あの鐘の音が聞こえるか 作:もこもこ
これは出会いの記憶
あれは、新エリー都の裏社会において『パエトーン』の名がまだ「知る人ぞ知る優秀な若手プロキシ」程度の認識だった頃のこと。
そして、無所属のホロウレイダーであるイサムが、まだ己の能力の扱いに慣れていなかった、振り回されていた頃の記憶だ。
* * *
「お兄ちゃん、第3ルートは崩落してる! 右の搬入路から迂回させて!」
「了解。……やっぱりこの規模の共生ホロウともなると、空間の変動が激しいな。依頼の品まであと少しなんだけど」
ビデオ屋「Random Play」の奥、HDDシステムの青白い光に照らされた空間で、アキラとリンは額に汗を滲ませながらキーボードを叩いていた。
彼らが受けていたのは、中規模ホロウに取り残された「企業の機密データが入ったケース」の回収依頼。ナビゲート用の特殊なボンプ『イアス』を遠隔操作し、ホロウ内の複雑な地形をマッピングしながら進んでいた最中だった。
その時、リンのモニターに強烈な警告音が鳴り響いた。
「えっ……嘘、空間座標の奥から未確認の生体反応。一つ、二つ……十人以上いる! 一般市民の集団よ!」
「ホロウ災害の巻き込まれか。……マズいな、その周辺のエーテル濃度が急激に跳ね上がってる。このままじゃ数分で全員エーテリアス(化け物)になっちゃうよ!」
二人は顔を見合わせた。プロキシの鉄則は『依頼の完遂』だ。だが、目の前で失われようとしている命を天秤にかけるような冷酷さを、まだ駆け出しから少し毛が生えた程度の若い二人は持ち合わせていなかった。
「依頼は後回しだ! リン、ルートを変更して彼らの救出を優先する!」
「了解! イアス、最大出力で走って!」
モニター越しに見える崩壊した地下鉄の駅構内。マフラーを巻いたイアスが瓦礫を乗り越えて広場に飛び込んだ瞬間、アキラとリンは信じられない光景を目の当たりにして息を呑んだ。
逃げ遅れた一般市民たちが、高濃度エーテルの霧に巻かれて苦しそうにうずくまっている。だが、彼らの身体が化け物に変異することはなかった。
なぜなら、彼らの前に立つ『真っ白な髪の少年』が、その元凶をすべて自分に引き受けていたからだ。
「が、ぁああアアアアアッッ!!」
少年――イサムは、大剣を地面に突き立て、素手で市民の背中に触れていた。
信じられないことに、市民の身体を蝕んでいた青黒い侵食が、まるで掃除機に吸い込まれるようにイサムの手を経由して彼の体内へと流れ込んでいる。
HDDのモニター越しに伝わってくるバイタルデータは、完全に人間の致死量を超えていた。
吸収したエーテルの代償として、イサムの首筋や腕の皮膚をメキメキと突き破り、鋭い青のエーテル結晶が群生していく。身体青白くもれる。あまりの痛みにイサムの顔は歪み、白雪のように色のない前髪から大粒の脂汗が滴り落ちていた。
『な、何をしているんだ……! 人の侵食を、自分が吸い上げているのかい!?』
『そんなことしたら死んじゃう! 防護ギアすら着けてないのに!』
驚愕する兄妹の言葉をよそに、事態は最悪の方向へと転がった。
イサムが限界まで吸い上げた「高濃度エーテル」に引き寄せられ、周囲の暗闇から無数のエーテリアスが這い出してきたのだ。
「ヒィッ……! 化け物だぁっ!」
「……くそっ、次から次へと……!」
市民たちが悲鳴を上げて後ずさる。
イサムは痙攣する腕に無理やり力を込め、身の丈を超える無骨な大剣を引き抜いた。だが、尋常ではないエーテルを吸収した直後の身体は身体中が青く燃える、鉛のように重く、足元はおぼつかない。ぎこちない動きでなんとか振り回している。
このままでは、エーテリアスの群れに飲み込まれるのは火を見るより明らかだった。
その時だ。
「ンナッ!!」
瓦礫の陰から、赤いスカーフを巻いた見慣れない一台のボンプ――イアスが飛び出してきた。
『そこの白い髪のお兄さん! その大剣、振れるわね!?』
「は……? ボ、ボンプが喋った……?」
『いいから言う通りにして! 3秒後、右の柱の根元に向かって大剣を全力で横薙ぎに振るの! 3、2、1……今!!』
イアスのスピーカーから響く勝気な少女(リン)の指示。
理由は分からなかったが、イサムはその声の持つ不思議な説得力に身体を預けた。結晶の痛みを堪え、大剣を真横に振り抜く。
巨大な質量が柱の根元を粉砕した瞬間、アキラがHDD側からホロウの環境システムにハッキングを仕掛け、天井の隔壁を強制解放した。
凄まじい轟音と共に瓦礫が降り注ぎ、迫り来るエーテリアスの群れを一網打尽に押し潰す。
『いい動きだ! 次はその市民たちを連れて、左の通路へ走って! 空間の歪みを利用して、一気に浅層まで抜けるルートを開くから!』
今度は落ち着いた、的確な少年(アキラ)の声。
二つの声が交互に指示を出し、迷宮と化し、崩壊を続けるホロウの「正解のルート」を魔法のように切り開いていく。
「す、すげえ……! あんたら何者だ!?」
『ただの道案内(プロキシ)よ! ほら、止まらないで!』
満身創痍のイサムだったが、不思議と心強かった。
彼は自らの体内に溜め込んだ過剰なエーテルを大剣に送り込み、蒼白の『疑似火炎』として燃焼させる。
熱を持たない青い炎を纏った大剣を振り下ろし、アキラの指定した「空間の結節点」を破壊する。完璧なタイミングと誘導により、彼らは誰一人欠けることなく、奇跡的にホロウの出口へと辿り着くことができた。
* * *
ホロウの外縁部、新エリー都の裏路地。
救出された市民たちが治安局の保護テントへ向かうのを遠くから見届けた後、イサムは人気のないレンガの壁に寄りかかり、ずるずると座り込んだ。
「はぁっ、はぁっ……きっつ。痛ってぇ……」
腕に生えた結晶をさすりながら、深呼吸を繰り返す。
そこへ、「お疲れ様」という声と共に、冷えたペットボトルの水とタオルが差し出された。
見上げると、息を切らした同年代の少年と少女が立っていた。イアスを通してナビゲートしてくれた声の主だと、すぐに分かった。
「おう、サンキュー。あんたらのおかげで助かったぜ」
イサムが屈託のない、底抜けに明るい笑顔を向けると、兄妹――アキラとリンは、ひどく悲痛な顔をしてイサムを見つめてきた。
二人の視線は、イサムの真っ白な髪と、皮膚を破って生えるエーテル結晶に釘付けになっている。
「あんた……なんて無茶苦茶なことをするの。自分の身体にエーテルを移すなんて……」
「プロキシのネットワークでも、あんな異能聞いたことないわ。あんなこと続けてたら、あんた、すぐに死んじゃうわよ!」
本気で怒り、そして今にも泣き出しそうなリンの声を聞き、イサムは目をぱちくりとさせた。
見ず知らずの他人のために、ここまで心を痛めてくれる人間がいることが、ひどく新鮮だった。
「あはは! 心配すんなって。この結晶も白髪もただの副作用みたいなもんだ。マジでめっちゃ痛いけど、寿命が削られたり死んだりするようなことはねぇからさ。俺、無駄に頑丈なのが取り柄だし! 元気ピンピン!それに目の前で人が死んじまう方がずっとイヤってもんだよ」
心からの真実。
しかし、激痛を堪えながら無理に笑って見せるイサムの姿は、アキラとリンの目には『周囲に心配をかけまいと、自分の死期を悟って強がっている悲劇の少年』にしか映らなかった。
(……この人は、放っておいたら絶対に誰かのために死んでしまう)
アキラとリンは顔を見合わせ、無言のうちに同じ決意を共有した。
アキラが一歩前に出て、真っ直ぐにイサムを見つめる。
「君の名前は?」
「イサムだ。無所属のホロウレイダーやってる」
「イサム。僕たちはプロキシの『パエトーン』だ。……君がこれからも、誰かを救うためにその痛みを背負って戦うつもりなら、せめてホロウの中で迷わないように、僕たちが『目』になってあげる」
「え?」
「うちのエージェントになりなさいよ」
リンが腰に手を当てて、ふんっと胸を張った。
「あんたみたいな無鉄砲なお馬鹿さんは、私たちが完璧なナビゲートで管理してあげないと、いつホロウで野垂れ死ぬか分かったもんじゃないわ。それに、私たちもこれからもっとでかい依頼をこなすために、強くて信用できるホロウレイダーを探してたところなの」
それは、建前だった。
彼らほどの腕前なら、もっと安全で、自分を大切にするベテランのレイダーを雇うことなどいくらでもできたはずだ。
それでも二人は、自己犠牲を笑って引き受けるこの真っ白な髪の青年を、放っておくことができなかったのだ。
「……お前ら、お人好しにも程があるだろ」
イサムは驚いたように二人を見つめた後、声を上げて笑った。
その笑い声には、旧都を追われてからずっと抱えていた孤独を、少しだけ溶かしてくれるような温かさがあった。
「いいぜ。よろしく頼むわ、パエトーン。……これでも、大剣の腕には自信があるんだ」
イサムは痛む右手を持ち上げ、差し出されたアキラとリンの手をしっかりと握り返した。
これが、後に新エリー都の裏社会で『伝説のプロキシ』と『晩鐘のハサン』として恐れられることになる、奇妙で、ひどくお人好しな三人の、出会いの記憶だった。
* * *
幾分か時が過ぎ、より深く絆を深めるきっかけはあの出来事だろう。
あれは、イサムがパエトーンのエージェントとして契約を結び、裏社会で彼らがそれぞれお互いの名前が少しずつ名を知られ始めた頃の出来事だ。
「……あー、やっぱ寂しいな。いつも足元をチョコマカ歩いてる赤いスカーフの相棒がいないと、ホロウ探索も味気ねえぜ」
薄暗い未登録ホロウの廃工場エリア。
崩れかけた鉄骨の上を軽快に飛び移りながら、イサムは耳に付けた小型インカムに向かってぼやいた。
『文句言わないの。イアスは今、お兄ちゃんがナビゲート用の通信モジュールを最新型にアップグレードしてる最中なの。今日は音声データとキャロットの共有だけで我慢しなさい』
「へいへい。んで、超緊急っていう『人助け』のターゲットはどの辺だ?」
『現在地から直進して二つ目のブロックよ。……急いで、イサム。ターゲットの生体反応が、かなり危険な状態だわ』
リンの声がピリッと引き締まる。
パエトーンが今回受けた緊急依頼、いや、正確には彼らがインターノットの深層で偶然傍受した『暗殺指令』を阻止するための強行介入だった。
標的の名は、ライオネル・タイムフィールド。
名家タイムフィールド家の人間であり、温厚で心優しい父親として知られる彼は今、とある巨大な陰謀に巻き込まれ、絶体絶命の危機に瀕していた。
『ライオネル氏は、巨大企業「ポーセルメックス」の内部で暴走している一部の過激派研究チームから、一人の少女を逃がして逃亡したの』
「過激派の研究チーム? まさか……」
『ええ。その少女は特殊な抗体を持つという理由だけで、非人道的な生体実験のモルモットにされていたわ。依頼ではライオネル氏は偶然その事実を知り、彼女を助けるために会社の機密ごと持ち出したのよ』
リンの冷静な、しかし怒りを孕んだ声がインカムから響く。
だが、巨大企業の暗部を暴こうとした代償は大きかった。ポーセルメックスの暴走派閥は即座に私兵部隊を動かし、彼らをホロウの奥底へと追い詰めたのだ。
「ホロウ災害による不慮の事故」として処理し、完全に口封じをするために。
「……なるほどな。自分の子供でもない見ず知らずのガキのために、名家の地位も命も投げ打って逃げ回ってるってわけだ」
イサムは背中の大剣の柄を握りしめ、ふっと口元を緩めた。
「最高にイカした親父じゃねえか。絶対に死なせねえよ」
* * *
「ハァッ……ハァッ……!」
錆びついたコンクリートの壁を背に、ライオネル・タイムフィールドは荒い息を吐いていた。
高級だったはずのスーツはボロボロに引き裂かれ、額からは血が流れ落ちている。
「もう逃げ場はありませんよ、タイムフィールド様」
暗闇の中から、防毒マスクと重武装に身を包んだポーセルメックスの私兵部隊が、無機質な銃口を突きつけながら歩み寄ってくる。
「大人しく実験体(パーツ)をどこに逃がしたのか吐きなさい。そして機密データを返せば、娘さん……アリスお嬢様には手を出さないと約束して差し上げます」
「……黙れッ! お前たちの狂った実験に付き合わせるものか!」
ライオネルは血を吐くような声で叫んだ。
彼の脳裏には、家に残してきた愛娘、アリスの無邪気な笑顔が浮かんでいた。こんな幼い子供を実験動物のように扱う連中を野放しにして、どうして娘に顔向けができようか。
自分がここで死ねば、アリスは父親を失う。その恐怖と絶望に押し潰されそうになりながらも、彼は柚葉を抱きしめる腕の力を決して緩めなかった。
「……交渉決裂ですね。では、予定通り『ホロウ災害による悲劇的な死』を迎え撃っていただきましょう」
私兵のリーダーが冷酷に合図を送る。
部下の一人が、特殊なシリンダーをライオネルたちの足元へ投げ込んだ。それは、高濃度に圧縮されたエーテルガスを発生させる違法兵器。これらを吸い込めば、彼は数分でエーテリアスへと変異し、理性を失って果てることになる。
——ドゴォォォンッ!!
頭上の錆びた鉄骨がへし折れ、巨大な質量が私兵部隊とライオネルたちの間に突き刺さった。
「なっ……!? なんだ!?」
「悪いな。ここは禁煙だぜ、ポーセルメックスの犬共」
舞い上がる土煙の中。
身の丈を超える大剣を地面に突き立て、真っ白な髪を揺らす青年——イサムが、底抜けに明るい笑みを浮かべて立っていた。
「だ、誰だ貴様! 邪魔をするな!」
「撃て! エーテルガスごとハチの巣にしてしまえ!」
私兵たちが一斉にアサルトライフルを構える。
だが、イサムは動かない。彼はライオネルを守るように立ち塞がると、背後に充満しようとしていた高濃度エーテルのガスに向かって、素手をかざした。
「が、ぁああッ……!!」
ドクン、と。イサムの心臓が警鐘を鳴らす。
空間に撒かれた致死量の毒ガスが、まるで竜巻のように彼の手のひらへと吸い込まれていく。
強制的なエーテル吸収。全身の血管に煮えたぎる鉛を流し込まれたような激痛が走り、彼の腕の皮膚を突き破って、青く鋭い結晶がメキメキと成長する。彼の髪からさらに生命の色が奪われ、新雪のような純白がより一層色濃く染まった。
『イサム!! バカ、一気に吸い込みすぎよ! バイタルが滅茶苦茶じゃない!!』
「へへっ……平気、平気だリン! こんくらい……俺の相棒の、最高の『燃料』だぜ……!」
インカム越しのリンの悲鳴を強がりで押し返し、イサムは大剣を乱暴に引き抜いた。
過剰なエーテルが、熱を持たない蒼白の『疑似火炎』となって、ゴウゴウと身体から、刃の周囲に荒れ狂う。
「さあ……お仕置きの時間だ」
イサムが地を蹴る。
その軌道は、かつて旧都の道場で彼が最も敬愛した師匠から叩き込まれた、一切の無駄がない完璧な剣技。
「ヒィッ……! ば、化け物……ッ!」
「遅えよ」
青い炎が残像を描く。
重装甲の私兵たちの武器が、防具が、次々と紙切れのように両断されていく。イサムは命までは奪わなかったが、二度と彼らが銃を握れないよう、徹底的に武装と戦意を粉砕していった。
たった数十秒の間に、ポーセルメックスの過激派部隊は完全に無力化され、床に転がって泡を吹いていた。
「ふぅ……。終わったぜ、アキラ、リン。ルートの確保を頼む」
『……了解。左の通路から浅層へ抜ける安全なルートを開くよ』
インカムから聞こえるアキラの声は、安堵と、そして深い心配に満ちていた。
イサムは大剣の炎を鎮めると、呆然とへたり込んでいるライオネルの元へ歩み寄った。
「立てるか、オヤジさん。このインカムを渡しておく、優秀な案内人パエトーンが帰り道を案内してくれる。あとは任せな」
「あ、あなたは……」
ライオネルは、全身から青い結晶を生やし、息も絶え絶えになっているイサムを見上げ、震える声で呟いた。
「どうして、あんな無茶を…あなたが犠牲になる必要は……!」
「あはは! 勘違いすんなって。俺は無駄に頑丈だから、この痛みだってただの筋肉痛みたいなもんだ」
痛みを隠し、底抜けに明るく笑いかけるイサム。
「あんたはスゲェよ。一人の女の子のために、全部投げ打って守り抜こうとしたんだからな。……家に、待ってる子供がいるんだろ?」
「アリス……! そうです、私には、娘が……!」
ライオネルの目から、大粒の涙が溢れ出した。
「あんたが必死に逃げ回ってくれたおかげで間に合った。本当によかったってもんだ!」
「ありがとうございます……! あなたのおかげで、私はまた、あの子に会うことができる……。この恩は、一生忘れません……!」
「おう。気を付けて帰れよ」
イサムは親指を立て、真っ白な髪を揺らしてニカッと笑った。
* * *
ライオネルたちがアキラのナビゲートによって安全にホロウを脱出した後。
一人残されたイサムは、崩れた壁に背中を預け、ずるずるとその場に座り込んだ。
「はぁっ、はぁっ……ってぇ。今回はちょっと、吸い込みすぎたか……」
腕に生えた結晶の激痛に耐えきれず、脂汗が床に滴り落ちる。
寿命が削られるわけではないというのは真実だが、この身を焼かれるような苦痛だけは、何度経験しても慣れるものではなかった。
『……イサム』
インカムから、リンの震える声が聞こえた。泣いているのが分かった。
『バカ。大バカ。……本当に、死んじゃうかと思ったんだから』
「わりぃ、リン。でも、あの親父さんを見殺しにはできなかったんだ」
『分かってる。分かってるわよ』
アキラの声が、静かに、だが強い決意を持って響く。
『君はそうやって、これからも誰かのために一人で痛みを背負うんだろうね。……だから、僕たちは決めたんだ』
「ん?」
『君がホロウの暗闇でどんなにボロボロになっても、絶対に生きて帰ってこられるように。僕たちパエトーンが、一生君の「目」になって、完璧な帰り道を用意し続けるってね』
『そうよ。あんたみたいな無鉄砲なお馬鹿さん、私たちが管理してあげないとダメなんだから。……絶対に、一人で死なせたりしないわ』
その言葉に。
イサムは痛む目を瞬かせた後、フッと息を吐き出して、ホロウの天井を見上げた。
寿命が削られるわけではないという彼の真実は、やはり彼らには「死を覚悟した強がり」と勘違いされたままだ。
だが、彼らが向けてくれるその不器用で、どこまでも温かい心配が、旧都を追われてからずっと凍りついていたイサムの孤独を、確かに溶かしてくれていた。
「……ああ。頼りにしてるぜ、俺の最高のナビゲーター」
イサムはインカムに向かって力強く答え、痛む身体に鞭打って立ち上がった。
この夜、巨大企業の闇から一つの家族を守り抜いた名もなき戦いは、後に伝説となるプロキシ『パエトーン』と、死を告げるレイダー『晩鐘のハサン』の絆を、誰にも断ち切れないほど強固なものへと変えたのだった。
ストーリーを繋げるのが難しい。
皆様に評価頂いてる分頑張ってみたいです。
続きは明日か明後日。
ちょっと違和感のあるスタートになってしまうかも
しれませんが長編の作成は負担が多く、
ストーリー第一部1章からは断念しました。
やりたい描写は明確にあるのでそこまで
お時間いただける方がいらっしゃいましたら
お付き合い頂けると嬉しいです。