Nox ──呪術廻戦異聞録──   作:緑茶美味しい

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異界転生

俺の名前はノクス。

 

偽名なんかじゃない。『Nox・Umbra』――これが俺の名前だ。

 

俺はアメリカに住んでいた日系アメリカ人であり、同時に前世の記憶を持つ者でもあった。

 

転生した経緯は至って簡単だ。神様曰く、居眠り運転をしていたトラックが、会社帰りの俺に突っ込んできたらしい。

 

そのまま俺はお陀仏。晴れて死人の仲間入りを果たしたわけだ。

 

そんな哀れな俺に、神様は取引を持ちかけてきた。

 

『呪術廻戦』の世界に転生させる代わりに、そこで生き残れば、もう一度生き返らせてくれるという。

 

ただし、呪術廻戦に関する知識はすべて消去した上で、だ。

 

新社会人になったばかりの俺には、まだやりたいことが山ほどあった。だからこそ、俺はその取引に乗った。

 

取引に応じた俺を気に入ったのか、神様は転生特典を一つだけくれると言った。

 

俺は悩みに悩んだ末、特撮作品『仮面ライダーゼッツ』に登場する仮(・)面(・)ラ(・)イ(・)ダ(・)ー(・)ノ(・)ク(・)ス(・)の力を望んだ。

 

もちろん、強化フォームも込みである。

 

そして、ノクスの力を手に入れた俺は、『呪術廻戦』の世界へと旅立ったわけだ。

 

――そうして、現在に至る。

 

俺は去年、日本に引っ越してきた。そして明日から、東京都立呪術高等専門学校に入学する。

 

時期は2018年4月。

 

明日の入学が楽しみではあるが、油断は禁物だ。

 

何せ、これから命懸けの生活が始まるのだから。

 

……まあ、今から考えても仕方がないか。

 

俺はさっさと就寝することにした。

 


 

「おっ、来たね」

 

翌朝。

 

早めに支度を済ませて家を出た俺は、高専の門前へとやって来た。

 

そこには、担任となる五条悟が待っていた。

 

「すまない、待たせたか?」

 

かなり早く着いたつもりだったのだが、まさか先に待っているとは……。

 

噂では、平気で遅刻してくるような輩だと聞いていたので、少々驚いた。

 

……実は、意外と真面目だったりするのか?

 

「ううん、今来たところ♡」

 

前言撤回。

 

コイツは真面目なんかじゃない。

 

明らかにふざけた様子で顎に手をやり、目隠しをしたまま、わざとらしく上目遣いをしてくる男。

 

そりゃあ、ウザがられるわけだ。

 

「そうか」

 

俺は話半分に聞き流し、もう一人の一年生を待つことにした。

 

しばらくして、ふと疑問が浮かぶ。

 

「五条……先生。もう一人の一年生はどこにいるんだ?」

 

てっきり五条先生と一緒に来るものだと思っていたのだが、肝心のもう一人が見当たらない。

 

気になった俺は、五条先生に尋ねてみた。

 

「あー、恵には今、僕のスイーツを買いに行かせてるよ!」

 

五条悟は、さも当然といった様子でそう宣った。

 

……コイツ、自分の生徒をパシリに使いやがった。

 

「そうか」

 

俺はそれだけ返し、もう一度ため息をついた。

 

ーーー五条悟Side

 

ノクスは、相変わらず無愛想な少年だった。

 

今年から呪術高専に入学する一年生で、僕が受け持つことになった生徒だ。

 

彼の噂を耳にしたのは、つい先月のことだった。

 

夜な夜な、危機に陥った『窓』や呪術師たちを、青と白の仮面を被った謎の存在が助けている。

 

そんな報告が、僕の耳にも届いていた。

 

最初は半信半疑だったけど、興味が湧いた僕は、試しに三級術師の任務へこっそりついて行ってみた。

 

――結果は、見事にビンゴ。

 

現れた仮面の男……ノクス曰く『仮面ライダーノクス』は、一瞬にして呪霊を葬り去り、そのまま立ち去ろうとしていた。

 

もちろん、ここで逃がす僕じゃない。

 

すぐさま後を追いかけ、説得の末に高専への勧誘に成功した。

 

いやぁ、まさか中身が中学卒業間近の子供だとは思わなかったよね!

 

……もっとも、驚いたのはそれだけじゃない。

 

ノクスの力は未知数だ。僕の六眼をもってしても、その全貌を測りきれない。

 

いやぁ……こんなの、興味を持つなっていう方が無理な話でしょ?

 

さて、そろそろ恵が帰ってくる時間かな?

 

「ノクス、先に先生と教室へ行こうか」

 

「ああ」

 

相変わらず、愛想のない返事だねぇ。

 

表情もほとんど変わらないし、何を考えているのかもイマイチ分からない。

 

……まあ、そういう子ほど、付き合ってみると面白かったりするんだけど。

 

恵とも仲良くしてくれるといいね。

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