おとぎの国のクソデッキ〜ホビアニ世界の転生お嬢様、前世の禁止デッキをぶん回す〜   作:模範的セルフィア市民

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初心者には優しくしろと古事記にも書かれている④

 

 ターンを受け取った少年が、一番槍を縦へ戻した。

 隣のファクターにも手を伸ばしかけたので、俺はそちらを指す。

 

「こうすると、また使える?」

「ええ。縦向きがアクティブ、横向きがスリープですわ。自分のターンの最初に、ファクター以外の、フィールドのカードをアクティブに戻しますの。ファクターは、横向きのままですわ」

 

 少年は二枚引くと言ってからカードを取り、赤のファクターをもう一枚置いた。

 手札と、前に並んだ二枚を見る。

 

「ドラゴンは、まだだよね」

「あと一枚ですわね」

 

 少し残念そうにしてから、別のカードを出した。

 《火走りの斥候》。

 こちらも速攻持ちだ。

 今置いた一枚をスリープにしてプレイし、能力を一緒に読む。

 

「じゃあ、こっちも攻撃できる」

「ええ」

「二人で攻撃します」

 

 一番槍と斥候を、まとめて横向きにした。

 俺は小人を一人、一番槍の前へ置く。

 

「こちらの攻撃は、この小人でブロックしますわ」

「さっきは、いなかったやつ」

「ええ。今回は、守ってもらいますの」

 

 少年が自分のユニットと小人を見比べる。

 一番槍はパワーが3、タフネスが2。

 小人は、どちらも1だ。

 

「こっちが3で、こっちが1だから……」

「お互いに、自分のパワーと同じだけダメージを与えますわ。この小人は三点を受けて、倒されます。一番槍は一点受けますけれど、まだ耐えられますわね」

 

 少年の指が、小人の上で止まった。

 

「倒しちゃうんだ」

「ええ。この小人は、一番槍の攻撃を受け止めてくれましたの」

「お姉ちゃんには、当たらない?」

「そのとおり。こちらは守れて、そちらは小人を倒せましたわね」

 

 俺は小人のトークンを、脇の束へ戻した。

 少年は少しだけ口を結び、それから、残った斥候を見る。

 

「こっちは?」

「そちらは受けますわ。三点ですわね」

 

 両方の戦闘ダメージを処理して、俺のライフは37から34へ変わった。

 そして、斥候の能力を確かめる。

 

「相手に戦闘ダメージを与えられたので、1枚引いてもよい、とありますわね」

「引く!」

 

 新しいカードを手に加えた少年が、嬉しそうに手札を広げ直した。

 攻撃が通って、さらにカードまで増えた。

 一番槍に残っているダメージも、ターンの終わりには消えると伝えると、そのカードをまた指で撫でていた。

 なるほど。

 この子は、前に出した仲間のことをよく見ている。

 

 俺の次のターンでは、ドローを済ませ、ファクターをセットしてから小人を増やした。

 《坑道帰りの小人》と、一緒に出てくる小人のトークン。

 前からいた一人で攻撃すると、少年は自分のユニットに手を伸ばし、横向きなのを見て止めた。

 

「寝てるから、守れない?」

「ええ。ブロックできるのは、アクティブのユニットですわ」

「攻撃しなかったら、守れた?」

「ええ。次は、残しておくかどうかも選べますわよ」

「じゃあ、一点」

 

 少年のライフが初めて減った。

 40から、39。

 俺の小人がまだ縦向きなのを見て、また不思議そうにする。

 

「この子は、横にしないの?」

「警護を持っていますから、攻撃してもスリープしませんの。カードに特別なことが書いてあったら、そちらのとおりに動きますわ」

 

 出したばかりの二人には、スノウの能力を手伝ってもらった。

 アクティブの二人を横向きにして、カードを一枚引く。

 出たばかりの小人はまだ攻撃できないが、こうして別のカードの能力を手伝うことはできる。

 ただし、このスノウに仕事を頼めるのは、自分のターンだけだ。相手のターンになってから、慌てて回復をお願いすることはできない。

 少年は説明を聞きながら、スノウの本文と、小人たちを見比べていた。

 

「お姫様、自分では攻撃しないけど、いろいろするんだ」

「そういうデッキですわ。小人たちが、大事な仲間ですの」

 

 さっきは全員、大きな獣に踏まれましたけれど。

 それは、この子が帰ってから反省しよう。

 

 少年の、三度目のターンが来た。

 ユニットを縦に戻し、二枚と宣言して引いてから、ファクターを置く。

 今度は、指を折って確かめた。

 

「一、二、三」

 

 視線が、手札の端へ動く。

 こちらへ確かめるように顔を上げた。

 

「出せる?」

「必要なファクターは、揃いましたわね。コストはいくつかしら」

「2コスト!」

 

 少年の手が止まった。

 アクティブなのは、今セットした一枚だけ。ほかの二枚は、さっきまでに使って横向きになっている。

 

「一枚しか、横にできない」

「もう一つ、コストにする方法がありますわ。スリープしているファクターは、破棄すると1コストになりますの」

「はき?」

「そのカードを、ここへ移しますの。墓地といって、使い終わったカードなどを置く場所ですわ」

 

 俺は空いている場所を示した。

 少年は、横向きのファクターと見比べる。

 

「じゃあ、こっちを横にして、こっちを捨てる?」

「ええ。それで2コストですわ。ただし、一枚を横にして、その同じ一枚をすぐ破棄しても、一度に2コストにはできませんの。今なら、別々の二枚を使いますわ」

「でも、一枚なくなるよ。ドラゴン、三枚いるよ?」

 

 いいところに気づいた。

 必要な枚数と、使うコスト。最初は一緒に覚えてしまいやすいところだ。

 

「必要な枚数は、コストを用意する前に確かめますの。今は3枚あるので、使えますわ。そのために一枚破棄して2枚になっても、この竜は出せます。ただ、次のカードを使うときには、2枚として数え直しますわね」

 

 少年は、ファクターを持ち上げかけて止めた。

 これからも竜を出したい。その顔に、少し迷いが出る。

 

「なくさないで使う方法も、あなたのワールドにはありますの」

 

 俺は《イグナリア》を指した。

 <燃え盛る炎>。

 手札一枚を捨てることで、スリープしている赤のファクターを3枚まで、アクティブに戻せる。

 

「これで、また使える?」

「ええ。今なら、スリープしている二枚をアクティブに戻せますわ」

 

 少年は手札を広げ、幼竜を端へ寄せた。

 残したいものをよけてから、ほかのカードを見比べる。

 俺は指を引いた。どれを残すかは、自分で選んでもらう。

 迷う間も、幼竜の上に置いた指だけは動かなかった。

 

「こっちを使う。これ、捨てます」

 

 選んだ一枚を墓地へ置き、赤のファクター二枚を縦向きにした。

 これでアクティブが三枚。

 そのうち二枚を横向きにして、幼竜の2コストに充てる。

 少年は手札から竜を抜き、両手で持った。

 

「《炎翼の幼竜》を、プレイします!」

 

 置く直前だけ、声が少し大きくなった。

 カードは、フィールドの真ん中へ置かれた。

 ほかの二体より、少しだけ前だ。

 

 少年は自分の竜を見ている。

 まだ何も攻撃していない。

 それでも、もう嬉しいのが分かった。

 

「その子にも、速攻がありますわね」

「うん!」

「それから、飛翔。飛翔を持つユニットにしか、ブロックされませんの」

 

 少年が、俺の小人を見る。

 スノウを見る。

 もう一度、竜へ戻った。

 

「この子たち、飛べない?」

「飛べませんわねえ」

 

 俺は、いかにも困ったように小人を見た。

 実際、こいつらは飛べない。

 力を合わせればできることは多いが、自力で空を飛ぶところまでは、今のところ担当していない。

 

「じゃあ、ドラゴンは通る?」

「そのとおりですわ」

 

 少年が笑った。

 遠慮のない、顔全体を使った笑い方だった。

 

「攻撃します。三人で!」

 

 地上はスノウで斥候を、小人で一番槍を受け止める。

 空を行く幼竜には、道が空いていた。

 アクティブの赤のファクターは、今は一枚。幼竜のパワーは、まだ4だ。

 

「四点、受けますわ」

 

 俺のライフが、30になった。

 少年は、さっきまで箱の裏に描かれていた竜を、しばらく見つめていた。

 

「強い」

 

 後ろで、レッカが小さく頷いた。

 

「いい竜だろ」

 

 少年は顔を上げ、大きく頷いた。

 

 次の俺のターン。

 二枚引いてから、白のカードをファクターにセットした。今後、白いカードを使うための準備だ。

 前のターンからいる《坑道帰りの小人》と小人一人で攻撃し、合計三点。少年のライフは36になる。

 警護でアクティブのままの二人に、続けて仕事を頼んだ。

 今度はカードを引かずに、スリープしているファクターを二枚、アクティブにする。

 

「お姫様も、また使えるようにするんだ」

「ええ。ただ、こちらは手札ではなく、小人二人に手伝ってもらいますの」

 

 アクティブに戻した分も使い、《森の小さな働き手》で仲間を増やす。

 出てきた小人のうち二人を横向きにして、さらにスノウの仕事。今度はライフを四点回復し、俺のライフは34になった。

 

「戻るんだ!」

「そういう能力もありますの」

「でも、ドラゴンで、また減らせる」

「ええ。困ったことに」

 

 少年は幼竜を見て、それから俺の小人を見た。

 さっきまでカードを出すたびに確かめていた顔が、少しだけ得意そうになる。

 よしよし。その竜は、君が選んだんだ。

 

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