いずれ世界を滅ぼす極悪龍貴族に転生した俺、破滅フラグを回避したいだけなのに勘違いのせいで最強の聖人に祭り上げられる 作:Hiruandon
ファフニール家の装飾品で飾られた豪華な自室。
そもそも屋敷もかなり広い。従者も何人いるのやら……やはり、相当な金持ちだな。
違和感はないが、広いとどうにも背中がむず痒い……。
六畳程度の一人部屋くらいでも十分なんだよね。
まぁいい、そのうち部屋も住みやすいように変えよう。
静かに俺は、レクスの力を確認した。
俺の力は世界を滅ぼすレクスへと繋がっている。
つまり、マナによる繋がりを強化すればするほど、俺は呪いの影響を強く受ける。
「でもこの呪い……精霊の断片ともいえるな」
──────
【精霊魔法】
現在:使用不可×
精霊による魔法を許可されていません。
精霊とマナで交流し、親睦を深めてください。
進行状態:3/10
──────
やはり……進行状態が上がっている。
俺は精霊と会ったことがないんだ。それなのに進行度が上がっているということは、原因はレクスしかいない。
精霊に会う方法は……これしかない。
レクスの呪いに対して、より強くマナを流し込んでいく。
──────
【警告】:『
早期発生の可能性を確認
──────
頭に響き渡る警告音と痛みに耐えながら、勢いよくマナを流し込んだ。
その瞬間、意識が歪んだ。
*
カイルの意識は自室から精神の深層領域へと引きずり込まれていた。
「……ここは」
さっきまで部屋にいたはずだが……空を見上げると真っ暗だ。
夜か?
星の無い漆黒の夜空と、底知れない深海のような空間が広がっていた。
……目前に、巨大な瞳があった。
「っ!」
自身を容易に飲み込むほどの威圧と、死を直観させる気配。
俺はこの存在を知っている。
見たことがある。
言葉を発せずとも、『お前の肉体を喰らい尽くす』という理不尽な殺意と飢餓感がカイルの精神を直接殴りつけてくる。
転生前の俺であれば、この時点で精神は即死していただろう。
俺はこの龍から力を引き出して、動けない足で立ち上がった。
「Grrrru……」
身が震えるような低い咆哮に、本能が逃げろと叫ぶ。
しかし、自然と笑みがこぼれていた。
無限に広がる闇の空間は、ノクスの力を象徴している。
こいつの力をもし、完璧に引き出すことができれば……俺は破滅を逃れられる。
そう確信できるだけの強さがあった。
そして俺は、この龍を……倒さなければならない。
────
【警告】
現在のマナ量における、レクス・レイとの謁見時間が限界を迎えました
現実世界へと引き戻されます
────
視界が急激に引き剥がされ――。
*
「はぁっ……! はぁ、はぁっ……!」
現実に引き戻された俺は、床に両手をついて激しく息を吐き出した。
冷や汗が全身を濡らし、心臓が耳の奥でうるさく脈打っている。たった数秒の接触で、これほど消耗させられるとは。
だが――。
──────
【精霊魔法】
現在:使用可能
ノクス・レイに遭遇したことで、魔法を獲得しました。
【報酬】:精霊魔法を習得しました
スキルを習得しました。
スキル名:
カイン・ファフニールの性質が変化しました。
ノクスの一瞥により、潜在属性が『闇』から『万能属性』へ変更されました。
──────
視界の端に浮かぶウィンドを見つめながら、俺は笑みを浮かべた。
手に入った。
「俺が求めていた属性変更だ……」
このゲームでは精霊魔法を得ることで、自身の適性を一度だけ変えることができる。
だが、安堵したのも束の間──肺の奥が焼けるような違和感に襲われ、俺は慌てて身体状況のステータスを開いた。
「ぐっ!?」
──────
【身体状況】
深影病:進行状態 50/100
ノクス・レイにより、徐々に死に至る呪い
最終的に、破滅をもたらすノクス・レイに至る。
──────
「冗談じゃない……一瞬、視線を交わしただけで、進行度が半分まで跳ね上がったのかよ」
代償があまりにも大きすぎる。
このペースで侵食が進めば、イベントを待たずして俺の肉体が先に崩壊する。
だが、手に入れた牙が本物であることもまた事実だ。
喉元までせり上がる血の味を飲み込み、俺は荒い息を整えながら、得たばかりのスキルに興奮する。
これが、どんなもんか……。
「カイル様‼」
その声と共に、ウルルが傍に駆け寄って来た。
「入るなと言ったはずだけど?」
「申し訳ありません……何事かと思いまして。罰は甘んじて受けます」
こちらの事は何も分からない様子だったが、俺が倒れた音で慌てたようだ。
「……そうか。いや、余計な心配をさせたな」
これで罰を与えるなど、それこそ破滅ルートまっしぐらだ。
彼女は仕事をしたに過ぎない。
「しかし……カイル様、一体何があったのですか」
ウルルの表情は、どこか恐れているような面持ちだった。
「前よりも、オーラがとても成長したような……凄い……」
ノクスの威圧は隠しているはずだが、漏れでているのだろうか。
それとも、俺が成長したか……呪いによる影響か。
「大したことはしていない」
「……」
意味ありげにこちらを見つめる、期待を込めたようなウルルの目に苦笑いを浮かべた。
【魔法適性まで、残り二日────】