最高のヒーローになる幼馴染と戦場に響く歌声 作:適合者
身長 165cm
バスト 73cm
ウェスト 56cm
ヒップ 81cm
体重 秘密(出久は付き合いの長さで推測は出来る)
それでは個性把握テストです!
グラウンドに出た私たちは、爽やかな春の風とは程遠い、重苦しい緊張感に晒されていた。
「さて……では時間を効率的に使う為に簡潔な説明をしよう。俺達は君達の個性についての把握はしているが、現状の技量を正確には把握していない。教える側もまた相手の力量を識る事は大切な事だ。よって今から【個性把握テスト】を執り行う」
「『個性把握テスト』……!?」
「中学までは、個性を使わない均一な体力測定を行ってきたはずだ。国が未だデータの集計を怠っている。合理性に欠けるテストをな。しかしここは雄英高校……ヒーローを目指す者が個性を使いこなせないなど話にもならない。よって俺はお前達の詳細を、お前達は客観的な実力を把握してもらう」
相澤先生は手に持ったデータ表示端末を掲げ、最前列にいる爆豪を指差した。
「そうだな……爆豪と言ったな? 。お前は中学の時ソフトボール投げはどれくらいだ?」
「67メートル」
「中学生の個性を使わない記録としては上出来だ。しかしここは雄英……ならば個性を使って投げてみろ。枠の中なら何をしてもいい」
「へっ……なら、遠慮なく」
爆豪が不敵な笑みを浮かべ、投手マウンドのような円の中に立つ。ボールを握りしめ、大きく肩を回すと同時に、腕をしならせて振りかぶった。
「死ねぇぇぇ!!!」
ドゴォォォンッ!!!
凄まじい爆破の衝撃波がグラウンドを揺らし、ボールは爆風に乗って遙か彼方の空へと消え去った。ピピッと手元の計測器が音を立てる。
『記録 705.5メートル』
「700メートルオーバー……!?」
「すっげえ! 個性思いっきり使っていいんだ!」
「さすがヒーロー科、面白そう!」
歓声があがるクラスメイトたち。だが対照的に相澤先生の顔から笑みが消えた。
「……『面白そう』……か。ヒーローになるための3年間をそんな姿勢で過ごすつもりか?」
相澤先生の前髪がふわりと浮き上がり、鋭い眼光が私たちを射抜く。
「よし……ならば8種目の合計成績、最下位の者は『見込みなし』として——即時除籍処分とする」
「「「えええええええっ!???」」」
悲鳴が上がる。だが、私とや轟君……そして爆豪の顔つきは変わらなかった。ここが雄英高校で生半可な気持ちで生き残れる場所じゃない。それを理解している者は顔色を変えないが……
「出久……コレが雄英だよ。こんな事はまだ理不尽ですらない。乗り越える姿……見せてよね」
私がここで出久に手を貸す事は出来ない。この世界が仮に
「最下位は……除籍」
(ごめん出久……本当にごめん)
私はその思考のままに出久に背を向ける
(除籍勧告……! でも、私にとっての本当の敵は最下位の恐怖じゃない……)
私はジャージの袖を強く握りしめた。この人数と見立てならテスト環境は種目ごとに十分なインターバルがある。切迫した戦闘と違い詠唱のための数秒のラグはリスクにならない。でもそれ以上に私に残る課題こそが頭を悩ませる。
(短時間で何度も聖詠を歌い、ギアを『
1日に何度も着脱を繰り返せば、【
(どの種目で稼ぎどの種目を省エネでやり過ごすか……コストパフォーマンスを意識して取捨選択の必要がある。出久程じゃないけど私のギアも燃費が酷い。入試で好成績を出せたのはまぐれだった可能性もある)
「自分の限界を知り、それを超えていく……それがヒーロー科だ。見せてみろ、君たちの合理性を」
◇
【第一種目:50m走】
「位置について……よーい……」
最初にコースに立つのは、出席番号の近い私と飯田天哉君。飯田君の脚にはエンジンが鎮座していて既に準備についている。速攻で引き離されるのは目に見えているが、ここで低タイムを出すわけにはいかない。
(初手……短時間で一気に加速を載せる!)
「
聖詠を口ずさみ、一瞬で『天羽々斬』を展開。脚部に青い衝撃波の刃が走り、直線の加速性能を極限まで高める。
「天羽々斬を展開した!? 姫香ちゃん……勝ちに行くつもりだ!」
出久の言葉で私に視線が集まり……誰かが呟いた。
「あの姿……やはりお前だったか歌川姫香。なるほど歌を力と変える個性という事か?」
「っていうか入試でC会場を荒らして消えた奴って歌川だったの!?」
「はぇ〜……歌川って手札が多才なのか!」
……誰がどんな呟きをしているか何となく理解は出来るけど心を乱すな。集中……するんだ
『バァンっ!!』
ピストルの発砲音と同時に、飯田君が爆走する。私もそれに遅れまいと、天羽々斬のギア特有の直線的な衝撃推進で地面を蹴り飛ばした。今回はもしかしたら
「速いっ……!? 歌川さん、脚から衝撃波が!?」
『3秒49』(飯田)
『4秒12』(姫香)
「ふぅ……っ」
ゴールを駆け抜け、負荷を抑える為にもすぐにギアを解除する。飯田君の驚異的なタイムには及ばなかったが、女子の中では圧倒的なトップタイムだと思う。だが——もしかしたらガングニールの方が良かったかも。ミスにならないと……良いけど……
「……速えぇ……」
(くっ……1回の短時間展開でも、やっぱり胸の奥が少し熱い……)
「天羽々斬の直線加速……! やっぱり動きが軽やかだね姫香ちゃん!」
ノートを片手に出久が目を輝かせるが、すぐに私の顔色の変化に気づき、心配そうに眉をひそめた。
「……姫香ちゃん……もしかして短時間の展開でも、回数を重ねたら経絡の負荷が……かかっていくんじゃないの……?」
「大丈夫、計算通りだよ出久。次からは無理しないギアでいくから」
出久からの心配は他所に他の皆が好成績を出している。そして【50m走】では個性を発動させない出久は無個性にしては高めな数値しか残していなかった。
◇
【第二種目:握力】
「よし、次はこれか」
握力計を前にし私は軽く息を整える。戦場ではないここで無闇に大技や出力を出す必要はない。体幹と筋力を力学的に補正してくれる主軸——『撃槍のガングニール』のアームドギアを部分展開するだけで事足りる。
「
「また姿が変わった!?」
「あの姿で何個目だ?」
「ミサイルのヤツと合わせて4つか〜」
「あの個性って爆豪くらいチートじゃね?」
う〜ん……目立ってるけど……仕方無い。アームドギアの展開に軸を置きその他の出力は限りなく抑える。フォニックゲインの油圧補助を連動させてグリップを握り潰すように力を込める。
メキメキッ!
『357・85キロ』
「よし……女子平均は大幅に超えた筈」
「あの記録マジで女子の記録か!?」
「ただの握力……だよな?」
「でも
「本当に多才過ぎんだろ」
握力計を壊さない程度の手加減……ではなく継続を前提とした最低限の負荷ならここが落とし所かな。今は手堅くハイスコアを獲得する事が出来れば良い。横では障子目蔵君が「543.5キロ」というバケモノ数値を叩き出し、周囲を慄かせていた。ごめん障子君……多分フォニックゲインをブーストさせたり絶唱したりすればその記録を超えるだけなら多分余裕で出来るって……これは言い訳か。
「姫香ちゃん……もしかして……」
「チッ……ヒメの奴手ぇ抜きやがったな? テメェの本気がこの程度な訳ねぇだろ。あの日の力と比較もできねぇ程貧弱な結果をしやがってよぉ」
離れた場所の爆豪が私の結果を知って睨みつけてくる。まだ2種目なのに出久……もしかしてもう気づいてる? そして悪いね爆豪……フォニックゲインの上昇もアームドギアの顕現も今は控えるつもりだよ。この能力は燃費が悪いから……
◇
【第三種目:立ち幅跳び & 第四周目:ソフトボール投げ】
身体が……少し重い。まだほとんど稼働していないのにこの感覚……オールマイトの言い方で言うと【器が完成していない】って状態かもしれない。問題は適合係数……じゃないんだろうけど便利な力には誓約が付き物って事だろうね。
「連続測定かぁ〜……この2種目なら『イチイバル』が最適。幸いギアを展開するだけならまだ……大丈夫な筈。多分……
正直測定項目の順番が多分原作と大きく違う。ぼんやりした記憶だけどハンドボール測定は後半だった筈なのにこのタイミング。まぁ持久走を最後に持っていく都合と言えばそれまでに終わるモノを終わらせたいならそういう事かもしれない。
「
本日3回目の換装。聖詠を唱えた瞬間、『ドクン』と胸の奥で不快な熱が跳ね上がった。視界が一瞬だけ眩むが、奥歯を噛み締めて踏みとどまる。
「出た! 入試で使ってたヤツだ!」
「噂になったミサイルに乗ってたヤツか!?」
「まさかまたミサイルに乗るのか!?」
「まさかぁ〜! 見間違いだろ?」
イチイバル……うん。そりゃ目立つよねぇ……
「…………ッ! イチイバルの大火力を……攻撃じゃなく『推進力』として転用する。燃費が1番悪いイチイバルを切った以上……稼ぐよ……」
立ち幅跳びの踏み切り。空中へ跳び上がる為にミサイルを顕現させた時だった。
「……待て歌川。俺は確かにルールを伝えてお前は守ってる。ただなぁ……。そのミサイル……射程は何処までだ?」
相澤先生に呼び止められて一時中断となった。まぁ……そうですよね……
「正確に測った訳ではありませんが……大気圏を超える程度は可能かと。元々
「体力の問題はお前の問題だが……そうだな。お前の話が正しいなら俺はこの2項目で測る必要性は感じない。……が、流石に省略するのも問題なので1度そのミサイルを沖まで飛ばしてみろ。俺の視界を外れて尚勢いが落ちそうになければ信じてやる」
「ではお言葉に甘えて……」
私は顕現させていたミサイルをここから3000キロを超える沖合へミサイルを射出する。当然視界の中で勢いが落ちる事はなく流れ星として消えて行った。
「本当にミサイルだった」
「マジで飛び乗ろうとしていた」
「誇張された作り話じゃなかったのか!?」
「先生すら言葉を失ってね?」
「……良し。記録上は計測不能で記載する。ただし体裁上同じように熟しておけ」
そして無難な記録を取り終えてマウンドを降りた瞬間猛烈な眩暈が襲い、私は膝に手を突いた。短い時間の展開を三回重ねただけで、体内の経絡が焼き切れるとまではいかないがかなりの灼熱感を主張してくる。
「姫香ちゃん! 貧血!? 経絡の熱が上がってるんじゃ……もう休んだ方が——」
「……まだ、倒れるわけにはいかないよ。出久」
◇
【第五種目:反復横跳び & 第六種目:長座体前屈(柔軟性)】
疲れと負荷が蓄積する中、私は無闇に三半規管を痛めつける『シュルシャガナ』を避け、リスクのない選択を徹底した。反復横跳びには再び『ガングニール』を採用。脚部装甲の軸固定とバネ補正を活用し、三半規管に酔いを出すことなく、ノーリスクで超高速の切り返しを完遂。
「…………キツイ。この後持久走がある中でコレ以上体力を削るのは無理……」
そして長座体前屈……もう残りの体力で使えるギアはイガリマかシュルシュガナの2択。ガングニールですらも大分キツイ。それなら……
「
「新しい姿だ!」
「今度の武装は大鎌!?」
「あっ……鎌を消した」
「5回目で4種類目の変身だ。入試の姿と合わせて5個かぁ〜……多くね?」
禍々しい緑の装甲を纏う『イガリマ』。普段は過剰傷害リスクが高く扱いづらいギアだが、刃を使わず「関節の可動域拡張としなり補正」のみを測定補助として転用する。というかこの調子だとアームドギアを形成するのも厳しい
「切歌ちゃんの身体のしならせ方を……」
息を深く吐きながら上半身を前へ倒すと、胸と太ももがペタッと完全密着し、測定器のカーソルを限界値まで押し切った。
「うそ、ペッタリくっついてる!?? あんな強そうな姿なのに、体めちゃくちゃ柔らかい!?」
「ほんまやぁ! 羨ましいわぁ〜」
「かぁ〜……そういうエッチぃ姿は巨乳だからこそ需要があんだよ。絶壁がそういう格好してもねぇ……」
芦戸三奈ちゃんとお茶子ちゃんが大はしゃぎで声をあげる。後峰田君……私の事を絶壁と言ったな? よくも私のコンプレックスを抉ったな?
「チッ……回りくどい換装を何回もしてんじゃねぇよノロマが……。勝手に自爆してんのかよ雑魚がッ」
爆豪が不機嫌そうに吐き捨てるが、その瞳は私の叩き出す数値と、切り替えるごとに青ざめていく顔色を凝視していた。
◇
【第七種目:長距離走 & 第八種目:上体起こし】
「……もうここからは、生身でいく」
「えっ!? 姫香ちゃん、長距離走を生身で!?」
「これ以上ギアを再展開したら、本当に倒れちゃうからね。10ヶ月間鍛え直した私の生身……どこまでやれるか試すよ」
ギアを解除し、体操服姿に戻った私は、愚直にトラックを走り出した。念の為に兵糧丸を口にしたけど……クソ不味い。サポート科とコネ……作りたいなぁ。
「はぁ……っ、はぁ……っ、はぁ……っ!」
フォニックゲインの補正がない生身の体。蓄積した疲労とスタミナ不足で、呼吸はすぐに荒くなり、汗が滝のように流れ落ちる。後半は足が鉛のように重くなり、順位を次々と落としていった。それでも、私は歯を食いしばって前だけを見つめ、泥臭く完走を果たした。
「Linkerの開発……本当に独力じゃ無理。優先順位……あげないと……」
トラックの端で膝をつき、激しい呼吸を整える。
(生身の脆さは相変わらず……だけどこの状態でも最後まで自分の足で走り切れた……!)
◇
【結果発表】
全種目が終了し振り返れば、出久が「指一本のワン・フォー・オール」でソフトボール投げ(720.3メートル)を叩き出し、爆豪の乱入を相澤先生が『抹消』で制圧するという波乱を前半に経てからは全体の注目が私に集まっていた。全員の順位がスクリーンに映し出された。
「はい、じゃあパパッと結果発表。合計点は単なる足し算だ」
1位:轟 焦凍
2位:爆豪 勝己
3位:八百万 百
4位:飯田 天哉
5位:常闇 踏陰
6位:歌川 姫香
・
・
・
21位:緑谷 出久
「6位……!」
私は胸を撫で下ろした。長距離走での失速はあったものの、ギアを使用した種目で叩き出した高スコアが効き、上位層へ手堅く着地することができた。
「ちなみに除籍は嘘ね。君たちの限界を引き出す『合理的虚偽』だ」
「「「えええええええっ!???」」」
クラス中に脱力感が広がる中、相澤先生は端末をポケットに収め、去り際にチラリと私に視線を向けた。
「……歌川」
「はい」
「生身の基礎体力とスタミナは下位争いレベルだが……種目ごとのインターバルを正確に計算し、自分の個性のリスクを踏まえた上でコストパフォーマンス良く武装を『換装』していたな?」
相澤先生の目が、わずかに細められる。
「力任せの無双ではなく、己の欠陥を理解した上でのリソース管理と戦術IQ。……ヒーローの実務において、極めて合理的な立ち回りだ。次からもその頭を使え」
「……! はい、ありがとうございます!」
頭を下げると、相澤先生はひらひらと手を振って去っていった。
「歌川ぁ! お前、相澤先生に褒められたじゃねえか! やっぱり男気あふれる戦術だったぜ!」
「ほんと、歌うと服も武器も変わって、長座体前屈の時はペタッて体柔らかくなって凄かったよ姫香ちゃん!」
「……ふん、一丁前に頭脳戦の真似事ってか? 反動で青ざめてた雑魚のクセになァヒメェ」
切島君、お茶子ちゃん、そして毒づきながらも背中を向ける爆豪。出久は除籍を免れたことに涙を流しながらも、私の元へ駆け寄ってきてくれた。
「姫香ちゃん……すごいよ。自分の身体の負荷を全部計算して、あんなに綺麗に順位をまとめるなんて……!」
「出久だって、指一本のダメージで最高の記録を出したじゃない。……凄かったよ?」
互いに笑みを交わし合う。生身の弱さ、個性の激しい制約、そして自傷のリスク。それら全てを背負いながらも、私はこの「1年A組」の中で、確実に自分の足で踏み出し始めていた。
※姫香の聖詠のルビが響の
【喪失までのカウントダウン】から本作オリジナルの
【繋ぐ力と並び立つ為に】へと変わったのは、姫香自身の覚悟が固まった為です。
姫香を絶壁と形容した峯田君との今後の絡みは果たして……?
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姫香周りの恋愛関係
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姫香×出久の幼馴染ルート
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姫香×勝己の幼馴染ルート
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出久×姫香×お茶子のハーレムルート
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姫香は誰のヒロインにもならないアイドル!