【MMOで〇〇作り】配信で作った川に水竜が住み着いた 作:荼枳尼天
「【大切断】ッ!!」
ドッッ
地面が吹き飛び、土煙が柱のように巻き上がる。
時刻はゲーム内で18時付近。
もう空は藍色に染まっており、視界が頼りない情報に変わりつつあった。
通算6回目のアーツ大切断。
クレーターが数珠つなぎのように連鎖している珍妙な光景が出来上がっている。
:頑丈ね
:石器じゃ耐えられん大切断をこうも耐えるとは
:不壊だったりするんかな?
白い大斧。
ナナイ自身も壊れる可能性を心配していたが、今はもう気にすらしていない。
理由は見た目の変化だ。
石器の斧、例として【鋸斧】を上げるが、石器は壊れる際にヒビが入ったり、刃が欠けたりしていた。
だが、この白い大斧にそういう類いの変化はなく、土すら付かない優れモノ。
やはりこの斧は強いんだ。と妙な確信の仕方をするナナイ。
今頃オフィスビルの一角で悲鳴が上がっているだろうがナナイの知ったことではない。
「そういえば、狼が襲ってこないね?」
気付けば、ナディアともきゅカーバンクルも近くの木の上で木の実を食べている。
いつまで食べてるんだ。
:そりゃね
:俺が狼でも近寄らん
:何時間も爆音響かせてる危険地帯に入るヤバいやつはおらん
考えてみれば当然で、白い大斧を用いた【大切断】を行使し続け、石塊の接触ダメージで死にかけた時以外は常にアーツ工事をしていたため、ここら一帯には数時間続けて爆音が響き続けていた。
わかりやすい危険地帯に獲物を探すために踏み入る狼はいるはずもなく、その他の訪問者もいなかった。
「そっか。それじゃ一旦帰ろう」
「きゅ!」
「もきゅ〜」
2匹も付いてくるようでナディアは定位置に、もきゅカーバンクルは一歩後ろを付いてきている。
「ご飯食べてお水飲んで…考えると、クレーターも結構拠点に近づいてきたね」
:たしかに
:小川までつなげることを考えると先は長いけど
:鍬でやるよりも時間は短縮できるけども
「なによ、やり方に文句あるわけ?他にいい案でも?」
:街
:土魔法
:spell10が泣いてるぞ
「だまらっしゃい!」
街に行く。
普通のプレイヤーなら渋らない提案だが、ナナイは違う。
街にいかず、周辺の探索だけで今までやれているため、街に赴くメリットを理解しつつも、「街にいかない」という選択にアイデンティティすら感じて来ている現状のナナイ。
【白い大斧】の登場で元々薄かった街に行くメリットがさらに薄くなってしまった。
最早街に行く選択肢を選ぶつもりがない態度を隠さなくなりはじめた。
とはいえ、今までやってきた【大切断】工事だが問題も出始めてきている。
「…暗いなぁ…【猫目】スキルとかないの?」
:暗視ね
:あるかもだけど、生えるまで待つか?
:大人しく火を持ち歩いたほうが良さそう
「火を持ち歩く…って言うと、松明?」
:それが安牌か
:現状だとそれが精一杯か?
「それに、クレーターを整えるのだって、試行錯誤していかなきゃ」
問題というのは、微調整の方法と、光源の確保である。
土木作業は、視界が薄暗ければそれだけおざなりになる。
流石にそれぐらいは理解しているナナイ。
どうにか火を持ち運びできれば夜間の作業が楽になる。
「…食事終わったら松明作ろっか。作り方は?」
:石炭と棒を縦1列2マスに配置しようね
:スライムから落ちるジェルと木材をクラフトしよう
:商人から買おう
「マインなクラフトのクラフトメニューは聞いてない!他のヤツもどうせ他のゲームのでしょ!」
:商人はガチ
:街池
:まちまち
「うるっさ!」
わざわざ素材から松明を自作するプレイヤーが少数派なこともあり、リスナーに松明を作る方法を知る者はいなかった。
だが、知らないから何も言わないリスナーも配信の場にはいない。
:棒、布、油が必要らしい
:獣脂は?回収できてねぇんだっけ?
:油なしだと無理?この前つくった紐と棒だけじゃだめなの?
「この前の狼は倒したときは肉と骨と皮しか落ちなかったなぁ…」
そう話していると拠点が見えてくる。
簡素なテントと乾燥ラック2基、切り株の作業台のみの、素寒貧な拠点だ。
強化された筋力で素早く火種を作り、焚火を起こす。
小さい火が大きくなり、光も闇を退け始める。
カーバンクルたちが焚き火のそばによっていき、長く細い枝に木の実を刺して焚き火に差し出している。
「……焼きマシュマロ食べたい」
:実はカーバンクルって頭いい?
:草
:心休まるな…
ナナイも肉を枝に刺して、焚き火で焼き始める。
ある程度焼きあとがついたら、齧り付く。
焼き立ての熱と、肉汁、野性的な味が口の中に広がる。
「…美味しくない」
「きゅ〜」
「も、きゅ〜」
げんなりしたナナイの横で、カーバンクルたちが至福の表情で焼き木の実をかじっている。
その落差にリスナーも笑いを禁じ得ない。
:カーバンクルたち表情豊かで草
:渋い顔と至福の顔の差よ
:もっと美味そうに食え
バクバクと肉を手早く食い終わり、長めの棒と植物繊維の紐を何本か取り出す。
表情の渋さは変わらない。
「…紐が、なくなるぅ…」
これまで、それなりの頻度で紐を使い続けたため紐のストックの底が見え始めている。
乾燥させた草のストックはまだあるが、今は時間をフルに使いたいところ。
紐を作る時間も惜しいと感じてしまう。
:ついに紐がなくなるか
:まずいですわね
:万能な紐さんが…
「…とりあえず、松明作ろ」
作る、と言っても棒に枯れ葉と一緒に紐を巻くだけだ。
きゅっ、きゅっ、と筋力を十全に用いて紐を固定する。
「【道具作成】!松明完成……つくった感じしないんだけど?!」
なんと言っても、棒に紐を巻いただけだ。
【原始的な松明】
完成度:低
これから、脂なしの松明を作るに当たって、紐の消費量はこれまでの倍以上に跳ね上がる。
リソース管理。
これが現状のナナイの頭を悩ませる問題である。
感想ありがとうございます。
返信ができず申し訳ありません。
なろうでも配信しています。読んでいただければ幸いです。