とある学者の日記帳! in テイワット 作:セニョール・大介
書きたいものだけをたくさん書きました!
「じゃあ離月行くか!」
「おー!!」
「……」
ベギダーの号令と共に私たちはスメールシティを離れ、離月へ出発した。何があったかというと──
「スメールは死域や漆黒の獣のせいで地獄絵図だ。マハールッカデヴァータ様や世界樹から情報を得られない以上、俺たちはこんな場所に用はない!」
「そうですね。教令院の中の目ぼしい研究資料は全部書き写せましたし」
「……あれって無許可なんじゃ?」
「……バレてないからよくね?」
「そうですよね?」
「倫理観をどこに置いていったんだろう、こいつら……」
ザンディクとベギダーの二人がスメールへの興味を失ってしまったのだ。自己中二人は故郷をどうにかしようという気持ちや郷土愛に欠けているらしい。薄情者だ!
そんな二人は次なる目標を離月に決めたらしい。というのも、離月は層岩巨淵から現れた漆黒の獣の対処のために千岩軍や護法仙衆夜叉をはじめとする仙人たちが集結しており、被害こそ出ているものの侵攻は食い止められているらしいのだ。スメールよりは安全であるとの判断だ。
それに、ベギダーは稲妻にも行きたいらしい。ただ、その動機は不純そのものだ。
『今、蛍は神の目もないのに草元素の力を操れる。草元素が特別な可能性もあるが、ほかの元素についても試してみたい! 特に雷だ! 電気じゃぶじゃぶ使うような実験は夢だったんだよ!』
『私のことなんだと思ってるの?』
『へ? バディ』
『もう……』
私のことをバディって言ってくれたのは嬉しいけど、遠慮がなさすぎるよ!!
話を戻そう。
「そういえば、ベギダーに貰った本には離月の統治者や統治機構、警察機構については詳しく書いてたけど、名物だったり食べ物についての記載がなかったんだけど? ベギダーもおっちょこちょいだね!」
「……? なにを言ってるんだ?」
「へ?」
「食べ物なんてどこにでもあるだろ? なんで離月のを特筆して書かねえといけねんだよ」
「はあ? ちょっと待って? これって旅なんだよね?」
「ああ。ダリオッシュみたいな学位論文のための野外調査とかじゃない。普通の旅だけど?」
「だよね? じゃあご当地グルメ食べるよね? 祭りとか参加するもんだよね?」
「なんで? するわけねえじゃん。時間の無駄、モラの無駄だろ」
「風情もクソもねぇぇ!!!」
ベギダーは旅の醍醐味を知らないし──
「ザンディクは!? ザンディクならご当地グルメや祭りを楽しむ重要性がわかるよね!?」
「もちろんです」
「やっぱりベギダーが変な──」
「その地方のグルメや祭りから得られる情報は多々ありますからね。食事からは植生や動物の分布についての情報を得ることができますし、祭りからは──」
「何でもかんでも研究に結びつけるな!!」
ザンディクも同様。ここには純粋に旅を楽しもうっていうやつはいないの?
「まあまあ、落ち着けよ蛍」
「ベギダー……!」
「論理的に考えてみろ。食べ物や祭りを楽しもうとしてるのは蛍だけだ。二対一でお前が異常者だ」
「馬鹿ヤロウ!」
私の純情を弄ぶな!! なにが私が異常者だ! どう考えても外れ値だろ! 研究は試行回数が必要って言ってたのお前らでしょうが!
全くもう……! ベギダーは自分を疑うことを知らないんだから! やっぱり私がついていないと!
そんなこんなで、この研究馬鹿二人と一緒に離月港へ向かっていると──
「わぁ! 壮観だね!」
峻険な岩山が遠景に見え始め、眼下には巨大な渦状の採掘場がある。
地形一つ一つのスケールがスメールやモンドとは段違い!
「層岩巨淵か! ようやく離月に入ったか」
「層岩巨淵……、ベギダーが行きたいって言ってた場所だね!」
「……近頃は漆黒な獣が湧いており、千岩軍と仙人たちが対処に当たっているとのことですが、外観は平穏そのものですね」
どうやらここはベギダーが行きたいと言っていた層岩巨淵らしい。聞いていた情報によると漆黒の獣の被害が甚大だとのことだが、確かに遠くから眺めている感じでは漆黒の獣の姿はない。
「……って、どこ行くの二人とも!?」
「へ? 何処って層岩巨淵の調査しに行くだけだが?」
「ええ。教令院と違って、離月は組織的に漆黒の獣の対処ができているようですし、研究も幾分かしやすいでしょう」
「この研究馬鹿ども! せめて私の意思確認してよ!」
まあ行くけどさあ。せめて旅の仲間の意思確認くらいはしようよ。
──
「ほほう! これが漆黒の獣かぁ!」
「……宙に浮いているのになぜ加速、停止ができるんでしょう?」
「そりゃ、漆黒の獣が纏ってる紫色のエネルギーのおかげだろ。あれは保持するエネルギーが高密度すぎて発色してるんだ。あのエネルギーを転用すれば浮くのもわけないだろ」
「だとしてもどこから補給を? 流石に自己で生成できるものではないでしょうし」
「……」
離月に入国して少しした後、私たちはようやく層岩巨淵の鉱区に入ることができた。本来なら一般人の立ち入りは規制されているのだが、教令院の学生(追放済み)とハーバッド(出奔中)が研究のためと言ってごり押した。護衛も十分すぎる奴がいるなんて言ったりもしてた。
まあ、それはいいの。ベギダーが研究したいってわがまま言うんだもん。バディとして叶えてあげなきゃだしね。ただ──
「なんで落盤に巻き込まれてるのに余裕そうにしてるの!?」
ベギダーたちは危機感をどこかに置いてきてしまったのだろう。比較的安全と言われた鉱区を通っていたのに、鉱区で落盤が発生。帰り道は塞がる、新たに空いた穴から漆黒の獣は出てくるとかいう危機的状況なのに学術的な話しかしないんだけど? ここは嘘でも私のことを心配する場面でしょ?
……出てきた漆黒の獣は二体。こっちは戦えるのが私だけなのに戦えないのが二人。
「ザンディク、もしもの時は犠牲になってね」
「僕ですか!?」
「貴重な体験だぞ。ウラヤマシー」
そんなことにならないように気を付けるけど、本当に厳しい。せめてあと一人戦える人がいたら──
「そこな女子! 左の一体を抑えよ! 我が右を仕留めよう!」
「誰ッ!?」
なんか腕が四本ある偉丈夫が飛び出してきた。……壁を突き破って。
──
「無事であったか?」
「おかげさまで! 助けてくれてありがとう!」
「なに。民草を守るという帝君との契約に則っただけのこと!」
腕が四本ある偉丈夫は強かった。私が一体抑えている間に相対する一体を討ち、その後、私の援護に回りもう一体を討伐した。
話してみた感じは本当に久しぶりの常識人で否が応にも気分が上向く。
だって今まではベギダーとザンディクっていう、いろいろ破綻している奴らとばかり話してたんだもん!
ただ一つ残念なことがあった。
「私は蛍。あなたの名前は?」
「……お前が蛍なら我は誰だ?」
漆黒の獣と戦い続けていたからかはわからないが、彼は自らの名前やいくつかの記憶を失ってしまっているらしい。
帝君との契約と言っていたからには仙人の一人だとは思うけど、あいにく私は仙人について何も知らないし、ベギダーやザンディクも一部の名前しか把握していない。
それでも助けてくれた事実は何も変わらないし、話が通じるっていうことにも変わりはない。
ただ──
「なんだこれ? 漆黒の獣と同じエネルギーか?」
「そのようですね。ただ、漆黒の獣とは違ってエネルギを他のものに転用したりといったことは見られませんね」
「こんな時でも研究ですか、そうですか」
そんなときでもベギダーは研究を辞めない。むしろ貴重なサンプルが手に入ったと喜んでいるほどだ。
「我の体の状態は我自身でもわかっておらんのだ。医者に診てもらえるならそれ以上はない!」
この仙人は断るどころか感謝までしてくるし……。
というか、これがベギダーが研究してた漆黒の獣のエネルギーか。見るからに禍々しいのによく触ったりできるなぁ。私も触ってみよ。
「へ?」
え? なんか触っただけなのに吸収されたんだけど? 大丈夫かな? でも体に異常はないしなぁ。
「おい蛍!」
「へ?」
「手を見せてみろ!」
「え?」
ベギダーがいきなり私の手を掴んでまじまじと観察し始めたんだけど! え、いきなりすぎるよ! そんな熱心に見ないでよ、逃げないからさ! むしろいくらでも見てくれていいよ!
「ほへ?」
「熱はなし」
それだけに収まらず、ベギダーが私の額に触れてるんだけど!?
ちょ、ちょっといつもより大胆過ぎない? 私もこれくらいボディタッチしていいってこと? そうだよね?
「バケモンみたいな身体能力だけじゃなく、元素力やこのエネルギー吸収することができるとは……。流石蛍だ! 出会えてよかったよ!」
「でしょ!? これでわかったでしょ! 今度からは私をもっと大切に扱ってね!」
なんかいらない言葉があったような気がするけど無視無視! だってベギダーが人をほめたんだよ!? 大進歩だよ!
「……取り込み中悪いのだが、すこしよいか?」
「どうしたの? 何かあったの?」
「其方のおかげで幾許か気分が良くなった。まずは感謝を」
「どういたしまして!」
「それで……皆の衆、気を付けるが良い。地面が揺れておる。もしかすると地盤が崩落するやもしれん──」
仙人がそう言い終わるや否や空洞がぐらぐらと揺れ、ぱらぱらと石が天井から落ちてくる。皆は急いでその場に屈み、頭部を守るように荷物を被り身を守る。大きな石片が落ちたのか、ひときわ大きな揺れがした。誰かが被害を受けていないか確認したいが、粉塵のせいで視認性が悪い。ただただ無事を祈るばかりだ。
そうして三十秒ほどすると土煙も晴れ、周りが確認できるようになった。周りを確認してみると──
「へ? ベギダー……?」
ベギダーと仙人が忽然と姿を消していた。先ほどまでベギダーがいた場所付近には底の見えない大穴が──
「うそでしょッ!?」
ここまでくれば馬鹿でも理解できる。ベギダーは崩落に巻き込まれたのだと。
──
「……イテテテ」
どうやら俺は突然の崩落に巻き込まれ、気を失っていたみたいだ。周りを見渡すと埃まみれ、血まみれの仙人がいた。推測するに私をかばったということだろうか。冷静に考えたら仙人が崩落に気付いていながら巻き込まれるはずがない。
私は仙人にある程度の応急処置をしたのち、仙人を背負い移動を開始した。まあ、落ちてきたところは見えないくらい高く、壁も断崖絶壁のせいで立ち往生してるけど。
私の中の理性は重症の仙人は置いていけと言っている。
「我を置いていけ。お前一人ならば助かるやもしれん」
実際に本人もそういってる。
でも──
「こっちの方がカッコいいから仕方がねえ」
後世に、世の中にベギダー・コーエンは崇高な人物だったと認めさせねばならないのだ。
父親はそもそも居なかった。母も父が死んだのがショックだったらしく、俺のことは最低限の世話しかしなかった。 叱りもしなかったし褒めもしなかった。
教令院のやつらは会話もままならない奴らばかり。同期のやつらは学位論文のネタはないかしか聞いてこねえし、ダリオッシュにすらなれてねえ先輩らは俺の研究に一口かませろとしか言ってこねえ。賢者たちもプロジェクト前は耳障りのいいことを言ってたくせにプロジェクトが始まると口出しや不満ばっか言いやがる。
思い返せば素直に褒められた経験はなかった。
だからだろうか。
『ベギダーは十分頑張ってるよ』
『だから忘れないでほしいんだ。私みたいにベギダーに救われた、ベギダーのことを凄いって誇りに思う人もいるんだよ』
素直に褒めてくれた蛍との旅は短いながらも楽しかった。まあ、少し距離感がおかしかったりもしたが。
「何故、我を助けるのだ」
「お前には俺がいかに勇敢で慈悲深いかの証人になってもらわないといけないからだ」
……やはり俺は捻くれている。誰かに認めてもらわないと満足できないのだ。
「お前は何を目指している? こんな危険な場所に来ずとも勇敢さ、慈悲深さは証明できようぞ」
「俺はハーバッドになる、ゆくゆくは大賢者だ。今まで俺の邪魔や否定ばっかしてきたやつを見返したい。そのために誰も見つけたことのない、前人未到の大発見をしないといけないからだ」
やはり俺は性格が悪い。今まで馬鹿にしてきやがった奴らを見返したくてしょうがない。そいつらよりも上の立場になって優越感に浸りたくて仕方がない。
「馬鹿みたいだろ?」
立派に戦う仙人からしてみれば凡人の思考回路をしている俺のことは理解に苦しむだろう。そう思って声をかけたのだが──
「否! よいではないか!」
「は?」
「立身出世は男児の本懐! 同じ男として笑うわけがない!」
仙人は俺のことを認めた。
「我も栄達を目指し、理想を目指して仲間を、軍を率いて戦ったものよ! 単身で戦い名声を得たものよ!」
「どうやら俺たちゃ同類みたいだな」
「うむ! 我は武によって栄達を目指し、お主は知によって出世を目指す! 我らは同じ穴の狢よ!」
どうやら俺は勘違いをしていたらしい。仙人や凡人とか関係なく出世欲はあるそうだ。
「我は知による栄達については門外漢だ。だが友よ、これだけは言えるぞ」
「なんだ?」
「余人が栄達を目指すならば恥を忍ぶ機会も必要である」
「どういうことだ?」
「お主はなんでも一人でしたがるところがある。研究はもちろん、研究以外のことも」
「研究はそうかもだが、それ以外に関しては人を頼ってる」
実際に、この旅だって護衛役の蛍がいるし。
「そうか? 我には蛍という女子が一方的に距離を詰めているだけに見えたがな? お主が一回でも頼んだことはあるか?」
「……」
確かにない。護衛も大体のことも蛍が自分からやり始めたこと。自分から何か頼むとかはしたことがない。いや、一回だけザンディクに書類改ざんするために助力を頼んだことはあるか。
「余人の時間は栄達するには少なすぎる。誰かを頼みの綱にすることを恥じるのはよい。だが、忌避しすぎてもならん。かの帰終様とて留雲借風真君とときに協議し、競い優れたからくりを生み出したのだ。仲間と協力せよ、知を合わせよ」
「……まあ、ここから帰れたら善処するよ」
「ああ。そうせよ。我を見よ。兄弟に迷惑を掛けまいと一人で無理をした結果、我自身のことさえも思い出せぬほどだ!」
「……」
まあ、この仙人がいうことにも一理ある。ここから戻れたのなら、ザンディクや蛍に頭を下げて扱き使ってやろう。
「……嗚呼。どこかに医者はおらんものかな? 左上腕にひびが入っておるのか力が入らん(チラッ 固定でもしてくれれば人ひとり背負いながら壁を登れるのだがなぁ(チラッ」
「チラチラ見んな! 頼み方下手か!!」
こいつ、どの口が俺に頼み方下手だって言ってきたんだよ? まあ手当てするけどさあ。
「よし! 固定できたな」
「……」
「ほれ、我に頼んでみるところだぞ?」
「……ああ。どこかに頼りになる仙人がいないかな(チラッ 俺を上まで運んでくれるような仙人が(チラッ」
「なにをチラチラ見ておるのか。ふざけおるのか?」
「お前がやったことだろうが!」
さてはこの仙人、案外余裕だな?
「頼むときは頭を下げてお願いします、であろうが金鵬でもあるまいに」
「金鵬? 誰だ?」
「ぬ? お主、護法仙衆夜叉を知らぬのか? 学者のくせして勉強不足だぞ」
「ん? お前もその一員なのか?」
「なぜそうなるか」
「だってその仙衆夜叉の金鵬? と親しげな口ぶりじゃないか。なにかかかわりがあるんだろ?」
「火鼠……螺巻……心猿……金鵬……我は……仙衆夜叉?」
なんか仙人が自分の世界に入っちゃった。話しかけても無反応だし。
十分は経ったけど、何も反応が返ってこない。え? 俺このまま餓死──
「……そういえば、お主の名を聞いていなかったな。名を何という」
「ベギダー・コーエンだ。これでもスメール内ならちょっとだけ名が知れてた」
「そうか。我が友、ベギダーよ。感謝する。お主のおかげで我が名を取り戻すことができた。我は浮舎、護法仙衆夜叉が一人、浮舎大元帥である」
「……誰だ?」
「なに!? 我が名を知らんというのか!?」
どや顔して自己紹介してるところ本当に申し訳ないが浮舎なんて聞いたこともねぇ。一応仙衆夜叉の名前だけは知ってるけどその構成員については……。
「ぐぬぬ……。どうやら我とお主は本当に似た者同士よ。国内ならばいざ知らず。我ら二人とも他国にまで名前を轟かすほどには至っておらん」
「勝手に同類認定するな! 俺はもしかしたら名が知られてる可能性が無くはないかもしんないだろ!」
「そんな風に確定できぬ時点で名が知られてないと自覚しておるだろうが」
「……ゆくゆくは知られるようになるもん」
「そうだ。勝負だベギダー・コーエン。我とお主、どちらが名を知らしめるかのな!」
「は?」
この仙人はいきなり何言ってんだ?
「ほれ、我はゆくゆく大業を成すことは確定しておるが、お主はわかるまい? 発破をかけてやっとるのだ」
「いいやがったな!? いいぜ、俺が先に名を知らしめてやるからな! 覚えとけよ?」
もう頭きた! こいつだけは絶対泣かせる! 我の負けだぁ、って敗北宣言させてやる!
「はっは! でもまあその為にはこの絶壁を登らねばなるまい。お主はやれるか? 我は登れるが」
「グヌヌ……。浮舎さま、どうか私めをこの崖の上まで連れていってくださいませんか」
「はっはっは! よかろう!」
屈辱だぁ……。今度から体鍛えよ。
──
「どうしよう……ベギダーが……」
「……。蛍さん。この辺りは破砕帯となっています。少しでもバランスが崩れたら先ほどのように崩落が始まるでしょう」
「じゃあベギダーを助ける方法はないの?」
自分でも驚くほど、声が震えていた。
ザンディクは周囲を見渡し、崩れた岩盤を観察している。冷静だ。いつも通り、何が起きたのかを分析して、最も合理的な解決策を探そうとしている。
でも、そんなことはどうだっていい。
「ねえ、ザンディク。何か方法はないの?」
「ちゃんとした足場があればロープを用いて牽引するなどの手が取れましたが、ロープもないですし、この状態では……」
「そんな……」
そんなことってないよ。だって──
「ベギダーには私が必要なんだよ? ベギダーは弱いから私が守ってあげないといけないの。処世術もないから私が代わりに交渉してあげないといけないの。ベギダーは寂しがり屋だから私が一緒にいてあげないといけないの。なんで私がベギダーと離れ離れにならないといけないの? 繝吶ぐ繝?繝シ縺ォ縺ッ遘√′蠢?ヲ√↑繧薙□繧茨シ溘??繝吶ぐ繝?繝シ縺ッ蠑ア縺?°繧臥ァ√′螳医▲縺ヲ縺ゅ£縺ェ縺?→縺?¢縺ェ縺??縲ょ?荳冶。薙b縺ェ縺?°繧臥ァ√′莉」繧上j縺ォ莠、貂峨@縺ヲ縺ゅ£縺ェ縺?→縺?¢縺ェ縺??縲ゅ?繧ョ繝?繝シ縺ッ蟇ゅ@縺後j螻九□縺九i遘√′荳?邱偵↓縺?※縺ゅ£縺ェ縺?→縺?¢縺ェ縺??縲ゅ↑繧薙〒遘√′繝吶ぐ繝?繝シ縺ィ髮「繧碁屬繧後↓縺ェ繧峨↑縺?→縺?¢縺ェ縺???溘??」
「蛍さん? 落ち着いて──」
「──ふむ。取り込み中だったか」
「……だれ?」
私がベギダーのことに夢中になっていたら、いつの間にか知らない男が崩落した場所覗き込んでいた。
「俺はそう怪しいものではない。名を鍾離という。一離月人として漆黒の獣の対処の一助になりに来ただけだ」
「そうなの? そうだ、ロープとか持っていない? 仲間が落盤に巻き込まれて、この下にいるの」
「それは災難だったな。だが、生憎俺はそのようなものを持っていない」
「そう……」
「そう落ち込まなくともいい。こんなところまで来る勇者たちだ。じきに帰ってくることだろう」
突然現れたこの男は不思議な男だった。いきなり現れたこともそうだが、いつ崩落が起きても、いつ漆黒の獣が襲ってきてもおかしくない状況でいたって冷静なのだ。
「そうだ。ここであったのも何かの縁だ。一つ相談に乗ってほしいことがある」
「なに?」
「たいしたことではない。俺はある場所でリーダーをやっているのだが、その在り方に疑問を抱き初めたのだ。今までは俺がすべての方針を決め、部下たちがその方向で物事を進めていたんだが、これでは部下たちは育たないのではないかという不安が芽生え始めた。俺がこのまま舵を取るのと部下に任せるのではどちらが良いと思う?」
こんなところでする質問かな、それ? まあいいや。考えてみよう。所謂独裁と議会制のどちらが好ましいかでしょ? 悩ましいなぁ。
「私は部下に任せてみてもいいと思う」
「そうか──」
「でも、今はダメ」
「ほう……」
「いま、離月は漆黒の獣の脅威や狂暴化したモンスターの脅威にさらされている。ただでさえ大変な時期なのにリーダーがとんずらしちゃだめだよ」
「ふむ」
「それに、部下は自分がいなくなっても大丈夫だと思えるほどの人たちなの? 成長に期待するといっても限度があるよ」
この人のことを何も知らない私としてはこのくらいしか言うことがない。というか言えない。
「確かにその通りだ。引退は時期を考えることにしよう」
「それがいいよ」
「ふむ。俺が聞いてもらってばかりでは不公平だな。もしも何か悩み事があるなら相談に乗ろう」
「……なんでもいい?」
「もちろん。何なら痴情のもつれでも構わない」
「失礼だなぁ……」
でもまあ、お言葉に甘えることにしよう。周りが研究馬鹿しかいなくて相談できなかったし。
「私、好きな人がいるんだ。その人のためなら何でもしてあげられるの。その人のためなら傷ついても構わない。でもその人は別のことに夢中でさ。結構アピールしてるのに何にも返ってこないんだ。どうすればその人と結ばれれるかな? それとも脈なしってことで身を引くべきかな?」
「む……」
私は出会ったばかりの人に何を相談しているんだろうか。
「ごめんね? いきなりこんな──」
「それは、素直に好きだと伝えればいいのではないか?」
「え?」
「話を聞いたところ、意中の相手はかなりの鈍感だ。そのような者に恋愛の機微はわかるまい」
「たしかに……」
ベギダーってかなりのくそボケだもん。確かにそんなベギダーに私の恋心に気付いてもらうなんて無理な話だ。
「それに、あまり褒められた手ではないが、意中の者を契約で縛るという手もある。実際に契約によって結ばれた者たちもいる」
「そっかぁ……。私はベギダーに遠慮しすぎてたんだね」
「諦めるのは方々手を尽くし、直に恋心を告げた後でも遅くはないだろう」
確かに。私はベギダーの自由意思を尊重しすぎてたんだ。大事なのは私とベギダーが結ばれること。ベギダーの研究は私と結婚したうえでもできるしね!
「ありがとう鍾離さん! 決心が固まったよ!」
「助けになれたなら何よりだ。……ふむ。どうやら待ち人が帰還したらしいな」
「へ?」
鍾離さんの言葉につられて大穴の方を見ると──
「ベギダーッ!!」
「おう。戻ってきたぜ」
ベギダーが仙人と一緒に帰還を果たしていた。
「岩王帝君!?」
「久しいな。……その様子だと、どうやら己の名を思い出せたらしい」
「はッ。異郷の友のおかげです」
「はは! あの浮舎大元帥にも友ができたか! 喜ばしいことだ!」
仙人と鍾離さんが何か言っていたけど私にはそんなの関係ない。そんなことより──
「下には何か興味深いものはありましたか?」
「いや? ただ深いだけで何にもありゃしねえんだもん。無駄骨だったぜ」
「ベギダーッ!!」
「蛍!」
まずはベギダーと契約を……。いや、まずは好きだって伝えよう。この頓珍漢でも素直に伝えれば何かしら──
「蛍! 俺は戦闘はからっきしだし、研究に熱中しすぎていろいろと疎かになっちまう。ついでに蛍は貴重なサンプルだし! だから、頼む! 俺と旅を続けてくれ!」
「へ……? えっ、えぇぇぇぇぇえ!?」
なになに? あのベギダーが頼むって頭を下げた? 私に? 一緒に旅がしたいって!? これもう両想い! 絶対そう! もう遠慮はなし!
「ベギダーッ! ようやくわかってくれたんだね! じゃあ、契約結ぼ? まず一生離れない契約でしょ? 次に私以外の……ザンディクはもう仕方ないとして他のやつを旅に同行させない契約でしょ? 結婚の契約でしょ? あとは、契約不履行の時の罰でしょ? まず──」
「……頼る相手間違えたなこりゃ」
ベギダーがなんか言ってるけど無視! というか──
「鍾離さん! 契約の仲介人になってよ! 岩王帝君なんでしょ? これ以上ないくらいぴったりじゃん!」
「いや、俺は凡人の鍾離であって決して岩王帝君では──」
「そんなのどうでもいいからさ! 岩王帝君だろうが鍾離さんだろうが仲介人にはなれるでしょ?」
「……そうだ、俺は浮舎と話があるのだった。あとは当事者同士で話し合うべきだろう!」
「ちょっと! 岩の盾みたいの形成して距離を取ろうとしないでよ!」
くっ、鍾離さんの助力は得られなかったか。
「ザンディク! ザンディクからもベギダーを説得してよ。ついでに仲介人になって!」
「ザンディク! 頼む! 蛍がおかしくなっちまった! 直してくれ! 女性経験豊富だろ!」
「……もうこの際付き合えばいいじゃないですか。お試しってことで」
「「ないわー! お試しとかないわー! 倫理観ないの?」」
「お似合いですよあんたら!」
え? やっぱり? 私たちお似合いだってさ! ベギダー!
是非是非、評価、感想を! 解釈違い、誤字脱字のご報告も是非!
インスピレーションやモチベーションがヤバいんです!もう何も思い付かないの!