自由気ままな狐のヒーローアカデミア 作:沖ノ鳥島産ポテチ
雄英高校、ヒーロー科一年A組。
入学初日の朝。窓から差し込む日差しが教室を照らす中、鈴心狐雨真は自分の席に座り、のんびりと周囲を眺めていた。
「ここが雄英かぁ……」
白い髪を揺らしながら、狐雨真は感慨深そうにつぶやいた。
自分の個性について、もっと知りたい。今まで知らなかった世界を見てみたい。
そんな気持ちから受験を決めた雄英高校。ようやく、その第一歩を踏み出したのだ。
「これから、どんなことがあるのかな」
期待に胸を膨らませていると、教室の扉が開いた。
「おはようございまーす!」
明るい声とともに入ってきたのは、姿の見えない少女――葉隠透だった。
葉隠は教室内を見回し、狐雨真に気づくと、嬉しそうに近づいてきた。
「あっ、鈴心くん! おはよう!」
「おはよう、葉隠さん。今日も元気そうだね」
「もちろん! だって、今日から雄英高校の生徒なんだよ? 楽しみじゃないわけないでしょ!」
弾むような声で答える葉隠に、狐雨真はくすりと笑った。
「ふふっ、そうだね。僕も楽しみだよ」
「そういえば、入試のときは本当にありがとうね! あのとき鈴心くんが助けてくれなかったら、私、どうなっていたか分からなかったもん」
「気にしなくていいよ。困っている人がいたら助ける。それだけだから」
「それができるのがすごいんだって!」
葉隠は感心したように言った。
狐雨真にとっては自然な行動だったが、葉隠にとっては忘れられない出来事だったのだろう。
「それにしても、鈴心くんって不思議な個性だよね。狐火を使ったり、すごい速さで動いたり!」
「妖狐だからね。いろいろできるんだ」
「いいなあ! 私の個性は透明になることだから、目立つことはあんまり得意じゃないし」
「透明になるのも、立派な長所だと思うよ。見えないということは、それだけ相手に気づかれにくいってことだからね」
「そっか! そう考えたら、私の個性も結構すごいのかも!」
「うん。使い方次第で、いろいろなことができると思うよ」
「えへへ、ありがとう!」
葉隠は嬉しそうに笑った。
狐雨真も穏やかな笑みを返す。
そのとき、教室の入り口から聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「おはよう、鈴心くん!」
緑色の髪をした少年と、そばかすのある少女が並んで入ってきた。
緑谷出久と麗日お茶子。
二人は入学試験前に狐雨真と出会い、三人で会話を交わしていた。あのときの縁が、こうして同じクラスで再びつながったのだ。
「おはよう、緑谷くん、麗日さん」
「また会えたね! 同じクラスになれてよかったよ!」
「うん。試験前に話したときは、同じクラスになるかまでは分からなかったからね」
狐雨真がそう答えると、緑谷も頷いた。
「そうだね。二人とまた話せてよかったよ」
「こちらこそ。これからもよろしくね」
狐雨真は二人に微笑みかけた。
そのとき、緑谷の視線が狐雨真の頭にある白い狐耳へ向けられた。
「そういえば、鈴心くんの個性って、変化や幻術、狐火なんかが使えるんだよね?」
「うん。ほかにもできることはあるけど、まだ全部を説明できるわけじゃないんだ」
「やっぱりそうなんだ……! 複数の能力を持っている個性なのかな。それとも、ひとつの個性の中にいくつもの性質が含まれているのか……」
緑谷は考え込むように、次々とつぶやき始めた。
「狐火の性質も気になるし、幻術の発動条件や有効範囲も気になるな……。身体能力の向上も個性の一部なのかな。それとも妖術による補助なのか……」
狐雨真はそんな彼を見て、くすりと笑った。
「緑谷くんは、個性の話になると熱心だね」
「あっ、ご、ごめん! 僕、つい夢中になっちゃって……!」
「謝らなくていいよ。好きなことを熱心に話せるのは、素敵なことだと思うから」
「鈴心くん……ありがとう!」
緑谷は照れくさそうに笑った。
「緑谷くんは、昔から個性のことをよく考えているんだね」
麗日がそう言うと、緑谷は少し恥ずかしそうに頭をかいた。
「うん。個性について調べるのが好きなんだ」
「いいことだと思うよ。自分の力を理解しようとするのは大切だからね」
狐雨真の言葉に、緑谷は嬉しそうに頷いた。
「私も、自分の個性をもっと活用できるようになりたいな」
麗日もそう言って、拳を軽く握った。
「きっとできるよ。これから一緒に頑張ろうね」
「うん!」
三人が笑顔を交わしたところで、葉隠が元気よく声を上げた。
「ねえねえ、みんな! これから同じクラスなんだし、仲良くやっていこうよ!」
「もちろんだよ、葉隠さん」
「うん! よろしくね、鈴心くん!」
入学初日の朝。狐雨真は、入試前に知り合った二人と再会し、葉隠とも会話を楽しんでいた。
これから始まる雄英での生活。
勉強も訓練も、きっと楽しいことばかりではないだろう。それでも、どんな経験が待っているのかを考えると、狐雨真の心は弾んでいた。
しばらくして、一人の男が教室に入ってきた。
寝癖のように乱れた黒髪。目の下には濃い隈。身体には寝袋のようなものを引きずっている。
教室内を見回すと、面倒くさそうに口を開いた。
「おまえら、席につけ」
その声に、生徒たちはそれぞれ自分の席へ戻っていく。
狐雨真も席に座り、教卓を見る。
「俺は相澤消太。おまえらの担任だ。よろしくね」
相澤消太。
雄英高校の教師であり、ヒーロー名をイレイザー・ヘッドという男だった。
相澤は生徒たちをひと通り見渡すと、淡々と告げた。
「さっそくだが、これから体操服を配る。受け取ったら着替えて、グラウンドに出ろ」
相澤は生徒たちに体操服を渡していく。
受け取った生徒たちは、突然の展開に戸惑いながらも、それぞれ体操服を手にした。
「個性把握テストを行う。準備ができたらグラウンドに集合しろ」
それだけ告げると、相澤は教室を出ていった。
「えっ、いきなり個性把握テスト!?」
麗日が驚いたように声を上げた。
「入学式とか、ガイダンスとかはないんですか!?」
「そんなの、あとでもできるだろ。雄英は自由な校風だからな。何をするにも、決められた順番に従う必要はない」
麗日は驚きながらも、納得したように頷いた。
狐雨真は手元の体操服に目を落とし、それから緑谷たちに視線を向けた。
「まあ、まずは着替えようか」
「う、うん。そうだね」
緑谷も体操服を手に取った。
「二人とも、頑張ろうね」
「うん!」
「そうだね!」
狐雨真たちは更衣室へ向かい、それぞれ体操服に着替えることにした。
グラウンドに集まった生徒たちを前に、相澤は測定内容を説明する。
「種目は五十メートル走、握力、立ち幅跳び、反復横跳び、ソフトボール投げ、上体起こし、長座体前屈、持久走だ」
どれも中学校の体力測定で経験するような種目ばかりだった。
ただし、今回は違う。
「個性の使用は自由だ。自分の個性を使って、どれだけの記録を出せるかを測る」
その説明に、生徒たちの表情が変わった。
個性を使っていい。
つまり、単純な身体能力だけではなく、それぞれの個性をどのように活用できるかが問われるのだ。
「個性使えるのか!すげー面白そう!」
生徒の一人が、期待に満ちた声を上げた。
「中学の体力測定とは全然違いそう!」
周囲の生徒たちも、これから始まるテストに興味を示していた。
そんな生徒たちの様子を、相澤は冷めた目で見渡した。
「……面白そう、か」
相澤の声が、グラウンドに響く。
「おまえら、自分たちがこれから何をするのか、本当に理解しているのか?」
生徒たちの表情から、少しずつ笑みが消えていく。
「ヒーローを目指す以上、個性を使いこなす力は必要不可欠だ。自分の能力を正確に把握し、限界を知り、どうすれば最大限に活用できるかを考えなければならない」
相澤はそこで一度言葉を切った。
「それと、ひとつ言っておく個性把握テストの結果次第では、最下位の生徒を除籍処分にする」
「えっ……!?」
生徒たちが一斉にざわめいた。
「に、入学初日から除籍って……!」
麗日も驚いた様子で声を上げた。その言葉に抗議するが相澤はその意見を退ける。
狐雨真もまた、わずかに目を細める。
「……最下位は除籍、か」
入学試験を突破したばかりなのに、もう退学の可能性を突きつけられるとは。
雄英高校が厳しい場所だということは理解していた。しかし、初日からここまで容赦がないとは思っていなかった。
「なかなか厳しい先生だね」
「う、うん……」
緑谷が不安そうに頷いた。
相澤は生徒たちの反応を確認すると、淡々と告げた。
「話は終わりだ。さっさと準備しろ」
生徒たちは緊張した面持ちで頷いた。
相澤は続けて説明する。
「中学までにも、個性を使った体力測定を受けたことがあるはずだ。それを雄英で改めて行う」
相澤は手元の資料を見ながら続けた。
「おまえらの個性を含めた身体能力を測定する。ヒーローを目指すなら、自分の能力を正確に把握しておく必要があるからな」
その説明に、何人かの生徒は期待に満ちた表情を浮かべた。
「まずはソフトボール投げから始める。鈴心、最初にやれ」
「僕から?」
「ああ。前に出ろ」
狐雨真は返事をすると、測定場所へ歩いていった。
生徒たちの視線が集まる。
「投げろ。個性の使用は自由だ」
「それじゃあ、遠慮なく」
狐雨真はボールを手に取り、軽く重さを確かめた。
そして、投球線の前に立つ。
まずは身体能力を高める。
狐雨真の身体に妖力が巡り、筋肉の動きが鋭くなる。さらに妖術を重ね、腕から肩、腰、脚へと力を効率よく伝えていく。
ただ力任せに投げるのではない。
身体の動きと妖力の流れを合わせ、力を無駄なくボールへ伝えるのだ。
狐雨真は静かに息を吸い込んだ。
「よいしょっ」
次の瞬間、ボールが勢いよく放たれた。
風を切りながら、ボールは青空へと飛んでいく。
そのまま遠くへ、遠くへと飛び続け、やがて小さな点となって見えなくなった。
測定機器に記録が表示される。
周囲の生徒たちが、思わず息を呑んだ。
「す、すごい……!」
「いったい、どこまで飛んだんだ……?」
狐雨真は表示された記録を確認し、満足そうに頷いた。
「うん。こんなものかな」
相澤は記録を確認すると、狐雨真に視線を向けた。
「身体能力だけでなく、個性の補助も組み合わせたか」
「うん。妖術で身体の動きを補助したんだ。大きな技を使ったわけじゃないから、妖力もそれほど消費していないよ」
「なるほどな」
相澤は短く答え、記録をつけた。
狐雨真はボールを返し、列から離れる。
その姿を見ていた緑谷は、目を輝かせていた。
「すごい……! 身体能力を高めるだけじゃなくて、妖術で動きを補助していたんだ。力の伝達効率を上げているのかな……?」
またしても考え込み始めた緑谷を見て、狐雨真は微笑んだ。
「緑谷くんも、次の種目で頑張ってね」
「あっ、う、うん!」
最初のソフトボール投げが終わると、相澤の指示で生徒たちは次々と種目をこなしていった。
まずは五十メートル走。
スタートの合図とともに、生徒たちが一斉に走り出す。
狐雨真は妖力を脚に巡らせ、身体の動きを補助しながら走った。
地面を蹴るたびに身体が軽く前へ進む。狐のようなしなやかな動きで走り抜け、記録を残した。
「よし、次だね」
続いて握力測定。
狐雨真は計測器を握る。表示された数値は十分に高い。
相澤が記録を確認する。
「普段は気をつけているんだ。力が強いと、うっかり物を壊しちゃうこともあるからね」
狐雨真は肩をすくめた。
次は立ち幅跳び。
狐雨真は膝を曲げ、身体を前へ押し出すように跳躍した。妖力で身体の動きを補助し、軽やかに着地する。
反復横跳びでは、左右への移動を素早く繰り返した。三本の尾が揺れ、足音が小気味よく続く。
動きに無駄がなく、方向転換も滑らかだった。
続く上体起こしでは一定のリズムで身体を起こし、長座体前屈では柔軟な身体を生かして記録を伸ばした。
持久走でも、狐雨真は最初から無理に飛ばさず、ペースを保って走り続ける。
妖力を使えば身体能力を補助できる。しかし、使い続ければ妖力は消費される。大きな技ほど消耗も大きくなり、使い果たせば身体能力も落ちてしまう。
だからこそ、狐雨真は必要以上に妖術を使わず、効率よく力を発揮することを意識していた。
最後まで走り切ると、狐雨真は呼吸を整えた。
「ふう……。いい運動になったね」
汗を軽く拭いながら、狐雨真は笑った。
そして、ソフトボール投げの順番が緑谷に回ってきた。
緑谷はボールを受け取ると、少し緊張した様子で投球線に立った。
その様子を見た麗日が、心配そうに声をかける。
「緑谷くん、大丈夫?」
「う、うん……!」
緑谷は返事をしたものの、どこか迷いがあるようだった。
彼の個性は、強大な力を発揮する一方で、身体に大きな負担をかける。
入学試験でも、その力を使ったことで身体に痛みを負っていた。
今回も同じことになれば、記録を出せても意味がない。
――緑谷くんは、力の使い方にまだ課題があるのかな。
相澤が声をかける。
「緑谷。いつまで立っている。投げろ」
「は、はい!」
緑谷はボールを握り直した。
そして、腕を振りかぶる。
その瞬間、緑谷の身体に力が集まった。
「いけえっ!」
ボールが放たれる。
凄まじい勢いで飛んでいくボール。
しかし、その直後――緑谷の指に痛みが走った。
「っ……!」
緑谷は顔を歪め、手を押さえた。
ボールは遠くまで飛び、記録が表示される。
生徒たちは、その数値に驚いた。
「すごい記録……!」
「今の、どうやったんだ……?」
だが、狐雨真は記録よりも緑谷の様子を気にしていた。
指を痛めている。やはり、力を使うことそのものに問題があるのだろうか。
そのときだった。
「おい、デク」
低く、怒りを含んだ声が響いた。
爆豪勝己が緑谷を睨みつけていた。
「てめぇ……個性を隠してやがったのか!!」
爆豪の手のひらから爆発音が鳴る。
次の瞬間、爆豪は緑谷へ向かって飛びかかった。
「かっちゃん!?」
緑谷が目を見開く。
爆豪の表情には、驚きと怒りが入り混じっていた。
彼はずっと、緑谷には個性がないと思い込んでいた。だからこそ、目の前で強大な力を使った緑谷の姿に、激しい動揺を覚えていたのだ。
しかし、爆豪の攻撃が緑谷に届くことはなかった。
「動くな」
相澤の目が赤く光り、髪がふわりと浮かび上がる。
爆豪の手から爆発が消えた。
「……は?」
爆豪は驚き、自分の手のひらを見つめる。
「俺の個性が……!」
「テスト中だ。私情を持ち込むな」
相澤は冷静に爆豪を見据えた。
「次に同じことをしたら、テストどころじゃなくなるぞ」
「チッ……!」
爆豪は悔しそうに舌打ちしたが、それ以上動くことはできなかった。
その様子を見ていた緑谷が、はっと息を呑む。
「個性を消す能力……!」
緑谷は相澤の姿を見つめ、驚いたように声を上げた。
「イレイザーヘッド……!」
入試前に調べたプロヒーローの情報。
視線を合わせた相手の個性を一時的に抹消する『抹消』の個性。
目の前の教師が、そのイレイザーヘッド本人だったのだ。
狐雨真も、相澤の能力に興味深そうな視線を向けていた。
「なるほど……。相手の個性そのものを抑えるんだね」
妖術とはまったく異なる能力だ。
相手の力を消すという特性は、戦闘において非常に厄介だろう。
相澤は爆豪を制止したまま、緑谷に目を向けた。
「緑谷。おまえも、自分の個性をどう使うか考えろ。強大な力を持っていても、扱いきれなければ自分を傷つけるだけだ」
「は、はい……!」
緑谷は痛む指を押さえながらも、真剣に頷いた。
爆豪はまだ怒りを隠せない様子だったが、相澤の前で再び攻撃を仕掛けることはなかった。
狐雨真は緑谷の横顔を見つめる。
力が強いことと、それを自由に扱えることは違う。
妖力も同じだ。
どれだけ大きな力を持っていても、扱い方を間違えれば自分を追い詰めることになる。
緑谷は今、その課題に直面しているのだろう。
――きっと、緑谷くんなら考え続けるんだろうね。
試験前に話したときの、個性について熱心に語る姿を思い出す。
自分の力について真剣に考え続ける。その姿勢があれば、きっといつか自分なりの答えを見つけられるはずだ。
すべての種目が終わるころには、生徒たちの表情にも疲れが見え始めていた。
相澤は記録をまとめた資料を手に、生徒たちの前に立った。
「これで個性把握テストは終了だ」
生徒たちは、それぞれ安堵の息を吐く。
狐雨真も軽く肩を回した。
「思っていたより、いろいろと測れたね」
「そうだね……。でも、最下位だったら除籍っていう話が……」
麗日はまだ不安そうだった。
緑谷も、落ち着かない様子で相澤を見つめている。
相澤は生徒たちを見渡したあと、淡々と口を開いた。
「最初に言った除籍処分の話だが――あれは嘘だ」
「……え?」
生徒たちの間に、再び沈黙が広がった。
「う、嘘!?」
「もう、心臓に悪いよ!」
「……そういうことだったんだ」
相澤はそれ以上、詳しい説明をしなかった。
「以上だ。各自、今日の結果を振り返っておけ」
淡々とそう告げると、相澤は資料をまとめた。
最初から最後まで、相澤の態度は変わらない。
狐雨真はそんな担任を見て、小さく笑った。
「なかなか大胆な先生だね」
「ほんとだよ……。本気でびっくりしたもん」
麗日が胸を撫で下ろす。
緑谷も、ようやく肩の力を抜いた。
「でも……個性の使い方について、もっと考えないといけないのは本当だよね」
「うん。そこは嘘じゃないからね」
「僕も、自分の力をもっと知っていきたいと思っているよ。どんな力にも、得意なことと苦手なことがあるから」
緑谷はその言葉を聞き、真剣な表情で頷いた。
「……そうだね。僕も、もっと自分の個性を使いこなせるようにならないと」
「焦らずに、少しずつね」
狐雨真は柔らかく微笑んだ。
そのとき、相澤が再び生徒たちへ向き直った。
「最後に、総合順位を発表する」
一位鈴心狐雨真。二位八百万百。三位轟焦凍。四位爆豪。とずらりと並べられる
「えっ!鈴心くんが一位!」
麗日が驚きの声を上げた。
「すごいじゃん!」
葉隠も嬉しそうに声を弾ませる。
狐雨真は少し照れくさそうに頬をかいた。
「ありがとう。自分の力をうまく使えたみたいだね」
その一方で、二位となった八百万百は、順位表を確認してから狐雨真へと視線を向けた。
悔しさがないわけではない。けれど、それ以上に彼女の胸にあったのは、目の前の相手への純粋な感心だった。
妖狐という多彩な能力を、ただ力任せに使うのではなく、種目ごとに適切に活用していた。その実力は、八百万にとっても大いに刺激となるものだった。
八百万は背筋を伸ばし、狐雨真の前まで歩み寄った。
「鈴心さん。素晴らしい成績ですわね。個性の特性を理解し、状況に応じて使い分けていらっしゃる……とても勉強になりましたわ」
「ありがとうね八百万さん。君も二位なんだから、十分すごいと思うよ」
「いいえ。わたくしも、もっと精進しなければなりませんわ」
八百万は凛とした表情で微笑んだ。
「ですが、次は負けませんわ」
その言葉に、狐雨真は一瞬目を丸くした。
しかし、八百万の表情に敵意はない。そこにあるのは、相手の実力を認めたうえで、自分もさらに成長したいという前向きな意志だった。
狐雨真は嬉しそうに笑う。
「ふふっ、いいね。僕も次に競うときは、もっと頑張らなくちゃ」
「ええ! お互いに切磋琢磨していきましょう」
二人は自然に笑顔を交わした。
その様子を見ていた麗日が、感心したようにつぶやく。
「なんだか、もうライバルって感じだね!」
「そうだね。こういうの、僕は好きだよ」
狐雨真は八百万に向き直った。
「これからよろしくね、八百万さん」
「こちらこそ、よろしくお願いいたしますわ、鈴心さん」
八百万は上品に微笑み、軽く頭を下げた。
一方、三位となった轟焦凍は、狐雨真へ静かな視線を向けていた。
言葉こそなかったものの、彼もまた、狐雨真の実力を認識したようだった。
その近くでは、爆豪が不機嫌そうに舌打ちしている。
「チッ……」
緑谷が個性を持っていたこと。そして、狐雨真が総合一位となったこと。
今日一日だけでも、爆豪にとっては思いがけないことが続いていた。
狐雨真は周囲の様子を眺めながら、穏やかに微笑んだ。
雄英には、さまざまな個性を持つ生徒が集まっている。
自分とは違う力を持つ者たちと出会い、互いに刺激を受けながら成長していく。
そんな学校生活が、これから始まるのだ。
放課後。
校門を出た狐雨真は、隣を歩く葉隠と話していた。
「いやー、今日はいろいろあったね!」
「そうだね。入学初日から個性把握テストなんて、雄英らしいというか」
「それに相澤先生! まさか初日から除籍なんて言われるとは思わなかったよ!」
葉隠は大げさに肩をすくめた。
「本当にね。僕も緊張したよ」
「そうそう! もう、心臓に悪いってば!」
葉隠の声に、狐雨真はくすくすと笑った。
「ふふっ。でも、葉隠さんも頑張っていたじゃないか」
「えへへ、まあね! 鈴心くんもすごかったよ。特にソフトボール投げ! あんなに遠くまで飛ばせるなんて思わなかった!」
「妖術で身体の動きを補助したからね。全部を力任せにやったわけじゃないよ」
「それでもすごいよ! 私も自分の個性をもっと活用できるように頑張らなくちゃ!」
「うん。葉隠さんなら、きっといろいろな使い方を見つけられるよ」
狐雨真は自然な笑みを浮かべた。
葉隠はその言葉に嬉しそうに声を弾ませる。
「よーし! 明日からも頑張るぞー!」
「その意気だね。僕も頑張るよ」
二人は並んで歩いていく。
夕方の風が、狐雨真の白い髪と三本の尾を優しく揺らした。
入学初日から、厳しい教師と個性把握テストに出会った。
緑谷が自分の個性に悩む姿も見た。爆豪の激しい気性にも触れた。そして、八百万という、互いを認め合いながら高め合える新たなライバルもできた。
これから先、どんなことが待っているのかは分からない。
それでも、狐雨真は楽しみだった。
自分の力を知り、新しい友人たちと出会い、まだ見ぬ世界を歩いていく。
自由気ままな妖狐の雄英高校生活は、こうして本格的に始まったのだった。
AIで小説書くの難しい……