転生オオタチ、変異個体ですが主人公のパートナーです。 作:マスターカード
こうして紆余曲折を経て、アカデミーに編入するアンナとオオタチ。
案内されて、授業中に遅れて入ってきた二人に、担任は何かあったか聞くが、他言無用の内容だけにアンナが咄嗟に自分が街で遊ぼうとして遅れたと誤魔化した。
「えーと。そこの色違いの君。今朝の変異個体だってねぇ。解析来たよ。ありがとう」
担任には既に図鑑のデータが届いている。
故に事情は知っていた。
実に堂々と教室に入ってくるオオタチ。
クラスメイトは驚いた。ドヤ顔でアンナに従うオオタチという色違いを連れた編入生。
終了後、改めて皆に編入を知らせる。
アンナという少女。外見通り幼いようで割りと冷静、だが興味のあることには執着するというのがちゃんとしたアンナの性格らしい。
(つまりメガシンカとかには興味あっても、未知への興味は全くないのか。知りたいことも、考えたいことも常識の範囲内。パラドックスにも災いにも微塵も興味なし、か)
『危険だと分かっているからでしょう。手に負えない案件を背負っても潰れると身の程を知る。良いことです』
良識もある。常識も持つ。当然の価値観。
良かったと思う。
アンナは他媒体のSV主人公みたいな破天荒さは無い。
公式の他のゲームですら、危険なのは楽しいとか言い出していたのでホッとする。
本編でもあったスグリへのほぼ横取りや、開き直りなども無さそう。
総合学科のアンナは普通の授業以外にもメガシンカを選んでいる。
早速話すクラスメイトはメガシンカの授業は厳しい道だという。
そもそも興味本位で行く場所じゃない。色違いを連れているのは良いけど、アランの授業はアランの観察眼から始まるという。
曰く、アランほどの経験ならば一見で基準がつく。
信頼し合っているか。絆はあるか。心をシンクロできるか。
普通の生徒は大概、先ず対応のポケモンとの関係では深い絆が無いと言われてアウト。
その辺で捕まえただけの対応のポケモンで、即興のメガシンカは危険だと、講師のアランは指摘する。
暴走メガシンカ。この現象を教えると、特殊な条件を満たすと勝手にメガシンカして暴れる事だ。
限定的な場所でしか起こらない現象なので、ほぼ無いが、慣れていないメガシンカは似たような状態になる。
認識のズレ、感情の起伏、身体の違和感。
前提条件、メガシンカはポケモンに多大な負荷を与える行為でもある。
簡単に言えば人と共に行く事を決めたポケモンにとっても試練。
大半は膨大な負担に絶えられず、メガシンカの状態を維持するので精一杯。戦う余裕がない。
トレーナーに、負担を強いる覚悟を出来ているか。
安易な心でメガシンカを出来ると思うな。
未熟なメガシンカが文字通り暴走メガシンカとなった時に、自分達でコントロール出来るのか?
暴走すれば見境のない野性のポケモンに変わらない。
絶えられる心身、絶対的な信頼関係。
双方無しでは意味は無い。
付き合いの長いのは当たり前。
頑丈な身体とメンタルを持って漸くメガシンカの一歩が許される。
アランの授業は、兎に角メガシンカを起こせるかどうかで始まる。
借り物で、理論上はメガシンカ出来る。
一時双方がメガシンカを願っても、石が反応しない。
こうなったら無理だから止めておけと二重のダメ出し。物理的に反応しないのは条件を満たせないからだ。
一時の欲望はメガシンカを起こせるほどのエネルギーにならない。だから発動しない。
メガシンカ使いとは、ホイホイ使えるように見えて、常時それが当たり前にしているコンディションなのだ。
故にメガシンカを求めるトレーナーは此処を目指して門を叩いて、門前払いを受ける。
アランは言うなれば師範である。最高峰の師範。
直々にオッケーを貰って授業を進めるのは、アカデミーでも僅かだと聞く。
此処でもネモが門を潜って一発オッケーとかいう奇跡を起こして当時学校中が沸いた。
(なぁ邪神。ネモチート過ぎんか?)
『残念ですが、私も彼女へは一切介入してませんからね。要するに本物の天才というと奴なのです』
(学校のネモは化け物か……!)
『連邦の同じ名前のアレが霞んで見えますね』
化け物である。彼女もメガシンカを当然に使い、テラスタルまで使える最強。アランも同格。
これがポケモン史上初のバーサーカーの実力か。
やっちゃえバーサーカーは何処でも強い。有名な運命的な英雄譚でもそう言ってる。
ネモのチートがもう止まらない。最早ネモ一人にエナドリもたせてエリアゼロに解き放てばタイムマシンぐらい余裕でぶっ壊しそうである。
「ネモって凄いんだね」
アンナも逸話を聞いて、みるみる血の気の引いていくネモに向かって無邪気に笑って言う。
嗚呼、ネモが怯えている。現状の唯一の希望が、周りと同じ反応……天才で特別だから煙たがる、その同じになるんじゃ無いかと。
幾ら言葉を並べても。幾ら行為で示しても。
枠、と言うのは出来てしまえばもうお終い。
彼女は天才という枠に入った、相手したくない最強。
「アンナも……私を天才だと思う?」
怯えを隠しながら問う。そうだね、と呆気ない肯定。
絶句するネモに、然し続ける。
「強い人はそう言うモノでしょう? ひけらかす事をしないだけ。いっぱい居る普通の人に、絡む方が良くないんだよ。好きを進んで極めていつの間にかここに居た。だから欲求不満なのは、分かるんだけどね。ネモ。頂点って、退屈でしょ」
才能という暴力を振るうネモに痛烈な嫌味が効いた。
退屈だからって、互いに不愉快になる行為は自重したらどうだ? と。
最強はフラストレーション、普通の人には不快感。
これが絡んでいるネモの悪い癖だと思う。付き合いが浅いうちでも、アンナはハッキリ言った。
対人関係でアンナは的確にものを言う。核心を抉って叩きつけた。燥いでいる暴走車のブレーキのような。
下手したら嫌われる。なのに良くないのは良くない。
指摘を、ハッキリ言える。割り切りの問題だろう。
彼女は、自分の面倒を見るネモにもう理由ぐらい見当はついている。
居ないはずはない。チャンピオンランクのトレーナーがアカデミーにまだ居るのに、何故敢えて弱者を選ぶのか。
決まっている。揃って、ネモという勝ち目の無い相手をしても経歴に傷がつくだけで旨みが無い。
だからもう、他のチャンピオンランクのトレーナーは断言していると他のクラスメイトから聞いている。
現状のチャンピオンランクのトレーナーは、ほぼ大半がネモとはバトルを行う気は無い。
最強が、面白半分で人の名誉を傷つけるな。
最強の自覚を持て。誰彼構わずかかってくるな。
アカデミーの顔の生徒会長が、血に飢えた獣みたいに暴れているのも大概にしておけ。
そう拒否をされている。
実際進路の上では迷惑になる。
無闇に敗北を与えて楽しいか?
不満そうにするその言動、陰口だって言われている。
天才が、凡人の努力を否定する。
ズバ抜けたセンスに圧倒的才能を抑えない。
そんな行動、不愉快でしかない。
ネモが楽しいで至った高みは、凡人は血反吐を吐いて努力して辿り着く。苦悩も挫折もある。
それをネモは笑って振る舞う。だから不愉快。
努力の否定、才能の暴力。或いは、傲慢とも言える。
ネモだってそんなつもりは無くとも言動がそう。
無意識な自分勝手。煙たがるのが当然。
『ぐうの音も出ない正論です。反論できませんね。この世界の七つ星の彼等が擁護しているだけマシですが』
(七つ星?)
知らない単語。
邪神が言うには、このアカデミーには総勢七名のチャンピオンランクのトレーナーがいる。
七つ星は、全員がネモとアランと同じ条件。
メガシンカ、テラスタルまで使えるトレーナー。
同じ高みに居るから、意見が言える。
相手を見ないで行くのは止めるように再三言ってるのに他のチャンピオンランクに拒絶されて、しのぎを削る戦いをしたい彼女は七つ星によくじゃれ合いに行っていた、と。
チャンピオンネモにトップオモダカとアラン、七つ星。
このアカデミーの代表戦などによく行く、チャンピオンランクの顔。
原作で言う他のチャンピオンランクの上位帯。
ネモやオモダカ、アランに劣るが他よりも強い。
(へえ……。アンナが来る前はそっちと遊んでたの?)
『……ネモは一年ですが、前回の時に編入したばかりでなっているんですよ、チャンピオンランク。年に一度だった野外授業が今回二回目なのも理由があるんです。主に、去年のスターダストのせいでこれまでの恒例がぶち壊されて、やり直しになったのでオモダカの指示です。因みにチャンピオンランク、最速最年少です。バトル自体が好きで初めて二年ほどでこの魔境でチャンピオンランクに至りました』
(化け物ェ)
ネモの怪物は置いといて。
スターダスト……やはり去年の総倒れと教師の総入れ替えの関係上、オモダカも行事ごとリセットせざるをえない。
(案の定、加害者はイジメ関係で逃げたか。まぁ、普通はあんな物騒なモノ用意されたら逃げるわ。自覚あるだけ、逆上してきたポケモンで殺されると思うよなぁ)
『ポケモン史上、子供だけで作るモービルとかいう非常識用意するんですもんね。一年以上の鬱憤も怨念も凄まじいですよ。加害者側の言い分、聞きます?』
(要らん。負け犬の遠吠えに興味ない)
事実上、ネモの来ていた時の野外授業は無かったことになっている。やり直し。そういう事だ。
七つ星も、因みにスターダストに関わっている。
二年の七つ星、三年の七つ星、一年の七つ星。
二年に二人、三年に二人、一年に三人。
一年の七つ星は置いといて、上級生の七つ星はアカデミーで横行していた大規模なイジメには中立だったそうだ。
と言うかアカデミーの上級生のチャンピオンランクは全員そうだ。関わらない、助けない。無関心。
(ま、保身だわね。勝手にやってろって話)
『七つ星もチャンピオンランクも、実力で黙らせて居ました。鬱陶しい、知ったことか。関わる気は無いから寄ってくるな。当時はチャンピオンランクは、全員で派閥を作ってサークルで活動していたようです。教師の腐敗も言っても無駄と悟って、関与せず。ただ、言われた通り動いていれば良い。外面は良いですしね』
チャンピオンランクという外面を保つ為に彼等は身を守った。それを責める道理はオオタチにはない。
誰でも自分が第一。当然に走って何が悪い。
リアルは勇気は無謀で、ただの身投げだ。
救える立場など、何処にも無い。だから彼等は自分達で結託して脅そうとした。
あんな物騒なモービルまで作り上げて、アカデミーを信用せず、自分達の反撃を、反乱で起こした。
(因果応報よな。連中が結局何を言おうが、頭が責任取って消えたんだ。普通は潔く消えるのが筋だろうに、染み付いた疑心暗鬼で身体が勝手に一年以上ゾンビになってりゃ戻ってきたボタンも困惑するわ)
『どうするんです? 一応、出鼻は挫いた訳ですけど』
(アンナは聞いても関わろうとしない。オモダカに任せる。そう思う。面倒だし大体が不良に関わるなんてキナ臭い)
この物語は、更生のストーリーのように見えて加害者側の言い分を全くわからない状態。逃げていないのだから。
だが七つ星がいる以上、見ていた見物人ならいる。
どう動くか、オオタチは見守ることにする。
戻すとアンナの正論パンチに、ネモは俯いた。
初日の休み時間。昼休みの食堂で、一緒に食べていた二人。
オオタチという色違いを連れた編入生は目立って仕方ない。
オオタチに可愛いからモフらせろという余所の女子がアンナの許可を得てモフっている。
(可愛いは正義)
『同感です』
隅っこで落ち込むネモにダイレクトアタックをブチ込んだアンナ。止めて、ネモのライフはもうゼロよ!
そう思いたいが、アンナは容赦なく暴露する。
構わない。アンナも興味があるから。ネモについて行けば、きっと知らない世界が見えるんだろう。
その世界に引っ張っていきたい意図は分かった。
「アンナ……」
「私は良いよ。知らない世界が見えるなら。オオタチと一緒に、そこまでの歩みを楽しんでいく。ネモの思惑、乗ってあげる。だって……それが、私に固執する理由なんでしょう?」
勘の良いガキは嫌いだよ、とオオタチは思った。
本人に言うかそれ。思いっきり渋い顔をされてる。
こう見えてアンナも大概口が悪い。
冷静に見て、嫌味と分かった上で悪い部分を言うし利用されているならそれも言う。
「バレてる……よね」
「聞いてる限り、ネモの扱いは聞いてて予想通りだっただけ」
けんもほろろでアンナは条件があると言った。
指導するのは自分の目的のために。
「楽しい世界を、見せてね? じゃないと私止めるよ」
「約束する。バトルを思い切り楽しめるコーチングをするって」
そう言う、二人の契約を結んだ。
アンナは楽しい世界を見たいが為に。
ネモは己のライバルを欲するが為に。
利用し合う、共存共栄。
『あれ、なんか物騒なストーリーの序章になりましたね』
(邪神も予想外!?)
SVが邪悪になっていく予感がする。
そのやり取りを。
「…………」
食堂の近くで意図的に立ち聞きしている少女がいた。
アンナに似た銀髪のロングヘア。
コバルトブルーの双眸には温度が無い冷めた色。
人形みたいに可愛らしい顔立ちだが無表情。
何処かミステリアスな空気の、無口な少女。
「オオタチ、可愛い」
急に突然アンナに接触してきた、謎の人物。
(おう!? 何この可愛い子! 私にメロメロか!?)
もふもふさせると無表情で抱きつく。んで、締める。
(うぎぇ!?)
「あれ、レン……? どうしたの急に」
ネモが気付いて振り返る。オオタチが死にそうな顔で締め上げている女の子にやられそうになっていた。
「どなた?」
アンナがオオタチを締めるのは止めろというとハグに切り替えて名乗った。
「……レヴェナント。私の名前。レンで良い。ネモの同学年。……七つ星の一人。『伝説使いのレン』って呼ばれる」
「七つ星?」
ネモが言う、アカデミーのチャンピオンランクの代表格の七人の一人。
「あなたのオオタチに、伝説の気配を感じる。この子、変異個体?」
そう言って食堂で出会った一年生。
伝説使いのレンこと、レヴェナント。
彼女の目的は……。