ハリーポッターと頼れる天才従兄   作:夜幻

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第32話「頼れる天才従兄と、最高の一年の終わり」

 ホグワーツの夜は、いつもより静かだった。

 

 グリフィンドールの談話室では、暖炉の火が赤々と燃えている。ハリーはソファに座り、膝の上で両手をぎゅっと握りしめていた。

 

「……ねえ、レオ兄さん」

 

「うん、どうしたの?」

 

 隣に座ったレオが、読んでいた本を閉じた。

 

「最近、先生たちがずっと忙しそうだよね。何か大変なことが起きてるのかな?」

 

 ハリーの表情には心配が浮かんでいた。いつもなら元気いっぱいに話し始める彼が、今は少しだけ声を落としている。

 

「気になるよね。でも、先生たちも生徒を守るために動いているんだと思うよ」

 

「うん……。僕も何かできたらいいんだけど」

 

「ハリー」

 

 レオはそっと弟分の肩に手を置いた。

 

「君が毎日一生懸命に勉強して、友達と助け合って、元気に過ごしている。それだって、十分に大切なことだよ」

 

「本当に?」

 

「もちろん。何もかも自分一人で解決しようとしなくていいんだ」

 

 ハリーはしばらくレオを見つめていたが、やがて顔をほころばせた。

 

「……そっか! ありがとう、レオ兄さん!」

 

 その笑顔に、レオも自然と笑みを返す。

 

 そこへ、ロンとハーマイオニーが談話室へ戻ってきた。

 

「おーい、ハリー! レオ! 何の話をしてるんだ?」

 

「ロン、声が大きいわよ!」

 

「だって、二人とも真剣な顔してたから気になったんだよ!」

 

 ハーマイオニーは二人の前まで来ると、少し心配そうにハリーを見た。

 

「ハリー、何かあったの?」

 

「ううん、大丈夫! レオ兄さんと話してただけだよ!」

 

「そう? ならいいけれど……」

 

 ハーマイオニーはほっとしたように胸をなで下ろした。

 

 それから、レオへ視線を移す。

 

「あの、レオ。明日の授業のことで、少し聞きたいことがあるんだけど……」

 

「いいよ。どんなこと?」

 

「えっと、その……古代ルーン文字の資料についてなんだけど!」

 

 ハーマイオニーは鞄から羊皮紙を取り出した。

 

「この前教えてくれた文字の組み合わせについて、もう少し詳しく知りたいの! 自分でも調べてみたんだけど、どうしても分からない部分があって……」

 

「なるほど。見せてもらえる?」

 

「う、うん!」

 

 レオが身を寄せると、ハーマイオニーは背筋をぴんと伸ばした。

 

 彼女は一生懸命に説明しながら、ところどころ言葉に詰まる。レオが優しく相づちを打つたびに、頬が少しずつ赤くなっていった。

 

「ここは、文字そのものの意味だけじゃなくて、前後の配置も考えるといいよ」

 

「前後の配置……あっ! そういうことなのね!」

 

 ハーマイオニーは目を輝かせた。

 

「すごいわ、レオ! 私、ずっと意味だけを追いかけていたの!」

 

「ハーマイオニーが自分で考えたから、そこに気づけたんだよ。僕は少し手伝っただけさ」

 

「そ、そんなことないわ! レオの説明はとても分かりやすいもの!」

 

 彼女は勢いよく言い切ってから、はっと口元を押さえた。

 

「……あっ。ご、ごめんなさい。大きな声を出しちゃった」

 

「気にしなくていいよ」

 

 レオが笑う。

 

 ハーマイオニーは、とうとう羊皮紙で顔の半分を隠してしまった。

 

 ロンはその様子を見て、ハリーの耳元へ顔を寄せた。

 

「なあ、ハリー。ハーマイオニーって、レオの前だと妙に忙しそうだよな」

 

「え? 勉強が好きだからじゃない?」

 

「……お前、本当にそう思ってるのか?」

 

「うん!」

 

 ハリーが元気よくうなずく。

 

 ロンは額を押さえた。

 

「もういいや……」

 

 そのやり取りを見ていたレオは、楽しそうに笑った。

 

 談話室には、いつもの温かな空気が戻っていた。

 

     *

 

 数日後。

 

 ホグワーツの大広間には、生徒たちの歓声が響き渡っていた。

 

 天井には夏の夜空のような星々が広がり、長いテーブルには豪華な料理が並んでいる。

 

 ハリーはグリフィンドールのテーブルで、目の前のごちそうを見つめていた。

 

「うわあ! 今日はすごいね!」

 

「いつもすごいだろ」

 

 ロンは笑いながら、皿に料理を取り分けていた。

 

「でも、今日は特別な感じがするよ!」

 

「ハリー、食べる前に話を聞きましょうよ!」

 

 ハーマイオニーが注意する。

 

「分かってるよ! ちゃんと聞くって!」

 

 ハリーは慌てて背筋を伸ばした。

 

 少し離れたレイブンクローのテーブルでは、レオも楽しそうに食事を待っていた。

 

 やがて、ダンブルドア校長が立ち上がる。

 

 大広間のざわめきが少しずつ収まっていった。

 

「諸君。今年も、実に多くのことがあった」

 

 校長は穏やかな声で話し始めた。

 

「新しい友人を得た者もいれば、難しい課題に挑戦した者もいるじゃろう。時には失敗し、悔しい思いをしたこともあったはずじゃ」

 

 ハリーは、最初の授業で羽根を浮かせられなかったことを思い出した。

 

 あのときは、どうすればいいのか分からず、何度も呪文を唱え直した。

 

 けれど、ハーマイオニーが教えてくれたことも、レオが励ましてくれたことも、今では大切な思い出になっている。

 

「しかし、失敗することを恐れる必要はない。大切なのは、そこから何を学び、どのように次へ進むかということじゃ」

 

 ダンブルドアは生徒たちを見渡した。

 

「そして、仲間を助けようとする心を忘れないこと。知識や才能は素晴らしいものじゃが、それを何のために使うのかも、同じくらい大切なのじゃ」

 

 その言葉を聞いて、ハリーは自然とレオのことを思い浮かべた。

 

 レオは、いつだって自分の力をひけらかさない。

 

 困っている人がいれば、当たり前のように手を差し伸べる。

 

 ハリーにとって、それはずっと憧れてきた姿だった。

 

「それでは、今年度の寮杯を発表しよう!」

 

 大広間に緊張が走る。

 

 ダンブルドアが点数を発表していくと、各寮のテーブルから歓声と落胆の声が上がった。

 

 そして最後に、校長はグリフィンドールのテーブルへ目を向けた。

 

「最後に、特別な功績を残した生徒たちへ、加点を与えたいと思う」

 

 ハリーは目を丸くした。

 

「えっ?」

 

 ロンも口を開けたまま固まっている。

 

 ハーマイオニーは両手を胸の前で握りしめていた。

 

「勇気を持って行動した者。仲間を信じ、困難に立ち向かった者。そして、知恵と努力によって仲間を支えた者。それぞれの行いを、わしは誇りに思う」

 

 グリフィンドールの得点が加算されるたび、テーブルは大きな歓声に包まれた。

 

「グリフィンドールの勝利じゃ!」

 

 大広間が揺れるほどの歓声が上がった。

 

「やったあああっ!」

 

 ハリーは椅子から飛び上がった。

 

「勝ったぞ、ハリー! 俺たちの寮が勝ったんだ!」

 

 ロンがハリーの肩を抱き、二人は笑いながら飛び跳ねた。

 

「ちょっと、二人とも! まだ校長先生のお話が――!」

 

 ハーマイオニーも注意しようとしたが、嬉しさがこみ上げてきて、結局一緒になって笑ってしまった。

 

 レイブンクローのテーブルでは、レオが拍手を送っていた。

 

 彼はグリフィンドールの三人が喜ぶ姿を見て、心から嬉しそうに微笑んだ。

 

 寮は違っても、ハリーたちが努力してきたことを、レオは誰よりも近くで見てきたのだから。

 

     *

 

 宴が終わったあと。

 

 ハリーたちは、大広間の出口でレオと合流した。

 

「レオ兄さん!」

 

 ハリーは駆け寄り、勢いよくレオの腰に抱きついた。

 

「見てた!? グリフィンドールが勝ったんだよ!」

 

「もちろん見ていたよ。おめでとう、ハリー」

 

「ありがとう!」

 

 ハリーは嬉しそうに笑った。

 

 ロンも隣から声を上げる。

 

「いやあ、最高だったな! 来年も勝ちたいぜ!」

 

「ロン、まずは今年の勉強をきちんと終わらせないとね」

 

「ハーマイオニー、今くらいはいいだろ!」

 

「ふふっ、ごめんなさい。でも、本当におめでとう」

 

 ハーマイオニーは笑顔で言った。

 

 そして、少しだけためらったあと、レオを見上げた。

 

「レオも、一年間お疲れさま。あなたがいてくれて、本当に心強かったわ」

 

「ありがとう、ハーマイオニー。君たちと一緒に過ごせて、僕も楽しかったよ」

 

「……っ!」

 

 ハーマイオニーは顔を真っ赤にした。

 

「そ、そう! 私も楽しかったわ! とっても!」

 

 ロンが口元を押さえ、肩を震わせている。

 

 ハリーは不思議そうに二人を見比べた。

 

「ハーマイオニー、顔が赤いよ? 暑いの?」

 

「ち、違うわよ、ハリー!」

 

「そうなの?」

 

「そうなの!」

 

 思わず大きな声を出してしまい、ハーマイオニーはますます赤くなった。

 

 レオは困ったように笑いながらも、彼女をからかうことはしなかった。

 

「みんな、そろそろ戻ろうか。明日の準備もあるからね」

 

「そうだね!」

 

 ハリーは元気よくうなずいた。

 

 四人は並んで廊下を歩き始めた。

 

 窓の外には、星が輝いている。

 

 初めてホグワーツへ来た日、ハリーは大きな城を見上げて、胸を躍らせていた。

 

 魔法の授業も、動く階段も、しゃべる肖像画も、何もかもが新鮮だった。

 

 そして今では、そこに大切な友達との思い出が増えている。

 

「ねえ、みんな」

 

 ハリーが立ち止まった。

 

「僕、ホグワーツに来て本当によかった!」

 

 ロンとハーマイオニーが振り返る。

 

「俺もだぜ!」

 

「私もよ。勉強は大変だけど、毎日新しい発見があるもの!」

 

 ハリーは笑顔でレオを見上げた。

 

「レオ兄さんがいてくれたことも、本当に嬉しかったんだ。分からないことを教えてくれたり、困ったときに助けてくれたり……僕、レオ兄さんみたいになりたい!」

 

 レオは少し驚いたように目を瞬かせた。

 

 それから、ハリーの前にしゃがみ、目線を合わせた。

 

「ハリー。僕みたいになろうとしなくてもいいんだよ」

 

「えっ?」

 

「君には君のいいところがある。友達を大切にするところも、困っている人を放っておけないところも、嬉しいときに全力で喜べるところもね」

 

 レオはハリーの頭を優しく撫でた。

 

「だから、これからも君らしくいてほしいな。僕は、そんな君が大好きだよ」

 

 ハリーは目を見開いた。

 

 そして、みるみるうちに笑顔になった。

 

「……うん! ありがとう、レオ兄さん!」

 

 ハリーはもう一度、レオに抱きついた。

 

 レオは笑いながら、その背中を優しく抱き返した。

 

 少し離れたところで、ロンが鼻をすすった。

 

「な、なんだよ……別に泣いてなんかないからな!」

 

「ロン、まだ何も言っていないわよ?」

 

「うるさいな!」

 

 ハーマイオニーはくすくすと笑った。

 

 レオもハリーを離し、三人を見渡した。

 

「みんな、これからもよろしくね」

 

「もちろん!」

 

 ハリーが答える。

 

「おう、任せとけ!」

 

 ロンも拳を握った。

 

「私も! 来年はもっとたくさんのことを学びましょうね!」

 

 ハーマイオニーも元気よくうなずいた。

 

 四人の笑い声が、夜のホグワーツに響いた。

 

     *

 

 そして、夏休み。

 

 スカマンダー家の庭には、暖かな日差しが降り注いでいた。

 

 魔法生物たちが草むらを駆け回り、木々の間から鳥のさえずりが聞こえてくる。

 

「ハリー! レオ! お昼ごはんができたわよ!」

 

 アリシアの声が家の中から響いた。

 

「はーい!」

 

 ハリーは庭から元気よく返事をした。

 

 隣では、レオが魔法生物の世話を終えたところだった。

 

「ハリー、手を洗ってから行こうね」

 

「分かってるよ、レオ兄さん!」

 

 二人は並んで家へ向かった。

 

 玄関では、ロイドが楽しそうに笑っていた。

 

「おかえり。ホグワーツはどうだった?」

 

「すっごく楽しかったよ! 魔法の授業も、友達との生活も、全部!」

 

 ハリーは身振り手振りを交えながら話し始めた。

 

「それでね、ロンっていう友達がいて、チェスがすごく強いんだ! ハーマイオニーは勉強が得意で、いつもいろんなことを教えてくれるんだよ!」

 

「それはよかったな」

 

 ロイドは嬉しそうにうなずいた。

 

「レオも、学校では楽しく過ごせたか?」

 

「うん。ハリーたちのおかげで、僕も楽しかったよ」

 

 レオは微笑んだ。

 

 アリシアが食卓から顔を出す。

 

「さあ、二人とも! おしゃべりは食事のあとにしてちょうだい!」

 

「はーい!」

 

 二人は声をそろえて返事をした。

 

 食卓には、温かな料理が並んでいた。

 

 ハリーは椅子に座ると、目の前の皿を見て、ぱっと笑顔になった。

 

「わあ、おいしそう!」

 

「たくさん食べなさい。学校で頑張ったぶん、今日はゆっくり休むのよ」

 

「ありがとう、アリシア叔母さん!」

 

 ハリーは嬉しそうに食事を始めた。

 

 レオはその隣で、紅茶を口に運ぶ。

 

 ふと、ハリーが顔を上げた。

 

「ねえ、レオ兄さん」

 

「うん?」

 

「来年も、また一緒に頑張ろうね!」

 

 レオは一瞬目を丸くし、それから心からの笑顔を浮かべた。

 

「もちろん。来年も、その先もね」

 

「約束だよ!」

 

「約束」

 

 二人は笑い合った。

 

 家の外では、魔法生物たちが楽しそうに鳴いている。

 

 食卓には家族の笑い声が絶えず、窓から差し込む陽光が、みんなの顔を明るく照らしていた。

 

 ハリー・ポッターのホグワーツ一年目は、こうして幕を閉じた。

 

 たくさんの出会いと、小さな失敗と、忘れられない思い出。

 

 そして、いつだって自分を信じてくれる家族と、共に歩んでくれる友達。

 

 ハリーには、帰る場所がある。

 

 何があっても、手を差し伸べてくれる人たちがいる。

 

 だからこそ、彼は明日を楽しみにできる。

 

「レオ兄さん! 明日は庭で遊ぼうよ!」

 

「いいね。何をして遊ぼうか?」

 

「魔法生物たちと追いかけっこ!」

 

「それは、僕たちが追いかけられる側になりそうだね」

 

「ええっ!? それは困るよ!」

 

 ハリーが慌てて声を上げ、食卓に笑い声が広がった。

 

 レオも笑いながら、ハリーの頭を優しく撫でる。

 

 その手は、これから先も変わらず、ハリーのそばにあるだろう。

 

 ――頼れる天才従兄と、愛されて育った少年。

 

 二人の物語は、まだ始まったばかりだった。

 

 




ここまで『ハリー・ポッターと頼れる天才従兄』を読んでくださり、本当にありがとうございました!

全32話、これにて完結です!

愛情いっぱいの家庭で育ったハリーと、そんなハリーを弟のように大切にする天才従兄レオ。二人の関係を中心に、ホグワーツでの出会いや友情、魔法に囲まれた日々を描いてきました。

ハリーがレオを「レオ兄さん」と慕う姿や、ロンとの気取らないやり取り、そしてレオに憧れながらも気持ちが顔に出てしまうハーマイオニー。そんな彼らの賑やかな日常を書くのは、とても楽しい時間でした。

本作は原作とは異なる設定を取り入れた物語ですが、家族の愛情や友人との絆が、子どもたちの成長を支えていくという部分を大切にしました。

ハリーの一年目は終わりましたが、彼らの物語はまだまだ続いていきます。

これから先、ハリーはどんな魔法を覚え、どんな仲間と出会い、どのように成長していくのでしょうか。そして、頼れる天才従兄レオは、そんなハリーをどのように見守っていくのでしょうか。

最後までお付き合いいただいた皆さまに、心から感謝いたします。

もし楽しんでいただけましたら、評価や感想をいただけると、とても励みになります。

それでは、また別の物語でお会いできることを願って。

最後まで読んでくださり、本当にありがとうございました!

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