出発の日、空は低い雲に覆われていた。僕は三台目の荷車へ乗った。先頭はロウ、二台目は補給所の御者、僕の隣にはテオがいる。馬の息が白い。雨は止んでいたが、道の土は重かった。
「荷の縄、緩んでない?」
テオに尋ねると、彼は荷台の端を引いて確かめた。
「今は大丈夫。坂を越えたらまた見る」
その答えが、以前よりずっと頼もしかった。
昼前、橋の近くへ着いた。
川は茶色く濁り、水が木の柱へぶつかっている。見張り所の兵士が、一台ずつ通るよう指示した。ロウの車はゆっくり渡った。二台目も続いた。僕らが橋へ乗りかけたとき、馬が急に首を振った。
「待て」
御者が手綱を引く。
橋の中央へ目を向けると、板と板の間から水が吹き上がるように跳ねていた。見張りの兵士が近づき、縄で補強した柱を確かめる。
「さっきより流れが強い」
彼はそう言い、後続を止めた。向こう岸には二台の荷車が見えている。こちらへ戻すにも、狭い橋をもう一度渡らせなければならない。ロウは馬を安全な場所へ移動させ、伝令をこちらへ走らせた。
「お前たちは戻れ」
兵士が言う。
「向こうの二台はどうしますか」
僕が尋ねると、彼は首を振った。
「引き返すより、砦へ進めた方が早い」
僕は頷いた。
三台で運ぶはずの荷は、ここで二つに分かれた。川辺で待ちながら、僕は書きかけの予定表を見た。渡れなかった荷車は借り物だ。返却日が決まっている。積んでいる麦袋は、砦が待っている後半分の一部。
もう一度橋が使える保証はない。
「どうする?」
テオが尋ねた。
僕はすぐには答えられなかった。
「まずオルドへ知らせよう。向こう側にも、何が渡ったか伝えないと」
「それで?」
「……それから、別の道があるか調べる」
テオは顔をしかめた。
「昨日見た地図じゃ、かなり遠回りだったぞ」
「うん」
僕も分かっていた。
近くの小屋へ運び込んだ麦袋は、濡れていないか一つずつ確かめた。
それから、橋の向こうへ渡った荷の一覧を書き直した。夕方になって、伝令が戻ってきた。砦の兵は二台分の食糧を受け取ったらしい。
それでも足りない分が残っている。僕は小屋の戸口に立ち、濁った川を見た。予定を立てることと、予定が崩れたあとに立っていることは、まるで違った。
◇
補給所へ戻ると、オルドは報告を聞き終えるまで一度も口を挟まなかった。僕は借りた馬車の積み荷、渡った二台、橋の状態を順番に話した。最後に、川が落ち着くまで待つべきだと伝えた。
「お前の判断じゃなく、見張り所の判断だな」
「はい」
「そこは分けて書け」
僕は慌てて紙を直した。
砦からの新しい伝令が来たのは、その夜だった。
『残りの食糧を至急送れ。到着の遅延は認められない』
僕は紙を読んで、胸が詰まった。橋が使えないのに、どうやって送ればいいのだろう。
「命令だから、無理でも行くんですか」
僕が尋ねると、オルドは伝令の顔を見た。
「砦の指揮官は橋が閉鎖されたことを知っているか」
「報告は送っています」
「返事が届く前に、この命令を書いた可能性があるな」
オルドは机へ向かった。
「今の状況と、現実的な選択肢をもう一度送る。川を泳いで荷を渡せとは書いてないだろう」
僕は少しだけ息を吐いた。
翌日、ミラは旧街道を使う迂回案を出した。距離は長いが、荷車が通れる道だ。宿営場所も二つある。ロウに見せると、彼は首を振った。
「今は途中の峠に霧が出る。大きな荷を積んで下りるのは危ない」
「いつなら通れますか」
「天気次第だ」
僕はまた数字を書き直した。早く着く道は危ない。安全な道は遅い。
砦には食糧が必要だ。
どの紙にも、間違いだと決められる線はなかった。その晩、僕はテオと倉庫の前で縄を巻いた。
「お前、今日ずっと難しい顔してるな」
「どうすればいいか分からなくて」
「分からないなら、今分かってることを一つずつやれよ」
テオは縄を引き、きつく結んだ。
「俺たち、橋は直せない。でも荷は濡らさないようにできる」
僕は縄の結び目を見た。
今日できることが、何もないわけではなかった。
「明日、袋をもう一度点検しよう」
「最初からそのつもりだよ」
テオは笑った。