SF世界で唯一の魔法使い。   作:おれっす。

3 / 3
SF的ご飯

 

 

 ディストピア飯というものがある。

 良くSF映画なんかで登場する、ペースト状だったり、ゼリーだったり、ブロック状だったりするご飯のことな。

 

 異世界ファンタジーから一転し、SF異世界へと進化したこの世界の飯も、あるいはそれだったりするのではないか? と思われるかもしれないので、先んじて言っておくのだが、そんなことはない。

 というか、有るには有るのだが、そんなに人気はない──と言うべきか。

 理由は言うまでもないだろう。

 アレ、ビックリするくらい食欲湧かないんだもん。

 初めて見た時はレゴか何かかと思ったもんな。

 

 そんな訳で、俺達の食事事情というのは、意外なことにあまり変化していない──もちろん、多種多様な料理が作られてきたし、高度な技術や機械によって、その数は増え続けているだろうが……。

 それでも、度肝を抜かされるような、革命的ご飯に移行してはいなかった。

 何なら骨付き肉とか全然人気だからね。

 

 ただし、その食材は少しだけ──意外かもしれないが。

 

 

「ヴォォォオオオオオオオアアアア!!」

「うおー、今日も元気いっぱいだなー」

「てっ、テンチョー!? そんな呑気なこと言ってる場合~!?」

 

 バイトちゃんが悲鳴にも近い叫び声を上げた先にいるのは、火竜。カタカナで言えばサラマンダー。

 昔っからこの世界に存在し、今なおこの世界の空を飛ぶ、ファンタジーからの遺物。

 それでいて、割とメジャーなたんぱく質だ──つまり。

 俺達が基本的に口にする肉は、竜肉なのである!

 これがまた美味いんだよなー。

 

「よーう、どうだい? 見学の調子は。いい経験になってるか?」

「まあな、バイトちゃんの社会見学としては、結構上々だよ」

 

 超科学の輸入によって、文明は一気に進化したけれど、大陸の方はそうはいかない。

 幾ら土地を開拓し、高層ビルやデータセンターを増やしても、何もそれだけで星を埋め尽くそうと思うほど、人類は傲慢ではなかった。

 要するに──昔っから存在する火竜の山だとか、エルフの里だとか。

 そういったものは、未だに存在してる。

 

 そんな訳だから、竜に限らずこういった──いわゆる脅威的な生物が襲い掛かってきた場合の討伐というのは、良く見られることだ。

 や、もちろん俺がする訳ではないよ?

 何の為に軍隊があると思っている。

 大佐が「やれやれ」って感じに笑い、光線銃を担いだ。

 

「そーか、バイトちゃんは見るの初めてか」

「ま、まあね。いやすごっ、デカっ。え? アレって倒せるものなんだ?」

「昔ならともかく、今は楽なもんだよ。ほら見ろ、シールドが張られてんだろ。火竜の炎はアレを超えられない」

 

 定点的に設置された小さなドローン。

 それらが発するバリアが繋がり合って、俺達と、大佐含めた5人1部隊をドーム状に包んでいる。

 此処は火竜の山近くの荒野だけれども、仮に水の中であっても発動できるのだから、科学ってスゲーよな。

 ぼわーっと吐き出された炎が、バリアの表面を撫でる。

 火の粉はおろか、熱気さえ、中には届かない。

 

「よーし、じゃあ撃ち方始め! 無駄撃ちはするなよ!」

「サー、イエッサー!」

 

 鍛え抜かれた軍人の、揃った返事と共に銃が撃ち放たれる。

 火薬や硝煙の香りはしない──代わりに、ビカビカと光が煌めいていた。

 光線銃というやつだ。

 ヒットする度にビームはネットのように形状を変え、瞬く間に火竜を貫通し、縛り上げてしまった。

 

「つーわけで、残念だけど竜相手に、剣だの魔法だのを振り回す時代じゃなくてな。これが今の狩りってやつだ、バイトちゃん」

「分かったけど、何か……これはこれで興奮したかも」

「特殊性癖の持ち主?」

「違うけど!? そういうんじゃないってば! テンチョーの変態!」

 

 バシバシと俺の足を蹴るバイトちゃん。

 ミニスカートなんだから、あんまり足を振り上げるなよと思った。

 

「ね、ね。てかさ、テンチョー、私もアレ撃ってみたい」

「ダメに決まってんだろ……下手すれば一発逮捕よ? この場合、貸したやつも同罪だ」

「えぇ~……まあ、仕方ないかぁ」

「お堅いねぇ──店長に免じて、触るだけなら許してやるよ。ほれ、ロックは外すなよ」

「わっ、ホント? ありが──いや重っ!」

「おい、大佐……」

 

 不満100%な顔で睨み付ければ、アーマイト大佐が破願する。

 それから、「問題ねーよ」と付け足した。

 

「アンタが同行まで願い出て、上が承諾したんだ。それなら、このくらいは許されるだろうよ──まあ、仮に何かがあっても、店長を裁くのは難しいだろうが」

「買い被りすぎだ。それに、俺はそんな上級国民みたいな真似はしないよ」

「わーってるさ。しかし、だからこそ、信用に足りるって言ってるんだがな」

 

 大佐は気軽にそう言って、バイトちゃんへと目を向ける。

 バイトちゃんは、興味津々といった様子で光線銃をあちこち触り、観察している。

 それから、ふと思い至ったように顔を上げた。

 

「ね、テンチョー。この竜って、どうなるの?」

「基本的には食用かな。鱗や角は、装飾だとかになりがちだけど」

「ほぇ~、お肉とかって、全部こうして狩りで賄ってるんだ?」

「まさか。市場に出回っているのは、家畜化した竜の肉だよ。だから、こういう野生の竜は──」

 

 言葉を切って、指をさす。

 先ほど地に落ちた竜を、大佐の部下たちが捌き始めていた──鱗を外し、骨を取り、肉を削ぐ。

 実に手慣れた、淀みない作業だ。

 

「ああやって、捌いてその場でBBQするんだよ。で、余った肉は持ち帰って、軍の保存食になる」

「……それは、セーフなんだ?」

「ギリギリってところだよ、お嬢ちゃん。ただ、食い尽くす訳でもないからな、暗黙の了解とも言える。それに──」

 

 ポン、と大佐が俺の肩を叩いた。

 

「店長は、それを狙って同行してきたんだ。歓迎するぜ、お嬢ちゃん。ワイルドな野生の竜肉を喰らいなぁ!」

「……それって、本当に美味しいの?」

「さあな、食えば分かるよ」

 

 こしょこしょっと囁いてきたバイトちゃんに、意地悪くそう返す。

 その数十分後。

 バイトちゃんは「これを私のフルコースに入れる……!」とデカい声で宣言し、場を沸かしていた。

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

僕の最強音楽理論(作者:小の字)(オリジナル:現代/コメディ)

なお、音楽理論をもちいた最強ポップスは全く売れず、10分で作ったくだらんロックはバカ売れするのだった。


総合評価:814/評価:8.22/連載:8話/更新日時:2026年10月21日(水) 20:38 小説情報

魔法少女専用掲示板「魔チャンネル」 運営:掲示板の魔法少女(作者:名無しのユーザー)(オリジナル:現代/コメディ)

1:名無しの魔法少女▼ ここは「名無しの魔法少女」専用のネット掲示板です▼ いっぱい魔獣を倒してポイントを貯めて願いを叶えましょう▼スレ民全員魔法少女()な掲示板ものです▼こんなんでもわりと平和(?)です


総合評価:12179/評価:8.79/短編:7話/更新日時:2026年09月10日(木) 00:00 小説情報

TS上位存在(作者:甘朔八夏)(オリジナル:現代/ノンジャンル)

「全部あなたのせいだ」▼「お前ら苦しみたいのか?俺みたいに」▼「消えろ!!あんたの事なんか認めない!!天使は悪じゃないといけないんだ!!!」▼「あなたに守られたからあなたを傷つけてしまったから、ぼくの人生はめちゃくちゃだ」▼「そんなにやさしく、『近づくな』って言わないでほしいな」▼「……私は1人じゃないといけないから(人間さんエッッッッロ…………)」


総合評価:3785/評価:8.77/短編:9話/更新日時:2026年07月03日(金) 14:51 小説情報

ディストピアのネット友達が優秀すぎる(作者:名無しのペロリスト)(オリジナル:SF/文芸)

ディストピア世界に転生した、元オタクOLは絶望した。▼飯がクソ不味いだけでなく、前世にあったサブカルチャーが絶滅していたのだ。▼それに都市に貢献しない者を生かしておくほど、アバシリシティは甘くない。▼だからと言って過酷な労働はしたくはないので、せめて身の回りの環境を改善するために仮想空間で色々していると、何故か上級市民のお嬢様がログインしてきて──。


総合評価:5346/評価:8.6/完結:28話/更新日時:2026年06月07日(日) 00:00 小説情報

病弱貴族になった俺、治癒魔法をかけながら戦えばいいことが判明する(※血反吐付き)(作者:池崎)(オリジナル:ファンタジー/戦記)

突如として前世の記憶を思い出し、自身が病弱貴族になってしまったことを悟った主人公は、とある出来事をきっかけに──「治癒魔法をかけ続けたら戦えるのでは??」と気づき、おっさん治癒術師を巻き込んで修練に励む。▼その結果──確率で血反吐を吐きながら拳で戦うHENTAIスタイルになってしまう。▼「だ、大丈夫! すごく痛いけどすぐ治るから!!」▼


総合評価:3499/評価:8.27/連載:14話/更新日時:2026年08月12日(水) 12:39 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>