真夏の太陽が太平洋の水平線から高く昇り、果てしなく広がるコバルトブルーの海原を眩いばかりの黄金色で焼き尽くしていた。日本列島から南東へ数千キロメートル離れた外洋の波頭を、一隻の漆黒の船体が白い飛沫を巻き上げながら猛烈な速度で切り裂いている。
横須賀の海パン連合軍極東基地から強奪された、最新鋭のウォータージェット推進式高速ステルス小型艇『シー・シャドウ』である。四基の大出力エンジンが海面下で重低音の咆哮を響かせ、時速九十ノットを超える速度で船体を海面からわずかに浮き上がらせながら、最終決戦の地である中部太平洋のポイント・ネモへと向かって一直線に爆走していた。
コックピットの後方に位置する狭い通信機器室では、東都海洋大学の准教授シバタが、床に胡座をかいて座り込み、分解した軍用衛星通信コンソールの内部配線と格闘していた。
四十五歳の異端の海洋学者は、相変わらず着衣を一切身につけず、長年の潜水調査で極限まで鍛え上げられた細マッチョの浅黒い肉体に、十五年モノの色褪せた紺色の競泳用ブーメランパンツ一丁という姿のままである。彼の引き締まった大胸筋や腹筋からは大粒の汗が滴り落ち、割れた眼鏡のレンズの奥にある双眸は、目の前の基盤から散る青い火花を狂気じみた集中力で睨みつけていた。彼の手元には、ミオが湘南の隠れ家から持参した高性能な配信用スマートフォンと、あの黒い暗号化メモリが差し込まれた軍用ノートパソコンが太いケーブルで直結されている。
「よし、繋がったぞ! 海パン連合軍の通信衛星『イージス・コム』の予備トランスポンダに、私が作成したバックドア・プログラムを強引にねじ込んでやったわ!」
シバタがピンセットを放り投げ、勝利の雄叫びを上げた。
「これで軍のジャミング網も、ネット上のAI検閲フィルターもすべて無効化した! この回線を使えば、ミオ君のアカウントから発信されるライブ映像は、軍のサイバー部隊に遮断されることなく、世界中のSNSプラットフォームと主要都市の街頭ビジョンへ強制的にミラーリング配信される! ただし、ドミニクの連中が物理的に衛星の電源を落とすまでの、せいぜい十五分間が限界だがな!」
「十五分あれば十分よ。ありがとう、シバタ先生!」
通信室の入り口で待機していた二十歳の現役女子大生インフルエンサー、ミオが、大きく頷いてスマートフォンを受け取った。
操縦席でステアリングを握っていた元プロサーファーのタクヤは、肩越しに後ろを振り返り、心配そうに眉をひそめた。二十八歳の彼の鍛え抜かれた上半身もまた裸のままであり、腰にはトレードマークである鮮やかな赤と黄色のハイビスカス柄のロングサーフパンツが穿かれている。
「おい、ミオ。本当に甲板に出て配信するのか。今の速度だと、外は立っているだけでもやっとの猛烈な潮風だぞ。オートパイロットに切り替えて少し速度を落とすから、せめてライフジャケットくらいは着ていけ」
タクヤの気遣うような言葉に、ミオは首を横に振った。彼女の明るい栗色のウェーブヘアは潮風で乱れないよう後ろで一つに束ねられ、化粧っ気のない白い顔立ちには、一切の迷いを振り切った者だけが持つ凛とした美しさが宿っていた。
「ううん、速度は落とさないで、タクヤさん。一秒でも早く、ポイント・ネモにいるあの人たちのところへ辿り着かなきゃいけないんでしょう? それに、私が今から世界中に伝える言葉には、ライフジャケットなんていう『身を守るための余分な鎧』は邪魔なだけだから」
ミオはそう言い残すと、スマートフォンを固定するジンバル付きの自撮り棒を片手に持ち、後部甲板へと続くハッチを押し開けて外へと足を踏み出した。
シバタもまた、「どれ、世紀のプレゼンテーションを特等席で見届けるとしよう」と呟きながら、ノートパソコンを抱えてコックピットの後部窓のすぐ外側にあるデッキの段差へと移動した。タクヤは船の針路を自動操縦にセットしつつ、何かあればいつでもミオを助けられるよう、コックピットのハッチを半開きにして甲板の様子を見守る体勢をとった。
外は、目が眩むほどの強烈な太陽光と、耳を劈くような波の轟音の世界だった。
時速百五十キロメートルを超える速度で海面を滑走する『シー・シャドウ』の後部甲板には、熱帯の熱気を含んだ暴風のような潮風が吹き荒れ、船底が弾き飛ばしたエメラルドグリーンの海水の飛沫が、細かい霧となって容赦なく降り注いでいる。
ミオは白いスニーカーを脱ぎ捨て、素足の裏で熱く濡れた甲板の滑り止めデッキをしっかりと踏みしめた。そして、甲板の中央にある金属製のハンドレールに自撮り棒のホルダーをガッチリと固定すると、スマートフォンのインカメラのレンズを自分の方へと向けた。
画面をタップし、全世界に向けたゲリラ生配信の『開始ボタン』を押す。
シバタのハッキングプログラムが即座に作動し、かつてフォロワー三百万人を誇り、湘南でのビキニ引き裂き事件以降は凍結状態にあったミオの公式アカウントが、世界中のスマートフォンやパソコンの画面最前面へと強制ポップアップ表示された。
それだけではない。東京の渋谷スクランブル交差点、ニューヨークのタイムズスクエア、パリのシャンゼリゼ通り、そして太平洋を包囲している海パン連合軍百二十隻の艦艇内のモニターに至るまで、あらゆるスクリーンが一瞬のノイズの後に切り替わり、青い海と空をバックに立つミオの姿を映し出したのである。
配信開始からわずか十秒で、同時接続視聴者数のカウンターが百万、五百万、一千万と爆発的な勢いで跳ね上がっていく。
画面の端を流れるコメント欄には、突然復活した「あのビキニを裂かれた女子大生」の姿に気づいた世界中のネットユーザーたちから、好奇と嘲笑に満ちた書き込みが濁流のように殺到し始めた。
『おい、これ湘南で最初にパンツ裂かれたインフルエンサーのミオじゃん!』
『なんだよ、どこかの船の上から配信してるぞ』
『海パン連合軍の通信網をジャックしたのか? テロリストにでもなったつもりかよw』
ミオは流れるコメントには目もくれず、カメラのレンズを真っ直ぐに見据えたまま、自分の着ている大きめの白いTシャツの裾へと両手をかけた。
そして、深く息を吸い込むと、そのTシャツを一気に頭上へと引き抜き、躊躇うことなく後ろの海へと放り投げたのである。白い布切れが猛烈な潮風に煽られ、白い鳥のように空へと舞い上がって波間へと消えていく。
さらにミオは、自分が穿いていたデニムのショートパンツのボタンを外し、ファスナーを下ろすと、それもまた足元へと滑り落として蹴り飛ばした。
「なっ……!?」
コックピットのハッチからその光景を見ていたタクヤと、デッキの段差でパソコンを操作していたシバタが、同時に息を呑んで目を見開いた。
Tシャツとショートパンツを脱ぎ捨てたミオの身体には、パステルピンクのフリルビキニも、胸を隠すためのブラジャーすらも着けられてはいなかった。
真夏の太平洋の太陽の下に惜しげもなく晒されたのは、二十歳の少女が持つ、息を呑むほどに瑞々しく完成された一糸纏わぬ上半身の裸体だった。
普段の華奢な着衣姿からは想像もつかないほど豊満で、張り詰めたGカップの白い双丘が、強い潮風と船の振動を受けてたわわに揺れている。日焼けしていない雪のように滑らかな肌の上に、淡い桜色の頂が朝の光を浴びて誇らしげに屹立し、引き締まった細いウエストから緩やかに広がる骨盤へと、神が創り出した究極の曲線美を描き出していた。
そして、その眩いばかりの裸体の中で、ただ一箇所、彼女の腰回りにピタリと密着していたのは、湘南の岩場で消えていったあの片腕の男が最後に残していった――光の反射率ゼロ・〇一パーセント以下の、鋭角な『漆黒のブーメランパンツ』ただ一枚だけであった。
男性用のサイズであるその黒いブーメランパンツは、ミオの細い腰骨に引っかかるようにして辛うじて留まっており、鼠径部のV字ラインに沿って大胆にカットされた極小の黒い布地が、彼女の白桃のように丸く引き締まった臀部と、少女の秘所だけをギリギリの面積で包み込んでいる。白い素肌と、すべてを飲み込むような漆黒の布地との強烈なコントラストが、かえって彼女の生身の肉体が持つ生命力とエロティシズムを極限まで際立たせていた。
「おいおい、ミオの奴、まさかあの格好になるなんて聞いてないぞ……!」
コックピットのハッチから身を乗り出していたタクヤは、顔を真っ赤に染め上げ、思わずゴクリと喉を鳴らした。
すぐ目の前で、海水の飛沫を浴びてキラキラと輝きながら弾むミオの豊満な双丘と、黒いブーメランパンツが食い込む見事なヒップライン。極限の戦場を生き抜いてきた二十八歳の健康な男であるタクヤの視線は、自分の意志に反してその圧倒的な肢体に釘付けとなり、穿いているハイビスカス柄のサーフパンツのフロント部分が、生命の本能的な反応によって熱い血潮を集め、むくりと激しく膨張し始めた。
「う、うむ。なんという見事な流体力学的曲線、そして太古の器の装着例だ……!」
隣にいた四十五歳のシバタ准教授もまた、割れた眼鏡を白く曇らせながら、科学者としての冷静さを装いつつも鼻息を荒くしていた。フィールドワークで鍛え抜かれた彼の細マッチョの肉体がビクリと反応し、彼が穿いている十五年モノのヨレヨレの競泳用ブーメランパンツの股間もまた、ミオの神々しいまでのトップレス&ブーメラン姿にあてられて、布地が弾け飛ばんばかりに熱く猛り立っていく。
船体を揺らすエンジンの振動と、目の前の少女が放つ強烈なフェロモンに当てられ、二人の男の股間は、これから世界の運命を賭けた配信が始まるというのに、どうしようもないほど熱く滾ってしまっていた。
一方、世界中のスクリーンを通じてその衝撃的な姿を見せつけられた数千万人の視聴者たちは、一瞬の静寂の後、大爆発を起こしたかのようにコメント欄を埋め尽くした。
『うおおおおおっ!? 脱いだあああああっ!!』
『なんだこれ、上は完全に丸出しじゃねえか! おっぱいデケェ!!』
『下にあいつらと同じ黒いブーメランパンツ穿いてるぞ! エロ配信か!?』
『ビキニ裂かれたショックでついに頭がおかしくなったのかよwww』
『おい運営、BANするなよ! 永久保存だ!!』
下品な歓声と、彼女が狂ってしまったのだと嘲笑うコメントが、画面が見えなくなるほどの速度で流れていく。
だが、カメラの前に立つミオは、自分の胸を両手で隠そうとすらしていなかった。
あの日、湘南のビーチでビキニを裂かれた時は、他人の視線が怖くて、自分の裸を見られるのが恥ずかしくて、砂浜にうずくまって泣き叫ぶことしかできなかった彼女が、今は数千万人の視線を真正面から受け止め、背筋をピンと伸ばして仁王立ちしていたのである。潮風に吹かれて揺れる豊かな双丘も、黒いブーメランパンツ一丁の下半身も、そこには一点の卑猥さもなく、ただ大自然の前にすべての嘘を捨てて立つ人間の気高さだけが満ち溢れていた。
ミオは、自分の足元に置いたあの日引き裂かれたパステルピンクのフリルビキニの残骸を片手で拾い上げ、カメラのレンズの前へと突き出した。
「世界中の皆さん、私の声が聞こえていますか! 私はミオ。二週間前、日本の湘南海岸で、あの黒いブーメランパンツの男たちに一番最初に水着を引き裂かれた、あの女子大生です!」
風切り音に負けないよう、ミオは腹の底から声を張り上げた。彼女の大きな瞳が、画面の向こうにいる何千万人もの人間たちの目を射抜くように真っ直ぐに見つめる。
「今、コメント欄で私のこの格好を見て、エロ配信だとか、頭がおかしくなったとか笑っている人たち。ええ、笑いたければ笑えばいいわ! 二週間前の私だったら、こんな風に胸を出して、男の人用の黒いブーメランパンツ一枚でカメラの前に立つなんて、死んでも嫌だった! だって私は、海で泳ぐことなんてどうでもよくて、ただこのピンクのフリルと分厚いパッドが入った可愛いビキニを着て、自分を大きく、綺麗に見せて、みんなから『いいね』をもらうことしか考えていなかったから!」
ミオは手の中のピンクのビキニの残骸を強く握りしめ、そしてそれを甲板の床へと叩きつけた。
「でもね、頭がおかしくなっているのは私じゃない! 今、世界中の街頭で派手な水着を着て『ブーメランを皆殺しにしろ』って叫んでいる、あなたたち人間の方よ!!」
ミオの激しい一喝に、高速で流れていた下品なコメントの勢いが、ピタリと止まった。
なぜこの少女は、これほどまでに堂々と裸を晒し、こんなにも真剣な目で怒っているのか。視聴者たちの視線が、彼女の豊かな胸元から、その涙を湛えた大きな瞳へと吸い寄せられていく。
「みんな、目を覚まして! あの黒いブーメランパンツの男たちは、私たちを襲いに来た宇宙人でも、テロリストの生物兵器でも、変質者なんかでもないの! シバタ先生、あのデータを画面に出して!」
ミオの合図とともに、後ろに控えていたシバタがノートパソコンのキーを叩いた。
配信画面の右半分に、シバタが命がけで解析し、海パン連合軍が学会を封鎖してまで隠蔽しようとした『極秘研究データ』のスライドとグラフが鮮明にオーバーレイ表示された。
「これを見てください! これは昨日、海パン連合軍に国家反逆罪で逮捕された東都海洋大学のシバタ准教授が、リオデジャネイロで軍に撃ち殺された男の残留物を分析した本物のデータです! あの人たちの身体には、DNAもタンパク質も一ミリも入っていなかった! あの人たちの筋肉を作っているのは、人間がプラスチックや化学物質で汚す前の、四十億年前の『太古の純粋な海水』とミネラルの結晶だけなの! あの人たちは生き物じゃない、地球の海そのものが人間の男の形になって現れた『歩く海』なのよ!」
画面のグラフには、一切の不純物ゼロを示す分析結果と、古代から現代に至るまでの水着の布面積の増加グラフが次々と映し出されていく。
「どうして海が、ブーメランパンツだけを穿いて、私たちの水着を引き裂いて回っているのか! それはね、昔の人類が、水の抵抗を減らして自分の生身の身体ひとつで自然と真剣に向き合うために作った究極の水着が、このブーメランパンツだったからよ! なのに私たち人間は、いつの間にか海を畏れる心を忘れて、自分の体型を隠すためのダボダボのサーフパンツやラッシュガードを着込み、海をただのインスタ映えの背景にして、泳ぐ役にも立たない化学繊維のフリルや偽物のパッドで身体を飾り立てるようになった!」
ミオは自分の豊かな素肌の胸に手を当て、カメラに向かって一歩踏み出した。彼女の瞳から、大粒の涙がポロポロと溢れ出し、白い頬を伝って鎖骨へと流れ落ちていく。
「地球は、私たちが水着の布面積を増やして、見栄と羞恥心の殻に閉じこもってしまったことを『自然への敬意を失った病気』だと感じたの! だから、もう一度私たちを素直な姿に戻そうとして、あの人たちを送り出したのよ! 考えてみてよ! あの人たちはマッハのスピードで泳いで、鉄の網を素手で引き裂くほどの力があるのに、これまで世界中のどこでも、人間を一人も殺していないじゃない! 銃で撃たれても、爆弾で片腕を吹き飛ばされても、絶対に人間にやり返したりせず、ただ私たちの肌を傷つけないように、余分な布切れだけを切って回っているのよ!」
ここでミオは、自分のスマートフォンに保存していた一つの動画を再生し、配信画面の全面へと切り替えた。
それは二日前の夜、湘南の暗い岩場で、ミオ自身が震える手でひそかに撮影していた数十秒間の記録映像だった。
画面に映し出されたのは、機雷の爆発で左腕を肩から失い、脇腹から血ではなくエメラルドグリーンの純粋な海水をサラサラと流しながら岩場に座り込んでいる一人の男の姿だった。男は、ミオが差し出したピンクのフリルビキニの残骸に右手の指先でそっと触れ、悲しげに涙を流すと、ミオに向かって「怖がらせてごめんなさい」とでも言うように深く、静かに頭を下げた。そして次の瞬間、男は穏やかな慈愛の微笑みを浮かべたまま、何千万という美しい光の雫と白い塩の結晶になって、夜の海風へと消えていったのである。
そのあまりにも神聖で、あまりにも儚い最期の映像が流れた瞬間、世界中のコメント欄から、あらゆる言葉が消え失せた。
渋谷の交差点で見上げていた若者たちも、パリの部屋で画面を見つめていたデザイナーのエレナも、そして太平洋の艦隊で砲座についていた兵士たちも、息をすることすら忘れてその映像を見つめていた。
映像が終わり、再び画面に、涙で顔を濡らしたトップレス&ブーメラン姿のミオが映し出される。
「この人はね、私が着ていたこんなちっぽけなピンクのビキニを裂くために、人間に撃たれて、それでも最期まで私を気遣って笑いながら、綺麗な海水に戻って消えていったの! あの人たちには子供を作る力もなくて、最初に生まれた十万人から、私たちが銃で撃つたびにどんどん数が減っているのよ! 私たちが殺しているのは怪物なんかじゃない、私たちを育ててくれた母なる海の命そのものなの!」
ミオはそこで一度言葉を切ると、背後のコックピットを振り返り、カメラの向きを少しだけ横に振った。
画面の奥に、船の舵を握るために前屈みの姿勢になりながら、厳しい表情で前方の海を睨みつけている元部隊長、タクヤの姿と、その隣でブーメランパンツ一丁で仁王立ちするシバタ准教授の姿が映り込んだ。タクヤがなぜ少し不自然なほど前屈みになって腰のサーフパンツを隠すようにしているのか、その理由はミオには分からなかったが、かつて海パン連合軍の象徴だった英雄がミオと同じ船に乗っているという事実は、視聴者にさらなる衝撃を与えた。
「そして今、一番恐ろしいことが起きようとしています! 海パン連合軍のドミニク最高司令官と各国のリーダーたちは、自分たちの水着の売上とプライドを守るために、今この太平洋のポイント・ネモに集まっている生き残りの三万人の彼らに向かって、あと四十時間後に『核ミサイル』を撃ち込むことを決めたんです!」
その暴露が放たれた瞬間、画面の同時接続数はついに一億人を突破し、世界中が凍りついた。
「だから私は、自分の見栄も、恥ずかしいっていう気持ちも、可愛い水着も、全部ここに脱ぎ捨てました! あの人が残してくれたこの黒いブーメランパンツ一枚になって、今からこの船で、核ミサイルが落ちてくる太平洋の真ん中へ行きます! お願いです、世界中の皆さん! これ以上、自分のちっぽけなプライドや布切れのために、海を殺さないで! 海パン連合軍の攻撃を止めてください!!」
魂のすべてを振り絞ったミオの絶叫が、衛星回線を通じて地球の隅々まで響き渡った直後、プツンという激しいノイズとともに、ついにドミニクの指令を受けた軍の管制センターが衛星の強制シャットダウンを実行し、配信画面は真っ暗に途絶えた。
しかし、遅すぎた。
二十歳の少女がすべての虚飾を脱ぎ捨て、涙ながらに放った十五分間の真実の弾丸は、すでに数億人の人類の心臓へと、決して抜くことのできない深い楔となって突き刺さっていたのである。