もはや自分の世界よりこの世界にいる事が当たり前になりつつある貴方ですが、今日は少々アンニュイな気分。テンションに身を任せすぎた反動とでも言うのでしょうか。いっそのこと禁酒してくれたらやらかしも減るのですが望み薄でしょう。
ヤチヨのコスプレでツクヨミ内で黄昏る貴方に周囲のユーザーは空気を読んで話しかけるような事はありませんでした。作中でもそんな描写はありませんでしたが意外とツクヨミユーザーの民度は優秀なのでした。
「……」
ネオンライトみたいにキラキラと輝く光を頬杖をつきながら無表情で見つめている貴方でしたが、その静かさもあまり長続きしません。
「あー!ヤチヨ!!」
ブッ!とかぐやとの唐突のエンカウントに吹き出す貴方ですが、切り替えの速さは流石の一言。カスらしいところを見せていきます。適当に話を合わせ、何用かを尋ねてみれば、探し人がいるとの事。はて、誰だろうか、と首を傾げる貴方。かぐやが探すような人など原作に居ただろうか?と考えてみますが心当たりなどありません。
兎に角、まず誰なのかを尋ねてみれば返ってきたのは『ジョン』なる何某。いや、誰やねんそいつ、と思わず真顔になった貴方はもう少し深掘りして聞いてみる事にしました。
そしたら出るわ出るわエピソードが。はー、月にいた時に知り合った友達とな?誰よその馬の骨!と姑みたいな気分になる貴方。つーかロクでもない人じゃないか?と真面目に思う貴方はそれとなーく探ってみますがかぐやの意思は固く、探す事をやめる気はないそうで。
ここでようやく思考が真面目方向に進む貴方は考察していきます。そのジョンなる人物はもしや私と同じようにこの世界に行き来できるのではないか、と。そして貴方と違い原作にバリバリ介入するタイプと見た。
流石カスです、自分のことを棚に上げることに関して右に出る者はいないでしょう。まず鏡を見ることを勧めます。
そこまで考え、貴方は義憤に駆られます。百合に挟まる事は懲役十年または無期懲役、一千万以下の罰金と決められているのです。許さでおくべきか、と拳を握る貴方ですが、かぐやはその様子を不思議そうに見ています。しかし、そろそろヤチヨのスリープ時間が終わるタイミング。このまま行動して本物とブッキングするのは避けたい。
そこでヤチヨからの紹介という誤魔化しで翁と交代する事にします。
今日は勉強!と彩葉に突っぱねられた。意思は硬いようで私のおねだりも袖にされてしまった。頬を膨らませ不満ですー、って顔をしてみる。
「ぶー……」
今も私に背中を見せ机に向かってペンを走らせている。ちょっと背中をつつ〜とイタズラしたくなるけどそれしたら怒られるのが目に見えてるからやらない。
「今何か配信したいものないしなー」
バタバタとフローリングの床に体を投げ出して足をばたつかせてみるが状況は変わらない。そこでようやく思いついたのは、ジョンの事。やりたい事の中には友達を見つけることも入っている。
まぁ配信ばっかしてて疎かにしてた事は否定できないけど。ジョンがその程度で怒るとは思えないしセーフ!と私は自分を誤魔化してスマコンを装着する。
そうしてツクヨミの中へと入って、その辺をぶらぶらしてみる。
「ジョンー!出てこーい!」
うおーっ!と両手をあげ呼び掛けながら歩く。犬DOGEも同じように吠えて私の周りをクルクルと回っている。その中でもかぐやのファンですー、って声を掛けてくれる人が度々いて
「ジョンって知らない?」
って聞いてみたけど、みんな知らないみたい。なんかもうコーラ振ったりしないんですか?って聞いてくる人も居たけどよく分かんなかった。
「ダメかー……」
やはり手掛かりもないと探しても見つからないか、と気落ちする私はその時、見覚えのある背中を見つけた。石段に座り、白い髪のツインテールの毛先を地面にへにゃりとくっつけている彼女。普段見る活発そうな雰囲気はそこになく、まるでフッと消えてしまうのではないか、というような気配があった。
「あー!ヤチヨ!」
私にはそれがまるでジョンが消えたあの時みたいに見えて、そんな雰囲気など吹き飛んでしまえ、と大声で呼んだ。
「ブッ……!お、オヨヨ。元気だねぇ……」
驚いた顔も束の間、すぐに微笑んだ顔でこちらを振り返る。
「私に何か用かにゃー?」
ニッコリとちょけながら尋ねてくるヤチヨに、私は言う。
「人を探してるの!ヤチヨなら何か知ってるでしょ?」
その言葉に、ヤチヨは首を傾げる。本当に心当たりなどなさそうな、不思議な顔で。
「探し人かー、どんな人?」
ツクヨミは私の庭だからね、言ってくれたら分かるかもよー?と胸を張りえっへんとドヤ顔を見せるヤチヨに期待して名前を言う。
「ほら、前に聞いたじゃん、ジョンって人」
「ジョン……?」
その一言にまるで先ほどまでの表情が嘘だったみたいに真顔になるヤチヨ。ちょっと怖い。
「ちなみにその人ってどんな人……?」
恐る恐る、と言った様子でヤチヨは尋ねてきた。どんな人、どんな人かぁ。
「えーっとね、私の友達!月にいた頃からの!」
ジョンは凄いんだよ!月にいた人たちをみんな巻き込んでライブみたいな事してて。つまんなかった月を変えちゃったの!
「へ、へぇ……ギルティかなぁ?」
「ヤチヨも探すの手伝って!」
「うーん、どうしてそこまで探すの?」
もしかしたらその人はとうに君との約束なんて忘れてるかもしれない。いや、もっと酷ければもう居ないかもしれない。何一つ確証はないのに、探すの?と。
……その事がよぎった回数なんて数え切れないくらいあるよ。月にいた時だって、一人になった後だって。
「それでも、約束したから」
頭についている髪飾りはその証。また彼女と遊びたい。地球に来て感じた事全部、ジョンに伝えたい。
「……そっか、大事なんだね」
「うん!私の大事な友達!」
彩葉も好きだけど、ジョンはまた別の意味で好き。彼女が私を地球に連れてきてくれたようなものだから。
「仕方ないのです、このヤッチョも協力しましょう!と、言いたいところだけど」
「うぇ!?協力してくれる流れじゃないの!?」
「ヨヨヨ……ヤッチョも忙しい身なのです。日々の玉藻前と言いますか〜」
掴みどころのない顔で泣き真似をするヤチヨ。
「……ヤチヨって結構適当だよねー」
「うぐっ」
私の一言に胸を抑えるヤチヨは鳴らない口笛を吹き誤魔化しているが私の目がジトーっと見つめれば
「だけどご安心!助っ人を呼んでおくから、その人に頼るといいよ!」
「助っ人?」
そうして消えたヤチヨの代わりに後から現れた狐のお面をした女性を見て
「あー!彩葉にセクハラした奴!」
そう言って指を指した。
カス
鏡置いときますねー。自覚ないまま自分をグサグサナイフで刺してる事に気が付いてないカス。
かぐや
それから二人で探してみるもやはり見つからず。最終的に人を集めればいいんじゃね?と思い付き即興路上ライブをした。翁とのコンビはまるで慣れ親しんだような、不思議な感覚だった。
ヤチヨ
……なんか寝てる間に私を見たってSNSの投稿が目立つなぁ。一回調べてみようかな