「撫で撫で…ふふっ。貴方ってほんとに可愛らしい」
「ふぁ〜…」
俺は今、人生の最高潮に居る。なぜなら、こんな綺麗なお姉さんに膝枕してもらっているのだから。
彼女は白いワンピースを着ていた。頭から流れる黒いセミロングは、シャンプーのCMで見る髪の様に艶がある。
そして胸が…でかい。目の前に広がる双丘の向こうから、お姉さんの黒い瞳が俺を覗き込んでいる。
「にしてもこの空間って何なんだろう…?」
「さあ…何かしらね」
俺がお姉さんと出会ったこの空間は、ピンク色の変な模様をした壁や床で囲まれて、迷路の様に入り組んでいる。天井はなく、そこには暗闇が広がっている。床や壁に触れてみると、僅かに暖かくて気味が悪い。
俺は仕事を終え、いつもの帰り道を歩いていたはずだ。何処かで意識が途切れて、気付いたらこの空間にいた。
壁に付いた小さい照明のおかげで多少の光はあるが、出口が見つからない。あてもなく彷徨っていると、俺はこのお姉さんと出会った。
とても驚いて警戒した俺に、お姉さんは優しく話しかけた。怯える俺を落ち着かせて、食べ物を分け与えてくれた。手元が暗くてよく見えなかったけど、ジャーキーだったと思う。
歩き疲れて座った俺にお姉さんが膝枕を提案した。俺はその厚意に甘えた。そうしたらやたらとお姉さんに可愛がられ、今や膝の上で蕩けている。
「あぁ〜…溶けちゃいそう…」
「あら、本当に溶けちゃうかもね」
「え? うわっ」
べちょ…
突然、背中に生ぬるい液体のような感触が伝う。驚いて半身を上げると、床がぬめりのある液体で濡れていた。
「ぎゅー…」
「へあっ…!?」
また驚く。お姉さんが背後から抱きついてきたのだ。背中に柔らかい感触が広がる。
「だって、私たちはこんなにも愛し合っているのだから…溶けちゃっても仕方ないでしょ?」
「い、いや…合ったばっかりだよ〜?」
ゴポ…
口では反論しても、直球に好意を伝えられてつい照れてしまう。俺は頭を彼女の胸に委ねる。お姉さんは当たり前の様に受け入れてくれる。俺は今、大人になって以来久しく感じることのなかった安心感を覚えている。
「ねぇ、一緒に溶けちゃいましょう?」
「う、うん……あれ…?」
ゴポリ……
いつのまにか、先ほど床に薄く流れていた謎の液体がお腹の高さまで上がってきていた。だが俺の頭は甘く痺れてしまって、お姉さんの腕の中から動く気にならない。
「ふふっ。この消化液に身を任せて…」
「しょうか……」
ゴポポ…
「ここは私の体内、消化器なの。安心して…貴方は死なないし、苦しむこともない。私と一つになるだけ…」
「わかっ……あ、……」
俺は恐怖を覚えることもなかった。代わりにあるのは安心感、心地良さだけ。羊水に漂う赤子の様に微睡みながら、俺は呑まれていった。
ゴプ……ゴポポポポ……