【TS】世界樹から実ったハイエルフ(中身は元社畜)、八百年ぶりの上位種として崇められていますが、人間の町でのんびり暮らしたいだけです   作:月白イツキ

42 / 42
第40話 C級

それから、俺は、跳ね鹿亭の屋根裏で暮らした。

 

朝、藁のちくちくで目を覚ます。下の厨房から、マルタさんの怒鳴り声と、パンの焼ける匂いが上がってくる。

 

皿洗いを手伝う。三日に一枚くらい、割る。給金から引かれる。

 

ギルドに行く。掲示板の端っこから、依頼を剥がす。迷い猫のミーシャ二世。失せ物の指輪。井戸に落ちた桶。精霊たちと一緒に、町中を歩き回る。夕方には、足が棒になる。

 

夕方、跳ね鹿亭の食堂の隅の席で、煮込みを食べる。エールは、半分まで。

 

それが、毎日だった。

 

*

 

セレスさんも、跳ね鹿亭で働き始めた。

 

給仕係として。

 

「三番の卓に、煮込みを二つ――」

 

「かしこまりました!」

 

セレスさんは、盆を持って、元気よく食堂へ出ていった。

 

そして、五番の卓に煮込みを置いた。

 

「……セレス。三番だっつってんだろ」

 

「も、申し訳ございません! 卓が、どれも同じに見えまして……!」

 

食堂の中ですら、迷子になる人だった。

 

マルタさんは、三日目に、全部の卓に、大きく番号を彫った。

 

*

 

トビは、二年後に、ハルトンに戻ってきた。

 

王国騎士団から、ハルトンの衛兵長として。自分から、希望したらしい。

 

「王都より、こっちの方が、肉がうまいからな」

 

トビは、そう言って笑った。

 

リナさんと、ミアも一緒だった。ミアは、三歳になっていた。跳ね鹿亭の食堂を、よちよちと走り回って、冒険者たちの膝によじ登っては、干し肉をもらっていた。

 

「ねえね」

 

ミアは、俺のことを、そう呼んだ。

 

「ねえね、ねえね」

 

トビが、俺を姉ちゃんと呼ぶのを聞いて、真似したらしい。

 

「……ねえね、か」

 

「嫌か?」

 

「ううん」

 

俺は、ミアを膝に乗せて、頭を撫でた。

 

茶色い、柔らかい髪。トビの髪は、こんなに柔らかかっただろうか。たぶん、十一歳の時には、もう、ぼさぼさだったんだと思う。

 

「嫌じゃない」

 

*

 

串焼き屋の親父さんは、俺が帰ってきた年の、冬に亡くなった。

 

葬式の日、市場の広場の屋台は、休まなかった。息子さんが、いつも通り、炭火の前で串を転がしていた。親父の遺言だから、と言っていた。

 

俺は、一本、買った。

 

塩、多めで。

 

熱くて、しょっぱくて、雑で。

 

――やっぱり、泣くんだな。

 

屋台の後ろの、空っぽの木の椅子から、ひゃっひゃっと笑う声が、聞こえた気がした。

 

ゲイルさんは、その三年後に亡くなった。棺の中に、あの古ぼけた兜が入れられていた。葬列が北門を通る時、俺は、精霊に頼んで、一陣だけ、風を吹かせた。

 

兜は、飛ばさなかった。

 

ただ、風だけ。

 

参列していた年寄りたちが、空を見上げて、笑っていた。

 

*

 

D級に上がったのは、ハルトンに帰ってきてから、三年後だった。

 

C級に上がったのは、それから、六年後だった。

 

遅いと思う。

 

でも、精霊たちに頼めば、どんな失せ物でもすぐ見つかるけど、F級やE級の依頼は、そもそも報酬が少ない。評価点も少ない。D級以上の依頼は、魔物の退治とか、護衛とか、走れない体には、ちょっと厳しいものが多い。

 

それに、大きな依頼をひとつこなすたびに、三日くらい、樹の時間に落ちた。

 

三日で済むように、気をつけた。

 

十五年は、もう、二度とごめんだった。

 

*

 

ミアが六つの冬に、ハルトンで、悪い熱が流行った。

 

子どもと年寄りから、先に倒れた。

 

ミアも、倒れた。三日、熱が下がらなかった。四日目の朝、医者が、トビの顔を見ずに、首を振った。

 

トビは、何も言わなかった。リナさんの肩を抱いたまま、寝台の脇に座っていた。

 

俺は、屋根裏に駆け上がった。途中で二回、息が切れて、階段に手をついた。

 

藁の寝台の下の、小さな木の箱。大樹の根元で拾ってきた、三枚の葉。

 

一枚を、鍋で煎じた。

 

黄金色と若草色の葉が、湯の中で、ゆっくりと開いていった。厨房中に、春の森の匂いがした。

 

マルタさんが、黙って、ミアの小さな頭を支えてくれた。

 

匙で、一滴ずつ、唇に落とした。

 

その夜、ミアの額から、汗が、すうっと引いていった。

 

明け方、ミアが、目を開けた。

 

「……ねえね」

 

かすれた声だった。

 

「おなか、すいた」

 

トビが、寝台の縁に突っ伏して、声を上げて泣いた。

 

マルタさんが、煮込みの鍋を火にかけに、厨房へ下りていった。

 

残りの二枚は、同じ通りの、パン屋の双子に使った。木の箱は、空になった。

 

その冬、町では、それでも、何人かが死んだ。

 

――救える者は、救うがいい。

 

空の箱を寝台の下に戻しながら、ヴァルドの声を、少しだけ思い出していた。

 

*

 

C級の木札をもらった日。

 

ギルドのカウンターで、ペトラさんが、眠そうな顔のまま、焼き印を押した木札を差し出してくれた。

 

表に、リア。裏に、C。

 

「……おめでとうございます」

 

ペトラさんは、五十代になっていた。栗色の髪に、白いものが混じっていた。目の下の隈は、相変わらずだった。

 

「F級から、二十四年と少し」

 

「……長かったですか」

 

「ギルド史上、最長です」

 

ペトラさんは、壁の、片腕のおじいさんの肖像画を見上げた。

 

「ギルド長も、たぶん、笑ってますよ」

 

*

 

跳ね鹿亭に、帰った。

 

夕方の食堂は、いつも通り、混んでいた。冒険者たちが、木のジョッキを打ち鳴らして笑っていた。セレスさんが、番号の彫られた卓の間を、盆を持って行き来していた。

 

カウンターの向こうで、マルタさんが、大きな鍋をかき混ぜていた。

 

五十二歳。

 

短く刈った髪は、もう、赤より白の方が多かった。目尻のしわが、深くなっていた。腰を、時々、拳でとんとんと叩くようになっていた。

 

それでも、木べらを持つ腕は、相変わらず太かった。

 

俺は、カウンターの前に立った。

 

革袋を、カウンターの上に、置いた。

 

じゃらり、と銅貨の音がした。

 

マルタさんが、木べらを持ったまま、こっちを見た。

 

「……なんだ、それ」

 

「借金です」

 

俺は、言った。

 

「入町税の、銀貨一枚。串焼き三本で、銅貨九枚。最初の夜の、宿と飯で、銅貨三十枚。合わせて、銅貨百三十九枚」

 

それから、C級の木札を、革袋の隣に、置いた。

 

「C級に、なりました」

 

マルタさんは、カウンターの上の、革袋と、木札を、見下ろしていた。

 

長い間、何も言わなかった。

 

それから、木べらを、鍋の縁に、かたんと置いた。

 

革袋を、手に取った。

 

重さを確かめるみたいに、手のひらの上で、軽く弾ませた。

 

「……二十四年かよ」

 

「はい」

 

「たった、銅貨百三十九枚を返すのに」

 

「はい」

 

マルタさんの肩が、震え始めた。

 

最初は、小さく。それから、だんだん大きく。

 

――笑っていた。

 

カウンターに両手をついて、体を折り曲げて、腹を抱えて、笑っていた。食堂中に響くような、豪快な笑い声だった。冒険者たちが、何事かと振り返った。セレスさんが、盆を持ったまま固まっていた。

 

「あっははは! 二十四年! 二十四年かよ! あっははは!」

 

笑いすぎて、マルタさんの目尻から、涙がこぼれていた。

 

「……馬鹿だろ、あんた」

 

「よく言われます」

 

「ほんとに、馬鹿だ」

 

マルタさんは、目尻を前掛けで乱暴に拭った。

 

それから、カウンターの下から、ジョッキをひとつ取り出して、樽からエールを注いだ。

 

半分だけ。

 

「飲め。C級祝いだ」

 

*

 

半分のエールで、やっぱり、世界が傾いた。

 

「……マルタさんが、ふたり、いる」

 

「二十四年経っても、それかよ」

 

マルタさんは、カウンター越しに、呆れたように笑った。

 

食堂の客は、もうまばらになっていた。セレスさんが、卓を拭いていた。厨房の奥で、十歳になったミアが、皿を洗っていた。三日に一枚くらい、割っていた。

 

マルタさんが、カウンター越しに、煮込みの椀を、どんと置いた。

 

「食え。祝いだ」

 

「さっき、食べました」

 

「知るか。食え」

 

信じられないくらい、山盛りだった。

 

*

 

それから、また、年月が流れた。

 

ミアが、二十歳になった。跳ね鹿亭の厨房で、マルタさんの隣に立つようになった。ハンナさんの煮込みを、マルタさんから、教わっていた。一年じゃ足りなくて、三年かかった。

 

ミアが、二十三歳で、ギルドの若い剣士と結婚した。式の日、トビが、王国騎士団の礼装で、ぼろぼろ泣いていた。

 

トビの髪が、白くなり始めた。五十歳を過ぎた頃だった。衛兵長を辞めて、町の子どもたちに、剣を教えるようになった。肘を締めろ、脇が甘い、と、マルタさんと同じことを言っていた。

 

王都から、クラウスさんとニナさんが、何度か訪ねてきた。クラウスさんは魔術院長を退いて、眼鏡を三つ持ち歩くようになっていた。ニナさんは、マルタさんと、灰色の梟亭の話をして、夜更けまで笑っていた。

 

ルドルフ四世陛下が亡くなった、という知らせが届いた年は、ハルトンの東門の外の花畑が、いつもより、少しだけ遅く咲いた。

 

マルタさんの髪が、真っ白になった。

 

膝が痛むようになって、厨房に立つのは、朝の仕込みの時だけになった。大剣は、もう、持ち上げられなかった。食堂のカウンターの上の壁に、横向きに掛けられた。

 

夏になると、ふたりで、丘の上のハンナさんの墓に花を持っていった。

 

ある年、坂の途中で、マルタさんが立ち止まった。

 

膝に手をついて、肩で息をしていた。

 

昔、ハルトンの市場へ向かう道で、同じ格好をしていたのは、俺の方だった。

 

俺は、黙って、マルタさんの隣に立った。腕を、差し出した。

 

マルタさんは、その腕を、しばらく見ていた。

 

「……あんたに支えられる日が来るとはな」

 

「体力ないので、杖くらいにしかなりませんけど」

 

「杖で十分だ」

 

マルタさんの手が、俺の腕をつかんだ。大きくて、硬い手だった。思っていたより、ずっと重かった。

 

ふたりで、ゆっくり、坂を上った。何度も立ち止まった。そのたびに、俺は、何も言わずに待った。

 

丘の上に着くと、マルタさんは、ハンナさんの墓の前に腰を下ろして、ふうっと息を吐いた。

 

「……ゆっくりでいいって、言ったよな。最初の日に」

 

「言いました」

 

「ほんとに、ゆっくりになっちまった」

 

マルタさんは、笑った。

 

それから、花を、木べらの隣に置いた。

 

俺は、変わらなかった。

 

銀色の髪も、白い手も、坂道で切れる息も、エール半分で傾く世界も。

 

何も、変わらなかった。

 

*

 

マルタさんが、厨房の奥の、ハンナさんが使っていた部屋で、寝たきりになったのは、七十八歳の冬だった。

 

俺は、毎日、その枕元に座った。

 

朝は、ミアが作った煮込みを、少しだけ運んだ。マルタさんは、一口だけ食べて、「豆の煮え方が甘い」と言った。ミアに伝えると、ミアは、ハンナさんみたいだ、と言って、少し泣いた。

 

昼は、窓の外の話をした。市場の串焼き屋の、三代目の話。ギルドの、新しい受付の話。ミアの子どもが、ミーシャ四世を追いかけて、屋根から落ちかけた話。

 

夜は、何も話さなかった。

 

ただ、隣に座っていた。

 

*

 

その夜も、そうだった。

 

窓の外で、雪が降っていた。部屋の隅の小さなかまどで、精霊がひとつ、ぽわぽわと、火を守っていた。

 

「……リア」

 

かすれた声がした。

 

枕の上で、マルタさんが、目を開けていた。

 

「起きてたんですか」

 

「寝てばっかりだと、腰が痛え」

 

マルタさんは、天井を見上げたまま、言った。

 

「……なあ」

 

「はい」

 

「葉っぱは、これには効かねえんだろ」

 

俺は、頷いた。

 

「効きません」

 

マルタさんの口元が、かすかに、緩んだ。

 

「……そうかよ。なら、いい。効くって言われたら、迷うとこだった」

 

*

 

雪が、窓の外で、静かに降っていた。

 

「なあ、リア」

 

「はい」

 

「あたしが、どんだけいい女だったか」

 

マルタさんの声は、ひどく小さかった。

 

「覚えといてくれよ」

 

――焚き火の前だった。王都へ向かう途中の、七日目の夜。ぱちぱちと薪が爆ぜる音。

 

ま、せいぜい覚えといてくれよ。あたしが、どんだけいい女だったか。

 

冗談めかした声だった。

 

今は、冗談じゃなかった。

 

「……覚えてますよ」

 

俺は、言った。

 

「門の前で、銀貨を放り投げてくれたこと。葉っぱで入町税払おうとしてた、怪しいエルフのために」

 

「……」

 

「串焼き、買ってくれたこと。泣くほどかって、腹抱えて笑ってくれたこと」

 

マルタさんは、目を閉じて、聞いていた。

 

涙が、枕元に落ちた。

 

「全部、覚えてます」

 

*

 

マルタさんが、目を開けた。

 

濡れた目だった。

 

「……上出来だ」

 

かすれた声で、そう言った。

 

それから、毛布の下から、ゆっくりと、手を伸ばしてきた。

 

大きかった手は、少しだけ、小さくなっていた。剣だこは、まだ、残っていた。

 

その手が、俺の頭の上に、置かれた。

 

「……あんたは、変わんねえな」

 

「ハイエルフなので」

 

「そういう意味じゃ、ねえよ」

 

マルタさんの口元が、かすかに、笑った。

 

「最初に会った時から、ずっと、腹減った顔してる」

 

――笑ってしまった。

 

マルタさんも、笑っていた。

 

「……なあ」

 

「はい」

 

「レオンに、会えるかな」

 

「会えますよ」

 

「……遅えって、言われるかな」

 

「言われますね」

 

マルタさんは、短く、息を吐いた。

 

笑ったんだと、思う。

 

「……はっ。言い返してやる。あんたが、先に行きすぎなんだって」

 

頭の上の手が、一度だけ、俺の髪を、くしゃりとかき回した。

 

それから、ゆっくりと、力が抜けていった。

 

「……少し、寝る」

 

「……はい」

 

「起こすなよ」

 

「起こしません」

 

マルタさんは、目を閉じた。

 

*

 

夜が明ける少し前に、マルタさんは、息をしなくなった。

 

俺は、その手を、握っていた。

 

大きくて、硬くて、剣だこだらけの手だった。

 

少しずつ、冷たくなっていった。

 

*

 

――さわさわ、と。

 

耳の奥で、葉ずれの音がした。

 

遠くて、深い音だった。

 

樹の時間の音だった。

 

眠ってしまえば、痛みを感じずにすむ。

 

息が、うまくできなかった。このまま目を閉じたら、楽になれる。三日か、一年か、十年か。目を覚ましたら、少しは、痛くなくなっている。

 

「……まだ」

 

声に、出した。

 

「まだ、寝ない」

 

葉ずれの音が、少しだけ、遠ざかった。

 

「葬式、出なきゃ。花、摘まなきゃ。東門の外の、白いやつ。……それから、明日の朝の煮込み、ミアと一緒に、作らなきゃ」

 

マルタさんの手を、握ったまま、言った。

 

「扉、閉めないって、約束したから」

 

葉ずれの音が、消えた。

 

部屋の隅のかまどで、精霊がひとつ、ぽわぽわと、火を守っていた。

 

窓の外で、雪が止んでいた。

 

東の空が、白み始めていた。

 

*

 

マルタさんの墓は、町の北の外れの丘の上の、ハンナさんの墓の隣に建てられた。

 

墓石の前に、俺は、小さな木彫りの鳥を、ひとつ、置いた。

 

ひと冬かけて、俺が彫ったやつだ。

 

翼の左右の大きさが、違っていた。くちばしが、妙に太かった。首が、どっちを向いているのか、よく分からなかった。

 

台座の裏に、彫った。

 

『マルタさんへ リアより』

 

「……芋虫かよって、言われそうだな」

 

隣で、トビが、白髪の頭をかきながら言った。

 

「言われるね」

 

丘の上を、風が吹き抜けていった。

 

ハンナさんの墓の前の、木べらと。マルタさんの墓の前の、下手くそな木彫りの鳥。

 

並んで、南の方を、向いていた。

 

*

 

その夜、厨房の灯りが、遅くまで消えなかった。

 

下りていくと、セレスさんが、かまどの前の小さな椅子に座っていた。

 

膝の上に、木の櫛を載せていた。

 

「リア様。お休みにならないと」

 

いつもの声だった。背筋も、まっすぐだった。でも、櫛を持つ手が、動いていなかった。

 

俺は、隣の椅子に座った。

 

しばらく、ふたりで、かまどの火を見ていた。かまどの精霊が、ぽわぽわと、小さく火を守っていた。

 

「……卓の番号を」

 

セレスさんが、ぽつりと言った。

 

「彫ってくださったのは、マルタ殿でした。あれから三十五年、わたくしは、毎日間違えました。そのたびに、三番だっつってんだろ、と」

 

声が、そこで、止まった。

 

「……わたくしは、リア様をお待ちすることしか、存じませんでした。見送る、ということを。三百年近く生きて、こんなに近くでお見送りしたのは、初めてでございます」

 

それきり、セレスさんは、何も言わなかった。泣かなかった。泣き方を、知らないみたいだった。

 

俺は、セレスさんの膝の上から、櫛を取った。

 

「……後ろ、向いて」

 

「リア様、それは、わたくしの――」

 

「いいから」

 

セレスさんは、少しためらってから、椅子の上で、俺に背中を向けた。

 

蜂蜜色の、長い髪。

 

櫛を、通した。三回に一回、絡まった。

 

「……下手だね、俺」

 

「いいえ」

 

セレスさんの肩が、小さく揺れた。

 

「いいえ、リア様」

 

櫛を通すたびに、肩の揺れは、大きくなっていった。

 

俺は、黙って、梳き続けた。絡まっても、ほどいて、また通した。

 

かまどの火が、小さくなるまで。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

猫人族のTS転生者、自由に生きたら周囲にやたらと絡まれる(作者:にゃーん)(オリジナル:ファンタジー/冒険・バトル)

「今度こそ自由な人生を」▼無為でブラックな社畜生活で命を落としたTS転生者のルルクは、自由に生きることを望んだ。▼誰にも縛られず、その時の自分がしたいことをする。▼そんな憧れの生活をするための能力と立場を、手に入れたからだ。▼しかしどういうわけか、周囲はそんなルルクをやたらと構おうとしてくる。▼好意でそうしてくれているので無碍にはしないが、どうも自分のことを…


総合評価:567/評価:7.67/連載:3話/更新日時:2026年08月02日(日) 12:05 小説情報

白い少女はただ善く生きたい ――人々の瞳に映る少女は、ひとつではない――(作者:不明さん)(オリジナル:ファンタジー/日常)

魔法の存在しない世界で生きていた男は、気がつけば、魔法の存在する世界で白髪と白い瞳を持つ少女――リヴィアとして生きていた。▼赤子の頃に教会の前へ置かれた彼女を拾ったのは、アドリアンという一人の神父。穏やかに人々へ手を差し伸べる彼に育てられながら、前世の記憶を取り戻したリヴィアは思う。▼前の人生では、悪人ではなかった。けれど、面倒や危険を避けて、手を伸ばさなか…


総合評価:672/評価:8.14/連載:39話/更新日時:2026年09月22日(火) 02:00 小説情報

メスガキやめれないんだが(作者:かみゃきち)(オリジナル:ファンタジー/冒険・バトル)

病気で死亡しファンタジーっぽい異世界に転生したとある男。生まれ変わった先の体は女の子だった。▼死に際に前世で成し遂げたことがぱっと思い浮かばない。だから好きだったメスガキに自分がなってやろうとロールプレイを続けて早16歳。若干無理しつつもメスガキロールプレイを楽しむ彼女(彼)はとあることに気づいてしまう。▼(これ、いつやめたらいいんだ……??)▼そうです。キ…


総合評価:7295/評価:8.42/連載:24話/更新日時:2026年10月24日(土) 17:30 小説情報

意味深に助言を送る見た目だけミステリアス女、弟子が大成して大汗をかく(作者:ミスジョ)(オリジナル:ファンタジー/冒険・バトル)

ミルシアは見た目だけミステリアスなうすほそ銀髪TS転生者である。▼如何にも神秘的な見た目から繰り出されるのは、酒とギャンブルが大好きなだらしない姿。▼しかも、初めて出会った若人を勝手に弟子と呼び、意味深な助言を送るのが趣味だった。▼周囲からは見た目だけ残念女と呼ばれ、本人もそれを自認していたが――ある時、彼女の弟子が世界を救って英雄になってしまう。▼そして堂…


総合評価:1444/評価:8.25/連載:5話/更新日時:2026年09月10日(木) 17:03 小説情報

うわぁぁ!!! エルフだ!!??!(作者:葛城)(オリジナル:ファンタジー/日常)

例によって例のごとく、神様のミスで異世界TS転生しただけでなくエルフになった人の話▼なお、異世界ではエルフはお伽噺の住人扱いされるぐらいで、本当にエルフっていたんだって超驚かれる存在である▼※セルフレイティングは、いちおう念のため


総合評価:4466/評価:8.24/連載:14話/更新日時:2026年08月19日(水) 17:01 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>