ガールズ&パンツァー ドイツ極秘戦闘隊と親善試合です!!!   作:ロングキャスター

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第一話 親善試合、始まります!

 

 

 広大な草原を、心地よい風が吹き抜けていた。

 

 その風には、草の匂いに混じって鉄と油の匂いが漂っている。

 

 草原の向こうには、無数の戦車が並んでいた。

 

 大洗女子学園のⅣ号戦車D型改、聖グロリアーナ女学院のチャーチル、サンダース大学付属高校のシャーマン、黒森峰女学園のティーガーやパンター。ほかにも、各校を代表する戦車が勢ぞろいしている。

 

 かつて大学選抜チームとの戦いで肩を並べた仲間たちが、再び同じ場所に集まっていた。

 

 しかし、今回の目的はあのときとは違う。

 

 今度は、親善試合だ。

 

「いやあ、ずいぶんと大がかりになったねえ」

 

 大洗女子学園の元生徒会長、角谷杏が、並んだ戦車を眺めながら呟いた。

 

「参加する学校も多いですからね。これだけの戦車が集まると、壮観です!」

 

 隣にいた秋山優花里が、目を輝かせて答える。

 

 今回の親善試合は、大洗女子学園を中心とした各校の合同チームと、異世界から来たブラッドハウンド連合部隊との対戦だ。

 

 相手は、ドイツ軍の戦車を中心に、複数の国の戦車や装備を保有する部隊。戦車道連盟と文部科学省の仲介によって、今回の試合が実現した。

 

 戦車道の公式試合とは異なる特別な親善試合ではあるが、集まった戦車の数も、参加する隊長たちの顔ぶれも、決して小規模とは言えない。

 

 そのとき、遠くからエンジン音が聞こえてきた。

 

「あっ、来ました!」

 

 優花里が声を上げる。

 

 草原の向こうから姿を現したのは、M3ハーフトラックだった。車体を揺らしながら近づいてきた車両は、大洗連合の待機場所から少し離れたところで停止する。

 

 後部から、一人の男が降り立った。

 

 黒い軍服を身にまとった長身の男。その動作には無駄がなく、周囲を見渡す視線には、長年の軍務で培われた鋭さがあった。

 

 その後ろからも、男女が続々と降りてくる。

 

 大洗側の隊長たちは、自然とそちらへ視線を向けた。

 

 男は一同の前まで歩み寄ると、軽く敬礼した。

 

「お待たせしました。ブラッドハウンド連合部隊の隊長、ウィットナー・シュトラーデンです。本日はよろしくお願いします」

 

「こちらこそ、よろしくお願いします!」

 

 西住みほが一歩前に出て、丁寧に頭を下げた。

 

「大洗女子学園の西住みほです。こちらは、今回の試合に参加する各校の隊長の皆さんです」

 

 みほは隣にいた杏と優花里を紹介したあと、各校の隊長たちを順番に紹介していった。

 

 聖グロリアーナのダージリン、サンダースのケイ、アンツィオのアンチョビ、プラウダのカチューシャ、継続高校のミカ、BC自由学園のマリー。さらに、知波単学園の西、マジノ女学院のルクレール、ベルウォール学園の中須賀エミ、大学選抜チームのアズミ、ルミ、メグミも参加していた。

 

 ウィットナーは一人ひとりに目を向け、挨拶を交わした。

 

「なるほど。これだけの学校が合同で参加するとは、なかなか壮観ですね」

 

「ええ。今回は、いつも以上に大きな試合になりそうです」

 

 みほが答える。

 

「総数六十両ですからね…。では、こちらの仲間も紹介しましょう」

 

 ウィットナーは振り返り、後ろに並ぶ隊員たちへ手を向けた。

 

「アメリカ出身のテイラー・ワイナーズ。イギリス出身のエマ・パターソン。ソ連出身のアイーダ・シャラシャーシカ。そして日本出身の松平風間です。ほかにも各中隊の指揮官が参加しています」

 

 紹介された隊員たちは、それぞれ軽く頭を下げた。

 

「よろしくお願いします」

 

 みほたちも挨拶を返す。

 

 優花里は、彼らの服装や装備をさりげなく観察していた。軍服の仕立てや身のこなし、腰に携えた装備など、戦車道の選手たちとは明らかに異なる雰囲気がある。

 

 その視線に気づいたのか、ウィットナーが微笑んだ。

 

「何か気になることでも?」

 

「あっ、いえ! その、皆さんの装備がとても興味深くて……!」

 

「なるほど。こういうのが好きなのですね」

 

「はい!」

 

 即答だった。

 

 ウィットナーは小さく笑った。

 

「それなら、試合が終わってから話しましょう。私たちも、皆さんの戦車道について知りたいことがありますから」

 

「本当ですか!? ありがとうございます!」

 

 優花里の顔がぱっと明るくなる。

 

 その様子を見て、杏が肩をすくめた。

 

「秋山ちゃん、試合前から飛ばしすぎないようにね」

 

「す、すみません!」

 

 和やかな空気が流れる。

 

 だが、みほはウィットナーを見つめながら、別のことも考えていた。

 

 彼の態度は礼儀正しく、言葉遣いも落ち着いている。しかし、周囲への目配りや、仲間たちの立ち位置を把握している様子からは、単なる戦車好きとは違うものが感じられた。

 

 この人は、戦車を扱うことに慣れている。

 

 それも、競技としてだけではなく。

 

「それでは、今日は最高の試合にしましょう」

 

 ウィットナーが手を差し出した。

 

「はい。よろしくお願いします!」

 

 みほはその手を握り返した。

 

 こうして、両陣営の顔合わせは終わった。

 

 ウィットナーたちはハーフトラックへ戻り、自陣へと引き返していく。

 

 その背中を見送る各校の隊長たち。

 

「それにしてもダージリン、渡航を延期しても大丈夫だったのですか?」

 

 アッサムに尋ねられ、ダージリンは紅茶を一口飲んでから答えた。

 

「ええ。こんな面白そうなことを無視して留学なんてできないもの」

 

 ダージリンはそう答えると、オレンジペコに微笑みかけた。

 

「それに……留学前に聖グロリアーナの新隊長として頑張るあなたの姿を、しっかりと目に焼き付けておかないとね」

 

オレンジペコは、少し照れくさそうにしながらも、静かに頷いた。

 

 その場にいた隊長たちは、皆、試合への期待を隠しきれない様子だった。

 そんな中、ダージリンは静かに表情を引き締め、口を開いた。

 

「さて……どのような戦いになるのでしょうね」

 

 その言葉に、隊長たちの表情が一気に引き締まった。

 

     * * *

 

 大洗連合の作戦会議は、待機場所に設置された会議用テントで行われた。

 

 中央の机には、試合会場全体の地図が広げられていた。

 

 西側には森林地帯、中央には周囲を見渡せる丘陵が広がっている。東側は見通しのよい草原で、その北には運河沿いの農業地区があった。さらに北へ進むと市街地があり、運河と市街地の間には住宅街が広がっている。

 

 みほは地図の前に立ち、参加者全員を見渡した。

 

「皆さん、集まっていただいてありがとうございます。今回の試合について、まずは基本方針を確認したいと思います」

 

 各校の隊長たちが頷く。

 

「試合形式は殲滅戦です。参加車両が多いため、全戦力を一か所に集中させるのではなく、戦場を三つの方面に分けて行動したいと考えています」

 

「狭い場所に誘い込んで、各個撃破するのはどうなんだ?」

 

 河島が尋ねた。

 

「相手がこちらの狙いに乗ってくれるとは限りません。それに、戦力を分散しすぎれば、逆に包囲される危険があります」

 

 みほは地図を指さした。

 

「そこで、各方面に二つずつ部隊を配置します。互いに支援できる距離を保ち、敵の動きに応じて連携する方針です」

 

「つまり、大学選抜戦のときと同じような形ね」

 

 ケイが腕を組みながら言った。

 

「はい。ただし、今回は相手の性質が違います」

 

 みほは少しだけ言葉を選んだ。

 

「ブラッドハウンドの皆さんは、戦車道の経験がありません。ですが、実戦を経験している部隊です。戦車の扱いや連携については、私たちが想像している以上に慣れている可能性があります」

 

「そうでしょうね。だからかなり厄介ね」

 

 エリカはさも当然という表情で頷いた。

 

「ドイツ戦車の性能は、私たちもよく知っているわ。正面からの撃ち合いになれば、車両によっては不利を強いられる可能性がある」

 

「でも、相手は戦車道のルールに慣れていないんじゃないか?」

 

 アンチョビが尋ねた。

 

「そうです。だからこそ、そこを見極める必要があります。実戦で有効な戦術が、戦車道でも必ず有効とは限りません」

 

 みほは地図に目を落とした。

 

「たとえば、相手が損害を避けることを優先するのか、それとも短時間で勝負を決めようとするのか。それによって、こちらの対応も変わります」

 

「まずは相手の出方を見る、ということですね」

 

 オレンジペコが言った。

 

「はい。最初から無理に攻め込むのではなく、各部隊が互いの位置を把握し、連絡を取り合いながら進みたいと思います」

 

「森林地帯は見通しが悪い。敵の姿を確認する前に、接近される可能性もあるかと」

 

 西が地図を見ながら呟く。

 

「その点は警戒します。森林地帯には偵察を重視した部隊を配置し、接敵した場合は無理をせず、後続と連携して対応します」

 

 みほは森林地帯を指さしたあと、地図の中央にある丘陵地帯へ指を移した。

 

「この丘陵を確保すれば、周囲の戦場を広く見渡せます。敵もその利点は理解しているはずです。主力を投入してくる可能性は高いでしょう」

 

みほは一区切り付けて再び話始める。

 

「ですので黒森峰とベルウォール、プラウダの皆さんには、装甲と火力を生かして相手の重戦車を牽制してもらいたいです。ただし、正面からの撃ち合いに固執しないでください。相手の戦力を見極めることを優先します」

 

「分かったわ」

 

 エリカが頷いた。

 

「機動力を生かせる部隊は、相手の配置が分かった段階で側面への展開を考えます。状況が分からないうちに突っ込むのは避けましょう」

 

「オッケー!」

 

 ケイが力強く返事をした。

 

「中央の丘陵は、どちらにとっても重要な場所になるでしょう。ですが、そこを取ることだけにこだわって、戦力を消耗するのは避けたいです」

 

 みほの説明を聞き、カチューシャが腕を組んだ。

 

「要するに、相手がどういう動きを取るか見定めて慎重に進めるってことね」

 

「はい。相手を過小評価するつもりはありません。でも、実戦経験があるからといって、必ずしも戦車道で有利になるとは限らないと思います」

 

「で、私たちはどうするの?」

 

 大学選抜チームのルミが問いかける。

 

「中央の丘陵方面は、エリカさんの『ひまわり』とメグミさんの『あじさい』。森林方面は、ケイさんの『あさがお』とアズミさんの『コスモス』。そして草原方面は、私の『たんぽぽ』とルミさんの『すいせん』で担当してください。」

 

「ちょっと! また私に副隊長をやらせる気?!」

 

大学選抜戦に引き続き、隊長の任を与えられなかったカチューシャが不服そうに頬を膨らませる。

 

「優秀な副官がいて初めて、指揮官が輝くんですよ、カチューシャ」

 

「まあ……そういう事ならいいけど」

 

さすがはカチューシャの扱いに慣れているノンナである。

簡単に彼女を納得させてしまった。

 

…いや、むしろカチューシャが単純なだけなのかもしれないが…

 

みほは苦笑しながらカチューシャを見た。

 

「カチューシャさんのプラウダ組はひまわりに入ってください。ひまわり中隊の副隊長をお願いします。ベルウォールの皆さんはあじさいに入ってください」

 

そして今度はケイとアズミを見た。

 

「森林地帯の偵察はケイさんのあさがおが担当して下さい。アズミさんはあさがおが接敵した場合に備えて火力支援をお願いします。それから…」

 

「私達も偵察しつつアズミをカバーできるように…でしょ?任せて!」

 

みほの言葉を汲み取り、ケイが指を鳴らして言った。

 

そしてみほは気を取り直して全員の顔を見渡す。

 

「私たちには、戦車道で戦ってきた経験があります。それを生かして、私たちにできる戦い方をしましょう」

 

 その言葉に、隊長たちはそれぞれ頷いた。

 

 ブラッドハウンドは未知の相手だ。

 

 だからこそ、恐れすぎることも、侮ることもできない。

 

 みほは地図を見つめ、最後にもう一度、各部隊の配置を確認した。

 

「それでは、各隊は決められた進路と連絡方法を確認してください。何か異常があれば、すぐに報告をお願いします」

 

「了解!」

 

 会議室に、隊長たちの返事が響いた。

 

     * * *

 

 一方、ブラッドハウンド連合の陣地でも、作戦会議が始まっていた。

 

 ウィットナーのティーガーI。その車体前方に広げられた地図を囲み、各中隊の指揮官たちが集まっている。

 

 ウィットナーは地図を指でなぞりながら、口を開いた。

 

「まず、会場を三つの進路に分けて考える。中央の丘陵、森林地帯、草原沿いだ。各隊は互いに連絡を取り、孤立しないように行動してくれ」

 

「中央はエンドラーの"ドライ"中隊と、シャラシャーシカの"ベータ"中隊で押さえる形?」

 

 テイラーが確認する。

 

「ああ。森林地帯はテイラーの"アルファ"中隊と、ファインツの"ツヴァイ"中隊。草原は俺の"アインス"中隊と、エマの"チャーリー"中隊を中心に動く」

 

「了解」

 

 エンドラーが短く返事をした。

 

 ウィットナーは地図から目を離さず、続けた。

 

「ただし、中央の丘を無理に奪いにいく必要はない。あそこを確保できれば有利だが、相手も同じことを考えているはずだ。正面からぶつかって戦力を削るのは避けたい。」

 

「慎重なのね」

 

 エマが腕を組んだ。

 

「相手は学生だし、こちらの方が実戦経験は豊富よ?…とは言え、向こうも同じ事は考えているでしょうけど」 

 

「実戦経験があることと、戦車道で勝てることは別だ」

 

 ウィットナーは即座に答えた。

 

「俺たちは、この世界の戦車道をまだ十分に理解していない。ルールも、判定の仕組みも、相手がどんな戦術を得意としているのかも、すべてを知っているわけじゃない」

 

 彼は地図の上に置いた指を止めた。

 

「それに、相手は戦車道の大会を何度も経験している。連携や試合運びについては、俺たちより上手い部分があるかもしれない」

 

「つまり、最初は様子を見るわけか」

 

 松平が尋ねた。

 

「そういうことだ。相手の動きと連絡の取り方を見て、どこに主力を置いているかを判断する。こちらの強みを生かすのは、それからでも遅くない」

 

 テイラーが手元の資料をめくった。

 

「大洗連合には、黒森峰やサンダース、聖グロリアーナも参加している。大学選抜チームの指揮官たちも参加しているようだな」

 

「ああ。特に西住みほの指揮には注意したい」

 

 ウィットナーは資料に目を落とした。

 

「彼女は、状況に応じて戦術を変える指揮官らしい。こちらの動きを見て、柔軟に対応してくる可能性がある」

 

「なら、こちらも柔軟に動く必要があるな」

 

「そのとおりだ、テイラー……だが、悠長に構えている余裕もない。これまでの試合データを見る限り、彼女たちの適応力は高い。時間をかければ、それだけこちらの戦い方を分析される可能性がある。長期戦になれば、相手に有利な展開を許しかねない」

 

 ウィットナーは頷いた。そして再び口を開く。

 

「それから、戦車道の試合では乗員の安全が守られると聞いているが、だからといって無茶をしていいわけじゃない。視界の悪い場所での不用意な突進や、味方の位置を確認しない射撃は避けること。戦場の癖をそのまま持ち込むのではなく、この世界のルールに合わせて戦うんだ」

 

 隊員たちは真剣な表情で聞いていた。

 

「質問は?」

 

 しばらく沈黙が続いたあと、ファインツが手を挙げた。

 

「ウィットナー、森林地帯は俺に任せろ」

 

「本気か?」

 

「見通しが悪く、道も限られている。威力偵察で相手の行動を見るにはうってつけだ」

 

ファインツは地図に視線を移す。

 

「それに、森林地帯を進むのは俺のツヴァイとテイラーのアルファだ。相手が重戦車を投入してきた場合、この二つの部隊で対抗できるのは、俺のティーガーIくらいだろう?」

 

「ちょっと! 私のパーシングじゃ頼りないって言いたいわけ?」

 

「そうは言っていない。だが、森林内での行動は車両の大きさや視界にも左右される。状況に応じて動けるよう、互いに支援できる距離を保っておきたい」

 

 ウィットナーは二人のやり取りを聞いてから、地図へ視線を戻した。

 

「テイラーのアルファはファインツのツヴァイと連携しろ。ファインツのティーガーIが敵と接触した場合、すぐに支援できる位置を維持するんだ」

 

「オッケー」 

 

「ファインツはツヴァイの中隊指揮と威力偵察の両方を頼むことになるが、よろしく」

 

「心配すんな」

 

「現時点で言えることは、向こうも同じように慎重に動いてくるだろうということくらいだ。お互いに相手の実力を把握できていない以上、慎重さと大胆さをどう使い分けるかが重要になる」

 

 ウィットナーは地図を畳み、隊員たちを見渡した。

 

「俺たちは実戦を経験している。だが、今回は戦争じゃない。相手を倒すことだけを考える必要はないし、戦場での常識がそのまま通用するとも限らない」

 

 そこで、彼はわずかに笑みを浮かべた。

 

「せっかく別の世界に来たんだ。この世界の戦車道というものを、存分に楽しませてもらおうじゃないか」

 

 隊員たちの間に、緊張を和らげるような笑いが広がった。

 

「ただし、勝負は勝負だ。勝ちを目指すことに変わりはない」

 

「もちろんです、隊長」

 

 エンドラーが答えた。

 

 ウィットナーは最後にもう一度、地図を確認した。

 

「各隊、車両の点検と乗員の配置を確認。試合開始までもう少しある、車両の最終チェックを頼むぞ」

 

「了解!」

 

 指揮官たちは敬礼し、それぞれの中隊へ戻っていった。

 

 ウィットナーはティーガーの砲塔を見上げた。

 

 戦争のために乗り続けてきた戦車。

 

 今度は、誰かの命を奪うためではなく、勝負を楽しむために乗る。

 

「……悪くないな」

 

 彼は小さく呟き、車体に手を置いた。

 

     * * *

 

 やがて、試合開始の時刻が近づいた。

 

 草原には、各校の戦車がそれぞれの配置についていた。エンジン音が重なり、履帯が地面を踏みしめる。無線の確認を終えた乗員たちが、最後の準備を進めていく。

 

 大洗女子学園のⅣ号戦車の車内では、みほが仲間たちを見渡していた。

 

「みんな、準備はいい?」

 

「もちろんだよ!」

 

 沙織が答える。

 

「問題ありません!」

 

 優花里が続いた。

 

「操縦系統、異常なし」

 

 麻子も落ち着いた声で報告する。

 

 華は砲手席で照準器を確認し、静かに頷いた。

 

 みほは一人ひとりの顔を見てから、前方へ視線を戻した。

 

 相手は未知の部隊だ。

 

 けれど、こちらには仲間がいる。これまで何度も一緒に戦い、助け合ってきた仲間たちが。

 

「それでは、皆さん」

 

 みほは無線の送信スイッチを押した。

 

「私たちらしく、力を合わせていきましょう!」

 

 各隊から返事が返ってくる。

 

 その一方、ブラッドハウンドのティーガーIでも、ウィットナーが乗員たちに声をかけていた。

 

「各員、準備はいいか?」

 

『いつでもどうぞ!』

 

 無線から頼もしい返答が響いた。

 

 ウィットナーは帽子を被り直すと後方を向いた。

 

 仲間たちの車両が整然と並んでいる。その光景は、何度見ても壮観だった。

 

「よし。相手は戦車道の経験者だ。油断するな。だが、必要以上に構えることもない。俺たちは俺たちの戦い方をする」

 

『了解!』

 

 ウィットナーは小さく息を吐き、無線の送信スイッチを押した。

 

「ブラッドハウンド連合、全車――」

 

 同じ頃、大洗女子学園のⅣ号戦車でも、みほが声を張り上げていた。

 

「それでは、皆さん!」

 

 両陣営の指揮官が、ほぼ同時に声を上げる。

 

「パンツァー・フォー!」

 

「PANZER VOR!」

 

 二つの掛け声が、草原に響き渡った。

 

 こうして、大洗連合とブラッドハウンド連合による親善試合が、いよいよ始まろうとしていた。

 

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