―――キャバリエーレでホテルの壁を上りケイネスの部屋の窓の縁に手をかける。覗き見る。もう普通にふたりともくつろいでいた。安心して部屋に入った。
ダンテ「帰ったぞ。」
ケイネス「遅かったな、収穫はあったか?」
バーサーカーのマスターを助け、令呪が消えサーヴァントは消滅したこと。キャスターを仕留め損ねたが子供たちは救助したこと。金ピカ野郎、おっさん、セイバーと酒飲んでる間にアサシンの襲撃を受けて返り討ちにしたことを包み隠さず報告した。俺からも聞きたいことがあった。
ダンテ「俺のスキルに真魔人っていう悪魔の姿の更に進化した姿になって爆発的に攻撃力やら機動力が向上するんだが、とにかく魔力の消費が激しい。俺の魔力の供給はソラウの担当らしいが魔力切れ起こしたら彼女はどうなるんだ?」
ケイネス「考えられるのは極度の体力の消耗、疲労だがサーヴァントから直接吸い取られるとなると…最悪死に至るかもしれん。」
ダンテ「魔力の回復はどうやってやる?」
ケイネス「一般的にはこれを使う。魔力が込められてるから飲みこめばすぐに効果が出る。」
テーブルに宝石が散りばめられる。魔力の反応をビンビンに感じる。
ダンテ「これが無くなったら?」
ケイネス「魔術師である私の血や…まあ…体液諸々を接触させて摂取してもらう。後は食事や睡眠だが最も効率が悪い。」
ダンテ「それなら宝石は後々のために取っておいてくれ。俺はこれからキャスターを探し回る。何しろ連続無差別児童誘拐殺人犯だからな。掃き溜めのゴミ野郎を生かしてはおけねえ。見つけ次第すぐに真魔人化してブッ殺すからケイネスは彼女をしっかり身守っていつでも魔力回復できるように見張っといてくれ。」
ケイネス「……わかった。ダンテ、怒りに逸るなよ。」
ダンテ「よくわかったな…。気づかれないようにしてたつもりだったんだが…お前の言う通り頭に来てしょうがない。」
ケイネス「悪魔の血を引きながら人間のために戦うお前は誰よりも人間らしいぞ。お前はお前の信じる『正義』を貫け。」
ダンテ「Certainly, my master.」(かしこまりました、我が主人。)
窓から飛び降りてキャバリエーレを飛ばす。ゲス野郎の魔力を感知しては走り気配が消え、感知してはまた消えるの繰り返しだった。奴が何を企んでいるのかはわからない。だがついに追い詰めた。川の中央に浮かんでいる。
ダンテ「よおゴミ野郎! 死ぬ準備は出来たか‼」
「ようこそ悪魔⁉ 再び会えて恐悦至極⁉ 貴様を神の生贄に捧げ今こそ世界を救済する⁉」
キャスターが未知の化物に取り込まれる。懐かしい感覚、かつて親父スパーダの力を制御しきれず醜い化物となったアーカムを思い出した。そういえばあの野郎も神父の恰好してやがったなと思った。背後から覚えのある気配、白い美少女とセイバーだった。
ダンテ「よおセイバー。キャスターなら化物と合体しちまったぜ。今日も特別サービスだ! 見せてやる! 悪魔のマジの遊びってやつを‼ 吹っ飛ばされないように気を付けな!」
剣先が俺に向かいながら宙に浮かぶ魔剣ダンテが俺の胸を貫く。トリガーバーストと共に真魔人化する。改めて感じる漲る力、高揚感をよそに阻む触手をアドベントであっさりすり抜け胴体?に密着する。真スティンガーで表皮を抉り体内を掘り進み上へと向かう。キャスターの足が見えた。真インフェルノを叩き込み空洞を作る。体内は再生する傍から炎に包まれ灰になり塵と化す。キャスターの足を掴んで強引に引きずり下ろす。
ダンテ「よおゴミ野郎。また会えて嬉しいぜ。」
「なっ⁉ なっ⁉ 何だ…⁉ 貴様のその姿は…⁉」
ダンテ「てめえが言ったんだろ。『悪魔』って。」
「貴様は――――。」
先は言わせなかった。ジャッジメント…素早い全方位の剣舞でキャスター諸共化物を細切れにしてトドメに全方位に魔力の大爆発を起こす。化物が塵になって消える。周囲を見渡す。上空に魔力反応、一瞬で間合いを詰める。
ダンテ「おい金ピカ野郎。高みの見物決め込んでいい御身分だな。少しは役に立てよ。てめえも王サマの端くれだろ?」
「黙れ雑種。あんな汚物に我が宝具を使えと? 身の程を弁えろ。貴様の姿も見るに堪えん。」
ダンテ「とりあえずこのオモチャから降りろ。見下ろされるのは嫌いだって前に言ったはずだ。物覚えが悪いらしい。」
船の先端から真スティンガーで掘り進んで破壊し両翼を真魔人コンボで斬り落とす。ゆっくりと落下していく。ケイネスに念話で連絡を取る。現状、ソラウに特に変化はないらしい。真魔人化を解いて金ピカ野郎を追った。
ダンテ「何だおっさん、いたのか。」
「あの化物をひとりで討ち取るとは流石は伝説の魔剣士の息子といったところか、ダンテ。余に仕える気はないか?」
ダンテ「デビルハンターに王も臣下も兵隊も必要ねえよ。まして、おっさんの下につくなんぞ御免だ。セイバーの頼みなら喜んで引き受けるかもな。」
「まさか女の色香に惑わさたのではあるまいな?」
ダンテ「俺の好みには外見が少し幼過ぎるな。あと10年、いや、せめて5年後が楽しみだ。…で、俺と今すぐ殺り合うか悪趣味金ピカ野郎。」
「口を閉じろ汚らわしい雑種めが。」
ダンテ「少しは俺を楽しませろ王サマ。あの程度の掃き溜めのゴミ退治したくらいじゃあ俺は満足しねえ。てめえからもあの化物と同じ臭いがするぜ。」
「……我への挑発は死を以て償わせるぞ、雑種。」
ダンテ「やってみろよ、ほら、かかってこいよ!」
身を屈めて両手を叩き手招きする。
「図に乗るなよ雑種が⁉」
剣やら槍が飛んでくる。片っ端からロイヤルブロックした。真魔人とは違う、力が漲る感覚。ロイヤルブロックしながらゆっくり歩み寄った。目の前に金ピカ野郎、次の飛び道具が来る瞬間、ロイヤルリリースと共に武器と金ピカ野郎の鎧が砕け散り吐血する。
「ガハッ…⁉ 馬鹿…な…⁉」
ダンテ「てめえの相手はつまらん。サヨナラだ。」
真魔人化しデモリションで金ピカ野郎を包む。どんどん体が醜く膨張していくところで塵のように消えた。またあの野郎のマスターの仕業らしい。舌打ちした。水差し野郎はおっさんだけではないようだった。
「あの英雄王ギルガメッシュをああまで一方的に打ちのめすとは…気に入った!」
ダンテ「おっさんの下にはつかねえって言ったばかりだろうが。英霊サマってのも大したことねえな。今度はおっさんが相手になるか?」
「余は諦めんぞ! さらばだ!」
チャリオットに乗って去って行った。人の話を聞かねえ奴だと呆れた。ため息をついた。一旦ケイネスの部屋に戻ることにした。
ダンテ「本当にソラウに異常はないのか?」
ケイネス「ああ本当だ。私も調べたが異常なしだ。それよりもキャスター討伐よくやった。」
ダンテ「少し暴れただけだ。大したことない。金ピカ野郎も殺るつもりだったが邪魔が入った。」
ケイネス「ひとつは間接的にだがお前は既に3つの陣営を壊滅させたのだぞ。もっと誇れ。」
それから数日経った。目立った動きはなかった、表向きは。キャバリエーレで疾走する中、確かに金ピカ野郎の魔力を感知した。着いた先は教会だった。扉を開ける。
ダンテ「おやおや…誰かと思えばアサシンのマスターの神父サマじゃねえか。ここに金ピカ野郎いるだろ。呼べよ。」
「ここにはいない。」
ダンテ「下手な嘘は止めろ。あの野郎と同じゴミの臭いがするぞ。女とヤるより他人の不幸を眺める方が楽しいっていう悪趣味な匂いがよ。何企んでやがる?」
「何も企んでなどいない。」
ダンテ「連続無差別児童誘拐殺人事件のニュース聞いてどう思った? 羨ましいと思ったか? 自分の手で殺したかったって悔しかったか?」
「お前のような下衆な男と話す舌など持たない。」
ダンテ「お前も金ピカ野郎も掃き溜めのゴミと同じだ。いや、それ以上に質が悪いか? 悪魔は堂々と殺戮を楽しむが、てめえは清廉潔白な神父サマってツラして他人の不幸を楽しんでる。」
「何をしている?」
ダンテ「誰だあんた?」
「私は聖杯戦争を創った御三家の一角、遠坂家の五代目当主にして冬木市のセカンドオーナー、遠坂時臣という。アーチャーのマスターだ。」
ダンテ「『遠坂時臣』ねぇ…。御三家って何だ?」
「……セイバー陣営のアインツベルン家、遠坂家、間桐家だ。」
ダンテ「間桐家って誰だ?」
「……バーサーカーのマスター、間桐雁夜と言えばわかるか?」
ダンテ「てめえはあのお嬢ちゃんがどんな目に遭ってたか知ってて言ってんのか?」
「桜のことか?」
ダンテ「そう言えばそんな名前だった気がするがなぁ、酷ぇ状態だったぞ。体中、人間の血肉と魔力を食う蟲だらけで自分の娘をそんな目に遭わせて何が父親だよ。」
「何…だと…⁉」
ダンテ「『何…だと…⁉』じゃねえだろ。本当に何考えてんだよ。それでも父親かよ。」
「知らなかった…⁉ 桜がそんな目に遭ってるなんて…⁉」
ダンテ「……ま、蟲も除去して俺の血飲ませたから少しは元気になったけどよ。それから予言しておいてやる。てめえはこの性悪クサレ神父に油断させられて後ろからグサッと刺されるか、正面からか知らねえけど殺される。それで性悪金ピカ野郎とのサーヴァントの契約して性悪タッグの出来上がりだ。」
「どういう意味だ…⁉」
ダンテ「この教会から悪趣味金ピカ野郎の魔力を感知した。でもこのクサレ神父は金ピカ野郎なんていないと知らばっくれる。てめえあの金ピカ野郎と上手くいってんのか?」
「……。」
ダンテ「どうやらあの悪趣味金ピカ野郎の方がこのクサレ神父と気が合うらしい。俺の直感じゃもうあの野郎に見放されてるぞ。それでてめえは殺されて新アーチャー陣営の結成ってわけだ。わかったか?」
「根拠は何だ…⁉」
ダンテ「あの悪趣味金ピカ野郎とこのクサレ神父の態度見てたら分かる。確かにこの教会にいたんだよあの野郎は。悪魔の感覚を舐めんじゃねえ。俺は帰る。じゃあな、残り少ない人生を精々楽しむんだな。」
「待て⁉ 待ってくれ⁉」
無視した。恨むならロクでもないサーヴァントを召喚した己を恨めと決断を下した。
俺はひたすらケイネスとソラウの護衛に努めた。更に数日が経った。
ケイネス「ダンテ、お前は聖杯に何を望む。」
ダンテ「何もない。『何でも願いが叶う』なんて胡散臭すぎる。どうせ悪いことが起きるに決まってる。」
ケイネス「何故そう考える?」
ダンテ「悪魔としての直感だ。俺はふたりに無事に帰ってもらいたい、そして幸せに暮らしてほしい、それだけだ。そのためには早くこのくだらないイベントを終わらせないとな。」
ケイネス「……私も冷静に考えてみたら何故聖杯戦争に参戦したのかわからなくなってきた。お前の願い通りソラウと添い遂げたい、それだけしか考えられなくなった。」
ダンテ「急用が出来た。ちょっと行ってくる。」
ケイネス「どこへ行く?」
ダンテ「少し暴れるだけだ。」
ケイネス「そうか…行ってこい…。」
窓から飛び降りキャバリエーレを飛ばす。陸橋の前で待ち構える。馬の蹄の音が聞こえる。
ダンテ「ようおっさん、いつもの2頭のペットはどうしたんだよ?」
「あれは…セイバーに殺られた。」
ダンテ「ふーん、俺はこのくだらねえ争いに飽きた。早く終わりにしてえ。決着つけようぜ、おっさん。征服王サマの夢から覚ませてやる。」
「余の臣下に迎えたかったのだが仕方ない…。今回はお前に付き合うとしよう…。」
ダンテ「どこかで聞いたセリフだな。」
「『王の軍勢(アイオニオン・ヘタイロイ)‼』」
辺り一面砂漠に変わる。目の前には人、人、人…。まさに軍勢と言っていいだろう。
ダンテ「親父の伝説の再現としては魔界の帝王サマがいねえのが物足りねえが、前哨戦としては丁度いいか。」
魔剣ダンテを逆手に持って後ろに引き絞り静かに魔力を溜める。