村で水が出た話は、思ったより早く広まった。以前はゴードン爺さんの後ろにいる子どもだった。今は、道端で仕事をしていた人まで手を止めて頭を下げる。
「神童様」
そう呼ばれるたび、僕は落ち着かなくなった。水路を見に行った日、村長が僕を案内してくれた。細い流れはまだ続いている。水門には新しい木の板が入り、畑の方へ少しずつ水が流れていた。
「みんなで直したんだね」
「ええ。坊ちゃんのおかげです」
「でも僕、石はほとんど運んでないよ」
村長は笑った。
「水の場所を教えてくださったでしょう」
僕は返事に困った。
水の場所は見つけた。けれど、それだけでは畑には届かなかった。
それでも、村長が嬉しそうだったので、僕も笑った。数日後、父さまに呼ばれた。執務室の机には封筒が並んでいる。見慣れない紋章が押されたものもあった。
「お前に会いたいという家が増えている」
「村の人?」
「貴族たちだ」
父さまは一通を開き、僕にも紋章を見せた。
「水路を戻した子どもがいると、噂が広まったらしい。以前から手紙をくれていた騎士家の親子も、来月訪ねてくることになった」
「ゴードン爺さんにも会ってくれる?」
「彼らが会いたがっているのは、お前だ」
「でも、爺さんがいなかったら直せなかったよ」
父さまは一瞬眉を寄せたが、怒らなかった。
「そのことは分かっている。だが、人は珍しい力に目を向けるものだ」
午後、仕立屋がやってきた。来月の客人を迎えるために、僕の外套を新しくするのだという。布は今までのものより柔らかく、色も深かった。
「兄さんのは?」
マルタに尋ねると、彼女は返事に困ったようだった。
「レオンハルト様の分は、今回は聞いておりません」
僕はその場で兄さんを探した。中庭で木剣を振っていた兄さんに話すと、兄さんは笑った。
「よかったな。新しい服」
「兄さんのも頼んでみる」
「いいって。俺のはまだ着られる」
兄さんの袖には、何度も縫い直した跡があった。
僕はそれを見た。
「でも」
「アルヴィス」
兄さんが名前を呼ぶ。
「お前が困ることじゃない」
声は優しかった。だから、何も言えなくなった。夕食のあと、ヴォルクへ尋ねた。
「神童って、何をしたらそう呼ばれるの?」
「周りが勝手に言うんだろうな」
「僕よりできることが多い人、いっぱいいるのに」
先生は教本を閉じた。
「いるだろうな。だから、名前に見合うことをしようと焦る必要はない」
「でも父さまは喜んでる」
「それは父親として、嬉しいんだろう」
先生は少し考えてから付け足した。
「それと、領主としての考えもある。お前にはまだ難しい話だ」
僕は頷いた。
その夜、寝台の上で新しい外套のことを考えた。嬉しいはずなのに、兄さんの縫い目が何度も目に浮かんだ。