キヴォトスのメイドさん
シャーレ。
それは、連邦生徒会長の失踪という前代未聞の事態を受け、急遽設立された特別な組織である。
その顧問として招かれた大人――先生。
右も左もわからない異世界のような学園都市で、数多くの問題に対処しなければならない先生を支えるため、連邦生徒会はひとつの人事を決定した。
トリニティ総合学園出身。
学生時代からメイドとして働き続け、卒業後もその道を歩み続けてきた、ひとりの女性。
数々の派遣先で磨き上げられた接客技術、家事能力、事務処理能力。そして、時には荒事さえも難なくこなすという、非凡な実力。
彼女の名は、白瀬シオン。
22歳にして、メイドという職業を極めた女性である。
そんな彼女が、シャーレ専属メイドとして配属されることになったのは、先生が着任するのとほぼ同時のことだった。
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「初めまして、先生」
シャーレの執務室。
扉を開けた女性は、白を基調としたフリル付きのメイド服を揺らしながら、優雅に一礼した。
柔らかな微笑み。落ち着いた物腰。相手に緊張を与えない、穏やかな声。さらには、長身にブロンドの髪。
その一挙手一投足にさえ、長年の経験に裏打ちされた洗練が感じられた。
「本日より、シャーレ専属メイドとしてお仕えいたします。白瀬シオンと申します」
「うん、よろしくね」
「はい。こちらこそ、よろしくお願いいたしますね」
シオンは微笑んだまま、手にしていた書類を机の上へ置いた。
「こちらが、今後の業務に関する資料です。それから、お食事の手配やお部屋の整備につきましても、私にお任せくださいませ」
「……え、もうそこまで準備してくれたの…?」
「はい。先生が着任されると伺っておりましたので」
あまりにも自然な返答だった。
まるで、それが当然であるかのように。
「先生には、先生にしかできないお仕事がございますから。身の回りのことは、どうぞ私にお任せください」
そう言って、シオンは小さく首を傾げた。
「もちろん、何かご要望がございましたら、遠慮なくお申し付けくださいませ。先生のお力になれることが、私にとって何よりの喜びですから」
その微笑みには、打算も、見返りを求める気配もなかった。
ただ純粋に、目の前の主人に尽くそうという意思だけがあった。
「それでは先生。まずはお茶でもいかがでしょうか?」
シオンはにこりと微笑んだ。
「長い一日になりそうですから♪」
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