幸いでございます。(クイックシルバーは除きます。)
―――飽きた。バージルとのケリの着かない兄弟喧嘩にも、湧き出る掃きだめのゴミの処分にもとことん飽きた。バージルが寝転がる。俺も合わせて寝転んで目を瞑る。気が付くと周囲が眩しい。何事かと目を開けるとどこかの地下室のようだった。
「お前がかの『伝説の魔剣士スパーダ』か?」
ダンテ「惜しいな、スパーダの息子だ。」
顔だけ向けて答えた。
「何⁉ どういうことだ…⁉」
ダンテ「俺に何の用があって呼び出したんだ?」
「間もなく第四次聖杯戦争が始まる。そのためにスパーダを呼び出したはずだったのだが…まさか息子を召喚するとは思わなかった。」
ダンテ「どうやって呼び出した?」
「これを使って召喚した。」
男が両手に持っている物を眺める。あれは…アミュレットだ、しかもふたつある。ということは、この世界での俺たちは生まれなかったか死んだかのどちらからしい。親父も相変わらず消息不明のようだ。ボーっとしていると知らない情報が入り込んでくる。『冬木の聖杯戦争』『7つのクラス』『マスターとサーヴァント』『令呪』…etc…
ダンテ「それなら俺の体内に取り込んである。だから俺が呼ばれたんだろうな。」
「……そうか、ならば伝説の魔剣士の息子の力…拝見させてもらうぞ。」
ダンテ「その前に何か食わせてくれ。最低でも1か月以上何も食ってない。」
「……いいだろう。」
それからピザをたらふく食わせてもらって風呂にも入らせてくれた。ついでに俺の身に纏っているもの全て洗濯してくれた。これだけでも聖杯戦争とやらを戦う分の報酬を前払いしてもらったことになる。すっかりリラックスしてマスターたちと会話する時間をもらった。
ダンテ「それで…俺はランサークラスで呼ばれたらしいが何でだ? 槍は無いし心当たりがあるのはヌンチャクと三節昆と棍棒しかないぞ。」
「本来ならライダーを呼ぶつもりだったのが盗人に触媒を盗まれてな。急遽取り寄せてセイバーで召喚したかったが他の者が召喚済みだったらしく、仕方なく空いているクラスで呼んだ。」
ダンテ「なるほどね…。ま、あんたには飯も風呂も世話になったし洗濯もしてくれたししっかり仕事はするぜ。もうひとつ聞いていいか?」
「なんだ?」
ダンテ「隣に座ってるお嬢ちゃんとはどういう関係なんだ?」
「お、お嬢ちゃん⁉」
「く、口を慎め⁉ 彼女は私の婚約者だ⁉ 軽々しくお嬢ちゃんなどと呼ぶな⁉」
ダンテ「婚約者⁉ だったらもっとイチャついていいんだぞ。何なら子作りに励んでもいい。俺のことは空気だとでも思って気にしなくていいぞ。」
「そんな破廉恥なことが出来るか⁉ 彼女とは清いままの関係でいたいんだ⁉」
ダンテ「でもお互い由緒正しき名家の者なんだろ? 見た目もいい。周囲の男女が寄り付いて放っとかないんじゃないか?」
「ええい黙れ⁉ 令呪を使ってでも黙らせるぞ⁉」
ダンテ「わかったわかった、悪かったよ。もうこの話はしない。約束する。」
「本当だろうな全く…⁉ 伝説の魔剣士の息子がこんなに軽薄な奴だとは思わなかった…⁉」
ダンテ「俺の親父はもっと酷かったらしいぞ。人間界で暮らしたのはいいが人間の女の顔の区別がつかなくて他の女と名前を間違えたってのがザラだったらしい。」
「……お前いた世界でのスパーダは何をしているんだ?」
ダンテ「さあな。俺がガキの頃に行方不明になったまま今でもわからん。意外と俺みたいにどこかの世界に呼ばれたりしてるかもな。おかげで母親は悪魔に殺され俺も兄貴も死にかけたが。」
「……そうか、済まなかったな。嫌な事を思い出させて。」
ダンテ「謝る必要ならねえよ。復讐はきっちり果たしたからな。」
「ということは…魔界の帝王を倒したのか…⁉」
ダンテ「不死身らしいから封印って言った方が正しいな。性懲りもなく人間界に侵攻しようとしやがったから魔界の奥までブッ飛ばしてやった。」
「むう…伝説の魔剣士に劣らぬ偉業だな…。」
ダンテ「親父は悪魔の軍勢のおまけつきだったから親父程ではないけどな。」
黙って頬杖をついて目の前の男女を眺める。くっつきそうでくっつかない。もどかしかった。彼女を見る。何というか…淡泊というか淡々としているというか…本当にマスターを愛しているのか疑問だった。何とかしてやりたいが俺も恋愛事には疎い。もどかしかった。せめて聖杯戦争を生き延びてほしかった。俺の仕事で俺の関係者で犠牲者を出すのも誇りが許さなかった。
ダンテ「ひとつ頼み…というかお願いがあるんだが聞いてくれるか?」
「……なんだ?」
ダンテ「あんたたちは何があっても生き延びることを考えてくれ。サーヴァントはもちろん俺が狩るがマスターも場合によっては俺が狩る。だからあんたは無理して戦わなくていい。自分と彼女を守ることだけを第一に考えてほしい、出来るか?」
「お前がそこまで言うなら…そうしよう。約束する。」
ダンテ「OK.Looking forward to working with my master, Mr. Archibald. Miss Sola-Ui」
(これからよろしく頼む、我が主人、ミスターアーチボルト。ミスソラウ。)
固い握手を交わした。互いに笑みを浮かべる。
「私ならケイネスと呼んでいいぞ。こちらはソラウ、よろしくな、ダンテ。」
着替えて日本行きの飛行機に乗って冬木市とやらに向かった。見るからに高級そうなホテルに着いた。俺はキャバリエーレを召喚して冬木市を探索することにした。ケイネスから気配遮断なるスキルが備わっていることを教わった。イメージしてスキルを発現させる。試しに走り回って見た。ノーヘルで高速で走っているのに誰も俺に見向きもしない。キャバリエーレに後部座席なる便利なものは備わっていないがケイネスは俺についていくことになった。
ダンテ「ケツが痛むようだったらいつでも言ってくれ。後はしっかり掴まってろよ。」
ケイネス「わかった、サーヴァントを見つけ次第始末しろ。」
ふたりで冬木市を爆走した。夜になり大きな魔力を感知した。向こうも同じようだった。
ダンテ「ケイネス、デカい魔力を感知した。向こうも気づいたようだ。俺は倉庫街に誘き出して殺り合う。お前は気づかれないように隠れてろ。」
ケイネス「死ぬなよ。」
ケイネスを担いでジャンプして倉庫の上に乗せて隠れさせた。それから下りる。ふたり分の足音が近づいてくる。振り向く。
ダンテ「これはこれは…デカい魔力を感知したと思ったらふたりともお嬢ちゃんじゃねえか。よい子は寝る時間だぜ。」
両腕を広げて挑発する。
「舐められたものだな…⁉ 見たところ素手のようだが戦いの準備はしなくていいのか?」
ダンテ「これでもか?」
瞬時にエボニー&アイボリーを召喚して構える。
「「なっ⁉」」
ダンテ「そっちの白いお嬢ちゃんが無防備だが撃っていいのか? それともゴキブリみてえにコソコソ動き回ってるあっちの方がいいか?」
腕を伝って二挺の拳銃に魔力が迸る。右手を遥か斜め上に向ける。金髪の美少女が瞬時に鎧を身に纏い、見えない何かを構えて斬りかかる。構えからして剣だろうか、すかさずジャンプしてかわしガンスリンガースタイルからのレインストームを放つ。頭上からの一転集中射撃、美少女が剣を楯に防ぐ。急降下しながら魔剣ダンテで兜割りを放つ。これも剣で防がれる。だが見えない剣が俺に押されて額に食い込み血が流れる。すぐに再生する。俺のような自動治癒能力でもあるのか何らかの宝具とやらの効果なのかは判断がつかなかった。一気に畳みかけた。
ダンテ「Shall we dance?」
体当たりで体勢を崩してからの素早い剣舞、高速の連続突き、全て防がれたが足元がガラ空きだったので足払いして逆さに宙に舞う美少女に向かって振り子打法でカッ飛ばした。白い美少女を巻き込んで吹っ飛ぶ。剣でしっかりガードはされたので大したダメージはないだろう。しかし…白い美少女が先に起き上がる。おかしい、魔力は感じるが確かにダメージは金髪の美少女より重いはずだ。普通の人間なら。試しにエボニー&アイボリーを撃ってみる。弾丸が貫通することなくポロリと勢いを失って落ちる。ため息をついた。原理は不明だが彼女も不死身らしい。ならば―――ジャンプして倉庫に隠れてる人影にチャージショット込みでエボニー&アイボリーを超速連射した。超人じみた素早さで人影が移動する。動きを読んで連射しまくる。遠くの倉庫が穴だらけになる。それでも僅かな魔力反応は消えていない。身を屈めて潜んでいるのか、少し銃身を下に傾けて撃とうとしたところに背後からデカい魔力反応、振り向き様に魔剣ダンテで薙ぎ払う。押し負ける金髪美少女が後ろに下がりながら落下する。その隙にキャバリエーレを召喚しブレーキング…分離させたバイクを左右の手に持ち急降下しながら叩きつける。魔力を帯びたタイヤがチェーンソーの如く見えない剣を削っていく。幾重にも重なる空気の層が消え失せ武器の姿が露わになる。
ダンテ「やっぱり剣か…。ってことはセイバーでいいんだよな?」
「お前は…何者だ…⁉ 拳銃を…大剣を…バイクを操る…まるで出鱈目だ…⁉」
ダンテ「知ったところでどうにもならねえよ。この世界からおサラバするまでの宿題だ。」
セイバーが後ろへ飛んで間合いを取る。俺もキャバリエーレに乗ってアクセルを吹かす。ほぼ同時に突進――――って時に落雷と共にむさ苦しそうなおっさんの叫び声が聞こえ俺たちの間に割って入った。
「双方剣を収めよ! 王の前であるぞ! 我が名は征服王イスカンダル! 此度の聖杯戦争に於いてはライダーのクラスを得て現界した!」
ため息をついた。俺はこういう水差し野郎が大嫌いだ。
「うぬらとは聖杯を求めて相争う巡り合わせだ。まずは問うておくことがある! うぬら…ひとつ我が軍門に下り聖杯を余に譲る気はないか! さすれば貴様らを朋友として遇し世界を征服する快悦を共に分かち合う所存である!」
ダンテ「そうか、サヨウナラだ。」
隣で蹲っている少年に狙いを定めてエボニー&アイボリーを連射する。すかさずおっさんが庇って背中に銃弾を受ける。マントに阻まれ致命傷には程遠い。
「貴様何をする⁉ マスターを狙うとは恥だとは思わんのか⁉」
ダンテ「足手まといを連れてきたてめえの脳ミソに言え。何か文句あるかおっさん?」
「私もひとりの王としてブリテン国を預かる身だ。如何な大王といえど臣下に下るわけにはいかん!」
「ほう…! ブリテンの王とな! これは驚いた! 何にしろあの騎士王がこんな小娘だったとは!」
「その小娘の一太刀を浴びてみるか、征服王!」
何だか俺を無視したやり取りにイライラしてきた。ダブルカリーナアンを召喚して連結する。構えてカスケード…貫通能力のあるビームショットを2頭の馬にブッ放した。馬どもが苦痛の悲鳴を上げる。
「はあ…こりゃあ交渉決裂かぁ…勿体ないなぁ…残念だなぁ…。」
ケイネス「そうかよりによって貴様か…。一体何を血迷って私の聖遺物を盗みだしたのかと思ってみれば…まさか君自ら聖杯戦争に参加する腹だったとはね…。『ウェイバー・ベルベットくん』君については私が特別に課外授業を受け持ってあげようではないか。魔術師同士が殺し合う本当の意味を。その恐怖と苦痛を余すことなく教えてあげよう。光栄に思いたまえ。」
「おう魔術師よ! 察するに貴様はこの坊主に成り代わって余のマスターになる腹だったらしいな。だとしたら片腹痛いのう、余のマスターたるべき男は余と共に戦場を馳せる勇者でなければならん。姿を晒す度胸のない臆病者が役者不足も甚だしいぞ!」
ムカついた。おっさんのこめかみにエボニーを1発ブチ込む。
ダンテ「俺のマスターを侮辱するんじゃねえ。サーヴァントに守られなきゃとっくに死んでる泣くだけの小僧より俺のマスターの方が余程利口で物分かりがいいぞ、おっさん。」
「また貴様か…。もう貴様には興味がない。さっさと消え失せい。」
ダンテ「消えるのはてめえだよ。死人が未練がましくいつまでもこの世にしがみついてんじゃねえ。」
睨み合っていると頭上の街灯が光輝く。悪趣味な金ピカの鎧を纏った男が現れる。すかさずエボニー&アイボリーで街灯を破壊する。金ピカ男が着地し俺を睨みつける。
「痴れ者が!天に仰ぎ見るこの我を、同じ大地に立たせるか! その不敬は万死に値する!」
ダンテ「見下ろされるのは嫌いでね。偉そうな態度取る奴は尚更ムカつく。」
金ピカ野郎の背後に結界らしきものが発現して剣やら槍やらが刃先が俺に向かう。一々弾き飛ばしたり避けるのも面倒なのでロイヤルガードスタイルで待ち受けた。
「誰の許しを得て我を見ておる?狂犬めが……。」
いつの間にかデカい魔力を持った黒い霧に包まれた黒づくめの鎧兜に身を包んだ謎のサーヴァントがいた。かつてのクソ兄貴を思い出したがそれ以上に真っ黒だった。そいつに向かって剣や槍が飛んでいく。
ダンテ「俺を無視するな。」
エアトリックで金ピカ野郎の背後に回ってバルログで両手を組みハンマーを後頭部にブチ込む。顔面から地面に叩きつけられる。背中に馬乗りになり左右の籠手のラッシュを後頭部に叩きこむ。バルログも温まってきたようで炎が噴き出す。やがて奴は塵のように消える。殺したわけではないらしい。遥か遠くに魔力の存在を感知した。標的を失った黒い奴は今度は俺に襲い掛かってくる。タイミングを合わせてリアルインパクト…ボディブローからのジャンプアッパーと飛び膝蹴りの合わせ技をブチ込む。そのまま霧のように消えた。
ダンテ「次は誰だ?」
おっさんとセイバーを睨む。
「興醒めだ。余は帰る。」
ダンテ「汚ねえケツ見せてさっさと消えろ。セイバー、お前は?」
「私も退かせてもらおう。いつか本気のお前と戦いたい。」
ダンテ「その時はお前が死ぬ時だけどな。覚えとけ。」
セイバーも白い美少女も立ち去っていった。動きのない人間らしき気配は今は見逃した。
ダンテ「悪いなケイネス、結局誰も殺れなかった。」
ケイネス「いや、いいんだ。それに…私のために怒ってくれたことを感謝する。」
ダンテ「俺は俺が守ろうとしている存在を虚仮にされてムカついただけだ。」
こうして第四次聖杯戦争初戦は終わりを迎えた。