パックから出るカードが俺だけインフレし過ぎている 作:3pu
最近ではありふれたことだが、俺こと爆札最人は転生者である。
大学の卒業間際に、カードを買いに出かけたらガキからカードを奪おうとする転売ヤーと喧嘩になり、頭を打って気が付いたら三才児になっていた。
多分、前世は脳内出血とか多分そういうので死んだのだろう。
転売ヤー許すマジ。
まぁ、今頃は殺人を犯した罪で豚箱に収監されていることだろう。
ざまぁみろ。
そんなわけで、俺は転生したわけなのだが、新たに生きる世界はなかなかユニークだった。
カードゲーム至上主義。
世界で大流行しているスピリットファイトというカードの勝負で、ご飯の奢りから、借金の返済、はたまた国家間の条約内容まで決められる。
とてつもなくイカれた世界だ。
だが、前世からカードゲームを嗜んでいた俺にとっては、天国のような世界に見・え・た・。
何故ならカードゲームが強ければ、食いっぱくれることがないのだから。
カードだけして生活出来るとか最高かよ、と。
ウキウキ気分ですぐに親にカードを強請った。
が、スピリットファイトは最低限の算数を教えた後、つまり一年生を卒業するまで禁止されていると言われてしまい、それから約四年ほどお預けを食らうことになった。
で、待ちに待った二年の進級日。
『よし、カードショップに行くぞ!カトリナ』
『ちょっと走らないでよ〜!』
俺は幼馴染の紫ロール髪美少女 札盛 カトリーナを連れて、速攻でカードショップに向かった。
正直、一人で行きたかったのだが、彼女の両親から面倒を見て欲しいと頼まれたから仕方なくだ。
前世の記憶があるが故に、カードショップに女の子と一緒に行くと言うシチュにとてつもない違和感を覚えていたが、グッとそれを堪えながら、物理的に距離を置いて頑張った。
で、約3メートルほど距離を取りながら歩き続けること数分。
最寄りのカードショップに俺達は到着。
ここで大きな問題が一つ起こった。
『ねぇ、さい君。なんか、すごいキラキラしてるカード出た』
『おまっ、マジかよ!それ、100000分の1の確率でしか出ないURカードじゃん!やべぇ!』
『えっ、あの子UR引いたの?』
『カードの名前はなんだ?』
『遠目から見た感じモンスターみたいだな』
一つ目は、カトリナがビギナーズラックでパックから超絶レアカードのURを引き当ててしまったこと。
前世では箱1レベルで排出されていたURが、今世では1カートンで当たるかどうかのレベル。
そんなものを始めたての女の子が引き当てたのだ。
注目されないわけがない。
で、それに伴い二つ目の問題が
『おい、そこの女。俺にそれ寄越せよ』
『お前にはそんなカードは勿体無い。俺達が有効活用してやる。光栄に思いな』
UR欲しさに年齢問わず、周りのスピリットファイターがカトリナから色んな手段でカードを奪おうとしたこと。
パックから出るURカードが使えるか、使えないかは自身の使うフラッグによって変わるのだが、仮に使えなくても売れば百万円代には余裕で届く。
そんなものが目の前にあったら、こんな邪な行動に出るのは仕方がないだろう。
しかし、それよりヤバいのが三つ目。
正直、これが一番やばかった。
『てめぇら!カトリナからカードを奪いたきゃ、俺に勝ってからにしな!』
『おうおう、スピリットファイターになりたてのケツの青いガキがナイト気取りとは笑わせるぜ』
『そもそもデッキは持っているのか?』
『ない!が、てめぇら程度さっき買ったパックのカードだけで充分だ!ちょっと待ってろ……へ?』
UR、SR、SR、UR、UR。
俺が剥いたパックのカードがおかしかった。
レアリティがおかしかったのは当然なのだが、何よりやばかったのは効果。
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不滅番長ダイバーン
コスト:8
レア度:SR
フラッグ:不滅ヤンキーズ
カードタイプ:モンスター
攻撃力11000 守備力0 シンボル1
効果
・このモンスターの登場時、相手のモンスターを全てタップする。
・このモンスターが破壊される時、代わりにその場に留まる。
・自分のトラッシュに不滅ヤンキーズのフラッグマークを持つモンスターがいる場合、もう一度プレイヤーに攻撃することができる。────────────────────────
これが通常のSR。
そんで俺が引いたSRはというと
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伝説の傭兵 アイク
コスト:8
レア度:SR
フラッグ:ニュートラル
カードタイプ:モンスター
攻撃力15000 守備力10000 シンボル2
効果
・このモンスターの登場時、デッキから好きなウェポンカードを3枚まで選び、このモンスターに装備する。
・このモンスターが破壊する時、代わりにこのモンスターに装備されているウェポンを1枚破壊しても良い。そうした場合、相手のモンスターを1体破壊し、自身は山札から一枚引く。
・このモンスターは装備されているウェポンの数だけ攻撃できる。※ウェポンが付いてない場合は攻撃できない。
・自身のターン終了時、トラッシュにあるウェポンを好きな数手札に戻しても良い。
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うん。滅茶苦茶インフレしてた。
攻撃力も守備力もシンボルも効果も全部がイカれていた。
で、結果どうなったかと言えば、カトリナを守ることには成功した。
『ほら、泣くなよ?最後のお別れくらい、笑って済ませようぜ』
『でも、でも、え゛っぐ、私がもっと゛ちゃんとしてれば、さ゛い゛君が遠くに行かずに済んだはずなのに』
『俺は気にしてないから。ほら、笑った笑った』
が、代わりに俺は住んでいた家を引っ越すことになった。
なんでそうなったかと言えば、理由は単純。
標的が俺に移ったのだ。
カトリナと同等のレアリティのカードを持っているだけでなく、その効果は今まで見たことないレベルで強く、複数枚持っている俺の噂はすぐに街中に広がった。
そして、連日のように家にカードを奪おうとする輩が突撃して来るため、街を離れざるを得なかったのだ。
この一件を経て、俺はカードゲーム至上主義の世界の怖さを身に沁みて痛感した。
ここは前世と似ていても違う世界なのだ、と。
だから、俺はカードを封印することに決めた。
俺がスピリットファイトに関わらなければ、平穏が保たれるならその方がいい。
引いたカードは机の書き付きの引き出しに封印して、転校先ではカードを買えないほど貧乏な子供を演じた。
周りの奴らはそれを知って露骨に下に見て来る奴は居たが、友達のデッキを借りてボコすことで何とかイジメにならないようやり過ごしていたある日。
また事件が起こった。
『お願いだ!最人、どうしても明日のファイトに勝たなきゃいけないんだ。カードを貸してくれ』
父が会社の上司に目をつけられたのだ。
しかも、父は何も悪くないただの逆恨み。
それによって、父は会社をクビになるかどうかの瀬戸際に立たされてしまったのである。
『アナタ!何言っているの!あのカードは危険だから使わないって家族みんなで話したでしょ!?』
『分かってるさ!でも、明日負ければ僕は会社をクビになってしまう。そうしたら、家族が皆んな路頭に迷ってしまう。家族を守るためなんだ!いいだろ?』
『でも!そんなことしたらまた引っ越すことになるわよ!』
『大丈夫!今回勝てば僕は会社の上役になれるんだ。そうなれば、僕ら家族に警備を付けられるようになる!引っ越すことにはならないさ!大丈夫、僕を信じて』
『駄目よ!私はもうあんな目に二度と逢いたくない。この子の悲しむ顔を見たくない!お願い考え直して!』
『考えて考えてこうするしかなかったんだよ!』
『なら、もっと考えて!』
『───カードを貸すよ』
『最人!』
『最人!?』
『それで今より暮らしやすくなるんなら、その方がいいに決まってる。だから、父さんのデッキに合うやつを持って来るね』
俺が原因の急な引越しによって、父親には別の会社に再就職させるという多大な迷惑をかけていた負目から、俺は封印すると決めていたカードを再び開けてしまった。
『アナタまたこんな遅くに帰ってきて何してるの!?また香水の匂いがするし、キャバクラに行ったわね!?』
『別にキャバクラくらいはいいだろ〜。僕だって毎日頑張ってるんだし、付き合いだよ、付き合い』
『付き合いっていうのならこのキスマークはなに?というか、送ってきた子とやけに仲良さげにハグしてたけど、どういうこと?もしかして浮気してないわよね?』
『あ〜だる。もういいや、ミレイ。お前ガミガミうるさいわ。俺達もう離婚しよ。俺はマリヤと幸せになるから。じゃあね。あっ、最人は貰っていくよ』
『駄目に決まってるでしょ!?最人は私の子よ!』
結果、今度は日常だけでなく家庭が崩壊した。
家族思いで優しかったはずの父は強大な力を得て、たった一年で傲慢で自分勝手なクズに豹変してしまったのだ。
俺を都合のいい金づるにしようとする父と、それを阻止しようとする母。
『邪魔するな!』
『あぐっ!』
『母さん!?』
取っ組み合いの果てに、母さんは父に包丁で胸を刺された。
殺されたのだ。
「に、げ、て……」
「あ゛ぁぁぁぁぁ!」
「逃すわけがないだろ!」
俺はその現実が受け入れられず、家を飛び出した。
鬼の形相で追いかけて来る父化け物から逃げて、逃げて、逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて──
『つ〜か〜ま〜え〜た〜』
──捕まった。
子供の体では大人に勝つことなど出来なかったのだ。
俺は頭から押さえつけられ、その場に倒れ伏す。
チラリと、上を見るとそこには返り血で顔を赤く染めた正真正銘の化け物がいた。
『お゛えっ!?』
見慣れた顔なはずなのに、あまりに醜悪過ぎて、思わず嘔吐してしまった。
『うわっ!汚な!こら駄目じゃないか服は汚しちゃ駄目だって、昔に言っただろ!この馬鹿息子が!?』
『がぁっ!?』
そんな俺の反応が癪に触ったらしく、太ももを包丁で切られた。
命をとったら、金を搾取できないと考えたが故の行動なのだと頭で理解した。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い。
だが、そんなものは下半身から来る尋常ない痛みによって、掻き消える。
クソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソ。
俺はただ家族の力になりたかっただけなのに。
恩返しがしたかっただけなのに。
何でこうなった?
こんな化け物が、俺の父親なわけがない。
こんな化け物に、優しい俺の母さんが殺されて良いわけがない。
ふざけるな!
何が天国だ!
クソみたいな地獄じゃねえか!
あぁ……誰でも良い。
誰かこんなクソみたいな地獄を終わらせてくれ。
『承知しました。マスター』
『ぶへら!?』
『へ?』
鈴のなるような澄んだ声が響いたのと同時に、俺の上に乗っていた化け物が吹き飛んでいく。
恐る恐る顔を上げるとそこには、闇夜に煌めく銀髪をたたえた一人のクノイチが立っていた。
「いや〜〜、愛を感じる素晴らしい出会いですね〜」
「……どこがだよ」