彼らは地球人との文化の違いを理解し、慎重に計画を進めていた。
しかし、ある事件をきっかけに、彼らはウルトラセブンの行動に疑問を抱く。
地球を守るウルトラセブン。
だが、彼の行動は誰の権限によるものなのか?
そして宇宙人たちは、一つの結論にたどり着く。
「我々には、地球を侵略する理由がない」
『ウルトラセブン』の世界を、宇宙人側の視点から描いたIF短編です。
※原作の設定を独自に解釈した二次創作です。
侵略する理由がない
「……リスクが高すぎる」
私は呟いた。
この星――地球。
確かにいい星だ。
資源は豊富で、環境も安定している。文明の発展段階も我々より遥かに低い。
侵略する価値は十分にある。
だが、問題はウルトラセブンだ。
M78星雲が管轄している星だなんて聞いていない。
大体、奴らは何なんだ。
誰の許可と権限で、あいつらだけ好き勝手にしていいんだ?
見たことがないタイプだが、どう見てもM78星雲の関係者だ。
そもそも何人いるんだ?
調査記録によれば、以前にも似たような宇宙人が地球に滞在していたらしい。
しかも、どうやら地球人に化けて生活しているという。
「司令官、地球侵略計画についてですが……」
部下が尋ねてきた。
「中止だ」
「は?」
「中止すると言った」
「ですが、地球人類の科学力は我々より遥かに劣っています。軍事力も問題ありません」
「だから問題は地球人ではない!」
私は調査資料を机に叩きつけた。
「このウルトラセブンという男だ。地球人に化けて、地球の防衛組織に所属しているらしい」
「潜入工作員ですか?」
「違う。勝手に住んでいる」
「……は?」
「しかも、正式な派遣員かどうかも分からん」
部下は首をかしげた。
「では、セブンを排除すればよいのでは?」
「それをやってどうする。M78星雲には同種族が何人いると思っている?」
「……分かりません」
「私にも分からん!」
私はため息をついた。
「地球を侵略したつもりが、いつの間にかM78星雲との全面戦争になっていたらどうする?」
「……確かに」
「そもそも地球はM78星雲の領土なのか?」
「そのような記録はありません」
「保護領か?」
「確認できません」
「では、なぜ奴らが地球を守っている?」
「……分かりません」
私にも分からない。
全く、侵略する理由がない。
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観測員340号
モロボシ・ダンは戸惑っていた。
目の前の宇宙人の問いに、答えることができなかったのだ。
「つまり、あなたは地球の正式な保護責任者ではない、と?」
「……そういうことになる」
「M78星雲から地球防衛の任務を与えられたわけでもない?」
「私は元々、恒点観測員340号として……」
「観測員?」
宇宙人は手元の資料を確認した。
「失礼ですが、観測員というのは文字どおり観測を行う職務では?」
「……そうだ」
「では、なぜ我々の同胞を殺害したのですか?」
ダンは答えられなかった。
もちろん理由はある。
遥か昔、ウルトラマンたちはかつて人間と同じ姿をしていたとされている。
彼らを守りたいと思った。
侵略者から罪のない人々を守るために戦った。
それ自体を後悔しているわけではない。
しかし、言われてみれば、自分はただの観測員だったはずだ。
地球人類と宇宙生命体の問題を、自分が解決してよいのだろうか。
まして、その手段は暴力だ。
自分の行動が、かえって地球に問題を持ち込む可能性すらある。
「……地球人が危険にさらされていた」
「それは理解しています。ですが、我々はあなたの星と戦争をしていたわけではありません」
宇宙人は淡々と続けた。
「我々と地球人との間に生じた問題に、第三者であるあなたが武力介入した。しかも、その行動をM78星雲が正式に承認していたのかも分からない」
「……」
「あなたの善意を疑っているわけではありません。しかし、我々からすれば、突然現れた他星系の武装した人物に攻撃されたことになります」
ダンは拳を握った。
「では、地球人が殺されるのを黙って見ていろと言うのか!」
「いいえ」
宇宙人は即答した。
「だから困っているのです」
「……何?」
「あなた個人が地球人を守りたいというのは理解できます。ですが、それならば個人の責任で行動したと明言していただきたい」
宇宙人は書類を差し出した。
「我々が知りたいのは、あなたの行動がM78星雲全体の意思なのかどうかです」
「……それは」
「もしそうなら、M78星雲との外交問題として扱わなければなりません」
ダンは黙り込んだ。
地球防衛隊に所属しているとはいえ、自分は地球人ではない。
地球人が正式に自分を代表者として選んだわけでもない。そして、M78星雲の責任を誰が取るのかすら分からない。
「……一つ聞かせてくれ」
ダンはようやく口を開いた。
「君たちは、地球を侵略するつもりだったのではないのか?」
「ええ。ですが、計画は既に中止しました」
「なぜだ?」
「あなたがいるからです」
「……私が?」
「地球を侵略したつもりが、M78星雲と戦争になっていたなどという事態は避けたいのです」
宇宙人は真剣な表情で続けた。
「ですから、どうか教えてください」
「……」
「地球を攻撃した場合、あなたの星から何人来るのですか?」
「…………」
ダンには答えられなかった。
そもそも、自分が地球に来たことさえ、どこまで正式に把握されているのか分からなかった。
「……分からない」
「……そうですか」
宇宙人は静かに立ち上がった。
「やはり侵略は中止して正解でした」
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M78星雲への抗議
私は悩んでいた。
M78星雲に送った正式な抗議文の回答が、まだ来ない。
噂によれば、尋常ではない数の抗議文が届いているらしい。
もちろん、惑星間の文化差は想像を絶することがある。
我々の常識が、他の星でも常識とは限らない。
だが、M78星雲の連中は知能も高いはずだ。
端から見れば、気に入らないから暴力を振るっているようにしか見えない。
我々の侵略計画の方が、まだ地球人類のことを考えていた。
少なくとも、多少は話し合いをする気があったのだ。
「司令官、M78星雲からの回答についてですが……」
部下が報告書を持ってきた。
「来たのか?」
「いえ。まだです。ただ、他の惑星からも同様の抗議が多数寄せられているようです」
「……だろうな」
私はため息をついた。
「そもそも、あの連中は何を基準に侵略者と判断しているんだ?」
「地球人類に危害を加える存在、でしょうか」
「それなら理解できる。だが、問題はその先だ」
私は地球の映像を指さした。
「例えば我々が地球に移住したいと申し出た場合、誰と交渉すればいい?」
「地球人類では?」
「そうだ。普通はそうなる。ところが交渉が決裂して武力衝突になった場合、突然M78星雲の人間が現れる」
「……はい」
「しかも、地球人の正式な代理人でもなければ、M78星雲の正式な軍人かどうかすら分からない」
部下は黙っていた。
「一番厄介なのは、あいつらが地球人を守ること自体は理解できることだ」
「と、おっしゃいますと?」
「弱い文明を守ろうという思想は分かる。だが、守る対象の意思を確認せず、他文明との問題を一方的に武力で解決していいのか?」
私は別の報告書を開いた。
「しかも、地球人類は自分たちで防衛組織を作っているではないか」
「はい。ウルトラ警備隊です」
「その組織に宇宙人が身分を隠して所属している。これは一体どういう扱いになるんだ?」
「……分かりません」
「私にも分からん」
しばらく沈黙が続いた。
「司令官。ですが、我々も地球を侵略しようとしていたのでは?」
「そうだ。だから我々が正義だとは言っていない」
私は椅子に座り直した。
「侵略は侵略だ。地球人が拒絶するなら武力衝突も覚悟していた。だからこそ、相手の戦力や外交関係を調べていたんだ」
「……」
「ところが、調べても調べても、M78星雲がどういう立場で介入してくるのか分からない」
そのとき、通信機が鳴った。
「司令官! M78星雲から連絡です!」
「ようやくか!」
私は立ち上がった。
「回答は?」
「……それが、正式な回答ではありません」
「何?」
「光の国の関係者を名乗る人物から、個人的な通信が届いています」
「内容は?」
部下は困惑しながら読み上げた。
「『地球人を守ろうとした者たちの気持ちを理解してほしい』とのことです」
「…………」
私はしばらく考えた。
「……それは分かっている」
「はい」
「だから、誰が責任を取るのか聞いているんだ!」
私は通信機に向かって叫んだ。
「こちらは侵略を中止したんだぞ! もう戦争する気もない! ただ正式な外交関係を確認したいだけだ!」
部下が恐る恐る口を開いた。
「……司令官」
「何だ!」
「もしかすると、あちらには……」
「……?」
「我々のような侵略者が、正式な外交手続きを求めてくるという発想自体がないのでは?」
私は黙り込んだ。
……あり得る。
地球を守るために戦ってきた者たちにとって、侵略者とは倒すべき相手なのだろう。
しかし、侵略を中止した者は?
交渉を求める者は?
あるいは、地球人類と正式な外交関係を結ぼうとする者は?
その場合、M78星雲は何をするのだろうか。
「……司令官。どうなさいますか?」
私は再び地球を見つめた。
「……とりあえず、地球人類に正式な外交使節を送る準備をしろ」
「侵略計画の再開ですか?」
「違う」
私は首を横に振った。
「今度は地球人に直接聞く。あのウルトラセブンという男は、一体何の権限で君たちを守っているのか、と」
もっとも。
地球人自身も知らない可能性が高いのだが。
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消された宇宙人
我々は単に野蛮な生物ではない。
地球と我々の星の文化差を考え、どう使節を送るか検討していた。
地球人の言語、外交儀礼、政治体制。
相手の文化を理解せずに交渉などできるはずがない。
しかし、事件は起きた。
また、ウルトラセブンが宇宙人を消したのだ。
しかも、今度の被害者は我々と交流のある星の者たちだった。
彼らとは何度も外交交渉を行ったことがある。
決して暴力を好む星ではなかったはずだ。
「……もう一度、確認してくれ」
私は部下に命じた。
「本当に、あの星の者なのか?」
「はい。識別信号、宇宙船の構造、いずれも一致しています」
「……何をした?」
「現在、詳細を調査中です。ただ、地球の防衛組織との間で何らかの衝突があったようです」
私は頭を抱えた。
「地球人を攻撃したのか?」
「不明です」
「先に武器を使用したのか?」
「不明です」
「では、なぜ殺された?」
「……ウルトラセブンが敵と判断したため、としか」
「それは理由ではない!」
私は思わず声を荒らげた。
「セブンが敵と判断した理由を聞いているんだ!」
部下は黙り込んだ。
私は冷静さを取り戻そうとした。
「……すまん。続けてくれ」
「はい。現在、彼らの母星にも照会しています。ただ、あちらも詳細を把握していないようです」
「……そうか」
恐ろしい話だった。
我々は地球を侵略しようとしていた。
だから、セブンに敵と判断される可能性は理解できる。
だが、彼らは違う。
少なくとも、我々の知る彼らは侵略を目的とする文明ではなかったはずだ。
もちろん、彼らにも過激な個人はいるだろう。
地球で何が起きたかも、まだ分からない。
しかし、問題はそこではない。
地球で宇宙人が殺されたとき、誰に説明を求めればいいのか。
「司令官。彼らの母星から通信です」
「繋いでくれ」
通信画面に、見覚えのある外交官が現れた。
『お久しぶりです』
「……このような形で再会するとは思わなかった」
『我々もです』
「今回の件について、何か分かったか?」
『いいえ。ただ、地球に向かった者たちが帰還しないことは確認しました』
「……目的は?」
『地球の調査です。あの惑星の文明について、我々も関心を持っていました』
「軍事調査か?」
『いいえ。文化的な調査です』
私は目を閉じた。
『ところで、一つお尋ねしたいことがあります』
「何だ?」
『地球という惑星は、M78星雲の領土なのでしょうか?』
「……違うはずだ」
『では、なぜ彼らが我々の調査員を攻撃したのでしょう?』
「……分からない」
『我々は地球人類との接触を望んでいました。仮に何らかの問題が生じたとしても、まず当事者間で話し合うべきではないでしょうか』
「そのとおりだと思う」
『では、M78星雲は何者なのですか?』
私は答えられなかった。
それこそ、我々が知りたかったことだった。
『……我々は報復を望んでいません』
外交官は静かに続けた。
『ですが、このままでは地球に調査員を送ることもできません。地球人類との外交関係を築こうにも、第三者が突然武力介入する可能性があるのですから』
「……同感だ」
『あなた方は地球への使節派遣を検討していると聞きました』
「ああ」
『一つ、提案があります』
「何だ?」
『我々も同行させていただけませんか』
私は少し考えた。
「……共同使節団か」
『はい。我々は地球人類と話をしたいのです。そして、可能であれば、ウルトラセブン本人にも』
「……何を聞くつもりだ?」
外交官は少し沈黙した。
『なぜ我々の同胞を殺したのか。その理由です』
「……」
『もし正当な理由があるのなら、我々はそれを受け止めなければなりません』
そして、静かに付け加えた。
『ですが、我々の同胞が殺された理由を知る権利すらないというのなら、それは一体どのような文明なのでしょうか』
通信が終了した。
私はしばらく何も言えなかった。
「……司令官。共同使節団の件は?」
「受け入れよう」
「しかし、危険では?」
「危険だろうな」
私は地球を見つめた。
「だが、だからこそ行かなければならない」
我々は地球を侵略しようとした。
それは事実だ。
だが、今は違う。
我々は地球人類と話し合おうとしている。
そして、彼らもまた、失われた同胞について説明を求めている。
「……頼むから」
私は小さく呟いた。
「今度こそ、話し合いをさせてくれ」
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侵略する理由がない
モロボシ・ダンは微笑んでいた。
地球にやってきた共同使節団と、ウルトラ警備隊との交渉は、まとまりかけていた。
彼らが提示した条件は、ある意味で単純だった。
地球人類との友好関係を築きたい。
互いの文化を理解し、技術や資源を交換し、双方に利益のある関係を構築したい。
そして、ウルトラセブンへの抗議については、別途M78星雲との間で解決したい。
その二つは、彼らにとって何の矛盾もないことだった。
地球人類に利益がある。
自分たちにも利益がある。
ならば、争う必要はない。
セブンに対する怒りは、地球人類との外交関係には何の関係もなかった。
かつて地球を侵略しようとしていた宇宙人たちは、今や地球との友好関係を望んでいた。
「地球を侵略する理由がない」
彼らはそう言った。
ダンは、その言葉を嬉しく思った。
地球人と宇宙人が、武力ではなく話し合いによって互いを理解しようとしている。
地球と宇宙人との間に、平和的な道が現れていたのだ。
一方、その頃。
M78星雲では、ウルトラセブンが正式な権限も不明なまま武力介入し、宇宙人たちを消してきたことについて、被害を訴える惑星から抗議が殺到していた。
誰が命令したのか。
誰が責任を取るのか。
そもそも、地球はM78星雲の管轄なのか。
多数の文明を巻き込んだ、大規模な宇宙外交問題へと発展していた。
地球人類と宇宙人たちは、平和への道を歩み始めていた。
しかし、M78星雲の問題は、まだ何一つ解決していなかった。
おしまい。
侵略する理由がないというタイトルから膨らました作品です。M78星雲及びウルトラセブン、関係者方に批判等の意図は
ないです。
「手続きやら権利関係考えながら、ヒーローなんて見れない!」は至極真っ当な正論とは思ってはいます。
難しい。
注一時的に設定ミスしました。これで完結です。