2050年の魔法使いは空飛ぶスマホくらい普通に使いこなすし、スタグレがわりにぶちかますけど、今日から俺が幼女の中の人!!みたいなガチ奇跡には、どうしてこうなったし!?って意外と振り回されっ放しです⭐️   作:一本子持ち縞の夏黄八

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【#04】ししょーがいた。た・だ・し! 中坊とキタ!!www

 どう反応すべきかな。

 

 疑念に続いた、一瞬の逡巡(しゅんじゅん)の末、俺は逃げることに決めた。

 

「やっ、やだもん。レベッカ、おばちゃんちなんて泊まりたくないもん! ママーッ!」

 

 甲高く叫んで、弾かれたように駆け出す俺。

 

 このおばさんとちびっ子の間にある事情が、穏やかならぬものなのは間違いなさそうだし、ここは逃げの一手だろ!

 

 ⋯⋯って、なんで追ってコナインデスカ?

 

 つうか、なんでそんな可笑(おか)しそうなの、このおばちゃん!?

 

 逃げ出した俺のこと(ちびっ子)を追いかけるどころか、腰を折って笑い崩れてしまった相手に、俺は幼女らしく振る舞うのをやめた。

 

 心底怪訝(けげん)な面持ちで聞くしかない。

 

「あのぅ、なんといいますか、よく状況がわからないんですけれど」

 

「〜ッ、ゴッ――――ああ、おかしかった。ごめんなさいね、何から説明しようかしら?」

 

 たっぷり十五秒は使って、笑いを噛み殺したソバカスのおばさんは、腹筋が痙攣(ケーレン)し過ぎたみたい。

 

 溢(あふ)れ出た涙を拭って、改めて俺に視線を据えてきた。

 

「でもね、その前に名前だけは変えたほうがいいのは本当のことよ。レベッカ・ルキーニシュナ・ペトロワさん――じゃないわよね。あなた、だあれ?」

 

「誰って言われましても⋯⋯参ったな。名乗る前に、私にも聞きたいことが山程あるんですけど」

 

「その意見にはボクも同感です、師匠。お茶入りましたんで、取り敢えずこっちで自己紹介からにしませんかあ?」

 

 おばちゃんの代わりに、突然割って入った声は俺より年下と思しき少年の声。

 

 「読み」で俺らの会話を一切合切聞いていたのだろう。

 

 東京の宮代さんちが俺んちならさもありなん、だ。

 

「そうするわ。さ、貴方もどうぞ」

 

 振り返って先程の少年に返事したおばさんに誘われるまま、俺は居間へ向かう。

 

      ◇

 

「改めまして、私は出水(いずみ)知恵といいます。こっちが弟子の――」

 

「宮代(みやしろ)笙真(しょうま)です。はじめまして」

 

 掘り炬燵(ゴタツ)から掛物の類を取り払った、春夏仕様の座卓。

 

 その天板を挟んで、俺の斜め前と真正面に座った二人が名乗ったのに続いて、俺も先ほど思いついたばかりの名前で名乗り返す。

 

「ポーリャです。レベッカ嬢について、教えていただけると幸いなのですが? 自己紹介を持ちかけてきたのはそちらですし、教えてくれますよね?」

 

 昴が南の空の星だから、北の空の星の中で最初に思い浮かんだ北極星(ポラリス)を縮めて、ロシア語風の響きをまぶしただけの仮初めの名。 

 しゃあしゃあと告げたあとに、持ちかけてやる。

 

 すると、宮代笙真――俺の先生(ししょー)の過去の姿に違いない、中学生くらいの少年――は、拍子抜けするくらいあっさりとレベッカについて答えてくれた。

 

「レベッカ・ルキーニシュナ・ペトロワは、ロシア系アメリカ人の魔法使いです。生まれながらに《狐の鋏》に属していましたが、今は表向き宮代家(本家)で身柄を預かるカタチとなっています。とはいえ、日本語はほとんど理解していないため、日常的なやりとりはすべて英語で、ですけどね」

 

「そんな女の子が急に完璧な日本語でおウチ帰るモン!――でしょ? ふふっ、笙真から事前に教えられてたから心の準備はしてたけど、貴方のお芝居と今朝までの彼女の落差が予想以上だったもんで、知恵さん、我慢しきれなかったのよ。――ごめんなさいね、私、昔から緊張すると笑っちゃう癖があって」

 

 思い出すと、またおかしさに耐えられなくなったらしい。

 

 くっくと肩を震わせながら言い訳を始めた彼女に、「気にしてないから大丈夫です」と俺は返し、早く笑い止んでと目で訴える。

 

「師匠、微妙に台詞回しが違ってますよ」

 

「あらそう?」

 

「泊まりたくないもんっ、ですよね? ポーリャさん」

 

「ポーリャちゃんで構いません。一応、私の方が宮代さんより年上ですけれど、今はまあこんな形(ナリ)だし、ちゃんづけにしちゃってくださいね」

 

 苦笑交じりに首肯して、続ける。

 

 幼女の声真似する先生キモいと思ったことは、もちろん噯気(おくび)にも出せるわけがないので、外見上は、真似されたことへの照れ隠しを装うために、視線を彷徨(さま)わせながら、だけれども。

 

「けど、おかしいな。先に日本語で話しかけてきたのって、出水さんからじゃなかったでしたっけ。そういや、事前に宮代さんから教わった、とも仰ってましたよね?  それって」

 

「それについては、貴方のことをもっと教えていただいてからにしませんか、ポーリャさん。さっきボクと顔を合わせた時、一瞬でしたけど驚かれたでしょう? 生憎ですが、初対面で驚かれるような覚えはないんですよね、今のところは」

 

「⋯⋯」

 

「ショウ」

 

「師匠、悪いんですけれど、本家からそろそろ電話が来ますよ。ボクらは庭にいますから、電話が終わったら呼んでください。――大丈夫です。見えるところにはいますし、師匠の顔に泥を塗るようなことには決してなりませんから。安心して家の中でお待ち下さい」

 

 目元を和らげ、流暢な口振りで告げる先生。

 

 きなくさそうな表情を浮かべた知恵さんに向かって、更に畳み掛けるように言い放つと、彼は俺のほうへ、右手と視線の両方を差し伸べてきた。

 

「さ、ポーリャさんはこちらへ。雨上がりなので、水たまりには気をつけてくださいね?」

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