ここはどこなんだ……
暗い……
怖い……
寂しい……
……なんだ、あれ……光か…?
……誰か……いるのか…?
「ーーーー………ーーーー」
……光でよく見えねぇ……
「ーーーー…!…ーーーー」
……なんて言ってるんだ…?
……よく聞こえない…
「ーーーー頼みますーーーー」
……なんだ…?何を頼むって…
……おい…?ちょっと待ってくれよ……
……なんだこれ?どんどん離れて……
「ーーーーまたお会いしましょうーーーー」
時は1999年、まことみらい市内のとある建物の前に一人の少女、小林みくるが立っていた。
「キュアット探偵事務所……!ついにこの日が来た!絶対に受かる!!」
みくるはそう意気込み、緊張した様子のままドアをノックしようとした。
「…すみませーうぃ?!」
ノックをしようとしたその時、空からの光に驚きそちらに視線を向けた。
「んん…?」
「わあああああああ?!?!」
「うえぇぇ?!あああぁぁ?!?!」
光の中から現れた少女明智あんな、小林みくるはお互いに驚愕していた。
と、その時
「ポ~チ!」
「うげっ!?」
あんなが抱えていたぬいぐるみのような生き物ポチタンが大きく膨らみクッションとなった。
みくるは下敷きになってしまった。
「っと……な、何なの…?」
「ポッチ!」
そう呟くとあんなはポチタンから飛び降りた。
その時、首から下げていたペンダントのカバーは勝手に閉ざされる。
「これのせい…?もう~何がどうなってるの!わけがわからないんだけど~!!」
元の大きさに戻ったポチタンを掴み揺さぶる。
その間に気絶していたみくるは復活していた。
「妖精だ!」
「へ?」
「ポチ?」
突然の聞き慣れない単語にあんなは首をかしげる。
ポチタンは純粋に言葉の意味を分かっていないようだ。
「妖精と一緒ということはキュアット探偵事務所の名探偵ですね!?」
「へ?」
みくるがそう言うと、あんなは困惑していた。
「わたし、小林みくるです!」
「あっ、わたし、明智あんな…って!そうじゃない!!」
みくるとあんなはお互い自己紹介をするが、あんなはツッコむように叫んだ。
「妖精って何⁉︎部屋にいたのに、どうしてここに!?」
「…………もしかして、探偵テストはもう始まってる?」
ものすごく話が嚙み合っていないようだ。
「もう~!」
「お答えしましょう!かの有名な探偵シャーロック・ホームズは、靴のよごれや傷を見てどこから来たのか言い当てます! あなたは…ずばり!」
みくるはそう言うと、足元へ視線を向けた。
しかし…
「靴……履いてな~い!?」
あんなが足に履いていたのは靴下だけだった。
と、その時……
グオォン
「「へ?」」
奇怪な音がその場に居た者全員の耳に入る。
そして、あんなたちは空を見上げるとそこには空中に奇妙な穴が出現していたのだ。
じーっとあんなたちはその穴を凝視していると、中から何かが落ちてきた。
「いだあぁぁぁぁぁ!?」
落ちてきた何かはみくるの顔面に激突してしまう。
「もう…今度は何が……」
「「え……???」」
「ポチ?」
あんなとみくるはその落ちてきた
「痛ってェ……どこだよここ…?」
落ちてきたものの正体、それはピカチュウだった。
あとついでに人間の言葉を喋っている。
「「……。」」
「…お前ら何俺を見てんだ?なんかついてるか?」
落下してきたピカチュウは自分のことを凝視している二人に気づいた。
そしてあんなとみくるは同時に口を開く。
「「ピカチュウ~~~!?!?」」
「は?お前ら何言ってんだ……え?」
あんなとみくるの叫んだ言葉の意味を理解出来ずにいるとピカチュウは事務所の窓ガラスに映った自分の姿を見てフリーズしてしまう。
「は!?どうなってんだよこれ!?」
「もうわけわかんないよ~~~!!!」
ピカチュウは窓ガラスに映った自分の姿に、そしてあんなはこのカオスすぎる状況にお互い混乱していた。
「…お前、なんで靴下で外にいるんだ?」
「「あ。」」
ピカチュウに指摘され、二人はさっきみくるが気づいたことを思い出した。
そして、二人はとりあえずのあんなの靴を買いに靴屋を訪れていた。
「ぴったりだ……!」
「………。」
「どっちのがいい?」
「こっち!……じゃない!」
あんなはピンク色の靴を履いていた。
みくるが黙っていると、あんなはピンク色と茶色の靴をみくるに見せた。
みくるはピンク色の靴を選ぶが、ツッコむように叫ぶ。
「部屋から落ちてきたなんてありえませんよ!」
「ほんとだって」
「そしてあなたは……」
先ほど、部屋からいつの間にか外に瞬間移動した事を聞いたみくるは、信じられないと思っていた。
そして、みくるは抱きかかえているピカチュウに目をやる。
「気が付いたらこの姿になって空から落っこちてた、それ以外はなーんも分からん。」
「…情報少ないですね……」
あんなの話以上に情報量が少なくみくるは思わず言葉を漏らす。
「ポチポチ!」
「ポチポチじゃ分からないよ」
「そういやそいつ、いつの間におしゃぶりつけてたんだ?」
「確かに……おしゃぶりをつけていると言うことは、赤ちゃんなのでしょうか?だからしゃべれないのかと」
「えっ?でもさっき……」
ピカチュウの言った通りさっきはつけてなかったはずのおしゃぶりをいつの間にかポチタンはつけていたのだ。
あんながそう言いかけたところでみくるが口を開く。
「何らかの理由で赤ちゃんになり、しゃべれなくなった…今の推理でどうでしょう!探偵テスト合格ですか?」
「探偵テスト?」
「何?その探偵テストって……?」
みくるはそう推理を披露した。
そして、あんなとピカチュウがそう聞くと、みくるは口を開く。
「その質問なら、簡単です!名探偵は色々な事件を調べて解決し、人々を助ける!みんなのあこがれ!希望!わたしは、そんな名探偵になるために探偵テストを受けに来たんです!」
「へぇ…」
「名探偵ってすごいんだね!」
「よし!」
みくるは『探偵テスト』についてドヤ顔で答えた。
ピカチュウとあんながそう言うと、みくるは好印象を稼げたと思ったのか、『100点』と書かれたプラカードを持って、ガッツポーズを取る。
(それどっから出したんだよ……)
「ポチ!ポ~チ~!!」
「え?」
ポチタンが急に反応を示すと、おしゃぶりが消え代わりに紐が生成されあんなに下げられた。
「ポチ~!」
「うわぁ~!?」
「ちょっと!」
「騒がしいやつだな…」
ポチタンは急に叫び出し、あんなを引っ張ってどこかへ連れて行ってしまった。
それを見て、みくるとピカチュウはそう言った。
「ぜぇ…ぜぇ…あっお金払ってない!」
ポチタンに無理やり引っ張られ、あんなは息を切らしていた。
そして、今履いている靴のお金を払っていないことに気づいた。
すると、そこへみくるたちが追い付く。
「靴の代金、立て替えときました。」
「ありがとう!」
「で、何がどうなってんだ?」
「ポチポチ…」
ポチタンが指さした方向にあんなたちは目を向けた。
そこには大きな結婚式場があった。
「ここって……」
「結婚式場?」
あんなたちは結婚式場の中へ入っていった。
「ない!どこに行ったの!?」
そこでは植込みの中を必死に探している女性がいた。
すると、そこへ…
「幸野さん。ありがとうございます」
「「花嫁さんだ〜!」」
(なんかあったのか…?)
そこに、幸野という女性に話しかける花嫁さんが現れた。
二人は花嫁さんの姿に目を輝かせ、ピカチュウは心の中でそう考える。
「もう……あきらめます」
「「えっ?」」
「でも……」
「……式に間に合いませんから」
花嫁さんは浮かない顔で時計を見つめながらそう言う。
すると…
「たちゅ……けて…」
ポチタンはあんなを見てそう呟いた。
その言葉を聞いたあんなは前に出る。
「あの!困っていることがあるなら、お手伝いします!」
「えっ!?」
あんながそんな風に話しかけ、みくるは驚いていた。
そして、あんな達は控え室へと移動し話を聞いていた。
「あらためまして。わたしは、式場のスタッフの幸野です」
「想田まりです。実は式で着けるティアラがなくなったんです」
ウェディングプランナーである幸野さちよと花嫁である想田まりはそう名乗った。
「「ええっ!?」」
「でも……それは?」
「1時からの式に間に合うように式場が用意してくれたんです」
「まりさんのと、形と大きさも、似た物をなんとか用意しました。これが、まりさんのティアラです」
二人は同じように反応する中、あんなは近くに金色のティアラが置いてあるのを見て、そんな風に聞く。
あんなの質問に対して、まりとさちよはそう答えて、さちよはある写真を見せる。
その写真には、ティアラを頭につけているまりが映っていた。
「お母さんも、結婚式でこのティアラを着けたんです。私も着けて式をあげたかったんですが、この部屋から消えてて……」
「突然消えるなんて……」
「はっ……!まさか、これが本当の探偵テスト……!」
(多分違うぞ……)
まりさんの話を聞き、そうあんなは呟いた。
そして、みくるはこの状況が本当の探偵テストと思い込み、サイドテーブルの上でぬいぐるみのふりをしているピカチュウは心の中でそうツッコんだ。
「絶対に…!私が見つけてみせます!」
みくるがそんな風に意気込んだ後、部屋に男性一人と女性一人を呼んだ。
「どうしたの?よび出したりして」
女性の1人が訝しむ様にそう言うと、みくるが口を開く。
「まりさんが最後にティアラを見てから、この部屋に出入りしたのはあなた方三人…この中に、ティアラをとった犯人がいます!」
「「「えっ?」」」
みくるはそんな風に言うと、三人を指差す。
それを聞いて、三人が困惑する中…
「まさか!ありえないですよ!」
「で、ですよね〜……ちょ、ちょっと話を聞こうかな~なんて……」
(そこは自信持ってくれよ……)
まりがそんな風に言うと、みくるは気まずい表情を浮かべ、ピカチュウはまた心の中でそうツッコんだ。
この中に居るのは、まりとさちよ以外には、カメラマンの宇都見将太、まりの友人である藤井ともかの二人。
宇都見とともかの2人は口を開く。
「ボクは花嫁さんを撮りに来たんだ」
「私は、まりにお願いがあって来たの」
「お願いって?」
「ブーケを、ともかのほうに投げてほしいって」
「あっ!ブーケトス!」
「そっ!花嫁さんが投げたブーケをキャッチすると、幸せをおすそ分けしてもらえるの!ずっとあこがれだったんだ~!」
宇都見がそう言う中、ともかはそんな風に言う。
ともかはブーケトスの際に、自分の方に投げて欲しいと頼み込んでいたそうだ。
あんながそう言うと、ともかはそう言う。
「お願いって、アリなんだ……」
(いいのかよ…それで……)
「まり、OKって言ってくれたよね?」
「ともかが珍しく遅刻しないで来てくれたから、つい……」
「なるほど……」
宇都見はブーケトスに関する執着を見てそんな風に呟き、ピカチュウもまた同じように心の中呟く。
そして、ともかがそう聞くとまりはそう答える。
それを聞いて、みくるがそう呟きながらメモをとった。
「私は式の準備で部屋に出入りしていました」
「みんな、ここに来た時も今と同じ服装でしたか?」
「ええ、ティアラを隠せるようなものは、何も……」
「そうですか……」
あんながそう聞くと、さちよはそう答えた。
「帽子……帽子の中に入れたとか?」
「はぁ?」
「たしか、このティアラ……まりさんのとほとんど同じ大きさ。帽子……いいですか?」
「あ、ああ」
みくるがそう言うと、宇都見は困惑の表情を浮かべる。
あんなは宇都見から帽子をもらい、予備のティアラを重ねてみたが、しかし…
「う~ん……入らない…これじゃ運べないよ」
「ともかさんのバッグは?」
予備のティアラは上手く入らなかった。これではすぐに分かるだろう…
みくるがそう聞くと、ともかはバッグを見せる。
「これも入らないよ」
「幸野さんのポーチも無理そうだね…」
(持ち出すのは不可能…か)
ティアラのサイズはバッグよりも一回り大きく、入りそうには見えなかった。
幸野のポーチも同様にティアラが入るようなサイズではなかった。
そして、その一連の話を聞いていたピカチュウは心の中でそう考える。
「ありがとう……もう本当にいいんです。ティアラは……諦めます……」
「「「……。」」」
まりが悲しそうに言う。
その姿をあんなたち三人は悲しそうに見つめていた。
そして、みくるは庭にある噴水に座って頭を悩ませていた。
「ティアラを持ち出した方法が分かれば犯人が分かるはずなのに……その方法が分からない……」
「私って……いつも……」
みくるはうつむいて自分を責めていた。
その時…
「みくるちゃん……みくるちゃん!」
「あっ……」
「どうしたんだ?そんな思い詰めた表情してよ?」
思い詰めた表情をしていたみくるを心配してあんなとピカチュウが話しかけてきたのだ。
「分からないんです……。これじゃあ、まりさんを笑顔にできない。名探偵にだって……」
みくるはそんな風に呟く。
その言葉を聞いて、あんなが口を開いた。
「どうして…名探偵になりたいの?」
「それは…私も助けられたから。」
「今度は私が名探偵になってみんなを助けたい!」
あんなからの質問にみくるはそう答えた。
かつて、自分も探偵に助けられたことをきっかけに名探偵を志すようになったのだと…
「やっぱりすごいんだね……」
「えっ?」
「名探偵なら、ティアラを見つけてまりさんを笑顔にできるんでしょ?」
「ええ………きっと」
「だったらなろうよ!名探偵に!」
「でも……」
名探偵になろうという言葉にみくるは戸惑いを見せる。
「なーに悩んでんだよ」
「えっ?」
「そんな立派な意思があるんならきっとなれる!」
その様子を見ていたピカチュウがそう言い励ました。
「悩んでるだけじゃ始まらないよ!一歩踏み出せば、答えはついてくる!『一歩の勇気が、答えになる』……だよ!」
「ポチ~!」
あんなはそう言うと、みくるの手を取りポチタンが声を出した。
そして、あんなは口を開く。
「みくるちゃん、行こう!もう一度全部調べよう!」
「……っ!はい!」
その時、風が吹いてみくるの髪を結んでいた片方のリボンが宙を舞い植込みのほうへ落ちていった。
「今日二回目だ…さっきも植込みの中に女の子のリボンが入って……」
植込みに落ちたリボンを手にとる。
「植込みの……中……」
「花……」
「……。」
二人はどこか引っかかったように呟き、ピカチュウはその様子を静かに見ていた。
「「「あっ!」」」
そして三人の頭の中で一つの答えが導き出された。
「「見えた!これが答えだ!!」」
「ピカっと閃いた!!」
「…今の何?」
「いや…ノリで」
みくるにそうツッコまれるが気を取り直して三人はすぐに控え室のほうへと向かっていった。
次回に続く…