべてを許したいという陽菜の純粋でまっすぐな独占欲。そして、僕が意識しすぎて目を逸らしてしまうことが、陽菜にそんな不安やコンプレックスを抱かせていたのだという気づき。
僕の顔面は一瞬で耳まで沸騰し、心臓が激しくトクントクンと跳ね回る。
「陽菜……。僕が見たいのも……ずっと隣にいたいのも、陽菜だけだよ。本当に……」
僕が真っ赤になりながら誓うと、陽菜は「……うん」と嬉しそうに目を細めた。
「約束だよ。悠真は……私だけのものなんだからね」
陽菜は太ももをそっと離すと、今度は念を押すように僕の腕にぎゅーっとしがみつき、自分の柔らかな胸元を僕の二の腕にすり寄せてきたのだった。
***
そんな騒動のあと、広々とした縁側に腰を下ろす。
本家のおばさんが、真っ赤に熟したスイカを大きな包丁でサクサクと切り分けてくれた。
「はいどうぞ、みんなでいっぱい食べなさいね」
「わーい! スイカだー!」
着替えを終えた美桜と、結愛が縁側に座り、スイカにかぶりつく。
僕も陽菜と並んで腰掛け、冷たいスイカを頬張った。シャリシャリとした甘い果汁が、火照った喉を心地よく潤していく。
「悠真、美味しいね!」
「うん、湧き水で冷やしたからすごく冷たいね」
陽菜が嬉しそうに目を細め、当たり前のように僕の肩に体を預けてきた。
すると、それを見ていた結愛と美桜が、スイカの皮を置くなり、またしても目をギラギラと輝かせて突撃してきたのだ。
「悠真兄ちゃん、スイカ取ってー! 種取ってあーんして!」
「美桜もお膝乗るー! さっき川でおんぶしてくれたみたいに、抱っこしてぇー!」
結愛が僕の左腕に飛びつき、美桜が僕の膝の上へとお尻からドスンと座り込んできた。
陽菜の甘え方を完コピした容赦ない妹攻撃。
それを見た陽菜の眉が、今度こそ限界まで吊り上がった。
「だ、ダメ──ーッ!! 悠真に甘えていいのは、私だけなんだから!!」
陽菜は僕の右腕を力いっぱい自分の胸元へ引き寄せ、はとこたちをキッと睨みつけた。
「悠真は私のおとうと……じゃなくて、私だけの悠真なんだから! あんたたち、そこをどきなさい!」
「え──ーっ! 陽菜姉ちゃん大人げなーい!」
「お姉ちゃんのくせに独り占めずるいー! 悠真兄ちゃんはみんなのだもーん!」
「みんなのじゃないもん! 私の悠真だもん!!」
「ずるいずるい! えーい、ぎゅ──っ!」
「わ、わあああっ!?」
陽菜が意地になって僕の腕を締め上げると、対抗心を燃やした結愛と美桜も「負けないもん!」と僕の首や胴体にしがみつき、三人分の体重が僕の上へ一気に雪崩れ込んできた。
左腕に結愛、膝の上に美桜、そして右腕に顔を真っ赤にしてムキになる陽菜。
僕は女子三人に全身を隙間なくホールドされ、身動きが完全に封じられた『甘々団子状態』に陥ってしまったのだ。
「は、陽菜……結愛ちゃんも美桜ちゃんも……息が、息ができない……っ!」
「悠真は黙ってて! ほら、離れなさいってば!」
「陽菜姉ちゃんこそ離してよー!」
ぎゅうぎゅうとお互いに押し合いへし合いする女の子たちの柔らかい体が、僕の全身に容赦なく押し当てられる。
特に、意地になった陽菜は、僕の右腕を胸の真ん中で抱きかかえるようにして、その太ももを僕の腰にぴったりと押し付けてきていた。
(っ……ま、まずいって……!!)
年下の子たちの前で、頼りがいのあるかっこいいお兄ちゃんでいなければいけないのに。
川遊びで濡れた陽菜の素肌の匂いと、ムキになって密着してくる腰回りの柔らかい感触のせいで、僕の体の奥底に眠る男の子の生理現象が、急激に目を覚まし始めていた。
下腹部が熱くカチカチに固くなっていく。
(こんなところで固くなるなんて……絶対にバレちゃダメだ……っ!!)
必死に腰を引いて隠そうとするけれど、三人に四方からがっちりロックされているせいで、身動き一つ取れない。顔から火が出るほどの羞恥心と焦燥感で、僕の額から冷や汗がダラダラと噴き出した。
***
そんな修羅場が数分間続いた、その時だった。
「おーい、子どもたちー! 冷凍庫のアイスも食べるかいー!?」
遠くの台所から、親戚のおばさんの陽気な大声が響き渡った。
その声を聞いた瞬間、僕にしがみついていた結愛と美桜が、パッと顔を上げた。
「あ! アイスだ!」
「チョコアイス食べる──っ!」
さっきまでの激しい取り合いが嘘のように、二人はあっさりと僕から手を離すと、風のような勢いで縁側を駆け抜けていってしまった。
嵐が去ったあとの、縁側。
「………………」
「………………」
チーン、と静まり返った広間に、庭の風鈴の音だけがチリンと響いている。
あまりの落差と気まずさに、陽菜も僕の腕を掴んだまま、顔を真っ赤にして固まっていた。
「……あ、あいつら……現金なんだから……」
陽菜がバツが悪そうにぷくっと頬を膨らませ、そっと僕の腕を離した。
けれど、解放されたはずの僕は、その場から指一本動かすことができなかった。
背中を丸め、膝を抱え込むようにして、縁側の柱の陰でカチコチに硬直している。
「……悠真? どうしたの? あの子たち、もう行っちゃったよ?」
不思議そうに覗き込んできた陽菜が、僕の不自然に突き出た下腹部に目を留めた。
ハーフパンツの布地を内側からテントのように押し上げている、限界まで固くなったその輪郭。
「あっ……!」
陽菜が息を呑み、耳の先までカッと林檎のように赤く染まった。
「……ご、ごめん……悠真……。私、あの子たちに意地になっちゃって……ぎゅーってしすぎちゃった……」
「だ、大丈夫だから……っ! そんなにそこをじーっと見ないでよ……っ!」
顔面から火を噴き出しながら必死に身を縮める僕に、陽菜は頬を赤らめながら、ちょっぴり唇を尖らせて言った。
「だって……見たいんだもん。私の悠真なんだから、いいでしょ?」
恥ずかしそうにしながらも、その口元にはふわりと嬉しそうな笑みが浮かんでいた。
悠真が固くなったのは、他でもない、自分が思い切り抱きついたからだ。
その確信が、陽菜の胸をくすぐったい安心感で満たしていたのだ。
西日が差し込み始めた縁側で、秋の風鈴の音が静かにチリンと鳴っていた。