キャラクターの設定や物語の展開は自分で考え、本文の執筆はChatGPT(チャッピー)にお願いしています。
いやぁ、最近のAIって本当にすごいですね……(笑)
本作は、ヘイローを持たない男子生徒「天城朔」を主人公としたオリ主作品です。
物語はユメ先輩が健在だった頃から始まり、徐々に原作本編へと進んでいく予定です。
オリジナル設定や独自解釈、原作とは異なる展開なども含まれますので、その点はご了承ください。
また、AIを使用しているため、文章やキャラクターの口調、設定などに違和感があるかもしれません。気になる部分があれば、感想欄などで教えていただけると助かります!
まだまだ手探りですが、温かい目で読んでいただけると嬉しいです。
よろしくお願いします!
かつて、アビドスはキヴォトスでも有数の規模を誇る学園都市だった。
人々が行き交う大通りには数多くの商店が立ち並び、休日になれば家族連れや観光客で街が賑わい、学校からは生徒たちの楽しげな声が絶えず響いていたという。現在の姿からは想像もつかないことだが、昔のアビドスには緑豊かな公園や美しい街並みが存在し、そこには人々の何気ない日常があった。
しかし、そんな繁栄も永遠には続かなかった。
いつからか始まった砂漠化は年を追うごとに深刻さを増し、道路を、建物を、そして人々の暮らしを少しずつ呑み込んでいった。砂嵐によって交通網は寸断され、生活に必要な施設の維持すら困難となり、かつての住民たちは一人、また一人と故郷を離れていった。
当然、その影響は自治区の中心に位置するアビドス高等学校にも及んでいる。
転校する生徒が増え、教室は空き、使われなくなった校舎は管理が追いつかないまま砂に埋もれていく。かつての栄華など見る影もなく、今では学校を存続させることさえ難しい状況に追い込まれていた。
それでも、そんな学校を守ろうとする者たちは確かに存在する。
そして今日も、アビドス高等学校の生徒会室では、ある意味でいつも通りの光景が広がっていた。
◇
「……ユメ先輩、ちょっといいですか?」
「ん? どうしたの、朔くん?」
「この机に積まれてる書類なんですけど、昨日の時点では一冊しかありませんでしたよね?」
そう尋ねた少年――天城朔は、目の前に積み上げられた書類の山を眺めながら、何とも言えない表情を浮かべていた。
机の上に置かれているのは、どれもこれもアビドス自治区の復興に関する計画書だった。施設の修繕計画に始まり、新たな収入源の確保、果ては学校周辺の緑化計画まで、その内容は実に多岐にわたっている。
もっとも、それらの計画が現実的なものかと問われれば、少々返答に困るところではあったが。
「あっ、それ? 昨日の夜に新しいアイデアを思いついたから、まとめてみたんだ!」
「……なるほど。ちなみに、何時まで起きてたんです?」
「えっと……」
「ユメ先輩?」
「…………朝の五時、くらい?」
「……はぁ」
朔は深々とため息をついた。
目の前で困ったように笑っている少女の名前は、梔子ユメ。
アビドス高等学校の生徒会長であり、この学校を誰よりも大切に思っている人物だった。
明るく穏やかな性格で、誰に対しても分け隔てなく接する彼女は、基本的には面倒見のよい先輩である。しかし、その一方で少々思い込みが激しく、何かを思いつくと周囲が見えなくなるところがあり、特にアビドスの復興が関わると、その傾向はいっそう顕著になる。
もっとも、彼女自身に悪気がないことは朔も十分理解していたし、そんな性格を今さら変えろと言うつもりもなかった。
ただ、徹夜をしてまで計画書を増やすのは、さすがに勘弁してほしいところである。
「……ホシノ、ちょっと聞いてくれ」
「何? 今ちょっと忙しいんだけど」
「ユメ先輩、また徹夜したらしい」
「…………は?」
隣の机から、紙をめくる音が止まった。
ゆっくりと顔を上げた少女は、朔の言葉を理解するまで数秒ほど沈黙すると、やがて呆れと怒りが入り混じった表情を浮かべた。
「……ユメ先輩?」
「ホ、ホシノちゃん……?」
「また徹夜したんですか?」
「え、えへへ……」
「笑って誤魔化さないでください! この前も無理をして体調を崩しかけたばかりじゃないですか!」
「うぅ……ごめんなさい……」
小鳥遊ホシノ。
現在、アビドス高等学校の生徒会で副会長を務める一年生であり、朔とは幼い頃からの付き合いになる少女だった。
小柄な体格と幼さの残る顔立ちに反して、その性格は非常に生真面目で、学校の仕事に対する責任感も人一倍強い。
ユメが学校の未来を思い描く役割を担っているのだとすれば、ホシノはその夢を実現するために必要な現実を見据える役割を担っていると言えるだろう。
もっとも、そんな彼女もユメには相当苦労させられているらしく、最近では生徒会室からため息が聞こえない日の方が珍しい。
「……まあまあ、ホシノ。その辺にしといてやれって。ユメ先輩も反省してるみたいだし」
「朔、あんたねぇ……」
「なんだよ」
「そうやって毎回甘やかすから、ユメ先輩が反省しないんでしょ!」
「いや、甘やかしてるつもりはないんだけどな。そもそもユメ先輩が一回注意されたくらいで大人しくなると思うか?」
「……それは」
「ほら」
「そこで納得させようとしないで!」
「二人とも、私のことなんだと思ってるの!?」
あんまりな言われように、ユメが抗議の声を上げる。
しかし、それに対する二人の返答は実に素早かった。
「「放っておくと無茶する人」」
「声まで揃った!?」
ユメの悲鳴にも似た声が生徒会室に響き渡り、朔とホシノは顔を見合わせると、どちらからともなく小さく笑った。
こういうところは、幼馴染だからこその息の合い方なのかもしれない。
「……まあ、冗談はこのくらいにして。ユメ先輩、今日は早めに休んでくださいよ。体調を崩されたら困りますから」
「うぅ……分かったよぉ」
「本当でしょうね?」
「ホシノちゃんまで疑うの!?」
「前科がありすぎるんです!」
「……先輩、日頃の行いって大事ですね」
「朔くんまでぇ!?」
涙目になったユメを見て、朔は思わず笑みを浮かべた。
そんな彼の脇腹を、ホシノが軽く肘で小突いてくる。
「……朔」
「ん?」
「あんたも笑ってないで仕事して。昨日の分、まだ終わってないんでしょ?」
「分かってるって。そんな急かさなくても逃げやしないよ」
「どうだか。昨日だって途中で休憩するって言って、そのまま一時間も戻ってこなかったじゃない」
「あれは校舎の見回りも兼ねてたんだよ。サボってたわけじゃないって」
「だったら最初からそう言いなさいよ」
「お前、昔からそういうところ細かいよな……」
「誰のせいだと思ってるの?」
呆れたように睨んでくるホシノに、朔はそれ以上の反論を諦めた。
昔から彼女はこうだった。
何かにつけて自分の行動に口を出してくるし、少しでも無茶をしようものなら容赦なく叱ってくる。もっとも、朔自身も彼女に対して同じようなことをしているため、結局はお互い様なのだが。
「ふふっ……」
そんな二人のやり取りを眺めていたユメが、不意に小さく笑った。
「……何ですか、ユメ先輩?」
「ううん、何でもないよ。ただ、二人って本当に仲良しだなぁって思って」
「「どこが!?」」
「ほら、また揃った!」
楽しそうに笑うユメを前に、二人は揃って言葉を失った。
その後、再びホシノのため息が響いたのは言うまでもない。
◇
さて、ここで天城朔という少年について、少し説明しておこう。
彼はアビドス高等学校に通う一年生であり、ホシノとは物心ついた頃からの幼馴染だった。
幼い頃からアビドス自治区で生活しており、砂漠化によって街が衰退していく様子を、その目で見続けてきた一人でもある。
そして、そんな彼には、キヴォトスの生徒として極めて珍しい特徴が存在した。
――ヘイローが、ないのである。
このキヴォトスにおいて、ヘイローは生徒たちにとって当たり前の存在だった。
頭上に浮かぶその光輪は、一人ひとり異なる形状を持ち、普段は意識することすらないほど自然に存在している。
しかし、朔にはそれがない。
生まれつきなのか、あるいは何か別の理由が存在するのか、その原因については本人にも分かっていなかった。
ただ一つ確かなのは、彼の肉体が他の生徒たちとは決定的に異なるという事実だった。
キヴォトスの生徒たちは、銃弾を受けても容易には命を落とさない。もちろん無傷で済むというわけではないが、それでも生身の人間と比較すれば、その頑丈さは文字通り桁違いである。
対して、朔は違う。
銃で撃たれれば血を流し、骨が折れれば治療が必要になり、致命的な傷を負えば命を落とす。
どれほど身体を鍛えたところで、その事実だけは変えられない。
だからといって、彼が戦うことのできない人間かと問われれば、答えは否だった。
朔は幼い頃から戦闘技術を磨いており、その実力はホシノと比較しても決して見劣りするものではない。銃器の扱いはもちろん、近接戦闘における駆け引きや状況判断、敵の動きを予測する能力に至るまで、彼は高い水準で技術を身につけていた。
もっとも、どれだけ技術が優れていても、一発の銃弾が致命傷になり得るという不利を覆すことはできない。
そのため、朔は戦闘において、他の生徒以上に慎重な立ち回りを求められることになる。
本人もそのことは理解していたし、幼馴染のホシノに至っては、時折本人以上にその危険性を気にしている節があった。
さて、話を戻そう。
「――というわけで、今日はみんなで調査に行きたいと思います!」
生徒会室にユメの元気な声が響き渡った。
机の上には一枚の古びた地図が広げられており、その一角には赤いペンで大きな丸印が描かれている。
「……ユメ先輩、すみません。もう一回説明してもらってもいいですか?」
「もちろん! 実はね、昨日古い資料を整理してたら、学校の西側に昔の給水施設があるって分かったんだ!」
「給水施設、ですか?」
「うん! ずっと前に使われなくなった施設なんだけど、設備の一部はまだ残ってるみたいなの。だから、もし修理して使えるようになったら、学校の水道代を減らせるかもしれないでしょ?」
その説明を聞いた瞬間、ホシノの表情がわずかに変わった。
先ほどまでの呆れた顔から、何かを検討するような真剣な表情へと移り変わる。
「……なるほど。確かに、水道関連の維持費は無視できませんね。もし設備を再利用できるなら、検討する価値はあります」
「でしょ、でしょ!」
「ただし、設備が古いということは修理費用も相応にかかるはずです。そもそも、地下の水源がまだ使える保証もありませんし……」
「そこは実際に見てみないと分からないかなって!」
「……やっぱりそうなりますよね」
ホシノが頭を抱える一方で、朔は地図を手に取り、目的の施設が存在する場所を確認していた。
学校から西へ数キロメートルほど離れた旧市街地。
かつては住宅街として利用されていた区域だが、現在は砂漠化による被害が大きく、人の出入りもほとんどない。
それに加え、最近では武装した不良生徒たちの目撃情報も増えていた。
「……ユメ先輩、一つ確認してもいいですか?」
「ん? なあに?」
「この施設、現在の管理者は誰になってるんです?」
「えっと……」
「……まさか、調べてないとか言いませんよね?」
「…………」
「ユメ先輩?」
「……ごめんなさい」
「ですよね……」
朔は予想通りの返答に苦笑すると、手元の端末を操作し始めた。
現在のアビドスでは、放置されている建物や設備が珍しくない。しかし、たとえ使われていないように見えても、所有権が別の企業へ移っている可能性は十分にある。
何も調べずに設備を修理した挙げ句、後から面倒な契約問題を抱えることになれば、それこそ本末転倒だった。
「……一応、旧生徒会の施設台帳には載ってますね。昔は学校の関連設備として管理されていたみたいです」
「それじゃあ!」
「ただ、今の権利関係までは分かりません。実際に使うなら、そこはちゃんと確認しないと駄目ですよ」
「うんうん!」
「あと、施設の状態も不明ですからね。見に行って終わり、なんてことになる可能性もあります」
「それでも、何もしないよりはいいと思うんだ!」
ユメはそう言って、満面の笑みを浮かべた。
そんな彼女の姿を見て、朔は一瞬だけ言葉を止める。
正直なところ、この計画が成功する可能性はそれほど高くないだろう。施設の老朽化はもちろん、仮に修理できたとしても、学校まで水を引くためには相応の設備投資が必要になる。
現在のアビドスに、そんな余裕があるとは思えなかった。
それでも。
「……まあ、調べるくらいならいいと思いますよ」
「本当!?」
「はい。ただし、安全確認はしっかりしてくださいね。あの辺り、最近は物騒ですから」
「分かった!」
「……朔」
隣から、ホシノの不機嫌そうな声が聞こえてきた。
「何だよ」
「あんた、またユメ先輩の思いつきに付き合うつもり?」
「そうだけど?」
「……少しは止めようと思わないの?」
「別に、今回はそこまで悪い話じゃないだろ。費用をかけるのは調査してからだし、現地を見てくるだけなら大した問題はないと思うぞ」
「それはそうだけど……」
「それに、どうせお前も行くんだろ?」
「……は?」
「ユメ先輩を一人で行かせるわけないし」
「…………」
ホシノはしばらく朔を睨んでいたが、やがて諦めたように肩を落とした。
「……ああ、もう! 分かったわよ! 行けばいいんでしょ、行けば!」
「ほら、やっぱり」
「朔、あんた本当に腹立つ……!」
「昔からの付き合いなんだから、いい加減慣れてくれよ」
「そういう問題じゃない!」
何とも賑やかなやり取りを繰り広げる二人に、ユメは楽しそうに笑っていた。
こうして、アビドス生徒会による旧給水施設の調査が決定したのである。
◇
午後になり、三人は予定通り学校を出発した。
空は雲一つない快晴だったが、喜ばしいことばかりではない。遮るものの少ないアビドスでは、強烈な日差しが容赦なく降り注ぎ、乾いた砂の上を歩くだけでも体力が奪われていく。
特に朔にとって、長時間の移動は決して軽視できるものではなかった。
彼は首に巻いたタオルで汗を拭いながら、手元の端末で目的地までの距離を確認する。
「……あと十五分くらいですね」
「意外と近いんだね!」
「直線距離なら、ですけど。今は道路が塞がってますから、迂回する必要があります」
「そっかぁ……昔はこの辺りも、もっと賑やかだったんだけどなぁ」
ユメはそう呟くと、少し寂しそうに周囲を見渡した。
砂に半ば埋もれた商店の看板、窓ガラスの割れた建物、かつて人々が行き交っていたであろう大通り。
どれも今では、その役割を失って久しいものばかりだった。
「……先輩」
ホシノが口を開く。
「昔のことを考えても仕方ありませんよ。私たちがやるべきなのは、今のアビドスをどうするかです」
「うん、分かってるよ」
「だったら……」
「でもね、ホシノちゃん。私は、昔のアビドスがどんな場所だったのか、忘れたくないんだ」
その声は、普段の彼女からは想像できないほど穏やかなものだった。
「だって、ここに住んでいた人たちにとっては、大切な故郷だったはずでしょ? 今はみんないなくなっちゃったけど、いつかまた戻ってきたいって思ってる人もいるかもしれない」
「……」
「だからね、もし私たちがこの学校を守ることができたら、いつか街だって元気になるんじゃないかなって。そんなことを、ちょっと考えちゃうんだ」
ホシノは何も言わなかった。
その考えがどれほど非現実的なものなのか、彼女は理解していた。
学校一つ維持することすら困難な現状で、自治区全体の復興など夢物語もいいところだ。必要な資金も人手も足りておらず、そもそも砂漠化を止める手段すら見つかっていない。
しかし、そんな言葉を口にしようとした時、隣を歩いていた朔が先に話し始めた。
「……まあ、悪くないと思いますよ」
「朔くん?」
「街全体をどうこうするなんて、正直言って今の俺たちには無理ですけどね。でも、目標があるのは悪いことじゃないと思います」
朔は廃墟となった建物へ視線を向ける。
「俺たちができることなんて、せいぜい学校を維持することくらいです。それだって簡単じゃありませんけど……でも、今の学校を守れなきゃ、その先の話なんてできませんから」
「……そうですね」
ホシノが小さく頷いた。
夢を叶えるためには、まず目の前の現実をどうにかしなければならない。
それは彼女も同じように考えていたことであり、朔がその点を理解していることに、少しだけ安心した。
「じゃあ、まずは今回の調査を成功させないとね!」
「そうですね。ただし、成果がなかったとしても落ち込まないでくださいよ」
「えへへ、大丈夫! その時はまた別の方法を考えるから!」
「……本当に懲りない人ですね」
呆れたように呟くホシノだったが、その表情にはどこか柔らかいものがあった。
それからしばらく歩き、三人が目的地の近くまで辿り着いた時だった。
「……待ってください」
突然、朔が足を止めた。
先ほどまでの穏やかな雰囲気が消え、その表情が引き締まる。
「どうしたの、朔?」
「……誰かいる」
彼の視線の先には、古びた給水施設があった。
錆びついたフェンスに囲まれた敷地内には、既に人影がいくつか見えている。
全員が武装しており、施設から運び出したらしい金属部品を車両へ積み込んでいた。
「……ヘルメット団ね」
ホシノはその姿を確認すると、即座に自分の武器へ手を伸ばした。
「こんなところまで来てたんだ……」
「恐らく廃施設から資材を回収してるんだろうな。……面倒なことになった」
朔も腰に携えた二丁のショットガンピストルへ手を添える。
彼が愛用しているのは、近距離戦闘を想定した特殊な銃器だった。
一般的な拳銃よりも強力な一撃を放つことができる反面、射程距離や装弾数には明確な制約があり、取り扱いにも相応の技術が求められる。
朔はその特性を熟知しており、二丁を巧みに使い分けることで高い制圧能力を発揮する。
もっとも、彼にとって重要なのは相手を倒すこと以上に、自分が撃たれないことだった。
何しろ、一発でも致命的な場所に銃弾を受ければ、それで終わりなのだから。
「……ユメ先輩、少し下がっていてください」
「えっ、でも……」
「大丈夫です。俺とホシノで対処します」
そう言って朔はホシノへ視線を向けた。
「ホシノ、いけるか?」
「当然。……ただし、朔」
「分かってる。無茶はしない」
「……その言葉、ちゃんと守りなさいよ」
「はいはい」
「返事は一回!」
「……お前、俺の母親か何か?」
「誰が母親よ!」
軽口を交わしながらも、二人の視線は既に施設へ向けられていた。
幼い頃から何度も一緒に訓練を重ねてきた二人には、言葉にしなくても分かることが多い。
ホシノが前へ出るなら、朔は彼女の動きを支える。
朔が隙を突くなら、ホシノがそのための道を作る。
互いの得意分野も、苦手な部分も理解しているからこそ成立する連携だった。
もっとも、今回は無用な戦闘を避けられるなら、それに越したことはない。
「……まずは話をしてみるか」
「相手が素直に退いてくれるとは思えないけど」
「同感。それでも試す価値くらいはあるだろ」
朔は両手を見える位置に置いたまま、施設の入口へ向かって歩き始めた。
しかし、その姿に気づいたヘルメット団の一人が、警告もなしに銃口を向けたことで状況は一変する。
「おい、あそこに誰かいるぞ!」
「アビドスの制服……? まだ生徒が残ってたのかよ!」
「面倒だ、追っ払え!」
直後、乾いた銃声が響いた。
朔は相手が引き金へ指をかけた時点で身を翻し、近くのコンクリート壁へ飛び込んでいた。直前まで立っていた場所に銃弾が着弾し、細かな砂埃が舞い上がる。
「……交渉決裂、っと」
「だから言ったでしょ!」
ホシノが素早く前進し、愛用のショットガンを構えた。
彼女の放った一撃が敵の足元を抉り、続く銃撃が遮蔽物へ逃げようとした相手の動きを阻む。
その隙に、朔は施設の外壁沿いを移動していた。
正面から撃ち合う必要はない。
敵がホシノへ注意を向けている間に、横から接近すればいい。
そう判断した朔は、崩れかけた壁の陰から相手の位置を確認し、短い距離を一気に詰めた。
「なっ、お前いつの間に――!」
「悪いな」
相手が振り向くより早く、朔の蹴りが銃身を跳ね上げる。
直後、至近距離から放たれた散弾が敵の防具を叩き、その身体を地面へ転がした。
続けてもう一人が銃を構えようとするが、朔はその動きを見逃さない。相手の射線から外れるように身体を動かし、腕を押さえて銃口を逸らした後、素早く足を払って転倒させる。
しかし、三人目の敵は想定よりも早く立ち直っていた。
「このっ!」
銃口が朔へ向けられる。
その瞬間、彼は自分の体勢が悪いことを理解した。
回避は間に合うかもしれない。
だが、確実ではない。
相手の指が動き、発砲音が響く寸前だった。
「――朔!」
横合いから飛び込んできたホシノの盾が、銃弾を弾き飛ばした。
彼女はそのまま敵との距離を詰めると、強烈な一撃で武装を叩き落とし、反撃する暇も与えず相手を無力化する。
辺りが静まり返ったのは、それから数秒後のことだった。
「……助かった」
朔が礼を言うと、ホシノはじろりと彼を睨んだ。
「……朔」
「……はい」
「さっき、何て言った?」
「……無茶はしない、だったかな」
「そうよね。私もそう聞いたんだけど?」
「……悪かったって。今のは完全に俺の判断ミスだ」
素直に謝罪する朔を見て、ホシノは少しだけ意外そうな顔をした。
しかし、すぐに表情を引き締め直す。
「……本当に気をつけてよね。あんたは私たちと違うんだから」
「……分かってるよ」
「分かってるなら、なおさらよ」
彼女の声には、怒りよりも強い感情が滲んでいた。
朔が戦えることは知っている。
彼の実力が高いことも、自分と肩を並べて戦えるほどの技術を持っていることも、ホシノは誰より理解していた。
それでも、彼が一発の銃弾で取り返しのつかない怪我を負うかもしれないという事実だけは、決して変わらない。
だからこそ、ホシノは彼が危険に身を晒すたびに、どうしても不安になってしまうのだった。
「……次は、もう少し上手くやる」
「次がないのが一番なんだけど?」
「ごもっとも」
朔が肩をすくめると、ホシノはようやく小さく息を吐いた。
その後、二人は周囲に他の敵がいないことを確認し、離れた場所で待機していたユメを呼び戻した。
「二人とも、大丈夫!?」
「はい。問題ありません」
「俺も大丈夫ですよ。怪我もしてません」
「よかったぁ……!」
ユメは心底安心したように胸を撫で下ろした後、二人の顔を交互に見つめた。
「……でも、あんまり危ないことはしないでね?」
「それ、朔にも言ってあげてください」
「おい、ホシノ!?」
「もちろん朔くんもだよ!」
「……はい」
結局、朔は二人から揃って注意されることになった。
◇
肝心の給水施設は、予想していた以上に老朽化が進んでいた。
屋根の一部は崩れ落ち、配管には錆が浮き、制御装置らしき機械にも長年使われていないことを示す大量の砂が積もっている。
それでも、全てが壊れているわけではなかった。
「……ふむ」
朔は持参した懐中電灯で機械の内部を照らしながら、端末に表示した古い設備図面と目の前の配管を見比べていた。
「どう、朔くん? 直せそう?」
「まだ何とも。大きな配管は残ってますけど、ポンプ自体が正常に動くかは分かりませんし、水源の状態も不明ですから」
「そっかぁ……」
「ただ、部品が全部なくなってるわけじゃありません。設備の状態を詳しく調べれば、再利用できるものもあるかもしれませんね」
「本当!?」
「調査次第、ですけどね」
ユメの顔がぱっと明るくなる。
しかし、その横で設備の確認をしていたホシノは、少し難しい顔をしていた。
「……仮に修理できるとしても、学校の設備へ接続するには相応の費用がかかりそうですね」
「だよな」
「それに、ここまで砂が入り込んでいるとなると、内部の損傷も考えられます。修理しても、長く使えるかどうか……」
「そこは専門業者に見てもらうしかないな。俺たちだけで判断するには限界がある」
朔がそう答えると、ホシノは頷いた。
確かに、現状では修理できるともできないとも断言できない。
それでも、実際に設備が残っていることを確認できただけ、今回の調査には意味があった。
「……それじゃあ、今日はここまでですね」
「えっ、もう帰るの?」
「これ以上は調べる道具もありませんから。それに、日が暮れる前に学校へ戻らないと危険です」
「うぅ……そっかぁ」
名残惜しそうに機械を見つめるユメだったが、ホシノの言うことが正しいと理解しているのか、それ以上無理を言うことはなかった。
そんな彼女の姿を見ていた朔は、ふと思いついたように口を開いた。
「……ユメ先輩」
「ん?」
「今回、収穫がなかったわけじゃありませんよ」
「……え?」
「設備が残っていることも分かりましたし、少なくとも再調査する価値はあります。最初から何もなかったと分かるよりは、ずっといい結果でしょう」
朔はそう言って、手元の端末を軽く掲げる。
「施設の状態も記録できました。学校に戻ったら、必要な修理内容と費用を見積もってみます」
「……朔くん」
「だから、そんな顔しないでください。まだ失敗って決まったわけじゃないんですから」
その言葉を聞いたユメは、しばらく目を瞬かせていたが、やがて嬉しそうに微笑んだ。
「……うん! ありがとう、朔くん!」
「どういたしまして」
「ホシノちゃんも、ありがとうね!」
「……私は別に、当然のことをしただけです」
ホシノは少しだけ照れくさそうに顔を背けた。
そんな彼女を見て、ユメがくすくすと笑う。
「ホシノちゃんって、ほんとに優しいよね」
「なっ……急に何を言い出すんですか!?」
「だって、文句を言いながらも、いつも私のことを手伝ってくれるでしょ?」
「それは先輩が放っておけないからで……!」
「えへへ、やっぱり優しい!」
「もうっ……!」
顔を赤くして抗議するホシノの姿に、朔は堪えきれず笑ってしまった。
「……朔、あんたも何笑ってるの?」
「いや、悪い。仲がいいなと思ってさ」
「どこをどう見たらそうなるのよ!」
「少なくとも、嫌いな相手のためにここまではしないだろ?」
「っ……!」
そう指摘され、ホシノは再び言葉に詰まった。
実際、朔の言う通りだった。
彼女はユメの無計画さに呆れているし、思いつきに振り回されることも決して少なくない。
それでも、ユメが本気でアビドスを守ろうとしていることだけは疑っていなかった。
だからこそ、自分も力を貸している。
そして、そんな先輩の隣で、呆れながらも同じように歩いている幼馴染の存在も、ホシノにとっては当たり前になっていた。
「……本当に、二人とも困った人たちなんだから」
「えっ!? 私だけじゃなくて朔も!?」
「当然でしょ。あんたも十分、先輩に甘いんだから」
「……否定はできないな」
「そこは否定しなさいよ!」
三人の笑い声が、人気のない施設に響いた。
かつて多くの人々が利用していたであろう場所には、今や彼ら以外の誰もいない。
それでも、この瞬間だけは、どこか昔の賑わいが戻ってきたような気がした。
◇
学校へ戻った頃には、空が茜色に染まり始めていた。
校舎の窓には夕日が反射し、砂に埋もれかけたグラウンドには三人の長い影が伸びている。
生徒会室へ戻った朔は、調査記録を整理しながら、ふと窓の外へ視線を向けた。
「……今日も、あっという間だったな」
そう呟くと、隣で書類をまとめていたホシノが顔を上げる。
「まあ、色々あったからね」
「それにしても疲れた……」
「朔は帰ったらちゃんと休みなさいよ。明日も学校あるんだから」
「分かってるって」
「本当?」
「……信用ないな、俺」
「普段の行いを考えなさい」
容赦のない言葉に、朔は苦笑するしかなかった。
その時、部屋の奥で何やらごそごそと作業していたユメが、突然二人を呼びつけた。
「ホシノちゃーん! 朔くーん!」
「……今度は何ですか、先輩?」
「ちょっとこっちに来て!」
二人が顔を見合わせながら近づくと、ユメは嬉しそうに一枚の写真を見せてきた。
そこに写っていたのは、かつてのアビドス高等学校だった。
まだ砂漠化が今ほど深刻ではなかった時代のもので、校舎の周辺には緑が広がり、多くの生徒たちが笑顔で写っている。
「……これ、昔の学校ですか?」
「うん! 資料を整理していたら見つけたんだ!」
ユメは写真を大切そうに持ちながら、二人へ笑いかけた。
「見て見て! 昔は校庭にお花が咲いてたみたいなんだよ!」
「……そうみたいですね」
「すごいよねぇ。今は砂だらけなのに、こんなに緑があったなんて……」
彼女はそう言って、少しだけ遠い目をした。
「……いつか、またこんな学校にできたらいいなぁ」
その呟きは、決して大きなものではなかった。
けれど、朔とホシノにははっきりと聞こえていた。
ホシノは写真へ視線を落としたまま、しばらく何も言わなかったが、やがて静かに口を開いた。
「……簡単ではないと思いますよ」
「うん」
「学校を維持するだけでも大変なのに、校庭に花を咲かせるなんて……今の私たちには、余裕がありません」
「……そうだね」
ユメは否定しなかった。
それが現実であることくらい、彼女にも分かっていたからだ。
それでも、彼女は写真を見つめながら微笑んだ。
「でも、いつかは……ね?」
その表情を見て、ホシノは何かを言いかけた。
しかし、その前に朔が口を開く。
「……じゃあ、最初は一輪からでいいんじゃないですか?」
「……え?」
「いきなり校庭全部を緑にするのは無理でも、花を一輪咲かせるくらいなら、いつかできるかもしれないでしょう」
朔は写真へ視線を落としながら続けた。
「そりゃ今すぐは難しいですけどね。給水施設の件が上手くいったら、少しずつできることも増えるでしょうし」
「……朔くん」
「そのためにも、まずは学校を残さないと」
そう言って笑う朔を、ユメはしばらく見つめていた。
それから、彼女は何かを決意したように拳を握る。
「……うん! そうだよね!」
その声には、先ほどまでの寂しさなど微塵もなかった。
「じゃあ、約束しよう!」
「……約束?」
「そう! いつか絶対に、この学校にもう一度お花を咲かせるの!」
ユメはそう言って、二人へ向けて小指を差し出した。
「ホシノちゃんも、朔くんも、一緒にね!」
「……先輩、そんな簡単に約束なんて……」
ホシノは呆れたように眉を寄せた。
しかし、その表情はどこか困ったようでもあった。
そして朔は、差し出された指を見つめた後、小さく息を吐いた。
「……まあ、いいですよ」
「えっ、本当!?」
「ただし、約束したからには途中で投げ出さないでくださいね?」
「もちろん!」
嬉しそうに頷くユメへ、朔は小指を絡めた。
それを見たホシノが、慌てたように声を上げる。
「ちょ、ちょっと朔!? 何を勝手に……!」
「ホシノは嫌なのか?」
「嫌とは言ってない!」
「じゃあ、いいだろ?」
「そ、それとこれとは……!」
「ホシノちゃんも一緒にやろうよ!」
「……もうっ!」
結局、ホシノも小さくため息をつきながら、二人へ小指を差し出した。
ユメはそんな彼女の手を嬉しそうに取ると、三人の指を結びつける。
「それじゃあ、約束だよ!」
夕焼けに染まった生徒会室で、三人はささやかな約束を交わした。
校庭に、もう一度花を咲かせること。
いつか、この学校を昔のように賑やかな場所にすること。
そして、これからも三人で、アビドスを守っていくこと。
誰かが聞けば、無謀だと笑うかもしれない。
けれど、この時の彼らにとって、それは決して馬鹿げた夢ではなかった。
「……ところでユメ先輩」
「ん?」
「約束はいいんですけど、明日提出する書類は終わったんですか?」
「…………あっ」
「……先輩?」
「え、えへへ……」
「……はぁ」
ホシノの深いため息が響き、朔が隣で笑いを堪える。
そんな二人の様子を見ながら、ユメは困ったように笑っていた。
いつもと何も変わらない、アビドス生徒会の放課後。
明日も、きっと同じような一日がやってくるのだろう。
ユメが突拍子もないことを思いつき、ホシノがそれを叱り、朔が呆れながら二人の間に入る。
そうやって、少しずつでも前へ進んでいけると信じていた。
少なくとも、この時の天城朔は、本気でそう思っていたのだ。
いつの日か自分たちが交わした約束を、思い出すことすら辛くなるほどの後悔を抱えることになるなど、想像もしていなかった。
――これは、まだ三人が同じ未来を見ていた頃の物語。
砂に呑まれゆく街で、少年と二人の少女が過ごした、かけがえのない日々の始まりだった。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
第1話ということで、まずはユメ先輩、ホシノ、朔の三人の日常を書いてみました。
しばらくはユメ先輩が健在だった頃のアビドスを中心に、三人の関係性をじっくり描いていく予定です。
AIを使用しての執筆なので、文章やキャラの口調などで気になるところがあれば、気軽に教えていただけると嬉しいです!
感想や評価などもいただけると励みになります。
それでは、次回もよろしくお願いします!