IS~二人目の男性操縦者は魔法剣士!?~ IFルート(リメイク版) 作:ピーナ
さて、アリサの家での霧島八雲一世一代の大勝負が終わってから二日後、僕はまた一世一代の大勝負を挑む事になった。……一世一代の大勝負ってそんなに頻繁に起こる事じゃ無いよね? 絶対。
まあ、それは置いておいて今回の舞台は、月村家。難易度的にはバニングス家と同じかちょっと上位? いや、忍さんは認めてくれてるのはお見舞いされた時に分かってるんだけど、恭也さんがなあ……。
「お待たせ、八雲君」
「いや、僕もちょっと前に来たばっかりだよ。だから、大丈夫。……それよりさ、服大丈夫かな? 変な所無い?」
今日の僕の服は黒のスーツという正装になっている。これはアリサの家から帰る際、杏奈さんから送られた物で、ロイさんの普段使用しているスーツを作っているところにオーダーメイドしたものらしい。ちなみに、値段は……怖くて聞けなかった。
正装と言う意味では普段から着慣れたIS学園や管理局の制服があるけど、両方ともそこまでかっちりした着こなしを強制されるものじゃないから(IS学園は改造OKなので、着こなしもある程度は自由。管理局も動きやすさ重視なので、礼服っぽさは薄い)、なんていうか……違和感が凄い。
「変な所なんてないよ? むしろ似合ってる。八雲君、大人っぽいから、そういうきちんとした格好似合うね」
「ありがと。僕的にはまだ、着てるっていうより、着られているって感じがするんだけどね」
まあ、このままの人生設計だとスーツを着るような生活ではなさそうだから、一生慣れる事はなさそうだけど。それこそ、冠婚葬祭の時くらいになりそうだ。
「それじゃあ、行こっか。お姉ちゃんが待ってるよ」
「そうだな」
ノエルさんとファリンさんのメイド姉妹に案内されて、僕とすずかは忍さんが待っている部屋に案内された。待っていた忍さんは開口一番、
「いらっしゃい、八雲君。いや、我が義弟君?」
という、強烈な先制パンチを食らった。……アリサの家以上に急展開だぞ。そんな僕の考えを知ってか知らずか忍さんは話を進めていく。
「私はすずかと八雲君が決めた事だから、それを尊重するわよ?」
「……それは嬉しいんですけど、話早すぎませんかね?」
「あら、長引く方がお好みだった? だけど、私はすずかの八雲君への気持ちを知ってるし、君がどういう人間かも知ってるつもりよ。それを加味して、君なら私の大事な家族を任せられると思った。だから、それを最初に言っただけよ」
「えーっと……、ありがとうございます?」
「どうして探り探りなの、八雲君?」
「いやー、テンポ急すぎて、まだ現実か分からなくてさ」
「夢でもなんでもないよ? ……そんなに気になるなら、キスして証明してあげよっか?」
……今、気付いた。最近すずかの時折見せる、イタズラを仕掛ける一面は、忍さんの影響なんだと。そういや、すずかは猫好きで月村家には何匹も猫がいるけど、すずかのこの猫っぽい所はそれと関係するのかな?
となると、犬好きのアリサは犬っぽいってなる気がする。真面目でしっかりした所とか。
皆を分けるとしたら……
犬=アリサ、簪、虚さん
猫=すずか、本音、刀奈さん
かな。なんとなくだけど。
「あらあら、本当にラブラブねえ。私も恭也に会いたくなって来たわ」
「そういや、恭也さんは居ないんですか? てっきり僕は二人で待っていると思ってたんですけど」
「ええ、家族の話し合いだから、外してもらったわ」
……まだ、プロポーズしてないんですね、恭也さん。僕が初めて忍さんに会った6年前から付き合ってて、年齢的にも、その他もろもろの問題も無いだろうに。
「そういや、お姉ちゃんと恭也さんはどっちから告白したの?」
「言ってなかった? 高三の時、私からよ。美由希ちゃんなんかには『えっ、まだ付き合ってなかったんですか? 恭ちゃんと忍さん』って言われたわ」
「だって、私が小学生になる頃にはもうラブラブだったよ? 美由希さんの反応になるのも分かるよ」
ちなみに僕達と忍さんたちの年齢差は10歳。何時知り合ったかは知らないけど、少なくとも本人達が付き合い始める数年前から周りは二人が付き合っていると思っていたらしい。
「恭也さんは鈍感なんですか?」
「違うわ。恭也はヘタレよ」
なんか意外だ。恭也さんのタイプなら忍さんの好意に気付かない方だと思ったんだけど。
「何でも、私の好意自体は少なくとも高二の時点で気付いていたんだって。それが友人への物か、異性としての物か、自分の勘違いか分からなかったから言い出せなかったんだって」
……踏み出すのが難しいって言うのは理解できるから一概にヘタレとは言えないけど、でも、言い出せないんだから否定も出来ないか。その頃の二人を知らない僕としてはこれ位しか言えないかな。ってか、鈍感とヘタレのハイブリット?
でも、僕の知る限りの二人はいっつもイチャイチャ、ラブラブしてるバカップルだからなあ、恋はそこまで人を変えるんだねえ。
「さて、今日はここに部屋を用意したから一日だけでもゆっくりしていきなさい」
「それじゃあ、お言葉に甘えさせていただきます」
アリサの家と同じ感じでノエルさんに案内されて、僕は今日泊まる部屋に案内された。やっぱり今日もくたびれたのでスーツの上だけ脱いで部屋にあったハンガーにかけた後、僕はベットで横になった。……見慣れた寮の部屋や自分の家と違って高い天井だなあ。
そんな事を考えていると部屋のドアがノックされた。
「はい?」
「私よ。恭也もいるわ」
ノックしたのは忍さんでさっきはいなかった恭也さんもいるらしい。何の用だろ。
「今開けます」
ドアを開けると、二人が立っていた。うん、やっぱり美男美女のカップルで絵になるなあ。
後、恭也さんをを見ると身長が欲しいね。僕と恭也さんは大体10センチくらい違う。恭也さん位……とは言わないけど、170は欲しい。
僕は恭也さんと忍さんを招き入れて、部屋に備え付けれていた椅子に座ってもらう。僕はベットに腰掛けた。
「それで、なにかお話ですか?」
「ええ、2つほどね。1つは恭也が直接会いたいと言ってたんだけど……」
「俺の方はもう終わった。……父さんの言っていた通り、吹っ切れたようだな」
「その節は本当にご迷惑をおかけしました。でも、吹っ切れたわけじゃないんですよ。色んな人に後押しされて、吹っ切らさせてもらいました。それが無ければ、今も変わらなかったと思います」
変わったのは僕に手を差し伸べてくれる人がいるというのを気付けた事。変われたのはその差し伸べてくれた手を握れたから。多分、僕の本質は変わっていない。
「そうか……。忍、次の話に行ってくれ」
「分かったわ。……もう一つの話はね、私達月村家に関わる話よ」
月村家に関わる話? 皆目見当が付かない。
「私達はね、『夜の一族』と称する、いわば、吸血鬼なのよ」
「はい? 吸血鬼って言うと、ファンタジーとかで出てくる人の血を糧にするあれですか?」
一応次元世界では確立した技術である魔法ではなく、ファンタジー的な魔法も存在するらしいけど、まさか地球でそんなファンタジーな話を聞くとは思わなかった。
「そう。といっても、昔は物語の中の吸血鬼そのものだったらしいけど、長い間、人間と交わってきて、私やすずかは人より高い能力くらいで、吸血衝動とかの吸血鬼らしさはないわ。……これを聞いてどう思う?」
「どうって……。別にどうも思いませんけど? 流石に魔法関連で色々経験してきた僕でも吸血鬼には驚きましたけど、それだけです。僕の中では、おしとやかだけど、時折小悪魔めいた一面を見せてくれて、そんなギャップもカワイイし、それになにより、僕が差し伸べてくれた手を払いのけてもずっと僕の近くに居てくれて、優しく受け入れてくれて、今は僕を支えてくれる。そんなかけがえのない女の子ですよ。生まれがどうとか、そんなの関係無いです。恭也さんだって同じでしょ?」
「そうだな。俺にとっても忍はかけがえのない人だ」
「恭也……」
やっぱりバカップルだよ、この二人。早くゴールしちゃえばいいのに。……ちょっとけしかけるか。
「時に、義姉さん。義兄さんとの結婚はいつの予定で? 出来れば僕が卒業するまでにお願いしたいんだけど。卒業して一年はあっちで忙しくなるし」
「あら、それは急がないといけないわね」
僕の言葉を受けて、がぜん楽しそうな表情でそういう忍さん。
「ちょ、ちょっと待て! 俺にだって心の準備がだな!」
「もうそろそろ、夕食だと思うんで、僕は先に行ってますね。という訳で二人ともごゆっくり~」
そう言って部屋を出た。ちょっと力技だったけど、まあ、家族になる人たちの幸せを願ってこれ位の事はね。
今日の夕食はよく分かりませんでした。(忍さん曰くトルコ料理との事)分かったのは、良い物を使ってるって事だけ。なので抜群に美味しかった。でも……皆の作ってくれるのがやっぱり一番だね。
部屋に戻って、備え付けられた本棚に有った本(明治時代の日本文学押しなラインナップだった)を適当に取ってベットに腰掛けて読んでいると、ドアがノックされて、
「八雲君、今良いかな?」
とすずかの声が聞こえた。
「良いよ。特に何もやってないし」
僕は立ち上がって読んでいた本を本棚に戻し、ドアを開けて招き入れる。僕はベットに座り、すずかは僕の横に座る。おお、デジャヴュ。
「そういや、八雲君は何をやってたの?」
「そこにある本棚から適当に取って読んでた。ってか、客室のここになんで本が置いてあるのさ?」
「八雲君、特に荷物とか持って来てないでしょ? 時間が余ると思ったから、お姉ちゃんが用意したんだと思うよ」
「そっか、明日帰る時にでもお礼を言っとかないとな」
読む時間は無かったけど、こういう心遣いは嬉しいし。
「……ねえ、八雲君」
「うん? 何」
「ありがとうね」
「えーっと……何が?」
「今日、お姉ちゃんが私達の事話したでしょ? あれ、私も聞いてたんだ。お姉ちゃんが盗聴器を持って、その受信機を私が持っててね。それで、私を受け入れてくれたから、ありがとう」
別にお礼を言われるほどの事じゃ無いと思うんだけどなあ。愛する人を受け入れるなんて当たり前の事だと思うし。……って、ちょっと待てよ。
「てことは……」
「聞いてたよ、八雲君の言葉♪」
マジか……。穴があったら入りたい。いや、穴を掘ってでも入りたい。
「私は嬉しかったよ?」
「そりゃ良かったけど、僕は今になって恥ずかしくなって来たよ」
あれは、すずかに聞かれない前提で僕の真剣さを二人に知ってもらいたかったから言った言葉だったもん。
「でも、やっぱり不安だったし怖かったんだ。他の皆にもそう言う気持ちがあったけど、八雲君には一番大きなのがあったよ」
「皆には言ったの?」
「うん。この前、八雲君が買い物に行ってる日にね。皆受け入れてくれたよ。アリサちゃんには『すずかの生まれがどうとか、そんなの関係無いわよ。すずかは私の親友で、一緒に
「アリサらしいね」
「だよね。でも、すごく嬉しかった。何の色眼鏡も無く私を見てくれる人たちがいる事が」
人とは変わっている所、違っているところって言うのは総じて悩みになる事が多い。仲間外れにされる可能性があるから。それは、ほんの些細な物でもだ。それを知られて外されるのが怖いのは当たり前の感情で、受け入れられて嬉しいのもこれまた当たり前の感情。知られるのが怖いから隠すけど、大事な人には隠したくない。だから伝えるんだけど、それにだって凄く勇気のいる事だ。それをやったすずかは凄いと思う。
僕への場合、忍さんがすずかを気遣ってこういう形になったのかもしれない。
だけど、まだすずかにも不安が少しあると思う。だから、今僕に出来る事をやろう。……さっき読んでた本関連で行こうかな。丁度良い感じのシチュエーションだし。
「すずか」
「何?」
「月が綺麗ですね」
ある意味、使い古された言葉。だけど、この部屋の窓から見える月は大きくて綺麗な満月。ここまで相応しい言葉もないと思う。大文豪に感謝だ。
「死んでもいいわ。……なんて嘘でも言わないよ? 八雲君とずっと一緒に居たいから」
嬉しいねえ、ここまで想ってくれるなんて。
「ありがと。まあ、丁度読んでた本関連で思い出してさ。ちゃんと顔を見て言っておこうと思ってね。それとこれ」
そう言って取り出したのは数日前のアリサの時と同じ小箱、そこにはサファイアをあしらった指輪。
「これ……」
「想像通りの物だよ。言葉にするのは簡単だから、形にもしようと思ってさ。……すずか、さっきも言ったけど、僕にとってはすずかがどんな生まれとかそんなのは些細な事なんだ。大事なのは僕が君を愛していて、ずっと一緒に居たいって気持ちだと思うから」
「……ホント、八雲君はズルいよね。八雲君はずーっと、私の心の中に居るんだもん。だけど、それが心地良いと思えるくらい君が大切なんだ。だから、八雲君が私を受け入れてくれたように、私も受け止めるよ。八雲君の想い全部。……指輪、はめてくれるかな」
そう言って、すずかは僕に左手を差し出した。僕はその手の薬指に指輪をはめる。
「はー……渡せて良かった」
「なんかお疲れ?」
「気持ち的な問題だけどね。挨拶して、大事な事を伝えようと思っていてずっと気が張ってたから」
「それなら、今日はゆっくり休みなよ。そばに居るから」
「ありがとう。それじゃ……おやすみ」
「おやすみ、八雲君。今日はお疲れ様」
八雲君はベットに入るとすぐに眠ってしまった。それだけ精神的に疲れてたんだろう。その辺は私には分からない。だけど、やっぱり八雲君にはありがとうだよね。ここまで私達の未来の事を考えてくれたんだから。だけどとりあえず、アリサちゃんに連絡しよう。
『もしもし、何、すずか?』
「アリサちゃん、どうして言ってくれなかったの?」
『ああ、指輪の事? だって、言ってしまったら貰った時の感動が薄くなるでしょ。この気持ちは私だけじゃもったいないわよ。皆にも味わってもらわないと」
確かに、八雲君が指輪を見せてくれた時の嬉しさは言葉にできない物だった。アリサちゃんがもったいないって言うのが良く分かる。この感動はまだ渡されていない四人にも伝えたいな。
「じゃあ、刀奈ちゃん達には内緒にしておかないとね」
『そうね、それが終わるまでは身に着けるのを自重しとくわ。で、アイツは寝てるの?』
「うん、そうだよ。今日はお疲れなんだって。色々あったから。私の事も伝えたし」
『そう。……今日はこの後どうするの?』
「うーん、私ももう寝ちゃおうかな。八雲君の横で」
『最後の一言は余計よ。だけど、私もそうしたから何も言えないわね。おやすみ、すずか』
「おやすみ、アリサちゃん」
電話を切って、ふと八雲君の寝顔が見たくなったから、覗き込む。
普段は大人びた印象の八雲君も寝ている時は年相応の感じ。そういうギャップも八雲君の魅力だと私は思う。
「おやすみ、八雲君」
私は彼の唇に軽くキスをしてからベットに入り、彼に抱きつく。
私に伝わる彼の温もりが私を幸せにしてくれる。
もう何年も前に芽生えた恋心は、時間と共に大きくなり、八雲君が応えてくれた事で実を結んだ。次はこれを私だけじゃなくて、八雲君と、アリサちゃん、刀奈ちゃん、虚ちゃん、簪ちゃん、本音ちゃんと育てていこう。
やり方は簡単。皆と一緒に幸せな日々を送る。それだけ。
次の話も全く出来てません……。6パターンのシチュエーション&セリフは中々しんどいです。
また空きますがよろしくお願いします。
活動報告にて、オリジナルISの新ネタを上げました。興味があれば見て感想や意見を頂けると嬉しいです。