【超短編】足が痺れて動けないフィーリウス様シリーズ 作:実秋
ある日、フィーリウスは上司であるエリックの部屋で
執務報告を終え、恒例の紅茶を嗜んでいた。
ソファの向かいに座るエリックと他愛もない会話をしながら
高級であろう紅茶を口に運ぶ。
親衛隊モビルスーツ隊隊員に留まらず、親衛隊内外に
熱心なファンが存在するエリックを前に、
フィーリウスは毎度の事ながら緊張していた。
しかしエリックにはそれらは何処吹く風であり、
彼の興味は専ら目の前のフィーリウスに向けられている。
その事もフィーリウスは理解し、
背筋に余計に力が入っていた。
「フィーリウスは日に日に成長していくね」
不意にかけられた言葉に顔を上げれば、
エリックは微笑んでいた。
「モビルスーツの操縦技術だけじゃない」
空になったカップをテーブルに置き、フィーリウスを見据え、
目を細める。
「この先も君の成長を見ていたいな」
「⋯⋯⋯」
なんだか告白されているようだ、とフィーリウスは思わず
顔を逸らす。
その反応にエリックはふふ、と笑った。
この甘い空気にいつも耐えかねるフィーリウスの反応を見て、
エリックは楽しんでいるのだ。
しかし不意に、フィーリウスが声を上げた。
「あ⋯」
「どうかした?」
エリックが珍しいこともあるものだとフィーリウスの
顔を見やる。
「⋯足が痺れました」
「おや」
足をさすろうと手を足に伸ばしたフィーリウスに、
エリックは声をかける。
「あまり触らない方が⋯」
「っあ⋯う⋯」
強く触れたのだろう、フィーリウスは涙目になり
何とも言えない声を上げ、エリックを無意識に誘惑する。
「この前も⋯んっ⋯痺れて⋯
ガイウスとバネッサに、動かさない方がいいと⋯」
「うん、そうだね」
フィーリウスはエリックの言葉に目を潤ませながら顔を上げ、
彼の顔を見つめる。
エリックは堪らず手で顔を覆った。
「中佐⋯?」
「いや⋯何でもないよ」
緩みそうになる目と口元に喝を入れ、
いつもの端正な顔で答える。
「動かないし、触らない。しばらくすれば収まるさ」
「わかりました⋯⋯んんっ」
頷きつつ、痺れる感覚に耐えられないのか
フィーリウスは再び甘い悲鳴を上げる。
エリックは、思わず彼を物にせんと立ち上がりかけた
自分の足を何とか止める。
そして高ぶる心を沈めるため、小さく息を着くと
右手の人差し指を口元で立ててフィーリウスを見て目を細めた。
それは、声を抑えるようにという合図である。
フィーリウスは素直に口元に手を当てて小さく頷く。
「いい子だ」
そうでないと、せっかく我慢してきた欲望が
顔を覗かせるだけでなく
体を乗り出してきてしまう。
しばらくして足の痺れが収まったフィーリウスは、
いつもの凛とした表情に戻り、一礼をして帰って行った。
「無意識も考えものだな」
一人残されたエリックは、苦笑しながらぽつりと呟いた。
~完~
フィーたんは無意識の誘い受けだと(いいなと)思ってます