2050年の魔法使いは空飛ぶスマホくらい普通に使いこなすし、スタグレがわりにぶちかますけど、今日から俺が幼女の中の人!!みたいなガチ奇跡には、どうしてこうなったし!?って意外と振り回されっ放しです⭐️   作:一本子持ち縞の夏黄八

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【#02】とにかく落ち着いて考えよう。(幼馴染のことは除くけどな!)

 窓ガラスの向こうで、獣じみた琥珀金の両目を大きく見開いている幼女姿の「自分」に、妙にドキドキしているのを自覚しながら、俺は思った。

 

 ⋯⋯ちょっと待て俺。驚いてる場合じゃねえ(おちつけ)。

 

 目を閉じて、最初から考えるんだ(こーゆー時は、だな。ええっと⋯⋯)。

 

 俺の名前は、宮代(みやしろ)、昴(すばる)。

 

 高校二年の⋯⋯十七歳。

 

 別に「秘密」ってわけじゃない、代々続く魔法使いの家の生まれ。

 

 もちろん俺自身も魔法使い。

 

 今日は確か⋯⋯、自宅からほど近い都内のホテルでレセプションがあったんだった。

 

 だから俺は、朝から会場入りしていて、警備に駆り出された。

 間違えねえ。

 

 しかも、しかもだ。

 

 ここにいる理由はともかくとして、自己認識には何一つ問題がなさそう。

 

 胸の裡(うち)で小さく独り言(ご)ちた俺は、確信とともに、再び目を開けた。

 

「男子高校生が、見た目外国人な小学生くらいの女の子って、ありえなさすぎだっての。夢でも見てるのか、俺?」

 

 みっとも無くへたり込んだ姿勢のまま、更に呟き、頬をぎゅうっと抓ってみる。

 

 しっかり痛い。

 

 やっぱり夢ではなさそう。⋯⋯そうだ。思いだした。

 

 あの時、咄嗟(とっさ)に撃った魔法のせい。信じたくないけど、それしか考えられない。

 

 ⋯⋯魔法使いが自分の魔法を疑うとか、ナンセンスにもほどがあるけど、仕方ないだろ。

 

 心のなかで、誰にでもなくそう零(こぼ)すと、俺は、視界にかかる、淡いブルネットの癖毛(くせっけ)を子ども特有の丸っこい指で摘みあげた。

 

 往生際悪く信じたくない一心で、うう、と唸る。

 

 あんな甘い練りで補助端(ほじょたん)抜きで発動するとか、逆にやっかいな魔法じゃねーかよ。

 

 きちんと修練して先生と母さんの許しを得るまで、使うなって言ってたのが、こういう意味(こと)なら先に言っといてくれよ⋯⋯。

 

 レセプション会場にいるはずの二人の顔を思い浮かべ、胸の中でクレームを入れるが、なんの慰めになるワケでもない。

 

 大体、あの場を収めるために、魔法を使ったのは俺自身だ。

 

 魔法使いなら、自分の魔法の責任は自分で持つしかねえ。

 

 ガキのころから何十遍も聞かされた先生の口癖。

 

 そいつを心に思い浮かべ、唇を引き結ぶと、俺は居住まいを正す。

 

 俺ら、宮代家の魔法使い(「明かし」)が持つ「読み」――自らの五感を操作する魔法よりも、ずっとワーズワースな、俺のもう一つの魔法。

 

 親戚中を探しても、母さんと俺の二人くらいしか使い手がいない――母さんについては、正確には「元・使い手」だけど――やたらに古めかしい「顕(あらは)し」という名を持ったコイツは、思い描いたことを現実に反映させる、名前通りの「ひどく単純(シンプル)な」魔法だった。

 

 ただし。

 

 金銀財宝でも宝石でも作り放題な、スゲー秘術にも聞こえるこの力には一つだけ落とし穴がある。

 『魔法側で忖度しすぎてくれる』、のだ。

 

 それゆえに、望んだ結果を得るためには、使い手の側が細部まで面倒をみるのが必須という、至極メンドクサイ性質を持っていて⋯⋯、

 

 しかも。

 

 ありがたいことに、発動させるだけなら超・簡・単。

 

 俺みたいに「顕し」の魔法を生まれ持って来てさえいれば、願いの中身にもよるけど、ほんのわずかな魔力消費でも発動しやがるときたもんだ。

 

 ――まあ、さっきの俺は、加減してる暇もなかったから、リスク覚悟で全力を込めちまったけどな!

 

『魔法っていうか、あんなの呪いよ、呪い! 本家の爺様方に倒れられたりでもしたら最悪に面倒だし、笙真(しょうま)のためにも『顕し封じ』は解いてあげるけど、お守りって意味だからね。勝手に使ったら勘当に破門ものってこと、覚えときなさい』

 

 腰に手をあて、本当に先生(ししょー)に破門を迫りかねない勢いを見せていた、今朝の母さんの姿。

 

 なんてこったいと、自嘲気味にそいつを思い出した俺は、心の中で詫びの言葉と言い訳を告げる。

 

 ごめん母さん。

 

 でも、仕方なかったんだ。

 

 だって、今晩のレセプションとスピーチ、それから調印式ってさ。

 

 我が家(うち)はもちろん、世界中の魔法使いにとって、おそらくは史上最も大事なイベントになるからって、先生も母さんも、大人たちはずっと前から騒いでたじゃんか。

 

 それに、今夜のレセプションは俺たちみたいな、成年を控えた魔法使いたちのデビュタントも兼ねているって、小鳥がやたらに張り切ってたし――じゃなくて!

 

 先生か母さんに連絡しないと。

 

 幼馴染の姿と、先生に預けてしまった彼女への言伝のせいで、熱を帯びかけた頰。

 

 そいつをパシンと軽く張った俺は、

 

 とにかく今はスマホ!

 

 思い直し、見知らぬこの身体へと視線を向けることにした。

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