IS~二人目の男性操縦者は魔法剣士!?~ IFルート(リメイク版) 作:ピーナ
入学から一週間、僕はアリーナでイギリス人と戦った。最初は相手の実力を見るために回避に専念してたんだけど……大口を叩いた割に大した事がない。いや、そもそも6年半ひたすら戦い続けたイカれた僕と比べるというのは間違っているか。
空戦のスキルを全て活かせるとは言わないけど、8割位は活かせている。生半可な実力じゃ何千時間と飛んでいる僕を落とせない。
それと、「逃げてるだけの臆病者」と声高に侮辱するけど、英語には様子見って言葉がないのか? ……もういいや、終わらせよう。
てっとり早く終わらせるために、僕はイギリス人の武器を破壊してから、一気に決めた。まあ、こんなものだろう。
もう一人の男子は素人。だから出来る事が限られるし、慣れた事しかしてこないだろう。それにあった戦法を取れば良いと考えていた。
蓋を開けてみたら剣一本の近接特化だったから、距離に入れさせず遠距離で倒した。猪を倒す事は難しくない。
そして、嬉しい事に実力がありすぎるせいでクラス代表からも外れる事になった。この一件に関しては担任にお礼を言いたい。
私は一年一組のクラス代表決定戦を見に来ている。
出場するのは一人目の男性操縦者で『ブリュンヒルデ』織斑千冬先生の実弟、織斑一夏君、イギリスの代表候補生で今年の入試主席、セシリア・オルコットちゃん、そして、二人目の男性操縦者で私のルームメイト、霧島八雲君。
しかし、見に来た人間の全員がオルコットちゃんの勝ちに決まっていると予想していると思う。正直、結果が分かり切っている男性操縦者の物珍しさだけで来ている人がほとんどだ。
私が見に来た理由はルームメイトの霧島君の応援だけど、予想は他の人と同じ、オルコットちゃんの勝ちだと思っている。
私自身、国家代表だから、代表候補生になる難しさを知っているし、IS戦の素人と熟練者の差というのも理解しているから。
『対戦カードをセシリア・オルコット対織斑一夏から、セシリア・オルコット対霧島八雲に変更します』
生徒会で聞いた話では織斑君の専用機の搬入が遅れているので既に専用機を持っている二人の試合からになったんだろう。
そのアナウンスが流れてすぐ、二人がアリーナに姿を現わした。
オルコットちゃんはイギリスの最新鋭機『ブルーティアーズ』。背に四枚のフィン・アーマーが特徴のISで手には遠距離重視のイギリス製ISの代名詞ともいえる『スターライトMK3』。対する霧島君はバニングス社の技術検証機『出雲』。特徴は装甲部分が少ない……っていうか、ほとんど無い事。ISというより、中世の騎士の着る儀礼用の服って感じ。彼の持ち物の中にISスーツはあったのは昨日、今日の決定戦の用意をしていた時に偶然見えたから、着ているはずだ。服っぽいとはいえ彼のISは珍しくほぼ全身装甲であるとも言える。手にはスターライト程ではないがそれでも長銃身のライフルを両手に二丁。
『あら、逃げずに来ましたのね。噛みついてきたもう一人の方ならともかく、あなたはお逃げになるのかと思っていましたわ。恥をかく前に降参したらどうですの?』
……入試主席だというだという事から、オルコットちゃんは代表候補生の名に恥じない実力を持っているんだろう。でも、今の慢心の塊の言葉も、切っ掛けになったと本音ちゃんが言っていた日本をバカにする言葉も候補生までならともかく、それより上を目指すなら、失くさないといけない物だ。代表候補生も十分重い立場だけど国家代表はそれ以上。そんな人間に人種差別や男女差別を簡単に口にする人間は選ばれない。国の顔となる国家代表はそれほど責任のある立場だし、慢心する人間ではその立場に立てるわけがない。それすら気付いていないなら……その程度ってだけだけど。
まあ、それに気付くかどうかは本人次第だし、それを注意すべきなのは教師であり、同国の先輩だろう。私が言ってもあんまり意味が無いと思う。
『…………』
そして、その言葉を聞いても相変わらずの霧島君。凄い集中力……なのかな? それとも、その事すら興味無しって事?
『……まあ、これでお別れですわ!』
開始の合図とともにオルコットちゃんはいきなりレーザーを発射する。しかし、霧島君はそれをあっさり避ける。
『なっ⁉ まぐれですわ!』
オルコットちゃんはそう言うけど、あれはまぐれなんかじゃない。霧島君は発射態勢に入る直前には既に回避行動に入っていた。
それからは、リピート再生を見るように霧島君は最低限の動きだけで避けていく。ブルーティアーズの第三世代兵装である、BT兵器を使ってもそれは変わらない。この出来事に、見に来ていた人たちがざわざわし始める。素人だと思った男性操縦者がとんでもない実力者だったから、当たり前だろう。
『あなたはっ! 逃げているだけの臆病者ですの⁉』
いや、そんなんじゃない。霧島君はオルコットちゃんの一挙手一投足を観察している。何も余計な物もなく、ただ事実のみを頭の中に入れている状態だと思う。なら、それが終わった瞬間……、
『Fバレット、シュート』
霧島君はこの試合初の言葉を発するとともに攻撃は高速でBT兵器を撃ち落としていく。一瞬で全部だ。しかも無駄弾なし。ただの射的ならともかく、実戦の射撃でこの結果はありえない。
『なっ⁉』
突然の出来事で驚きの声を上げるオルコットちゃん。丁度、ライフルでの攻撃のタイミングだったのでそれが一瞬動きが止まる。霧島君はその隙すら逃さない。放った弾は吸い込まれるようにスターライトの銃口に。そして、爆散する銃口。
『Fバレット、フルドライブ。ファラクスシフト』
その言葉と共に、霧島君の前にエネルギーの弾丸が大量に準備される。……密集陣形(ファランクス)とは上手く言ったものだ。あの弾幕は普通でもそう簡単には避けられない。
武器を破壊され、動揺の隠せないオルコットちゃんにこの飽和攻撃が避けられるわけもなく、そのまま、
『勝者、霧島八雲』
霧島君の勝利で終わった。
アリーナ内は静まり返っている。それもそうだろう。オルコットちゃんの勝利かと思っても見てみたら結果は正反対の霧島君の圧勝。
……正直な所、私も勝てないだろう。実力的にもそうだけど、多分、私がどんな手を打っても霧島君は全て切りかえしてしまうだろう。それくらいの差はある。
必要最低限の動きで避けれるのは相手の攻撃の事を把握すると共に、自分の能力、機体の能力もちゃんと把握していないといけない。これらが高いレベルではまってようやく何とか出来るレベルの事だと思う。それを何事も無かったかのように出来る霧島君は凄いと思うと共に、なぜそこまで慣れているのかが気になる。
『織斑先生、エネルギーもほとんど減っていないですし、このまま、二試合目お願いします。アリーナを仕える時間も無限じゃないですし』
いくらエネルギーが減っていないと言えど、そこそこ長い時間戦っていたのだし、霧島君は素人なんだから休ませるのが普通だろう。
『分かった。すぐに準備させる』
少しして管制室に居る織斑先生からの返答が聞こえた。その言葉に驚きを隠せずアリーナ内はざわつく。
何人も見に来ている上級生たちは連戦の辛さを自分たちの経験で知っているから、その判断を下した織斑先生に、一年生は先輩たちの雰囲気にだ。
ただ、遠目から見える霧島君はいつもと変わらない。目を瞑り一人、その時を待つ。……いや、彼の普段の感じから行くと『独り』の方が正しいかもしれない。
『試合開始!』
私が考え事をしていると、織斑君と霧島君の試合は始まっていた。
開始から少しの間はどちらも動かない。霧島君は持っているライフルすら構えない。さっきと同じなら、霧島君は織斑君がどうやって仕掛けるかを伺っているんだと思う。織斑君の方は……どう仕掛けるんだろう?
そう思っていると、織斑君はブレードを呼び出して、一気に仕掛けた。
が、しかし、丁度二人のスタート位置の中間地点辺りで、霧島君は攻撃を開始。恐ろしいまでの精度の高さの攻撃が次々と織斑君に吸い込まれていく。
……観客席から見ていると、残り10メートルちょっと、スタート地点から残りたったの半分。しかし、その半分がどんな距離よりも遠い。その距離が詰めれず、サンドバックの様に撃たれ続ける。そして、ひっくり返らず、そのまま試合は終わった。
織斑君は一週間、幼馴染の篠ノ之ちゃんと剣道の特訓を受け続けた。それを無駄だとは言わないけど、効率の良い訓練とも言えない。地に足を着けてする剣道と浮いているIS戦では結構違いが生まれてくる。ただでさえISの近接格闘戦は難しいのだ。素人が簡単に出来る事ではない。
……二試合目はともかく、一試合目の動きを自分でやろうと思ったら、無理だ。スタイルが違うとかそういう事を抜きに私はあそこまで的確に最適な判断を下し続けれない。多分、世界最強の織斑先生でも無理だと思う。。
そして私は知りたいと思った。霧島君の強さの訳を。ううん、違うわね。彼自身に興味を持った。これが本音ちゃんの言う『ほっとけない』なのかな?
ほぼ、楯無視点でのセシリア戦と一夏戦でした。
今作では序盤の生徒同士の模擬戦での八雲視点は無いと思います。理由としてはこの作品の彼にとって模擬戦は意味の無い試合なので、何も思いません。だから、ただ、相手に合わせて最適な動きをするだけなのです。
事件の際は単独戦闘なので八雲視点の戦闘描写になりますが。