(おっ!? スッゲエ逸材みっけ!!)
(なっ……異世界の女神!? ダメです〜! 連れて行かせませんよ〜!)
そして何故か管理職を持っているだけの一般神が必死に防衛する。
(おっ!? スッゲエ逸材みっけー!)
(なっ……異世界の女神!? ダメです〜! 連れて行かせませんよ〜!)
「…………ハァ……」
皆と同じような生活を送っているというのに、今にも膝をついて倒れ込んでしまいたくなる。
ここは帰宅中の道路であると言うのにだ、ビジネスバックを今すぐ放り投げ、車も通る道路の真ん中で寝転がりたい。
(そうだよそうだよ〜ササッと自殺してウチのほうに来なよ〜! ここよりもぉ〜エキサイティング★ だからさ!)
(もう滅びる寸前なんですからっ、さっさと消えてくださいよ!)
(イッヤでーす、だって目の前で世界救える人材がいんだからねっ!)
そんな気持ちが強くなる。
自分という十把一絡げの凡俗なぞこの世の中には不要だろう。
一歩、また一歩と歩くたびに重りを背中に乗せられているかのように足取り重く、また息苦しくなる。
(いっそのこと自殺でもするか……)
(っ! そうそうそうっ! レッツ自★殺!)
(絶対にダメ〜〜!!)
(あっちょっ! 邪魔すんなし!)
負の連鎖が繋がっていく、それも悪くないとも思えてくる。
明日なんて来なければいいのに。
仕事で致命的な失敗をしたわけではない、日常生活にも不満は少しあれど納得出来るぐらいには金に困っていない。
なのに。
辛い。
ただの日常が。
(そうそう、息苦しいよね〜だからさぁ、いっぺん死のう!)
(連れて行かせません! 何があろうとも! 頑張ってください! 貴方はこの世界に必要な人材ですからっ!)
漫画やアニメのような刺激的な生活が羨ましく思う。
生死を掛けた戦い、死線を超えるカタルシス、楽しく愉快な仲間。
そんな中学時代に卒業すべき妄想に何故か囚われる。
理性はハッキリと否定しているのに、今で十分だと分かっていても。
憧れてしまう。
(やっぱし憧れるよねぇ、死にたくなってきたよねぇ?)
(ウグググッ! 全く引きませんこの女っ!)
普通なら、もう自宅に着いている時間が過ぎても、足取りは一分かけて一歩という有様になっていた。
倒れるまではいかなくても、ブロック塀に背中を預けて座り込むぐらいは赦されるのではないか。
それぐらい限界だった。
何故生きているんだろう、自分の人生に不満はない、なのに強烈な違和感が押し寄せる。
視界が歪む、呼吸が荒くなる。
汗が湧き出る。手足が痺れてきた。
(よし、後もう一息だ! 頑張れ! 頑張れ!)
(死んではダメですよ〜! 今までのキャリアや仲間を思い出してくださいぃ!)
(さっきからアンタうっさいしっ! 離れろっ!)
(い〜〜や〜〜です〜〜! 連れて行かせませんから!)
きっちり締められたネクタイを緩め、息を通りやすくする。
ただの気休めだがそれでもやらないよりはマシだった。
小さな会社の管理職。
初めの頃は失敗ばかりだったが笑い飛ばして居酒屋に誘ってくれた上司。
最近の調子や世間話を仕事中にしてくる社長と。
それに焦る俺に笑いながら「いいよ、いいよ」と言って雑談に参加してくる従業員達。
毎日何かしらの差し入れをしてくれる事務員。
その温かさは今も変わっていない。
それどころか賑やかさが増していると実感する。
国の不景気に不安になることもあるが、それでもやっていけている今。
本当に自殺する理由があるだろうか?
(あ〜あ〜…………)
(やりました! 大逆転勝利です!)
(コイツッ! コイツッ!)
(はっは〜っ! 効〜きっません〜っ)
ある訳がない。
あってたまるか。
深呼吸を一つ、今までの過去を振り返りながら前を向く。
辛いこともある。
死にたくなることもある。
逃げ出したくなる時だってある。
だけど、それを吹き飛ばしてくれる仲間がいる。
それを思い出してみると、当然のように軽い足取りで歩き出せた。
どっかの空間
「んッはぁぁぁぁ……何とか守れましたねぇ、ですがセキリュティがガバガバですっ! 一体どうなっているんですか!? 今月だけでも109件ですよ! 不法神入っ! 私はただの管理資格があるだけの一般神なんですけど!? どうして阻止しなければならないんですかぁぁぁぁぁ! 神には地上に直接干渉は出来ないから私でも何とか守れますけどもね!? それでも疲れるんですよ!! 水際対策を下っ端に押し付けないでくださぁぁぁい!!」
今日も一般神は元気です。
最後まで読んで頂き有難う御座いました。
楽しんで頂ければ幸いです。