救護騎士団副団長ですが、幼馴染に性教育ビデオの教材にされた挙句、責任を取ることになりました。 作:オーバジン
周囲が瓦礫と煙に包まれる場所、私は窮地に立たされていた。
「君たちが、アリウススクワッド?」
「あぁそうだ、計画のために貴様を処理しておこう。」
倒れている先生の目の前にはキャップを被りマスクをした少女がアサルトライフルを向けている。
「終わりだ。」
目の前の少女の指が動きひいき金を引く……
その凶弾は私の命を刈り取るため空中を突き進む。
この瞬間世界がスローモーションのようにゆっくりになった。しかし身体は動かない、弾はゆっくりと自分にめがけて飛んでくる。
(ここが、私の最後かな……)
私は目を閉じて今まで関わってきた愛する生徒達の顔を思い出す。アビドス、ゲヘナ、ミレニアム、トリニティとみんなの顔を思い浮かべる。
(ごめん……皆……アロナ……)
私は心の中で謝罪を告げた、自身の無力者に嘆き、この行為に意味が無いと分かっいても、責任を果たせなかった自身を責めるように。
ヒュン!キンッ!
「……?」
「なんだ!?」
しかし来たのは、銃弾を受けた衝撃や痛みではなく、金属同士がぶつかる音だった。そして目の前にいた少女の声も聞こえてきた。
「救護対象者を発見、周りの安全を確保を優先する。」
「誰だ貴様は!」
男性の声が聞こえた、それに少女の激昂している声も。私は恐る恐る目を開ける。
「俺は知らない人、ましてやあんたらみたいなテロリストにな、名前を教えるつもりは無い。だがそれは人として失礼だろうから肩書だけは言っておこう、救護騎士団副団長だ、よく覚えておくといい。」
目の前には少年がいた、キヴォトスに来てから初めて見た自分以外の人間の男。
「先生……でしたか?」
少年は顔を少しだけこちらに向ける、その顔は物静かそうな雰囲気のイケメンだ。
「まだ動けますよね?だったらあそこに倒れている要救護対象者を連れてこの場から離れてください、あなたから見て後ろに向かって進んでいけばゲヘナの救急医学部の救急車が向かってくるはずです。」
「で、でもそれだと君が……」
「優先順位をよくお考え下さい、俺は見ての通り元気が有り余ってますし、そもそもミサイルを受けてませんから。」
「今は指揮よりも、ご自身の身の安全と倒れている生徒の治療が優先なのでは?」
「……」
「はっきり言いましょう、お荷物を抱えて救護をするのは俺では困難です、だから早く行ってください。」
彼は弓を取り出す、その両端には滑車が付いている、コンパウンドボウというものだろう、しかし矢は持っていないように見える。
ジャラ……
彼は自身の腰につけているポーチに手を突っ込むとジャラジャラとした音が聞こえてくる。そして手を取り出すとそこには銀色に輝く金属の弾がいくつか握られていた。
「何を見てるんですか、早く行ってください。」
そう言われ私は血を流して倒れているヒナを抱え言われた方向へと笑っている足で力を振り絞って走り出す。
その瞬間後ろで激しい戦闘音が聞こえてきた。
これが私と『相沢ジン』との初対面だった。
カタカタカタ……
シャーレ部室にキーボードを打つ音が響いている、複数ある机の内の二つが使用されていて、片方はメガネを付け袖の余る服を着た、はかなげな雰囲気を醸し出すイケメンな男性が使用して、もう片方はその大人より少しだけ身長が低く白を基調としたトリニティの制服を着た物静かな雰囲気のイケメンの男性が使用している。
「先生、こちらの請け負った業務は終わりました、先生のパソコンに、Excelでまとめて送信しています確認をお願いします。」
「分かった確認しておくね、手伝ってくれてありがとう。」
「いえいえ、当番ですから。というか先生はもっと周りを頼ってください。」
「いや、私はずっと皆に頼りすぎなぐらいだよ。」
「ふむ、言っても無駄そうですね。ならそう言うことにしておきましょう。」
「しかしまた倒れでもしたら、救護させてもらいますので。」
「は、はいぃ……分かってますよぉ……」
トリニティの制服を着た男性は、メガネを掛けた男性の方を先生と呼び、軽く説教のようなものをする。
「でも、本当に今日来てくれて助かったよ、ジン。」
「何度も行ってるでしょう?同性なんですからもっと気軽に頼ってくださいよ?」
「ハハハ、でもジンも予定とかがあるでしょ?ジンにばっかり頼ってられないよ。」
「まぁ、確かに俺にも予定はありますし先生の言う通りですね。」
二人は先ほどとは違い微笑みながら談笑をする。
眼鏡を付けた方の男性は『シャーレの先生』、独立連邦捜査部S.C.H.A.L.E、キヴォトス中のありとあらゆる生徒のお悩みと事件解決を担っている機関の長である大人だ。
もう片方のトリニティの制服を着ている男性は『相沢ジン』、先生を除き、キヴォトスの生徒ではただ一人の人間の男性で、救護騎士団というトリニティの部活の副団長を務める少年である。
「そうだジン、この後時間ある?仕事もジンが来てくれたおかげで早めに終わったから、良かったら二人でどこかに出かけないかい?」
「すみません、この後予定があるので、パスでお願いします。」
「それなら仕方ないね、また今度誘うことにするよ。」
「ありがとうございます、申し訳ありませんねいつも断ってしまって。」
「いや、私が一方的に誘ってるだけだし、気にしなくてもいいよ。」
先生は良くジンと二人で出かけようと声を掛けるが、ジンはいつも結構な頻度で予定が入っているのでなかなか出かけることが出来ない、これまでで二人で出かけることが出来たのは一回二回ぐらいだろう。
「あ、そうだジンの言う予定ってさ、どんなものなの?」
先生は気になってジンに聞いてみる。
「予定ですか?そんなもの聞いて何かあるんですか?」
「いやぁー、どんなことをしてるのか単純に気になってね。」
「そんな気になりますか?」
「そうそう!数少ない同性がどんなことしてるか気になるんだよ。」
「そうですか。」
先生はその言葉の続きを待つ。
「そうですねぇ……大体は妻と一緒に出掛けたり、家でまったりしたり、ですね。」
「へぇ~そうなんだ、妻と一緒に出掛けたりしてるんだね…………」
「妻!?」
「うわっ!?どうしたんですか急に大きな声出して。」
先生は大声を出して驚きの声を上げる。
「つ、つつつ、妻ってどういうこと!?」
「言葉の意味のままですよ、俺には妻がいますから。」
「え?え?え?」
「あれ?知らなかったんですか?」
「俺、結婚してるんですよ?」
先生が困惑しているとジンは当たり前のように衝撃の事実を言った。
「き、聞いてないよ!?」
「てっきり先生は知っているものだと思っていたんですが?」
「あ、相手は誰なの!?」
「俺の妻は、救護騎士団団長の蒼森ミネですよ。何なら資料に俺の名字が蒼森になってませんでしたか?」
「い、いや……私の持ってる生徒資料では『相沢』って名字……」
「見せてください……あー……この資料、俺が結婚前の資料ですね。……おかしいですね名字を変えた時に資料を提出したはずなのですが、後で連邦生徒会に苦情を入れておきましょう。」
「……」
「どうしました先生?深刻そうな顔をして。」
「い、いや、気のせいだと思うよ?」
「そうですか?」
ジンは、この話を聞くと少し表情を暗くしていたように見えたが先生が気のせいだというのでそうなのだろうと納得した。
「き、キヴォトスって学生婚ってできるの?」
「そうですね、別に禁止されていないので可能ですね。」
「そうなんだ……知らなかったな。」
「まぁそうですね、どちらかといえば知らない人の方が多いと思いますよ?俺も結婚するって決めた時に法律を調べて分かったことですし……っと。」
ジンは時計をちらりと見て約束の時間が迫っていることに気付く。
「俺はこの辺で失礼します……そうですね次の当番の時に馴れ初めをいくつか聞きます?」
「も、もちろん。そう言った話は大歓迎だよ。」
先生は出来るだけ自然に笑った。
「そうですか、ならいくつか用意しておきますね。ではまた。」
パタン……
ジンがシャーレの部室から出て、扉が閉まる。
先生一人だけが残った部屋でポツリと呟きが木霊した。
「そっか、ジン。結婚してたんだね……。」
私こと先生には好きな人がいる。
優しくて、気の合う人物で、私が命の危険の時に助けに来てくれた人なんだ。
自分でも言うのはなんだが生徒達から好意を寄せられていることには気づいている、それも異性として、こんなくたびれた大人のどこがいいのかは分からないが好意を寄せてきてくれている。
しかし私は生徒達のその気持ちに応えることが出来ない。
もちろん教師と生徒、未成年だということも確かにある。
しかしもう一つ理由がある……好きな人がいるからだ。
ではその好きな人とは誰なのかって?
……答えるしかなさそうだね。
……私の好きな人は『相沢ジン』……いや『蒼森ジン』だよ。
皆の言いたいことは分かる、未成年で自分の生徒じゃないかと、それに同性だと。
私は元から男性が好きだったわけじゃない。
好きになったのが彼だったんだ。
でも仕方ないじゃないか、私はエデン条約の時、殺されそうになった。その時に守ってくれたのがジンなんだ。
しかもその後の空が赤く染まった時も、励ましてくれて力になってくれた。私が先生として悩んでいる時も、
『辛いときは逃げても良いんですよ、先生はずっと頑張ってきたんですし。』
『なら今だけは「先生」をやめて、同性ですから、二人でバカみたいに騒ぎませんか?』
『さすがに「先生」をやめられてしまうとキヴォトスが大混乱になってしまいますからね、なら今は学生の頃のように趣味に走ったり、バカをしましょうよ。』
『人は休まなかったり、自分を隠し続けているといつかは壊れます、その時には救護は間に合いません。ですから時々でいいですから気を抜きましょう。』
『先生は「先生」ではなく、一人の人間なんですから。』
『俺が付き合いますから、一緒にバカしましょう!』
と優しい表情で言ってくれたのだ、惚れても仕方ないものだと思う。
だから私は距離を縮めようと二人でどこかに出かけないかと積極的に声を掛けたりするが、いつも予定があると断られてしまっていた。
それでついさっき、予定とはどんなことをしているのかと彼に聞いてみた、私はあまり彼のことを知らずにいた。
私は彼の前だと素の自分を出して話したり過ごしているが、彼は自分のことをあまり話さないから趣味などを分かっていなかったのだ。
そして少し期待しながら待っていた答えは私の思考を止める者だった。
『大体は妻と出かけたり、まったりしたり、ですね。』
私はその時その言葉を無意識に繰り返して、コンマ数秒の後その言葉の理解をして驚いて声を上げていた。
そして話を聞くと、資料が結婚前の物だったらしく、ミネとジンが同じ苗字でも気づくことが出来なかったのと、基本私は生徒を名前呼びなので、彼の名字を呼ぶことが無かったのでお互いに認識の違いに気づいていなかった。
そして彼が結婚していることが分かった。
私はすでに……いや彼を好きになる前から終わっていたのだ。
しかし私はまだ、彼のことが好きだ。
私は教師失格だろう、教師なのに生徒に劣情を抱き、しかもそれが同性ときて、おまけに結婚もしている。
生徒の模範となる私がこんなのでいいのだろうか、いや良くないのだろう。
今すぐこの気持ちは捨てるべきだと考えているがどうしても捨てることが出来ない。
だって……
彼は、私がこの歳になってやっと来た初恋なのだから。
これが言ってたエデン条約と絡ませたところです(気が変わる可能性あり)
ボーイズラブ(薔薇)はありません。
先生の容姿は便利屋先生です。