「あいつは結構つけこみやすいぞ。そいで妖怪退治屋を名乗ってるんじゃ、むしろこっちが心配になるわい」
昼下がりの博麗神社。落ち葉を掃除していた霊夢は手元を止め、声の主に視線を合わせた。
「どういうこと?」
「人助けをしたかったそうなのでとっておきの方法を教えてみたんじゃ。ほとんど"じょーく"のつもりだったんじゃが…疑う間も無く食いついてきおってな」
若干の胡散臭さのある声の主…化け狸の二ッ岩マミゾウが、続けて語った。
「一応、わしは人を騙す性分じゃし、妖怪じゃ。それをよーく知っているはずなのに、まるで縋るかのようにこちらの話を聞きおってな…。
お前さんは人間じゃし、"あいつ"と親しいじゃろ?
妖怪のわしが頼むのもアレじゃが、悩みがあるのかもしれんし話を聞いてやってくれんか」
「ふーん」
霊夢はマミゾウの話を聞いて損したかのようにつまらなさそうな顔をし、掃除を再開した。
「ずいぶんあいつに過保護なのね」
霊夢の意外な返答にマミゾウは若干戸惑った。
「…お前さん。もしかしてわしの話を信用していないな?」
マミゾウは戸惑いを悟られないようにしつつも、理解されない事への苛立ちが少し言葉に乗ってしまっていた。
「まー妖怪の言うことだしねぇ。信じる信じない以前に、私はあいつのことはあんたよりかは知ってるわよ」
霊夢は顔色一つ変えず、普段の調子であっさり答えた。
その様子を見て、マミゾウは安心したのかニヤッと笑ってみせた。
「ま、それもそうか。
わしの方こそ2人のタマを信用しきれてなかったかもしれんな」
マミゾウはすぐに踵を返し、境内から出ようと歩き出す。
「…これだけは言っておく。わしら妖怪は"人間の負の感情"には敏感じゃ」
「わしの過保護だったらいいのう…」
そういうなり、マミゾウの姿と声は共に闇に紛れて消えた。
霊夢は狸の気配が消えた境内の外を振り返った。
「…あいつはそんなタマじゃないわよ」
言い聞かせるように一人呟いた。
ーーまあ私はあいつの才能には敵わないし。
努力ったって苦手なもんは苦手、届かないもんはどうしても届かない。
…どうも最近目が醒めちゃった気がするんだよなぁ。
なんで魔法使いになりたかったんだっけ、どうして弾幕の研究なんてしてるんだ?
今までの"狂気"が抜けて、真面目に考えるクセがついてしまった。
…雷は怖い。
何を考えてるかわからないから。
いつ私に襲いかかってくるのかわからないからたまったもんじゃない。
昔聞いた話、雷は悪いことをしたやつに当たるらしい。
まあ昔はそこまで怖くはなかったんだがな。
だが最近妙に引っ掛かりがあって、こちらに向かってくる気がしてるんだよ。
私はこのままでいいのか。
誰か助けてくれ。