翌日。エンシェンは教会前にて、サロスを見送っていた。付き添いの三人のシスターと共にサロスの旅路を祈り、無事に都市ドラコラスへ辿り着けることを願う。
エンシェンが徐々に小さくなっていく背中を見つめていると、眉を顰めるレドココが解せないように言ってきた。
「なあ、司祭様……」
「どうしましたか、シスター・レドココ」
「昨晩──ミノトールとナニがあったんだよっ⁉」
レドココがビッ!と勢い良くミノトールを指差した。そこには普段通りのミノトールがいるが……エンシェンと見つめ合った瞬間、じんわりと頬を赤らめていった。
「……ぽっ♡」
「どえーっ! あのミノトールが! 優しいけどなんだかんだ壁を作ってたあのミノトールがっ! ただのオンナになってんじゃねえかーっ⁉」
「何故でしょうね。私には皆目検討もつきません」
「嘘つけぇー!」
声を荒らげるレドココを他所に、ミノトールが真後ろから抱擁してきた。エンシェンはほんの少しの緊張感を覚えるが、以前とは毛色が違うと感じた。
「レドココ、わたくしは何も変わってませんよ? ただ……司祭様に教えられちゃいました♡ 互いに激しく求め合うことが、最も尊いことをっ♡」
「めっちゃ変わってんじゃねえか⁉ 以前までのお前は性獣だったのにっ‼」
「今のわたくしは愛獣です♡」
「やかましいわ!」
愛に飢えた獣ことミノトールが、エンシェンに頬ずりをしてきた。そこには相手を思いやる心があるようにも思える。
正直なところ、エンシェンも驚いていた。人はそう簡単には変われないのに、ミノトールは見事に変わったからだ。もしかして、〝吸血鬼〟の力が悪さをしてしまったのか? エンシェンはミノトールの変化を少し気になっていた。
「レドココも落ち着きなよ~、そんなことよりも仕事しないと! ほら、テキパキ動く!」
「なんでラビワビはそんな平然としてんだよ!」
「大丈夫だって、数日で慣れるからさ!」
「そういう問題じゃねえから⁉」
ギャーギャーと喚くレドココを差し置いて、この場は解散となった。未だにぶーたれるレドココは、エンシェンと一緒に客室掃除の予定だ。この後、根掘り葉掘り聞かれるのだろうなと思いながら、エンシェンはレドココと共に司祭館へ向かった。
派手に汚れたシーツを片付けて、部屋全体を綺麗に掃除した。一息ついたエンシェンだったが、そうは問屋が卸さないとばかりにレドココが詰め寄ってくる。
「なあ司祭様、本当にナニしたんだよ……?」
「私にも分かりませんね。もしかしたら〝吸血鬼〟の血が悪さをしてしまったのかと思いましたが……思い返してみても、そんなヘマはしていない。単純にシスター・ミノトールが変わっただけでしょう」
「ふぅん……?」
片眉を上げて訝しむレドココは、非常に疑い深い性格だ。これはドラゴンの血を引くエロスの子の特徴といっていいだろう。
「オレ、実は吸血鬼についてちょっと知ってんだ。ほっそりした人型をしてて、体毛がなくて、背中から棘を生やした魔のモノってな。なんでも、他者の生き血を啜る特徴があるから吸血鬼って呼ばれるんだとか」
「合ってますよ。純粋な吸血鬼は理性のない怪物です。女神エロスのおかげで、知性を身につけましたがね」
「少し気になるんだけど──」
レドココがぐいっと顔を近づけて聞いてきた。そこには本来の目的を見失って、他のことに興味が移ったような顔があった。
「司祭様って、オレの血を吸えるのか?」
「吸えますが、特別な相手からしか吸いません。我らの祖、聖ドラクスが定めたことです。『我らは理性あるモノ。無作為に血を吸うことを禁ずる』と。破ったからといって断罪はされませんが、同族からは侮蔑の対象になります」
「はえー、そうなんだ。ちなみに特別な相手って?」
「伴侶ですね」
「は、伴侶ねえ? ふぅ~ん⁉」
レドココがわざとらしく首を出して、エンシェンを挑発してきた。何が「汗かいちゃったなー!」だろうか。そんな罠に引っかかるほどエンシェンは幼稚ではないので、仕返しをすることにした。
レドココの頬をそっと撫でるエンシェン。びくりと震えるレドココ。エンシェンはそのままレドココの腰を抱いて引き寄せると、耳元でそっと囁いた。
「ドラゴンの喉元には
「そそそ、それはどうかなっ⁉」
逆鱗とは逆さに生えた鱗のことだ。見たところレドココの喉元には鱗がなく、皮膚しかない。だが、ドラゴンの血を引いているならば、そこが弱点だったとしても不思議ではないのだ。
じっとレドココの瞳を見つめていれば、面白いように紅潮してくる。縦に細長い瞳孔が開き、息が上がり、落ち着きがなさそうに手足を動かす。レドココは明らかに興奮していた。
「き、気になるなら触ってみればいいじゃんよっ!」
「貴方が何を考えているかは分かりませんが……私は知ってますよ。ドラゴンの血を引くエロスの子は、親しい者にしか喉元を触らせないと。私が触る訳にはいかないでしょう」
仕返しも済んだことなので、エンシェンは何事もなかったかのようにレドココを解放した。呆気にとられるレドココは大きく口を開けていたが、すぐさまエンシェンに掴みかかってきた。
「なんかムカついた! 司祭様はオレと親しくないって言うのかよ!」
「そういう訳ではありません。ですが、ドラゴンの血を引く貴方の喉元を触る訳にはいかないんです。触っていいのは、本当に親しい間柄だけでしょう? それこそ家族や、生涯を共にする相手などです」
「知ってんのかい⁉」
「知ってますよ、司祭ですから」
くそっ、駄目だったか……! レドココが悔しそうに呟く。エンシェンとしては、こういった種族間の文化を悪用するのは止めてほしいところだった。すれ違いが起こってしまい、争いや悲劇が生まれることも訳ないからだ。
「シスター・レドココ、教会の掃除へいきますよ。昼過ぎまでには終わらせたいですから」
「ちぇっ、分かりましたよ」
「最近、態度が軟化しましたね。私としては嬉しい限りです」
ちらりと伺えば、レドココは気恥ずかしそうに目線をそらしていた。エンシェンは少しだけ気分が良くなって、小さく微笑んだ。
⸸
昼食を食べ終えたエンシェンは、協会裏の果樹園にやってきていた。何故ここに来たのかは、もはや言うまでもないだろう。レドココに連れてこられたからだ。
「ほら、司祭様! いつものように教えてくれよ!」
「貴方は随分とワガママになりましたね。それが本来の貴方ですか?」
「んっ、そうだよ。悪いか……?」
「悪いなんてことはありません。自分を押さえ込む必要なんてない、自由に振る舞えばいい」
ぺらりとシスター服を捲って、履いていたパンツを下ろしたレドココは既に股を濡らしていた。軽いキスをしていたエンシェンがそっと撫でるだけで可愛らしい声を上げて、腰を前後に揺らしてくる。
「んんっ♡ もっと強く擦ってくれよっ♡」
「シスター・レドココ、焦ってはいけません。これは貴方のためでもあるのです。どこが気持ち良いと感じるのか、どうして快感を覚えるのかを自分なりに考えてみてください」
「んああっ♡ そんなトコをなぞるなあ♡」
エンシェンは指の腹を使って、レドココの陰部の凹凸をじっくりと、そしてねっとりとなぞり続けた。ひくひくと物欲しそうに腰が揺らされるが、エンシェンはひたすらになで続けて、レドココを狂わせていく。
「し、司祭様っ♡ そろそろ限界だっ♡」
「なら、一度果てましょうか」
「んううう゛っ♡ 入ってくるうううう゛♡」
一生懸命に包み込んでくる感触を覚えつつも、エンシェンは二本の指を巧みに操ってレドココを絶頂に導いていった。そして指がギュッ♡と掴まれた瞬間──強引にレドココの唇を奪った。
「んん゛ーーーっ♡」
ぐしょぐしょになるほど手が汚れる中、エンシェンは手を止めることはせず、キスをやめることもなかった。レドココは全身を震わせながら、痛いほど強く抱き締めてくる。エンシェンはそんなレドココの咥内と陰部を、一心不乱に攻め立て続けた。
「ああああ゛っ♡ 壊れるっ♡ 司祭様、壊れちゃうううう゛っ♡」
「私は壊れませんし、貴方も壊れませんよ。ほら、もう一度果てましょう」
「んん゛っ♡ んんん゛ーーーっ♡」
エンシェンの指を根本まで咥え込むレドココが盛大に果てた。もはや洪水と言わんばかりに股を濡らして、子鹿のように足を震わせる。
エンシェンは辛うじて意識を保っていたレドココをその場に座らせて、ゆっくりと指を引き抜いた。その際にレドココが嬌声を上げるので、労る気持ちも込めて陰部を優しく撫でてあげた。
「やあああっ♡」
「シスター・レドココ、貴方は少し敏感ですね。それが悪い訳ではありませんが、貴方は奉仕をする側の人間なのです。もう少し慣れていきましょう」
「はっ、はいぃぃ♡」
蕩けた表情を浮かべるレドココが、ナニかを物欲しそうに見つめてくる。エンシェンはあえて分からない振りをしながら、汚れた指をぺろりと舐めたのだった。
魔界の豆知識
・吸血鬼。エロスの地では既に絶滅している。チュパカブラのような怪物で、女神エロスと交わることで知性を得た。そのうちの一人が十二使徒のドラクスとなる。