「ぬえちゃんのお腹スゥ……ハァァァァァ♡」/………(随時更新中)
「…………何やってんの?」
「ハァァァ♡」
幻想郷、命蓮寺の裏手から離れた里山。
夏の陽気は過ぎ去り、木々に紅葉が色づき始めた昼下がり。
今年の暑さは一段と猛烈だった分乾いた風が心地いい季節となったが、現在の彼女には汗もないというのに何故か暑苦しかった。
否。理由は明白である。
目の前の光景が、全てを暗黙のうちに告げていた。
そのただ一つの元凶は、今もふにゃけた顔を隠そうともしない。
「おい、小傘〜? 聞いてるのか?」
「えへへ……ぬえちゃんの、おナカぁ〜、………ハァ♡」
「コイツ……。オイッ、どけろって! 邪魔なんだよッ!」
今日も今日とて寺での修行をサボり、誰にも言ってない最近見つけたばかりの隠れスポットで風を浴びながら寝転んでいたのだ。もうバレてしまったのか、という気落ちも束の間に、気持ちのいい時間を邪魔され内心怒り心頭である。
うつ伏せの状態でお腹に埋める頭を何とか引っぺがそうにも、生憎といつやったのか、全身を縄でしっかり固定されて身動きが取れない。さすが、手の器用さだけは賞賛に値する。実際、縄というのも、正確には自身の背中に生えている6本の触手を上手い具合に巻き付けて容易に逃げられないように締められている。
やがて無意味なことを悟ると、すぐに冷静な思考に切り替えることにした。昔から、相手の観察は自身の得意分野であった。
改めて、目の前の少女を観る。
最初に彼女の可愛らしいつむじが此方を見つめ返してくる。空を飛ぶ妖怪にのみ許された特権である、只人のつむじを見つける遊びは最近やっていなかったこともあり少し新鮮に感じられた。
そのまま視線を引き伸ばすと見慣れた青髪のショートボブは乱れて、ぴょんと跳ね上がっている。寝癖だろうか。そう勘繰って、今は昼間であることを思い出し、淡々と可能性から切り捨てる。この時間帯であれば、普段なら人里に下りて子守りか鍛冶師をやっているはずである。
「スゥ………ハァァァ♡ ぬえ、ちゃん……?」
そこで、少女はふと此方へ視線を上げた。
赤と青のオッドアイも普段はキレイなコントラストを感じさせるが、今に乱れた前髪の隙間から覗かせるそれは艶っぽく潤んでいた。その瞳の奥に、いつも泣きついては今日あった不運の愚痴をつらつらと垂れる親友、多々良小傘の面影は無かった。
「おう。ぬえちゃんは怒ってるぞ。どうしてこんな事したんだ?」
「うぅ……、だって……悪いのは、ぬえちゃんの方なんだよ?」
「はぁ? 私は何もしてないぞ!」
必死の訴えも虚しく、頬を赤らめていつもと違う雰囲気の小傘は聞く耳を持たない。それが気に食わなくて再度全身で抵抗しようと上体をくねらせるが、力を加えた分6本の触手も連動して脇や手首、太もも、関節などをさらにキツく締め上げるばかりで意味を為さない。
「私が悪いって、どういう意味よ!? ……寺の修行サボったのは、オマエに関係ないでしょうが! それとも何か? 今日は変なヤツに毒されでもしたのか? 全く、オマエは少しは疑うことを「ハァァ♡」───ひゃんッ!?」
突然お腹にかかった生ぬるい吐息に反応してしまい、自分でもびっくりする可愛らしい声を上げてしまう。
「んぅ、反応、しちゃったね。何度も吐息をかけられて、身体が敏感になっちゃったの? ……やっぱり、可愛い♡」
「くッ、違うし!」
先から見せる反応が明らかにただ事では無い小傘。
いつもと違う淫靡な妖気にあてられ、こっちまで少しだけ意識してしまう。……クソッ、こんなちんちくりんなんかにッ!
「スゥ………ハァァァァ♡」
「──ッ!!?」
此方のことなぞお構いなしに、ただ己の欲求のまま私のお腹に顔を埋めているのを見て、心臓のドキドキが止まらなくなる。今この心臓にコイツを近づかせては、と思慮するにそれだけは絶対に阻止しなければ、という焦りがこみ上げてくる。
ふと何故お腹なのか、という素朴な疑問が湧く。何故ここまで念入りに私を縛り付けてまで、途中でバレるリスクも厭わずやった後の行為が、聖に突き出すことでも、ただ驚かせて満足するでも無く、お腹の匂いをひたすらに嗅ぐなのか?
「オイッ! なんで寄りによって腹なんだよ!? そこまで嗅いだってニオイなんかしねぇよッ!!」
「ハァ、ハァ……ぬえちゃんのお腹ぁ〜、スゥゥ……ハァ♡」
目の前のお腹をずっと嗅ぎ続けて、もはや危ないクスリでも試してるんじゃ……と思えてしまうほど今の表情が目に余る親友にやり切れない気持ちを抑えながらも、このままずっと受けに回っている封獣ぬえでは無かった。本来は、どちらかと言えばこっちが相手を追い詰めてやりたい側なのだ。
気がつけば太陽は、西日に傾いていた。
「スゥゥ………ハァァァァ♡ はァ、はぁ……。んぅ? あ、ぬえちゃん。なんか耳まで赤くなってるよ?」
「小傘〜? ふざけるのもいい加減にしろよ……?」
「ふぇ?」
「───鵺符『弾幕キメラ』ッ!!!」
「……ゑ? ちょ───」
閃光が走って数秒した後、周囲にはボロボロになったおたんこなすが一つ無残に転がっていた。
後に事情を聞くと、朝起きてから人里に向かったものの、子守りの途中で身体が熱っぽくなった辺りから記憶が無いらしい。
───聖に診てもらうと、ただの風邪だった。
移った。絶対〇スッ!!