最高のヒーローになる幼馴染と戦場に響く歌声 作:適合者
「なぁ歌川! お前色んな姿になるって聞いたぞ! ちょっと俺と模擬戦で姿見せてくんねぇか!」
戦闘訓練がひとしきり終了した後私は切島君に模擬戦を申し込まれた。一応クールダウンは完了してるし最悪用の兵糧丸も残ってる。雄英で使ってないキア……ほぼ使って無いのはイガリマで、アガートラーム・神獣鏡も使ってないか。試験とかを含めればシュルシュガナを使ってるからそっちは……今後でも良いか。
「切島君は前衛系だから……こっちかな」
「おっ……やってくれるのか!? ありがてぇ!」
「その代わり1つだけだよ。クールダウンは出来たけど私……ギアを切り替えると身体への負荷が凄いから悪いけど後出しさせて貰うけど良い?」
「構わねぇ!」
「じゃあ申請してきて。一応許可が降りたらギャラリー連れてきても良いけど手順と条件は守ってね?」
「おうとも!」
切島君は上機嫌に職員室に駆け出した。
◆◆◆
30分後……本当に訓練場βの許可申請を取り付けた切島君が砂藤君と耳郎さんを見つけたのか本当にギャラリーに連れて来ていた。
「本当に歌川がまだ見せて無い姿を見せてくれるのか?」
「ちょっと気にはなるんだよね。歌川……ううん。姫香の詠」
「まっ……ギャラリー許可を出したのは私だから良いけどせっかくだからやってみようかな」
私は兵糧丸を取り出すと口に入れる。
「そういえば何なんだその団子……俺も食べても良いか?」
「あ〜うん。良いけど恨まないでね?」
「一体何が…………っ! おい歌川! お前これどうやって作った!」
兵糧丸を食べた砂藤君が怒ってる。まぁアレは酷い味だよね……
「レシピはあるか? 少し時間をくれれば改良出来るかもしれねぇ。俺はそういうのは得意だ。要望とかあれば言ってくれ」
「じゃあ効能が落ちない事。最悪味は二の次でも良い」
「お前って奴は…………」
砂藤君は呆れながらもレシピを受け取る。でもアレが美味しくなるなら私も助かるかな……
「じゃあお待たせ切島君……
私はアガートラームのギアを纏う。正面からの殴り合いも搦め手も行けるこの手札の多いギアを……私は何処まで使い熟せるかな
「それじゃ……行くぜ歌川!」
切島君は速攻で距離を詰めて拳を振り抜いて来る。速い……だけど受け止められる!
「ッ! 重い……でもコレはどうかしら!」
左の大振りを受けて私も右脚での回し蹴りを返す……けど硬い!
「かった……切島君の【硬化】って凄いね。今の蹴りでこっちの脚を痛めるかもしれないんだから!」
「言ってくれるなよ歌川! 俺だって意識揺れたぞ!」
どうやら私の蹴りも切島君には堪えた様子。それなら……こういうのはどうかな?
「今度はどんな……剣か!? でも蒼い剣と違う形状か!」
「この剣の力に魅了されないでよね!」
蛇腹剣を振るい切島君に当てるけど簡単に弾かれる。
「効かねぇなぁ! 拳の方が重いぜ!」
「そうだろう……ね!」
蛇腹剣を払う切島君の懐に潜り込み左腕に力を込めてボディブローを叩き込む。硬化はされたけど少し手応えがあった。恐らくそれなりに効いた筈。
「腹かよ……今のは顔に来ると思ってミスったぁ……」
「良いのが入ったね! このまま攻めるよ!」
SILVER†GOSPEL
「チッ……範囲技かよ! だが蛇腹剣なら懐に入れば関係ねェだろ!」
切島君は被弾覚悟で距離を詰めて来た。だから私も右手の蛇腹剣を振るい迎撃を試みて叩かれる。
「動きにはパターンがありそうだな! 見切ってやるぞ!」
「どうだろうね?」
私は更に潜り込む切島君に左足でローキックを仕掛け受け止められる。だけど硬化によって耐える切島君は私の懐に潜り込みカウンターのボディブローを叩き込んできた。
「ごっ……」
「お返しだぜ歌川!」
「本当に……そうかな?」
私も切島君に左腕でボディブローを入れる。硬化に阻まれるし加速もない。切島君の表情は崩れない。だからこそこの1撃は通じる。
HORIZON†CANNON!
「ゼロ距離砲撃に耐えられるかな?」
「マジかよ!?」
しかしこの至近距離で回避の間に合わない切島君は上空へと撃ち上げられる。切島君の空中機動力は確か高く無い筈。だから私は次の1手を仕込める。
「決着だよ切島君!」
SERE†NADE!
加速させるバーニアの推進力と合わせて跳躍上昇した私の身体が切島君の上を取る。そしてもう1度バーニアを加速させて短剣化したアームドギアの加速斬りを切島君へと叩き付けた。
「クッソ……完敗だよ……やっぱ強えな歌川……」
「切島君も強かったよ。意識……何度も揺らされたから」
「姫香……手札多すぎでしょ……」
「手札が多くても使うのは私たから……扱いは難しいよ」
本当に……単発のギアならここまでやれるのに分からないね……
「相澤先生……お時間よろしいですか? 重大な相談があります」
「そろそろ来るとは思っていた」
屋内対人戦闘訓練が終了した翌日。私は相澤先生の元を訪れ演習場跡地の地下にある、頑丈なコンクリート張りの特別訓練室に立たされていた。
「……で。お前が爆豪・飯田との訓練で『イチイバル』から『天羽々斬』へ換装した時、体内で何が起きた?」
相澤先生の鋭い三白眼が、私の顔色を射抜くように見据えているし誤魔化しは利かない。私は小さく息を吐き、制服の胸元を無意識に強く握りしめた。
「……経絡の灼熱感と、全身の毛細血管が破裂しそうになる激痛……それに、強い吐き気です」
「だろうな。お前の個性『シンフォギア』と、それに伴う『アームドギア』。データによれば、展開時間そのものは30分近い継戦能力を有している。昨日切島と模擬戦をしたそうだが、それはあくまで『1戦闘につき、1つのギアを維持し続けた場合』の話だろ?」
「……はい」
私は俯き、自身の個性の致命的な欠陥を口にする。というよりも違和感が強い。本当にシンフォギアなら私の各ギアの適合係数がほぼ横並びなのはおかしい。なのにどの組み合わせで切り替えても2回以上の換装には異常な負荷がかかる。だからこその相談だ。
「私のギアは、別のギアへ換装するたびに、体内のフォニックゲイン……エネルギーの伝導路が摩擦で焼き切れそうになるんです。だから私は、自分への誓約として『1戦闘1ギア』を課していました。……でも私には手札が多すぎる。出久の戦術指示に応えるためにも……私は、自分の身を削ってでも最適解へ換装する誘惑に勝てなかったんです!」
「だったら……どうする?」
手札が多いからこそ、最適解を求めて自らを壊してしまう。相澤先生は深くため息をつき、首に巻いた捕縛布に顎を沈めた。
「……自分の体を使い捨てにする前提の戦術など、プロの世界では三流以下だ」
「その通りです。今までは暴走する前に無理矢理解除していましたが、ここは雄英……そして先生は『イレイザーヘッド』……お願いします。検証させていただけませんか?」
賭けだ。先生が了承するには合理性を出さなければならない。しかしこのお願いに合理性は無い。ただの私のお願いだ。しかしこのやり取りが無ければ私は次の段階には進めない。他科への出入りも含めてこの人には筋を通したい。
「俺の個性がお前の『ストッパー』になり得るかここで検証する……と?」
「先生ならば私のギアを解除出来る筈です。もし私の仮説が正しければバッグファイアを消滅出来ます。その感覚さえ自分で掴めればもう自損する事もありません。お願いします!」
私は可能な限り真摯に頼み込む。
「……わかった。今からお前は一歩も動かずここでお前の保有するすべてのギアへ連続で強行換装しろ。限界が来たら、俺が『抹消』で強制的に個性をシャットダウンしてやる」
「っ! ありがとうございます!」
相澤先生の言葉に私は息を呑んだ。全武装への連続換装……ろ恐らくヘドロヴィランの時のような『絶唱』にこそ及ばないものの、経絡への負荷は未知数だ。だが相澤先生の目には「己の個性の底を知れ」という教師としての強い意志があるように見えた。
「……やります」
私は目を閉じ、最初の歌を口ずさむ。
『〜
黄金の槍と装甲『ガングニール』が全身を包む。熱量はまだ正常。
続けて、息継ぎもそこそこに次の聖詠を紡ぐ。
『
ガングニールが砕け散り、深紅の重火器『イチイバル』へ再結合。ドクンッ、と心臓が跳ね、血管に熱い鉛を流し込まれたような痛みが走る。
「……次だ」
相澤先生の冷徹な声が響く。私は奥歯を噛み締め、さらに歌う。
『
3度目の換装で明らかに身体に変調が現れる。頭に霞がかるような違和感を覚える。未だに不動でこの負荷……やはり……異常だ。
『
不動でこの負荷の理由が分からない。まだギアの出力も上げていない。アームドギアも出していない。なのに……
『
頭が割れそうだ。イガリマもシュルシュガナも出力は相対的に低い筈なのに明らかに過剰な負荷が襲って来る。シンフォギアの適合係数は足りてる筈なのに……どうして!
『
日本刀、ピンクの車輪、緑の大鎌、そして白銀の短剣のそれぞれを手元に顕現させては切り替える。6つ目のギア『アガートラーム』を展開した瞬間、私の視界は完全に赤く染まった。
「が……ぁ……」
体内を駆け巡るフォニックゲインが暴走を起こし、毛細血管から血が噴き出しそうになる。肺が焼け焦げ、立っていることすらできず、膝から崩れ落ちそうになった。
「限界か。……消えろ」
相澤先生の前髪がふわりと浮き上がり、ゴーグルの奥の眼光が赤く光る。
「ここが限界か。お前の話ではあと2つ程ギアがあるらしいが……ここまでにしておけ」
先生の個性……『抹消』。その瞬間、私を包んでいた白銀の装甲が、霧散するように強制解除された。
「あ……」
助かった、と思ったのはコンマ一秒未満の事だっただった
「ガッ、アァァァァァァッ!!??」
次の瞬間、私の肉体を「内側から引き裂くような」凄まじい衝撃と激痛が襲った。行き場を失った莫大なエネルギーが経絡を逆流し、体内で大爆発を起こしたのだ。私は喉の奥から大量の血を吐き出し、冷たいコンクリートの床に倒れ伏した。
「……何故だ? 確かにお前のギアは消えた。ならば何故お前の個性が発動している……?」
血の海で痙攣する私を見下ろし相澤先生は苦々しい表情で『抹消』を解いた。
「俺の『抹消』は、発動している個性の因子を強制的に停止させる……筈だ。だが現にお前のギアは解除され生身の筈だ。なのに……何故お前が血を吐いている……?」
相澤先生の表情からも困惑が見える。この事態は先生にとっても予想外の事態という事なの……?
「強行換装をして体内でエネルギーが暴走している最中に急ブレーキをかければ……今のように行き場を失ったエネルギーが逆流を起こし、お前の肉体を内側から破壊するという事か……? ひとまず情報が足らん。もしかしたら俺の手に負えん可能性すら出てくるかもしれない……か」
相澤先生はしゃがみ込み、私の背中をさすりながら重い事実を告げた。
「俺の個性がお前にとって急ブレーキになりすぎて安全装置にならない可能性が出てきた。……つまりお前がギアを強制的に換装するという事はお前の身体をバッグファイアが蝕むということ。お前の脈動や血流の暴走を外側から物理的に受け止め、コントロールしてくれるような手段が必要だ」
(血流の暴走を、コントロール……?)
激痛で薄れゆく意識の中、その言葉が奇妙なほど鮮明に耳に残った。
「いいか歌川……実戦で無茶な連続換装をすることは俺が禁じる。……だがヒーロー科にいる以上実戦は待ってくれない。だから早急にお前のその『自傷の枷』を軽減する手段を作るぞ」
「軽減、する……」
「今日から放課後は救護科のリカバリーガールの元へ通え。お前の身体データと血液をあそこで定期的に採取・管理させる。必要なら俺からも話を通す」
相澤先生は立ち上がり、私を見下ろした。
「こうなったら……やっぱり……アレを完成……させないと……」
「【アレ】……? お前は自身の負荷を軽減させる宛があるという事か……?」
「先生は……アニメを……信じますか?」
「合理的じゃないが、その質問に関する知識をお前は有していると?」
「一応……ですが。私の個性と酷似した武装を使う少女が戦うアニメです。その中の何人かは特定の薬品を身体に注射して戦っていました。もしも
「なるほどな。お前が雄英を志望した本当の動機はソレか。確かにそれなら雄英を受験するのは合理的だ。ならば歌川……完成させろ。自力で克服出来ないならば他人を合理的に利用しろ。お前の身体は贅沢を言ってられんぞ?」
「ですが私にはその伝手が……」
「その為の救護科だ。リカバリーガールの婆さんにデータを提供しろ。あとお前がテストの際に服用していた丸薬もだ。そのデータを元に……サポート科へ顔を出せ。あそこにいる発明狂共にお前の言う『連続換装の負荷を抑える手段』を戦闘中に安全に運用できるアイテムを共同開発させろ」
「……っ」
「自分の手札を持て余して壊れるくらいなら、雄英(ここ)の設備と人材を全部使って、その枷を外す努力をしろ。……それが、一番合理的だろ」
一人で痛みに耐え、急造の兵糧丸を齧るしかなかった私に、雄英高校という巨大な機構が手を差し伸べてくれた瞬間だった。
私は口元の血を拭い、霞む視界の中で、力強く頷いた。
◆◆◆
妙な現象だった。歌川は入試やテストの見立てでは緑谷ほど無謀さを理解していない人間ではない。寧ろ賢く自身の力量を理解している人間の動きだ。そんな人間が何故個性を使う度に自傷する? 通常ならばコイツ等の年代なら発現してから身体に慣らすには充分な期間がある。なのに歌川の現象はまるで
「ならば何故歌川は自身の個性を理解している? ソレならば個性の理解度はもっと低く入試を超える筈が無い。アイツの能力は決して低くは無い。しかし現象が釣り合わない。緑谷の自傷と酷似した現象なのにこの対比は何だ……?」
答えは誰も知らないし教えられる者もいない。今年の新入生はつくづく面倒な奴等が集まったものだ。
「しかし……
歌川が自認を間違えている可能性が最有力だがならば個性の理解度とは比例しない。
「クソったれ……仕事増やしてんじゃねぇよ……」
ひとまずは奴の言う【手段】とやらで何処まで対処出来るかだな。それで無理ならば……除籍するしか無い。
「面倒な問題児共が」
俺の呟きもまた……誰にも聞こえない
この話を以てアンケートの投票受付を目処とします。
そして次はUSJ編に入ります(クラス委員は改変要素が無いので割愛します)
よろしければ感想・高評価・お気に入り登録お待ちしています!
姫香周りの恋愛関係
-
姫香×出久の幼馴染ルート
-
姫香×勝己の幼馴染ルート
-
出久×姫香×お茶子のハーレムルート
-
姫香は誰のヒロインにもならないアイドル!