ということで書きました。
夜道を明るく灯す魔石灯、それに負けず劣らず
一歩街に出てみると、民家の間に(勝手に)繋がれた青い紐には
そんな中、ある種現状の原因とも言える2つの
「はあああああああああ?!
「うっさいわドチビ!! こんな近距離でそんなアホ大声出すな! 鼓膜破れるかもおもたやろ!!」
急にロキ様が尋ねてきたかと思えば、「
「え、いやでもそれって大問題なんじゃ……」
「だからわざわざドチビんとこまできたんやろ?」
自分の眷属が行方知れずだというのにやけに落ち着いてるロキ様に少し違和感を覚えつつ、いる場所に検討をつけるため、慎重に尋ねる。
「ちなみに、どこへ向かったか心当たりとかは……」
「ないでー。てかあったらウチが行っとるやろ?」
「そうですよねー」
これは難題になりそうだと、
「そういえば、誰が行方不明になったんですか?」
「あぁ、アイズたんや」
「ええええええええええええええ?!」
「さっきからなんだ? やけに騒がしいな……」
「もう夜中です。あんな騒動があった後なのだから、ちゃんと睡眠を取り、体力を回復させなければいけない」
「ね、寝付けないというのなら、私が!!」
「春姫殿?!」
「ベル様、それにヘスティア様。一体どうしたんですか?」
僕と神様の叫びに、眠そうな目を擦りながらみんなが起きてきてしまった。睡眠を邪魔してしまったことに申し訳なさを感じながら、ロキ様たちの現状を説明する。
「なるほど、剣姫が行方不明に」
「……そんなことありえるのか?」
「というか、色々無理があるような……」
「ともかく一大事です! すぐに助けに向かいましょう!」
「……」
僕の説明を聞いたみんなの反応は様々だった。ただアイズさんを助けに行くという方針に異論はないようで、みんな協力してくれるらしい。
「そういえばほかのロキ・ファミリアの方々はなにをしてるんですか? わざわざこっちに来ずとも、そちらで十分に対応できたのでは?」
……た、たしかに! リリの冷静な指摘に、熱を持っていた頭が冷えていく。アイズさんが行方不明と聞いて考えていなかったけど、ヘスティア・ファミリアを訪ねなくても、自分の派閥間で解決できる問題だ。というか普通そうするはず。ほかの派閥に自分のとこの弱みをわざわざ見せる必要なんてない……というか、誰がアイズさんを誘拐なんてできるというのだろうか? 相手は【剣姫】、Lv.6。正真正銘迷宮都市が誇る英雄候補である。
「……あー。それはやなぁ……」
ロキ様が言葉を詰まらせていると、はぁ、というため息が聞こえた。神様のものだ。
「……とりあえず、探しにいってくれないかい? ベル君」
「はい、もちろんいいですけど……って僕だけですか?! 他にも誰か一緒のほうがいい気が……」
「あぁ、ちょっとヴェルフくん達には別に頼み事があってね……頼めるかい?」
「わか、りました?」
今の状況と神様の態度に、多大な違和感を感じながらもそう答えて、ひとまずアイズさんを探すために僕は街へと繰り出した。
「それで、ヘスティア様? ロキ様? 説明、してくれますよね?」
ベル様が出ていった後の竈火の館では、質問、というか尋問が行われていた。
「もちろんなんでも答えるぜ。なんだい?」
「いや、大丈夫やドチビ。ウチが答えたるわ」
「では、ロキ様。アイズ様はほんとに攫われたんですか?」
「人によっては攫われた、とも捉えられるんやないか? そういう意味で言うなら、嘘ではないな」
「つまり、少なくとも身柄は無事と?」
「せや。というか、アイズたんは迷うといつも自室に籠るか迷宮都市のどっかようわからんとこほっつき歩いてる。やからいつも通りといえばいつも通りではあんねん」
とりあえず1番重大なことは聞けた。ほとんどありえないとは思っていたが、ここがもし誘拐などだったらなりふり構わずベル様を追いかけねばならなかった。Lv.6の誘拐とは、そういうことなのだ。ましてやベル様は強いとはいえ未だLv.5だ、そんな相手がいたとしても敵うわけがない。
というか、そんな相手なら行かせられない。命を賭す行為をそんな軽く考えて欲しくない。
「もうひとついいですか?」
「なんや」
「何故こんなことを?」
「せやなあ……ウチはリヴェリアじゃあらへんけど、1番近いもので言うなら……親心やな。自分の
そこには、本当にただ眷属の幸せを願う神様の姿があった。なら、もういいだろう。リリの役目はここまでだ。恐らく、ロキ様にはベル様に対する敵意はない。それは確認できた。ここからは、ヘスティア様のための時間だ。
「では、ヘスティア様。リリ達に何か手伝ってほしいことはありますか?」
「そうだなあ……出来ればで、いいんだけど。妨害してくる輩を追い払うの手伝ってやってくれないかい? だいぶ、苦戦してるらしいから。ね、ロキ?」
「まあ、さすがにな。今フィンたちは病み上がりみたいなもんやし、いきなりアレはキツい」
「アレ……」
いや、まさか。ありえない。そんなこと起こるはずがない。そもそもそんなことをフィン様が許すはず──
その日、竈火の館に千を超える雷が落ちた。
「変わらないなぁ……」
思わずそんな言葉がこぼれたのは、ある種の安堵からかもしれない。今回の作戦でも、例に漏れず僕は大怪我をしてしまったので、治療のためにあまり竈火の館からは出ないようにしていた。
だから、あの騒動のその後は知らなかったのだ。ないとは思うが、少し陰鬱な雰囲気が出てしまっていてもおかしくはないと考えていた。この騒ぎぶりを見るに、要らぬ心配だったようだけど。
「ベル・クラネルよー!!!」
「?!!!」
そんなことを沁み沁み考えていると、目の前にいた女性に突然叫ばれた。
(え?! なに?! 僕なんかした?!)
困惑に包まれている僕などいざ知らず、あちこちから叫び声が聞こえてくる。まるで共鳴しているようだ。
「玉の輿ランキング1位! みんな、今すぐ捕まえるよー!」
「「「おー!」」」
「少年の尻は私のものニャ!」
「へ?!」
そうして、地獄の鬼ごっこは幕を開けた。
(逃げろ逃げろ逃げろ! 自分のアビリティを思い出せ! 普通の相手に追いつかれるわけない!)
行き止まりに誘導して壁を飛び越えたり、ダイダロス通りに隠れてやり過ごしたり、ギルドの前に行ってみたりしても、騒動が治まる気配は感じなかった。
(いまは考える時間を稼いでいるだけ! いずれこの鬼ごっこにも限界はくる!)
足音や視線の数からして、100はいるはずだ。戦うだけなら方法はたくさんある。逃げるだけでもまだいける。でも、この数から逃げつつさらに人を探すなんて器用なことはできない。
(今、体力があるうちに心当たりのある場所に行かないと!)
まず考えたのは、豊穣の女主人だった。
「【剣姫】だぁ? 来てないよ! こっちは忙しいんだ、後にしな! 手伝ってくれるってんなら、話は別だがね」
「いえ、すみません!」
「ミャーは今朝みたニャー! ファミリアの連中と一緒にダンジョン潜ってたニャー。帰ってきたのまではみたけど、そこから知らんニャー?」
「アミッドのとこでも行ったんじゃない? 今回で一番の負傷者だし」
「ありがとうございます! アーニャさん、ルノアさん!」
「あー気にしないで。クロエが迷惑かけた分だと思っておいてくれればいいって。ついでに見かけたら引っ張ってきてくれる?」
「アミッドさん、いますか?!」
走った勢いのまま扉を開けて突入すると、薬の整理をしていたであろうアミッドさんが、目を見開いたかとおもうとすぐ、ため息をついていた。
「……貴方はいつも騒がしいですね。一応ここは治療院なんですが……」
そんな冷静な一言で、僕の不用意な言動は咎められた。
「あっ……すみません」
「それで、何の用ですか? そんなに慌てて。汗も沢山かいてるようですし、急ぎの用なのでしょう?」
「えっと、この汗はまた別件なんですけど──。とにかく、アイズさんって来てないですか?」
「【剣姫】様なら、少し前まではいらっしゃいましたが……もういませんね」
「そ、そうですか……」
まさかの入れ違いになってしまった事実を知り肩を落とす僕をみて、クスッと笑い声が聞こえてきた。
「軽い検診ですからね。サッと見てすぐ終わりました。もう外傷はほぼ完治してましたし……さすが第一級冒険者といったところですね。ちなみに、少し前に出ていったばかりなので、辺りを探せばすぐ見つけられると思いますよ?」
「え? なんでそんなことがわかるんですか?」
僕の尋ねに、アミッドさんは少し呆れたような顔つきをしながら答えてくれた。
「いまは実質お祭り状態ですからね。じゃがまるくんくんの屋台が治療院の周りにも出来てるんです」
治療院を出て周りを見ると、たしかに新しくオープンしたであろうじゃがまるくんくんのお店がいくつか並んでいた。そして奥をみると
(──いた)
月の光をそのまま吸収したかのように感じる金髪が、夜風を受けて靡いている。黄土色の紙袋をいくつも横に置いてベンチに座り、空を見上げてるアイズさんがそこにいた。
なんだかその雰囲気はとても神聖で、僕なんかが話しかけていいか迷うぐらいだったけど。
同時に僕が声をかけたとも思った。
だから僕はなるべく自然体で、いつも変わらない速度で近づき、いつもと同じトーンで声を投げた。
「なにしてるんですか、アイズさん?」
「ベル……? どうして」
「ロキ様に頼まれたんです。行方不明だから探してきてくれ、って」
「そうだったんだ」
「みんな、心配してますよ」
「知ってる」
あの作戦が終わってから話すのは初めてだけど、アイズさんの様子が少しおかしいと感じてしまう。大好物のじゃがまるくんくんには欠片も手がついていないし、どこか上の空な感じがする。そんな状態のアイズさんは
「みんなを、傷つけちゃった」
深い後悔の念が込められている声を聞いてぼくは、やっぱり、と思ってしまった。
【ロキ・ファミリア】がアイズさんを責めるわけがない。きっとこれは、この人のこころの問題。自分の意思では無いとはいえ、自らの力で、自らの体で、仲間を傷つける光景。それを見てこの人は、なにを思っただろう。何を感じただろう。
(この人はきっと、自分を嫌いになってしまう)
経緯なんて関係なく、結果だけをみて、自分が許せなくて、自分が嫌いになってしまう。
そんなの嫌だ。
「アイズさん」
「……なに?」
一見無表情に見えるこの表情の奥に、沢山の感情が棲んでいることをぼくは知っている。今ついている氷の仮面を取り外して、さらけ出して欲しいと願ってしまう。だから僕は破裂しそうになる心臓を抑えて吐き出した。
「好きです」
「──え?」
ぽかん、と。そんな言葉が似合う表情になって、滲んでいた負の感情が鳴りを潜めた。
「アイズさんたちの問題に僕が突っ込むのは、間違ってると思います。それでも僕はあなたに自分を嫌いになって欲しくないです。だって僕はあなたが好きだから。好きな人が自分なんてって言ってると、悲しくなっちゃいます」
ファミリア内の問題に僕がどうこうするのは間違ってる。だからこれは、僕のエゴだ。みんなに尊敬されて、頼りにされて。そんなすごい人に自分を嫌いになって欲しくない。馬鹿で愚かな僕には、まず自分の気持ちを伝えるっていう方法しか思い浮かばなかったけど、正直な気持ちを伝えるのが一番大事だと思った。
「ベルは不良だね」
「すみません」
「とっても自分勝手」
「知ってます」
「すごく卑怯」
「はい」
「──でも、ありがとう」
アイズさんは俯きながら僕を咎めたかと思うと、フッと顔を上げて、柔らかい笑みを零してくれた。
(よかった。いつも通りのアイズさんに戻ってくれた)
きっとロキ様は、こうなってることを何となく分かってた。でも、どうしようも出来なかったから、僕に頼んだんだ。
アイズさんは立ち上がると、僕に手を差し出してくれた。
「帰ろう?」
「はい! アイズさん!」
今から不良でもいいから、すこしだけ回り道をして帰ろうと思った。
中盤までは良くなったけど、終わらせるのむずかしい……また修行します