手元には気づけば、ダイスがあった。
ダイスは振れる時に振った方が楽しいのだ。
コロコロと転がった目は……
とある神界で、この世界に隣合う平行世界が滅びに向かっており、それが傾くことで、こちらに衝突しそうになっている。
それの対処法として地上にそちらの世界の生物を入れる籠を作り、対処してもらうようにするがどのようにこの世界に導入するかを話し合っていた。
「へぇー、ダンジョン出現するんだ」
突如、後ろから聞こえた声に驚く。
皆で円形に座っているので、侵入者が入れば真向かいの席に座っている神が気づくはずなのに。
振り向いた先には神界には似合わない、シンプルな白シャツと黒ズボンにテーラードジャケットを羽織った男がいた。
アクセサリーをジャラジャラつけており少しチャラそうだ。
「誰ですか?」
「まぁ、まぁ、そんなのはいいだろ? で、導入は発生日時と大々的にその籠に人に利益が出るものがあると言えばいいんだよ」
確かに、この籠の中に発生した生物を駆除しなければ、こちらの世界も違う世界の理に侵食されて危険ではあるので、籠の中に留めるように対策しなければならなかった。
それが、この男の一言で解決された。
神達はうむうむと各々想像を働かせ、穴はあるが今までの案の中では良さげであると思った。
「いい案ですね。侵入したことには不問します。名前は?」
男は少し悩んだと思えば、手の中に見慣れない形のダイスが現れた。
そして、コロコロと賽を振る。
1.本名
2.適当な神っぽい名前
3.Twitterの名前
→3
「俺の名前は卍ダイスこそ全てにおいて最強神卍」
時が止まった。こいつ頭がおかしい。きっとこの時この場の全員が思った。
男は平然と名乗ったがという態度だ。
「本当の名では無いですよね?」
「そうだが、賽を振った結果だからな」
やはり平然と本当の名ではないことを認める。
名乗った名前は長すぎてもはやちゃんと覚えているものはいないだろう。
「長すぎるのでダイス神と呼びますね。あなたは私たちにないアイデアを持っていますが、他には何かありますか?」
1.教える
2.教えない
→2
コロコロと神達の囲んでいる机を転がった賽の目は2。
「2か。今は言うべきではないとダイスか言ってる」
は? と数名が間抜けそうな声を漏らした。
対価を要求するのではと思っていたが、まさかのこいつはダイスを振った結果で決めているのだ。
ガタンと席を立ち怒りを露わにする神がいたが、相手の実力も不明だが、仮に暴力で解決したとたとて、このイカレ野郎が教えてくれるかも分からず、更に最初のように突如現れたので消えることもある。
ここはこちらが下なので、穏便にいくべきなのだ。
本当に業腹だが致し方ないのだ。
「では、どのようなアイデアがありますか?」
1.人が求めるもの
2.人の娯楽
3.教えない
4.神の存在
5.システム
ダイス神がダイスを振る前に横側に浮かび上がるダイスの出目の結果を教えることについての画面が知っているものの種類を教えてくれた。
これで、教えないと言われても次に聞くことに繋がる。
コロコロと斜め向かいの緊張した面持ちの神の元へダイスは転がっていく。
→4
「ふむ。人は未知の存在を受け付けない。神という人の想像を超える力を持つ存在を公にした時に、好意的に見てくれるのは1部だろう。存在を感じさせないようにステータス画面などのウインドウを駆使すべきだろう。直接介入して、発言するのはオススメしない。良くも悪くも管理者のような振る舞いが不気味に思えど反発は呼びにくい」
教えてくれた内容は、有益だが、神は信仰によって存在を保たれている側面もある。この時に動かなければ、信者が減るだろう。
はぁ、と斜め向かいの神がため息を吐いた。
そして、ダイスは4の面を向いていたのが、不安定だったのか5に切り替わる。
バッと皆がダイス神の方を向いた。
横に映る画面の結果は5が光っている。
彼は不覚とばかりに額に手を当てたあと、ダイスを手元に戻した。
「こちらのミスだから全ては無理だが教えよう。この会議の真ん中に浮かぶ画面たちのようにシステムの一部として神が人間に加護を与えればいい。神は自分が良いと思った人間に加護を受け入れるかの選択をさせればいい。システムの1部なら存在するかは分からないのと、自分が選択するから敵対対象として認識しにくくなる」
妥協すべきとこなのだろう。
「ありがとうございます。後は「時間だ。また、夢を見ることが出来れば会えるだろう。じゃあな、露出狂のピンク髪女」」
突然、目の前からスっと消える。
露出狂のピンク髪女と明らかに自分の方を向かって呼ばれた名前に唖然とする。
名前を教えてないとはいえ、ありえない呼び方である。
後ろから笑うのを誤魔化すためか咳払いが聞こえる。
思わず、数歩先の忘れ物の足元に転がったダイスをヒールのかかとで踏み潰した。
「さぁ、今日はあのクソボケ野郎からの有り難いアイデアがでたので各々やることを進めるために解散しましょう」
真っ青になった神達はそそくさと頷いてその場を後にした。
この日決意したのだ。全てを聞き出し終わったら、必ずやあのクソボケ野郎を殴ると。