小4で一緒にお風呂は普通じゃないの!? 〜距離感バグりすぎな従姉弟の日常〜 作:間瀬凪
深夜一時を回り、本家全体は底知れない静寂に包まれていた。
あれほど賑やかだった親族の宴会も完全に終わり、大人たちも子どもたちも、それぞれの部屋で深い眠りに落ちている。
庭からは、秋の夜気を含んだ鈴虫の声だけが、澄んだ音色で響いていた。
離れの六畳間。
敷布団の上に仰向けになり、僕は暗がりの中で天井を見つめていた。
昼間のはとこたちとの大騒ぎ。
台所で耳にした、親戚のおばさんたちの言葉──『いとこ同士なら、普通に結婚できるんだからね〜』。
そして、夜の膝の上で陽菜が囁いてくれた、『大人になったら、私をお嫁さんにしてくれる……?』という甘い約束。
そのすべてが頭の中を駆け巡り、胸の鼓動はいつまで経っても収まりそうになかった。
スッ──と、微かな音を立てて襖が開いた。
廊下の月明かりの中に、小さな人影が揺れている。
「……悠真?」
蚊の鳴くような、掠れた囁き声。
「陽菜……!?」
僕は跳ね起きるように上半身を起こした。
大部屋で結愛や美桜たちと一緒に寝ていたはずの陽菜が、枕を両手でしっかりと抱きかかえ、裸足で敷布団の縁に立っていたのだ。
薄い半袖パジャマから伸びる白い手足が、月の光に照らされて淡く浮かび上がっている。
「どうしたの……? みんな、寝たんじゃ……」
「結愛ちゃんたち、すやすや寝てるよ。……でもね、私……」
陽菜はそろりと部屋の中に入り、音を立てずに襖を閉め切ると、僕の敷布団のすぐ横へと膝をついた。
「……一人だと、寂しくて眠れないの。悠真と……一緒に寝たいよ」
上目遣いに見上げてくる陽菜の瞳には、甘えと、どこか切実な熱が滲んでいた。
初夏に美紀おばさんから教わったルールが、頭の隅をよぎる。
『入れるのだけは、まだ絶対にダメ』
『お互いが大好きで、お互いが嬉しいなら、触り合ったりすること自体は別にいいの』
僕たちは服をちゃんと着ているし、入れるようなことは絶対にしない。
「……うん。おいで」
僕が掛け布団を持ち上げると、陽菜は嬉しそうに顔を綻ばせ、するりと僕の布団の中へと滑り込んできた。
バサリと掛け布団が頭の上まで引き上げられる。
外の肌寒い秋の空気は完全に遮断され、布団の中は陽菜の甘いシャンプーの香りと、二人の体温で一瞬にして満たされた。
***
「んぅ……悠真、あったかい……」
陽菜は迷うことなく、僕の胴体に両腕をぎゅうっと回してきた。
それだけではない。
陽菜は自ら腰を寄せ、その柔らかな太ももの内側を、僕の股間へと隙間なくぐっと押し当ててきたのだ。
さらに、逃げ場をなくすように、僕の片方の太ももを自分の両脚でしっかりと挟み込んできた。
「ひっ……!?」
息を呑む暇もなかった。
完全相互密着──お互いの太ももと股間が、パジャマの布地を一枚隔てただけのゼロ距離で、がっちりと体圧で固定されてしまう。
薄い布越しに、陽菜のすべすべとした太ももの柔らかな弾力と、女の子のデリケートな場所の熱い体圧が、僕の下半身にダイレクトにめり込んでくる。
その強烈な刺激に、僕の下腹部は意志とは無関係に、一瞬で限界までカチカチに固くなって跳ね上がった。
ドクン、ドクン、ドクン──と、僕の脈打ちが、布地を通して陽菜の太ももの内側へ直接打ち込まれていく。
「……ん……ふふ、悠真の……当たってるよ」
陽菜は頬を桜色に染めながら、耳元で甘く吐息を漏らした。
「太ももにも……私のお股のところにも……悠真の固いの、すっごく強く当たってる……」
「は、陽菜……っ! これ、本当にまずいって……! 動けない……っ!」
「動かなくていいもん。……こうして、悠真の熱いのを感じてるのが、一番安心するんだもん」
陽菜は僕の首筋に額をすり寄せ、逃がすまいとばかりに、さらにぎゅっと太ももを締め付けて密着を深めてきた。
パジャマ越しに伝わる、陽菜の体温とお尻の柔らかさ。
そして、僕の固くなったアレが、陽菜の太ももとお股に挟まれて、ドクドクと熱い脈動を繰り返す。
頭の芯がじんわりと痺れるような、甘美で濃密な快感と緊張感。
僕の息はすっかり荒くなり、心臓が喉から飛び出そうなくらい激しく高鳴っていた。
──その時だった。
スッ……と、廊下の方から微かな足音が聞こえてきた。
ピクッ──!!
僕と陽菜の体が、同時に跳ね上がった。
「…………っ!?」
誰かが、この離れの部屋の前の廊下を歩いている。
もし襖を開けられて、布団の中でこんな体勢で絡み合っているところを見られたら──一発で大惨事だ。
二人は心臓が止まりそうになりながら、布団の中で完全に石化し、呼吸すら止めて硬直した。
ペタ、ペタ、と廊下を歩く足音が、襖のすぐ目の前でピタリと止まる。
生きた心地がしなかった。
僕を抱きしめる陽菜の腕に、爪が食い込むほどぎゅっと力が込められる。
冷や汗が背筋を伝い落ちる中、襖の向こうから、気の抜けた小さな声が漏れ聞こえてきた。
「……んあ────……アイス……チョコアイス……むにゃむにゃ……」
結愛の寝言だった。
どうやら寝ぼけてトイレに起きてきたらしい。
バタン、と廊下の突き当たりでトイレのドアが閉まる音が響いた。
「…………っ、ぷはぁっ!」
「……ふぅ……っ、び、びっくりしたぁ……っ!」
二人は同時に息を吐き出し、脱力してシーツの上に倒れ込んだ。
心臓が破裂しそうなくらい早鐘を打っている。
顔を見合わせると、あまりのハラハラ感に、どちらからともなく「……ふふっ」「あっは……」と声を殺して笑いが漏れた。
「もう……結愛ちゃんったら、心臓止まるかと思ったよ……」
「僕もだよ……本気で寿命が縮んだ……」
小さく囁き合いながら、二人の間の空気は、緊張の糸が切れたことで、先ほどよりもさらに親密で甘いものへと溶けていった。
掛け布団の中の暗闇で、陽菜は僕の首筋にぎゅっと両腕を回し直し、その柔らかな太ももを僕の足に絡めながら、上目遣いに僕を見つめてきた。
至近距離で混ざり合う、互いの熱い吐息。
「ねえ……悠真」
静寂の中、陽菜がとろけるように甘い声で囁いた。
「最近ね、クラスの女子たちが『付き合う』とかそういう話ばっかりしてるんだよね」
「うん……休み時間とか、誰と誰が付き合い始めたとかよく噂になってるよね」
「付き合うって……なんなんだろうね? 手を繋いで一緒に帰ったり、放課後遊んだり、お互いが一番好きって言い合ったりすること……?」
「それ……僕たち、ずっと前から普通にしてるよね」
「うん。お泊まりもしてるし、こうやってくっついて寝てるし……」
陽菜はふっと瞳を揺らし、僕の胸元に頬をすり寄せてきた。
「昼間、おばさんたちが言ってたの……本当に嬉しかったの。私たち、いとこ同士でも、ちゃんと結婚できるんだって……離れ離れにならなくていいんだって。ずっと胸の奥がつっかえてたのが、全部すーって消えちゃった……」
「……うん。僕もだよ」
大人になったら離れ離れになってしまうのかもしれないと、幼い胸を痛めていた日々。
その巨大な暗雲から完全に解放された安心感が、いま、二人の全身を満たしていた。
陽菜は僕の首筋に回した腕にきゅっと力を込めると、上目遣いに僕を見つめ、熱っぽい吐息をこぼした。
「ねえ……悠真」
「ん……?」
「クラスの女子がね、言ってたの。『付き合う』って……特別なことなんだって。誰にもしないこと、二人きりですることなんだって」
陽菜の潤んだ瞳が、僕の唇へと向けられる。
「……キス、しよ?」
「え……っ!?」
僕の心臓がトクンと大きく跳ね上がった。
「ほっぺとかおでこじゃなくて……お口と、お口」
陽菜の耳たぶまでカッと赤く染まっていた。
「ずっと……してみたかったの。悠真と結婚できるって分かったら、もう我慢できなくなっちゃった……。これが……私たちの『付き合う』ってことなのかなって」
「で、でも……僕たち、お口にキスなんて……したことないよ?」
同じアイスを分け合ったり、同じペットボトルから飲むような間接キスなら、物心ついた頃から数え切れないくらいしてきた。けれど、本当のキスなんて一度もしたことがない。
「だから、だよ。二人きりで……悠真とだから、したいの」
陽菜のまっすぐな瞳に見つめられ、息が詰まる。断る理由なんて、どこにもなかった。
僕だって、陽菜が世界で一番大切で、誰にも渡したくない。
僕がごくりと唾を呑み込んで小さく頷くと、陽菜は嬉しそうに目を細め、そっと顔を近づけてきた。
触れ合う直前、陽菜の長い睫毛が震え、まぶたが静かに閉じられる。
そして──。
ちゅっ、と微かな音を立てて、二人の唇が重なり合った。
「ん……っ」
陽菜の小さな吐息が漏れる。
信じられないくらい柔らかくて、温かくて、ほんのり甘い感触。
唇と唇がそっと触れ合った瞬間、ビリビリッと電流が走ったように頭の芯が痺れ、それが背骨を伝って一気に下腹部へと突き抜けていった。
(っ……あ……っ!)
重なり合う太ももの間で、僕の股間が激しくトクンと脈打ち、パジャマ越しに一段と熱く、硬く張り詰めていく。太ももを挟み込んでいる陽菜の身体へ、その熱い拍動がダイレクトに伝わってしまうのが分かる。
一度離れて、お互いに見つめ合う。
暗がりの中でも分かるほど真っ赤になった陽菜の顔。
「……悠真」
「陽菜……」
どちらからともなく、引き寄せられるように再び唇を重ねた。
今度は、ただ唇を合わせるだけでは終わらなかった。
重なった唇が熱っぽく微かに開き、互いの熱い吐息が口の中へと漏れ出す。
誘われるようにそっと差し入れた舌先が触れ合った瞬間、びくりと互いの身体が震えた。
けれど、離れるどころか、もっと深く相手を求めるように、おずおずと、けれど吸い寄せられるように舌と舌が絡み合っていく。
「ん……っ、ちゅ……、んむ……っ」
ぬるりと滑らかな舌が口内の柔らかな粘膜を撫で、互いの唾液が甘く溶け合っていく。
小さな水音を立てながら、息が苦しくなるほど熱く深く貪るように舌を絡め合うたびに、胸の奥から甘い幸福が溢れ出すと同時に、下腹部がキュウッと甘く疼き、息ができないほどに熱がこみ上げてくる。
「ん……っ、ふは……っ、ふふ……っ、あったかいね……」
名残惜しそうに唇を離した陽菜が、濡れた唇を蕩けるように緩めて囁いた。
「悠真、大人になったら……絶対に私をお嫁さんにしてね? 誰にも渡さないでね……?」
「ああ、約束するよ。僕のお嫁さんは、陽菜だけだ。一生、陽菜を愛して、僕が守るから」
「うん……っ!」
陽菜は泣きそうなくらい嬉しそうに目を細めると、僕の胸元に顔を埋め、ぎゅっと腕の力を込めて抱きついてきた。
世間の誰かが決めた形になんて、縛られる必要はない。
この温もりと重なり合う鼓動、そして交わした初めてのキスこそが、僕たちの未来へと続く、揺るぎない約束のしるしだった。
(完)