前回の日数を変更したので今回の日数も変わりました。
*** investigation
チュンチュン、チュン
カーテンから漏れ出る朝日が目に入る。そして起きてらか直ぐに目覚ましがなる。
時計はちょうど7:00を指していた。
眼を擦りながら洗面台に行き、顔を洗う。
目が覚めてきたところで朝食の用意を行う。
時間が無いので早めに食べられるトーストを選択。
焼いたトーストにマーガリンを塗り、ヨーグルトと一緒に食べる。朝はコーヒーという言葉を聞いたのでその通りにしてみたが……麦茶の方が好みだということに気付いた。
寝間着から相手に不快感を与えないような清潔な服をなるべく選び、服を着替える。
上司がアレなため、交渉においては殆ど置物である。もっとも、一般人相手では、という枕詞が付くが…
やはり狂人と狂人は共鳴するのだろう。
一般人の自分には縁なきことだが。
そんなくだらない思考が頭を過ぎる
トーストを食べ終わり、スマホなどの最低限の物を持ち、外に出る。
そして直ぐに不快感を覚える。
春が始まったばかりだと言うのもう既に夏の片鱗を感じられる。
この様子なら4月~10月は夏になり、春は3月、秋は11月のみになる日も近いな。
ちょっとしたトレーニング代わりにランニングで通勤を行う。事務所まで10分かそこらで付くので結構良いトレーニングになる。友人にはもっと走れと言われたけど。
日常生活において過剰なスタミナは不要である。物騒から身を守るための最低限の格闘術なら兎も角。
……
無心でただ走る。
感受というのは心で受け取るものだ。
それ故に何も考えずに何かに没頭すれば時間は直ぐに溶けてしまう。諸行無常、とは少し違うか。
暫く走っているとあっという間に事務所に着いた。
「やぁ遅かったね助手君」
「……待ちましたか?」
「まぁね。私ここで寝泊まりしているし、君も寝てれば良かったんじゃないか?」
「いえ、所長と同棲はちょっと。」
「真面目なんだか、失礼なんだか…それじゃあ案内したまえ。神崎とやらの家に」
「はいはい。話聞けるかは別ですからね。」
「出来なかったら減給するだけさ。」
「減給する前に今月分のを払ってくださいよ。」
「はい500円」
「それ今回の依頼料でしょ。」
事務所の入口に背中をもたれかからせている所長と付き合いたてのカップルのような狂言を言う。
いや、言い始めたのは僕だったな。
「じゃあ行きましょうか。」
「交渉の基本は知っているか?」
「…なんです?」
「手早く恐れずに…だ。遅ければ相手に考える時間を与えてしまう。それに不安がっている連中にメリットを感じずらくなる。こちらが必ず成功すると錯覚させないといけない。」
「……ほぼ、詐欺じゃないですか?」
「成功させればいいのさ。事後承諾でも承諾ってことは同じだろう?」
こういうのを吐き気を催す邪悪と言うのだろうか。
────だが、その考え方は嫌いじゃない。気に入った。心掛けるとしよう。
事務所から少し歩くと一軒家に着く。
件の神崎の家だろう。
ピンポーン……ピンポーン
1度、2度、探偵はインターフォンを鳴らす。
そして暫くしてから覇気のない声が聞こえる。
「はーい。」
しがれた、落ち込んでいる人間の声だ。
何か致命的なものを失った者の声だ。
「私たちは探偵で、あなたの娘さんについてお伺いしたいことがあるのですが…」
「お帰りください、私は……忙しいので」
「ココ最近誘拐事件が多発しています。そしてペースは早いが、1回1回には数日のインターバルがある。つまり、それが過ぎれば命の保証は無い。逆に言えばまだ助かるかも知れないんです。」
「警察は証拠がないから表立って動けない。けど、私のような私人なら勝手に動いても良い。」
「……分かりました…お上がりください。」
扉が開き、出迎えたのは目の下にクマを作った憔悴し切った女性だった。
玄関から廊下を通りリビングに行く。
途中の階段の上から小学生ぐらいの小さい子供がこちらを見ていたが、気付かれた!と言う顔をして2階の部屋に見えないように走っていった。
「私の目的は1つ、誘拐された人間の奪取及び保護だ。」
「その日の行動を教えて下さい。そこから割り出します。」
「警察にも言いました、けど、娘は見つかりませんでした。」
「言いたく無いが、警察がそれ程意欲的で有能であるとは言えない。それに警察は人手不足だ。ずっと張り込むなんて無茶は……できない。」
神話的事象、そのせいでまともで正義感のある警察官は最前線で真っ先にお陀仏だ。
今いるのは助けはするが、死にたくないとかの情けないやつだけが居る。
と言うよりもその精神性だからこそ生き残ったと言うべきか、
警察や自衛隊は神話的事象に対して大した情報を持っている訳では無いが、その対処は合理的であり、見習うべきところもあるだとか
……そう所長は言っていた。
その後の「まぁ私よりは下だけどね!」
という発言が無ければ尊敬できたかもしれない。
娘が見つからないという不安。時間が無いかもしれないという焦り、目の前の人間なら救えるかもしれないという希望、それらは不信感を拭いきれずとも『説得』、と言うよりも『言いくるめ』するには十分だった。
観念、或いは何かを諦めるように、少しずつ、しかしはっきりと話し始める。
神崎御幸
私立一木高等学校1年生
部活には所属しておらず、基本的に一直線で帰宅する。
けれどその日は学園祭の準備で結構遅れて、6時頃に帰宅することになった。
とのことらしい。
「ここから学校まではどのぐらいかかりますか?」
「歩きで30〜45分ぐらいです。」
じゃあ事件は6時〜6時半の間に起こったと思っていいな。
犯人は夜、若い女性を狙う男であると考えられる。
「助手君」
「…なんです?」
「そう言えば、ここら辺で怪しいハイエースが走っているらしい。ちょくちょく。」
「……なんで言わなかったんですか?」
「忘れてた。と言うより意識を逸らされた。」
「…はぁ。じゃあ例のはハイエースを所持しているんですか?」
「これから見に行くしか無いだろうな。駐車場や、乗り捨てている可能性もあるがな。」
「……娘を、お願いしますっ!」
「…できることはやります。」
「あまり期待しないでくれよ?あくまで私は探偵なんだ。」
…さっきから私たちじゃなくて私って言いやがるなこいつ。まぁイイケド。
家から出て、暫く無言で歩き続ける。
で、
「紺野とやらの家はどこにあるんですか?」
「ここから40分ぐらい歩いたところだ。時間も丁度いいし、バスで時短する。あ、自費ね。」
経費を出すような人間と期待していなかったのでそこは大丈夫だった。
「で、目標は暗示を範囲指定か何かで掛けたってことですかね。」
「そうであるともそうでないとも言える。暗示はハイエース自体に掛けられている、これは普通の車で何の異常も無いと思わされる。そういう魔術だ。」
「何の魔術か分かりますか?」
「いやぁ、魔術って体系化されてないのよ。類似品は見つかっても同一であるとは言いきれない。」
超常現象の1種か宇宙の技術。体系化されていないと言うよりも、地球式の分類方法に合わないと言う方が適切だろうな。
「あくまで思考誘導の魔術だ。魔術である程度はレジストできる。そして犯行の瞬間は魔術で隠蔽されているが、移動自体は隠蔽されていない。多岐に渡るし、面倒だったんだろうな。」
家に出てから誘拐するまでの数時間の間魔術を維持する実力は無いということか、
魔術的には素人と思って良いだろうな。
暫く家の名札を見て歩く、
今野 三浦 山田 木下 田原─────
紺野 あった。
「これですか?」
「住所的にもこれだろうね。近くに他の紺野は無いみたいだし」
「どうします?」
「中に誰も居ないみたいだ。駐車場には何も無いしね。じゃあ入ろうか」
「……一応聞いときます。どうやって?」
「強行突破」
「ですよねー」
とはい言えどうするのだろうか?
ナイフなら持っているが…バールやハンマーが無ければ解錠出来ないだろう。
「鍵は…ピンシリンダー錠……不用心だね。」
「ピッキングするつもりですか?…そんな技術を持っていましたっけ?」
「必要ないよ。パンプキーとハンマーがあれば解錠できる。殆どこじ開けてるけどね。」
パンプキー?その小さい鍵か……ハンマー?そんなの持って、
そう思考するといきなり所長が『蹴り』を放った。
鍵穴に刺しているパンプキー目掛けて。
そしてガチャリと音が鳴る
「あぁ、ハンマー代わりですか。」
「その通り」
鍵が開いたドアを開く。
そして周りはその様子に何の疑問も抱かない。
「『verirr dich.』仔羊よ迷いたまえ、なんてね。」
*** Fanatismus
「調べてみたところ一般的な一軒家、地下室も屋根裏も無いみたいだね。キッチン、トイレ、リビングとかには生活用品が置いてあるぐらい。後は……」
「私室ですね。」
「どうやら寝室も兼用しているようだね。2階の奥。その左側。奥にはトイレがある。2つもいるのかという疑問はあるけど、2階の窓には魔術でコーティングされてる。外からは見えず、中から壊れない。」
「一時的な監禁所でしょうか。」
階段を登りながらそんな事を言う。
もちろん所長を前に立たせる。
あまり頼もしくない盾だ。
「どうやら私室のドアにもコーティングをしているらしい。魔術での施錠。パスワードは、結構時間がかかるな。」
「開けますか?」
「魔術的には不可能。時間が掛かりすぎる。物理的には可能。」
「パンプキーでも使います?でも鍵穴は───」
所長が1度思いっきり『蹴り』を行う。
「は?」
もう一撃『蹴り』、もう一撃『蹴り』、『蹴り』、『蹴り』、『蹴り』、『蹴り』、『蹴り』、『蹴り』、『蹴り』、『蹴り』、『蹴り』、『蹴り』
……ドアが開いた。
「よし開いた。」
「所長って脳筋ですよね。」
「考える時は考えるさ。ただ殴った方が早い時がある、それだけの話さ。」
まぁ議論するよりもぶん殴って言うこと聞かせる方が早いけど、合理的と言うかなんと言うべきか。
「うっ」
「これは……」
内蔵はばら撒かれては無いが、大量の血で何か描かれている。魔法陣だろうか。何かしらの招来か?
「日記、と言うより研究記録だな。」
何かノートをパラパラと捲りながらそう言う。
どうやら紺野が何をしていたのかが書いてあるノートを見つけたようだ。
……この感じだともう死んでいるかも知れないな。
「ノートには何を?」
「適性があるかどうかを書いてある。適性の判別方法は書いてないが、年齢と膜の有無は書いてある。どっかの神話生物の取引か、魔術の対価か…」
「マメだな。失敗失敗失敗、不適合、失敗失敗、不適合、簡潔だか一応書いてある。」
ペラペラと3分の2ぐらいを捲った時にピタリと所長の体が止まった。
「…どうしました?」
「『神崎御幸 適合 実験予定日3月31日明朝 漸く成功の目処が立った。 これで私は神になれる』……どうやら明日始めるつもりだな。」
「っ、どうするんですか!?もう19時だ、そこまで時間がある訳じゃ無い」
「分かっている。だから態々情報屋に金を払って探ってもらっている。」
「は?その金はどこから捻出を、というより、情報屋?いつ?」
「3日前、君の払い忘れてた給料から」
ふざけんなと言う言葉が喉を通ろうとしたが、
上司にきく口の利き方では無かったので言い換え用と少し黙っていると、電話のコール音がその思考を切り払う。
そうすると、所長がポケットをモゾモゾと触りスマホを取り出す、どうやら所長のオトモダチからの電話らしい。
「もしもし?順調かい?」
〈ああ、そりゃあもうな!ったく、魔術が関わってんならさっさと言え!死にかけたぞ!〉
「情報屋なんだからそのぐらい自分で見つけて欲しかったってだけさ。で、場所は?」
〈メールで座標を送る。住所は自分で割り出せ。〉
「住所で送って貰ってもいいんだけど、」
〈座標の方が正確だ。〉
「はいはい。」
プツッと電話が切れる。
縁も切れねぇかなと思っていると、バイブ音が所長のスマホから鳴る。
「座標は、成程、ここから車で3時間だ。タクシーを拾うぞ。」
「金は?」
「この部屋で拾った。」
「なら良いです。」
証拠は魔術で無かったことになるし、相手がカスなら罪悪感も無い。これこそリーズナブルって奴ですね。
ho1
アイテム:ナイフ
折りたたみ式のステンレス製の小型ナイフ。
切れ味抜群。強度も高い。
ho2
アイテム:小道具
パンプキーやモロトフカクテルなどの様々な道具を体の何処かにしまっている。水の魔術は得意なのでモロトフカクテルをよく使うが、コンクリート製の建物などではまともに燃えないので使えない